攻めの予防医療に関する提言
令和8年6月4日
自由民主党政務調査会
攻めの予防医療に関する関係合同会議
<はじめに>
戦後、わが国では病気にならないための「一次予防」、早期発見・早期治療のための「二次予防」などの保健活動の視点から国民の健康増進に取り組み、その結果、健康寿命が世界最高水準に達するとともに、2018年に「老衰」による死亡が、死因の第3位に浮上した。こうした取組を更に進め、保健・医療と暮らしを繋ぎ、身体的・精神的・社会的(バイオ・サイコ・ソーシャル)な要素を包括的に充実させることにより、個々の「ウェルビーイング」を向上させることが重要である。
他方、わが国が直面する少子高齢化・人口減少を乗り越え、社会の安定と活力を維持、強化するというマクロの公共政策的観点からは、「国民の健康寿命を延伸させる」ことに加え、長寿でも元気に活躍できる基盤を創り、「社会保障の担い手を増やす」という視点での対策を戦略的に講じることもまた必要である。
高市内閣が重要施策として位置づけている「攻めの予防医療」は、まさにこれら二つの目的を果たすために、その充実を図るべきものである。
ではその内容についてどのように定義し、具体的な施策を推進していくべきか。この点、すべての国民が自身の健康を「自分ごと」として受け止め、健康意識を高く持ち、能動的な対応を促すような一歩踏み込んだ介入を行うことが基本となるが、「予防医療」は、発症前の一次予防、二次予防にとどまらず、発症後の個々の様々なフェーズにおける予防(三次予防)をも含む広範な概念であるため、その範囲の捉え方については、さまざまな見方が可能である。また、保険診療という観点では、現行では療養に対して保険給付するものとなっているが、発症前の予防的措置への保険適用も含み得るのかについても、さらに検討していく必要がある。
今般、「攻めの予防医療」に対する多様な見方を党として一定整理し、施策の推進力とするために「攻めの予防医療に関する関係合同会議」を設置し議論を行った。
合同会議では、一次、二次予防に加えて、発症後であっても早期に介入することで効果が期待できる予防策であって、現在必ずしも取組が十分とは言えないものについて、エビデンスが未整理のものは研究を進め、エビデンスのある取組はその実施を加速させ能動的な介入を行うべきとの認識を共有した。
その際、「攻めの予防医療」の施策は、厚生労働行政に限らず、産業政策、子育て政策等とも密接に関係するものであるため、関係省庁間の連携を前提に議論を行った。また、こうした取組が地域においても着実に、かつ持続的に実施されるためには、国、自治体、企業等の間の連携、更には地域内の様々な主体間の連携による「地域の力」が重要であることも確認した。
このように、国民一人ひとりの健康リテラシーの向上を基盤として、発症前から発症後までの各段階において能動的な介入を行い、実効的な行動変容を促すことにより、全ての国民が健やかで心豊かに生活できる社会を実現するとともに、健康寿命の延伸と社会保障の担い手の増加を目指すことが重要である。そのため、今後10年、20年後を見据え、政府で取り組むべき「攻めの予防医療」の具体的施策に関する提言をまとめることとする。
政府においては、本提言における考え方や具体的施策について、効果およびそのコストや社会的便益などの要素を踏まえ、総合的に検討の上、実行されることを期待する。
<各施策>
1 健康リテラシーの向上等
(幼少期からの健康に関する知識の普及推進)
- 健康づくりは、幼少期から取り組むことが重要で、家庭だけでなく、学校や地域コミュニティを含めた社会全体で取り組む必要がある。とりわけ若い年代から、生活習慣の改善や社会保障制度の活用に関する正しい知識の普及啓発を推進する。
- 医療関係者等の外部講師の活用を含め、学校における保健に関する指導の充実を図り、生涯にわたり自らの健康や環境を適切に管理・改善していくための資質・能力(健康リテラシー)の基礎を培う。また、地域住民の健康リテラシーの向上を図るため、健康増進支援薬局[1]を活用する。
- 個々の国民の生涯の健康を守るという視点から、既存の健診制度等のあり方について、見直す場合の意義や課題について整理し、総合的に検討する。
(こどもの目や耳の健康に関する取組の普及啓発)
- 生涯の近視を予防するため、こどもが屋外で過ごす時間を増やすことや長時間スマートフォンの画面など近いところを見続けないことなどの取組の普及啓発を推進する。また、いわゆる「ヘッドホン難聴」や「イヤホン難聴」の予防のため、10代を含む若年層への普及啓発に取り組む。
(学齢期の健康診断の在り方の見直し)
- 学齢期の健康診断の項目や実施体制などの在り方については、個人の健康管理に資するPMH(Public Medical Hub)を活用した情報連携の観点を含めて見直しを検討するとともに、将来の疾病につながりうる要因の早期発見・早期介入を進めるため、先進的な自治体で行われている小児生活習慣病予防検診等の取組を参考にしつつ、関係省庁が連携の下、地域の予防医療等を担う機関と連携し、取り組む。
(心の健康の保持のための取組の促進)
- 改正自殺対策基本法において「心の健康の保持のための健康診断、保健指導等の措置」が規定されたことも踏まえ、心の不調や自殺リスク等が認められる児童生徒を早期発見し、医療・福祉等の適切な支援につなげる取組を進める。
(健診・検診制度に関する正しい理解の促進)
-
健診・検診については、制度が複雑で分かりづらいことによる、国民の不安や重複受診が生じている。科学的根拠に基づく健診・検診に対する正しい理解と適切な受診を図るため、さらなる周知啓発やデジタル技術を活用した受診勧奨等の取組を進める。
なお、任意で個人が受ける人間ドックの項目に関し、各実施主体に対し、科学的根拠や必要性について国から情報提供を行う。
(栄養・食生活に関するリテラシー向上に向けた取組の推進)
-
疾病リスクの低減に資するため、健康的な食事の内容や適切な摂取量等について効果的に発信し、国民のリテラシー向上を図る。
また、自治体、関係団体等と連携し、広く周知するとともに、活用を促進する。
(医療機関における管理栄養士との委託契約の円滑化)
- 管理栄養士不在の医療機関が、栄養ケア・ステーションなど管理栄養士が在籍する外部機関に対して、患者への栄養指導を委託するに当たり、双方の間の契約等が円滑に進むよう、オンラインによる栄養指導の普及促進の視点も踏まえつつ、効果的な方策について検討を行う。
(睡眠対策の推進)
- 睡眠に関する研究を推進しつつ、今般医療機関での標榜が可能となった「睡眠障害」の治療の必要性に関する正しい理解の啓発を進め、睡眠障害の方が適切な医療を受けられるようにする。また、企業・団体・自治体等への睡眠ガイド等の普及啓発に一層取り組むとともに、企業による睡眠対策を含む健康投資を推進し、理解醸成を行う。
2 感染症
(予防接種の推進)
-
予防接種法に基づく定期接種について、科学的知見を踏まえつつ、製造設備の維持・強化の支援を含め、引き続き必要な方が予防接種を受けることができる環境を整備していく。
また、感染症危機対応医薬品等開発・生産体制強化戦略に基づき、ワクチンについて、複数年の支援の枠組みを含め事業予見性を確保する形で、生産体制維持支援を含めた政策を確立する。
(HIV感染症の予防推進)
- HIV感染症に対する曝露前予防(PrEP)は、HIVの感染予防に有用な手段の一つであり、国内でも対象薬が予防投与の薬事承認を受けたものの、定期的なHIV検査やその他の性感染症の検査等、服薬者の健康状態の観察が重要であり、国は、対象者が適切にPrEPを使用できるよう関係者と連携し、環境を確保する。
(下水サーベイランス等の推進)
- 感染症サーベイランス体制の強化に向けた研究の一環として、国立健康危機管理研究機構等と連携し、下水サーベイランス等の患者からの直接的な検体採取を伴わないサーベイランスを平時から実施し、下水サーベイランスを実施すべき対象疾患やその利用方法についての検討を進める。
3 がん・生活習慣病等
(就労状況等に応じた効果的ながん検診の受診勧奨等の推進)
- がん検診の受診状況や、未受診の理由、職域や自治体のがん検診提供状況を性別・就労状況に応じて調査・分析する。また、被扶養者も含めてがん検診の啓発が行えるよう、「事業者・保険者連携」を促進するとともに、就労状況等に応じた効果的な受診勧奨を推進し、がん検診受診率の向上に取り組む。さらに、がん検診の効果的な啓発を行う観点から、がん検診に関する国民向けのわかりやすい情報発信を行う。
(リスクに応じたがん検診手法の開発・実装)
- リスクに応じたがん検診として、既に有効性が確立した低線量CTを用いた肺がん検診等について、自治体検診への導入に向けて取り組む。また、リスクに応じたがん検診を更に充実できるよう、画像検査やバイオマーカー等の検査・検診手法に関する研究を進める。
(職域におけるがん検診等の推進)
- 労働安全衛生法の健康保持増進措置の枠組みを活用し、産業医等産業保健スタッフの関与のもと、職場におけるがん検診の受診勧奨及びその結果に基づく医療機関への受診勧奨の強化の具体策を検討する。
- 職場健診の機会を、本人の疾病予防に活用することが重要である。
- 職場健診の機会を活用して眼底検査を行い、緑内障への早期の対処を推進する。
(CKD(慢性腎臓病)の早期発見及び重症化予防に係る取組の推進)
- CKD(慢性腎臓病)に関する正しい知識を普及啓発するとともに、生活習慣病に関する健診、職場健診の機会等を活用した適切な受診勧奨及び健診結果に応じた早期発見・早期治療につながる体制整備を推進する。また、かかりつけ医と腎臓専門医等の連携強化及び多職種連携による療養指導等の推進を通じ、重症化予防に取り組む。
(糖尿病に関する情報発信の強化)
- 糖尿病及びその合併症予防のため、国民に対する糖尿病の理解促進、健診や医療機関への適切な受診につなげるための周知啓発を推進する。特に1型糖尿病については、先進的な自治体で行われている小児生活習慣病予防健診や学校健診で実施される尿検査などにおいて、糖尿病の疑われるこどもが、医療機関を受診し、糖尿病の診断に至った場合には、必要に応じて膵島関連自己抗体の測定を行い、適切な診断のもと早期発見・早期治療につながるように周知啓発を推進する。
(脳卒中、心臓病その他の循環器病の予防に関する情報発信の強化)
- 循環器病の予防(再発・重症化予防を含む)に関する科学的根拠に基づく国民への情報発信を強化する。また、生活習慣病に関する健診、職場健診の機会を活用し、循環器病の発症リスクの高い者について、適切なクリニカルパスの標準化及び地域連携の推進により、確実に診療につなげる体制の強化を図る。
(肥満症対策の推進)
- 肥満症は、様々な健康障害の上流リスクであることから、全世代における正しい理解と行動変容を支える環境整備、予防から医療につながる全国的な連携基盤の構築、専門的支援体制と研究基盤の強化、産業界・企業・自治体との連携を通じた生産性向上・産業育成の推進について、取組を進める。
(アレルギー疾患対策に関する情報発信の推進)
- アレルギー疾患の発症・重症化予防に関する科学的根拠に基づいた正しい知識について、国民への情報発信・普及啓発を推進する。
(特定健診・特定保健指導)
- 特定保健指導については令和6年よりアウトカム評価を導入しており、特定保健指導が対象者の行動変容を促す質の高い保健指導となるよう、効果検証等を通じた効率的・効果的な手法の検討等による実施支援を行う。
(健康日本21等による健康づくりの推進)
- 国民の健康づくりのため「健康日本21(第三次)」を推進し、健康寿命の延伸・健康格差の縮小に向け、身体活動・運動の促進のための健康増進施設の活用や、COPDによる死亡率の減少のための禁煙につながる普及啓発の取組等を推進する。また、これらの取組の推進により、運動不足・糖尿病・脂質異常症などに起因する脂肪肝の予防に寄与することも期待される。
4 歯科口腔保健
(歯科健診の推進)
- 糖尿病と歯周病との関係など、歯と口腔の健康を保つことは、全身の健康にもつながるため、医科歯科の連携、生涯を通じた歯科健診(いわゆる国民皆歯科健診)を推進する。
- このため、自治体が実施する歯科健診の拡充とともに、企業等で実施しやすい簡易な口腔スクリーニングを活用した歯科健診の仕組みを構築し、歯科健診の受診率の低い就労世代への対策を強化する。また、国民に対し、歯科口腔保健に関する更なる情報発信・普及啓発に取り組む。
(職域における歯科医療機関への受診勧奨の推進)
- 労働安全衛生法の健康保持増進措置の枠組みを活用し、歯科医療機関への受診勧奨の強化を進める。
5 認知症・認知機能障害
(認知症の人や認知機能が低下している人を含む全ての人の健康寿命の延伸)
- 認知症の人や認知機能が低下している人を含む全ての人の生活の質の維持・向上につながるよう、認知機能低下の早期診断からその後の対応(健康づくり、抗体薬投与を含めた介入、診断後支援等)を一連の流れとする社会のモデル構築を進める。加えて、健康診断への追加等が期待される中で、検査ツールの研究の現状を踏まえつつ、その研究を推進するとともに、自覚症状のない人も含めた早期の診断及び抗体薬投与の仕組みについて、その社会実装の検討に資する研究を着実に進める。難聴が高齢者の認知症の最大の寄与因子であることから、早期介入・治療を提供すべく難聴対策に取り組む。また、引き続き、運動や社会参画等の場づくり、認知症に関するリテラシーの向上に取り組む。
6 リハビリテーション
(リハビリテーションの推進)
- リハビリテーションについては、心身機能の向上のみならず、日常の生活動作の改善、社会参加の促進、国民の健康の増進にもつながるため、適切なサービスが切れ目なく提供されることが重要である。また、健康寿命の延伸に向けた予防や健康増進、介護予防の必要性が高まっており、リハビリテーションを更に推進する。
(発症後早期からの取組)
-
医療においては、特に高齢者について、発症後の入院治療によるADLの低下が、その後の日常生活の復帰に大きな影響を与えるため、
- 発症後、より早期からの切れ目ないリハビリテーションの推進や
- 多職種協働やリハビリテーション・栄養管理・口腔管理の一体的な取組の推進による患者の生活の場への復帰の促進を最優先に取り組む。
(生活期における取組)
-
介護においては、
- 地域リハビリテーション活動支援事業による、住民主体の通いの場、地域ケア会議等へのリハビリテーション専門職等の関与の推進
- 生活機能が低下している高齢者を対象としたサービス・活動C(短期集中予防サービス)の推進
- 通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション等の介護保険サービスにおけるリハビリテーションの適切な評価とサービス提供体制の強化
により地域において介護状態とならないための運動器を含む生活機能全般を視野に入れた介護予防の充実や、自立支援介護の推進、要介護状態となった方へのリハビリテーションの充実を行う。これらの医療・介護における取組につなげ、フレイル予防や健康寿命の延伸に資するよう、高齢者の特性に応じた効果的・効率的な保健事業の実施を進める必要がある。
7 ヘルスケア分野におけるデジタルの社会実装
(情報の連携)
- 乳幼児期、学齢期から高齢期までの健診等の情報をPMH等の基盤を活用して連携できるよう、環境の整備を進める。
(PHRの推進)
- 疾病の予防・健康づくりに向けて、国民の意識と行動の変容を促すため、国民に対する十分かつ的確な情報提供を行うとともに、民間PHRサービスを安全・安心に利活用できる環境づくりに取り組むことで、PHR(Personal Health Record)の利活用を推進する。
- 相互運用性や情報セキュリティを確保したPHRデータ流通の仕組みづくりを進めるとともに、PHR活用のフィールド実証を実施する。
- ヘルスケアサービスの開発支援の中で、臨床での活用を目指し、重症化予防等にライフログデータ(歩数や睡眠・食事などの日常生活における健康データ)を活用して体調の変化やリスクの兆候の早期把握や重症化前の生活改善等に繋げるなどの価値(メリット)に係るエビデンスを構築し、ユースケースの創出を支援することで、関係省庁と連携しつつ、医療機関におけるPHRを活用したヘルスケアサービスの導入を拡大する。
(その他デジタルの推進)
- ヘルスケア分野におけるAIの利活用は今後さらに重要なウェイトを占めることが想定され、予防医療分野においても、AI駆動型健康・医療基盤の一環として、日常の健康づくりや健診(検診)など様々な場面におけるAXを進める。その際、AIが適切なルールの下で利活用される環境を整備すべく、既存の規制や制度の点検に加え、諸外国におけるデータの収集及び利活用の状況や規制枠組みなどの整理を含め、大臣直轄の検討体制を整備し、AIの実装を進めていく。
- 一部の保険者が取り組み始めている健康アプリを活用した健康づくりを保険者に横展開するとともに、患者の治療離脱の予兆検知等に向けた課題整理等を行う。
- 予防医療のためのデータ利活用にも資する医療機器やSaMD等の開発を推進する。
8 企業と保険者における予防・健康づくりの促進
(予防・健康インセンティブを通じた、企業と保険者における健康投資の加速)
- データの集積や活用の推進を通じて、「予防医療モデル」の精度の向上を図るとともに、保険者による予防・健康づくりの成果の創出を促すため、データヘルスを基盤とした「予防医療モデル」を活用した保健事業の実施について、保険者に対するインセンティブ付けが重要。まずは、後期高齢者支援金加算・減算制度等への反映を念頭に健康アウトカムを検証し、エビデンスに基づく新たなインセンティブ設計を検討する。
- 予防・健康づくりの推進に当たっては、個人の予防・健康づくりに向けたインセンティブを提供する取組(個人インセンティブの取組)を推進することも重要であるため、今年3月に改正された個人インセンティブの取組に係るガイドラインの周知等を通じて、ヘルスリテラシー(健康に関する情報を入手し、適切に理解・評価して、自らの行動に活用する能力)の形成・向上に向けた取組や健康づくりへの関心を引き出す報奨の設定など、好事例の横展開等を進めていく。
- 地域の経済団体や事業主が保険者と連携して社員の健康づくりを強化する仕組み(コラボヘルス)を構築する。
- 企業・保険者からの予防・健康投資の拡大を目標に掲げ、需要・供給の両面から対策を総動員する。
- 投資家向けの健康投資に関する情報開示指針の策定や、健康経営銘柄に継続選定されている企業を層別化する新たな枠組みの創設、サプライチェーン等を含めたグループ全体での健康経営の取組の評価、睡眠などの個別施策の評価、テーマ別ベストプラクティスの選定による各社の特徴的な取組の評価など、健康経営優良法人制度の評価手法を含めた在り方を検討する。
(インセンティブ・支援や地域の関係者との連携を通じた、中小企業における健康経営)
- 中小企業の健康経営に取り組むインセンティブを拡充するため、健康経営優良法人の認定を取得した中小企業に対して加点措置を行う補助金の種類を拡大する。
- 「よろず支援拠点」等の中小企業の経営支援機関において、健康経営の取組を開始するための実践的な情報提供や好事例の紹介等を行う。また、中小企業への支援の強化のため、自治体や経営支援機関が地域の健康づくり支援機関等と連携を強化することに加え、地域の課題に応じた健康経営の支援を行うことや、中小企業が活用できる健康関連指標の分析ツールを整備する。地域の課題に応じた健康経営の推進にあたっては、将来的な自走化を見据えて民間保険会社などの実施主体の巻き込みを行う。
(職場におけるメンタルヘルス対策等の推進)
- 働き方にかかわらず、すべての労働者が最大のパフォーマンスを発揮することができるよう、メンタルヘルス対策を含む労働者の健康確保を推進する。
(ヘルスケア産業の創出・振興)
- AMEDを通じて、アカデミアによるエビデンス構築及び医学会と連携した指針の整理・策定を支援するとともに、一定の有効性が示唆されたヘルスケアサービスに対して実用化を見据えた経済的エビデンスの構築やマネタイズ(収益化)を考慮したビジネスモデル策定を含むサービス開発を支援することで、エビデンスに基づいたサービスの社会実装を加速させる。
- 質が担保されたサービスのリスト化と選択ツールを整備することで、利用者によるヘルスケアサービスの選択をサポートする。さらに、それを健康経営や保健事業、民間の健康増進型保険等へ組み込むことで、企業・保険者がサービスの効果を的確に評価した上でサービスを選択できる環境を整備する。
- 国内での社会実装を支援するため、既に愛知、仙台、九州において医療機関、大学、介護施設等の実証フィールドへスタートアップを繋ぐ地域拠点の整備が実施されているが、これに加え、専門家(経験者等)が戦略的な事業計画等の助言を行う仕組みの創設を通じた伴走支援の強化や、継続した海外アクセラレーションプログラム(専門人材による支援等を通じた、スタートアップの海外展開支援プログラム)の提供等を行うことで海外展開を後押しする。
- 運動などの日々のライフログデータに応じて保険料や特典を変動させる機能を付加した「健康増進型保険」を展開する民間保険会社の取組を拡大するため、民間保険会社がヘルスケアサービスを活用したサービス提供モデルを創出する。
9 性差・ライフステージに由来する健康課題
(ライフステージごとのリテラシー向上と行動変容のための取組)
- こどもの心身の健康については、ライフステージごとの特性を踏まえつつ、長期的な健康管理を見据えながら、こども家庭庁が司令塔機能を果たしつつ、関係省庁が連携の上、取組を推進する。
- 性と健康の相談センター事業において、思春期、妊娠、出産等のライフステージに応じた相談支援等を継続的に実施する。
- 更年期を中心とした女性・男性それぞれの健康課題について、適切な診断を通じ、必要な医療につなぐ体制の整備を進める。
- 令和6年10月に国立研究開発法人国立成育医療研究センターに設置した「女性の健康総合センター」における取組を引き続き推進するため、必要な財政支援・人的支援を行う。
- 職場健診の標準的な問診票に、女性特有の健康課題に関する質問が令和8年4月に追加されたことを踏まえ、事業者や健診実施機関に対して、女性特有の健康課題に係る問診の実施を働きかけ、その結果を受けた職場環境の整備について周知・支援を行うとともに、健診実施機関による問診結果を踏まえた必要な情報提供や専門医への受診勧奨等を推進する。
- 地域の中小企業等も巻き込んで「働き方の課題」等の解決に取り組む自治体の活動を支援する「地域働き方・職場改革」において、職場における女性の健康課題への対応の観点から、地域の中小企業等における性差に由来する健康課題への対応の推進に向けて、参加自治体の取組を一層促進するための施策の充実を図る。
- 性差に由来する健康課題への対応を推進する観点から、健康経営における女性の健康サポートデスクを設置し、当該中小企業の課題に応じた個別相談や事例紹介を行う。
(母子保健における取組)
- プレコンセプションケアの取組を進めるに当たっては、教育機関における取組と相補的に進めるとともに、企業においてライフステージに応じた健康課題に関する知識が身に付けられるよう普及啓発を図る。なお、我が国のプレコンセプションケアの概念は、WHOの定義より広い独自のものであることに留意し、発達段階に応じ「こどもの健康」の一環として必要な取組を実施する。
- 「第6次男女共同参画基本計画」を踏まえ、産後ケア事業の質の向上・量の拡大を図る。また、母子健康手帳のデジタル化や記載内容を充実させることなどを通じ、全ての妊産婦が自らの健康状況に目を向けるための環境整備について検討する。
(スポーツ分野における取組)
- 成長を支える人材が心身の健康を維持し、高い生産性を発揮できる状態を維持できるよう、運動・スポーツを活用した健康インフラの構築に取り組む。
(研究開発・人材育成の推進)
- 疾病の早期予防・介入へ貢献するため、バイオバンクにおけるゲノム・オミックス情報や臨床情報等を充実させることにより、疾病の発症リスク予測やメカニズム解明に向けた研究開発を推進する。
- 免疫研究やiPS細胞を用いた病態研究の強化等、疾患の病態解明や予防医療に資する基盤研究や実用化への橋渡しを推進する。
- 性差を考慮した研究提案に係る取組として、研究者への啓発活動を推進するとともに、AMEDの研究事業において、研究提案書の記載や評価における性差考慮の統一ルールの策定や、関連する研究公募枠の充実等に取り組む。
- 医学教育の段階から、性差を考慮した医療に関する教育を積極的に行うため、「医学教育モデル・コア・カリキュラム」の次期改訂に向けて、医師養成課程において、性差を考慮した医療に関する教育を充実するための検討を進めるとともに、大学における取組事例の周知を行う。
(女性の生涯にわたる健康課題に対応するための法的枠組みの検討)
- 今後切れ目なく政府の取組を進め、社会全体で女性の健康を支える環境を整えるため、わが党が主導しながら、基盤となる法整備を検討する。
[1]令和9年5月20日までの政令で定める日より施行予定。