地域未来戦略に向けた提言
令和8年5月28日
自由民主党政務調査会
地域未来戦略本部
2014年に第2次安倍政権において地方創生を開始して以降、全国各地で地方創生に向けた取組が行われてきた。当本部においても政府に対して提言を行ってきており、その内容が政府の総合戦略等にも反映されてきたところである。しかしながら、現状を見るに、各地の課題には対応してきたものの、人口減少や東京圏への一極集中の流れを変えるには至っていない。
昨年10月に成立した高市政権では「今の暮らしや未来への不安を希望に変え、強い経済を作る。そして、日本列島を強く豊かにしていく。」という目標を掲げており、経済成長を最優先課題としている。それを踏まえ、地方創生施策についても、個別の地域課題に対して各地方自治体が個別に対処できるよう政府が支援するという従来の地方創生の取組だけでなく、稼げる産業を地域に作り、雇用を生み出すべく、経済に重きを置いた取組を進めていくこととしている。具体的には、「地域未来戦略」を掲げ、各地に産業クラスターを戦略的に形成することを通じて、地域を支える人々の力を活かして新たな産業基盤をつくり、活力ある、稼げる地方をつくり、地域に住む方々が手取りの増加や質の高い教育の提供など、目に見える形で着実な変化を実感できるよう取り組んでいくこととしている。当本部においても、産業政策の観点から地方創生施策を進めていくことが重要であるという点を以前より主張してきており、これは政府における動きとまさに軌を一にしたものであり、時宜を得たものである。
「強い地域経済」を作っていくためには、地域に域外から稼いでくる基幹産業を作ることが重要である。基幹産業があれば、その産業を支える仕事があり、それらの従事者や家族の生活インフラを支える仕事が発生して、地域を形成する。このように、人や関連産業が集まり、地域全体が大きく発展することにより、若者や女性をはじめ人々が安心して暮らすことができるという好循環が生まれる。特に、地域の特性を活かして海外をはじめ広く地域外に販路を拡大・多様化して稼いでいくという地産外商モデルを全国に展開していくことが必要である。
そのためには、従来の地方創生の取組に加え、産業政策の観点から従来とは異なる新しい発想での取組を進めることにより、地域未来戦略を進めていくことが必要である。具体的には、政府が一歩前に出た形で大規模な投資を中長期的な視点から行うとともに、意欲ある地方自治体の独自の取組に対して重点的かつ柔軟な支援を行うべきである。また、産業振興の基盤となる道路や上下水道、工業用水、鉄道等のインフラ整備、産業分野に応じた適切な人材の育成・確保等の推進が重要である。
また、従来の地方創生の取組に必要な予算を十分に確保することに加え、クラスターの形成には一定期間を要することを踏まえ、クラスターの形成に対しては複数年にわたる財政措置を行うことが重要である。
人口構成など地方の現状を踏まえると、地域未来戦略は地域経済が発展する最後の大きな好機であると考えられることから、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に向けて取り組むとともに、地域未来戦略の策定及び実施が実効的に進められるよう、政府に対し、以下のとおり提言する。
1 クラスター計画等の策定に向けた支援の実施
地域未来戦略は、政府が一歩前に出て、総合的かつ計画的に進めていかなければならない。そのため、地域未来戦略において地方自治体が策定するクラスター計画等については、地域の自主性を尊重しつつも、地域まかせとせず、国と地方のコミュニケーションがしっかりと行われるよう、各省庁横断的な伴走体制の構築等の支援体制を整備するとともに、より一層踏み込んだ伴走体制の在り方も検討し、これまでよりも国が一歩前に出て、スピード感を持って、戦略を強力に推進することが必要である。
その際、成長戦略の17分野に限らず、観光や食、サーキュラーエコノミーも含め、トップを狙える産業や、地域の基盤となる産業をどのように見出し、育てるかが重要であるとともに、全国の英知を集めて、有識者等の指摘も踏まえつつ、地方自治体の発想を超える助言等も必要である。また、人手不足に直面している地方自治体の事務負担の軽減にも十分配慮するべきである。
地域未来戦略のとりまとめ後も、国はクラスター計画等の実施状況等を適切に把握するとともに、地方自治体や民間事業者等関係者の意見を聞き、戦略の充実・強化に向け、必要な検討を行うことが必要である。
2 クラスター計画等の実効性を高めるための支援の実施
クラスター計画等の実効性を高めるためには、地方創生の大きな担い手である民間事業者主体の取組への支援を行うことを含め、官民の連携を一層強化するほか、イノベーションクラスターを形成して、薄く広くばら撒くのではなく、中期的な視点を持ちつつ、思い切って重点的に支援を行うべきである。
そのため、地域未来交付金の十分な予算の確保に万全を期すことに加え、地域未来交付金の見直しを含め、新たな財政措置を講ずることが必要である。あわせて、使い勝手を踏まえた使途等の柔軟な運用改善も図っていく。
また、投資に加え、インフラ・人材・金融が揃うことで初めて強い地域経済の構築が実現できる。そのため、産業振興の基盤である道路や上下水道、工業用水、鉄道等のインフラ整備を後押しするほか、産業用地の計画的な整備を促進するための必要な土地利用の調整を始めとした必要な支援を関係省庁が連携して行うとともに、企業版ふるさと納税の更なる活用促進等や地域金融機関との連携、戦略的投資促進につながる新たな規制・制度改革措置等に向けた連携“絆”特区を含む国家戦略特区制度の活用が必要である。
加えて、産業政策を進めていくためには、それを支える人材が必要不可欠であるが、半導体分野・造船分野等、それぞれの戦略分野や地域が注力すべき産業によって必要な人材が異なるため、産業政策と人材育成の連携を図るべきである。
3 従来の地方創生の取組の継続
クラスター計画等の新たな取組に加えて、従来の地方創生の取組も推進していくことが、地域未来戦略全体の究極の目的である、人々が安心して暮らせる社会の実現に寄与する。そのため、政府として、東京一極集中の是正、地域交通等の持続可能なまちづくりや医療・教育等の安心して暮らし続けられる生活環境の整備、若者や女性に選ばれる地域づくり、政府関係機関の地方移転や地方への人の流れ、広域リージョン連携の促進等、従来からの地方創生の取組を着実に進めるとともに、独自のアイデアを持って前向きに取り組む地方自治体をしっかりと後押しすることが必要であり、交付金を含め、こうした取組を推進するために必要な予算を確保することが重要である。
また、特区制度についても、地方自治体の規模に関わらず、有効に活用できるようにすることも含め、地域のチャレンジを徹底してサポートしながら、地域未来戦略の推進に資する規制・制度改革を加速化することが必要である。