地方自治体に関するPT 提言(概要)

令和8年6月4日
自由民主党行政改革推進本部
地方自治体に関するプロジェクトチーム

【概要】

1.はじめに

我が国の経済成長や、食料・経済分野を含む安全保障の観点から、農林水産業・観光資源・産業投資など、地域の底力を発揮していくことが今後ますます必要であり、地域に住まう住民の暮らしを支える市町村が果たす役割は極めて大きいが、人口減少という事態に直面し、市町村が対住民サービスを維持・向上させることには困難が伴う状況が生じている。

当PTでは、市町村が担う行政サービスのうち、特に「地域住民の暮らしを支える」という観点から以下の分野について、地方行政調査会との役割分担を踏まえつつ検討を行った。

一つには、単独の市町村では人的・財政的に制約があることから、広域連携・官民連携を進める必要がある。また、事務・事業ごとの縦割りを解消して、効率的・効果的な事務執行を行うことが適当である。

例えば、複数自治体や複数分野にまたがるインフラを群としてとらえる「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(群マネ)の考え方は、医療・介護・福祉を始め他分野でも応用ができるのではないか。

そして、こうした「平時」における広域・官民・複数分野の連携は、より迅速な対応が求められる災害発生時など「有事」においても大きな力を発揮することになる。

以下、検討を行った個別分野ごとに提言を行うが、政府においては、こうした取組を他の分野でも進めていくべきである。

2.提言

  • (1)医療・介護・福祉(生活支援)

    人口減少が進行する中、地方の公立病院の経営環境は厳しさを増し、医師・看護師等の医療従事者不足などの課題に直面している。

    限られた医療・介護資源を有効に活用する方策である「地域医療連携推進法人」の仕組みを公立病院も活用し、多様な主体の連携・協力の下、地域医療の維持・確保につなげていくことが期待されるところであり、国においては、自治体病院を含む医療機関の連携の取組を後押ししていくべきである。

  • (2)災害対応

    市町村によって災害対応のレベルに差が生じることは本来あってはならず、国においては、各種ガイドラインの整備や財政措置などを講じているところであるが、市町村(特に小規模自治体)の実情もよく把握し、体制面やノウハウの共有も含め一層の支援を行うことが必要である。都道府県による支援体制の強化も重要である。

    広域連携に当たっては、近隣での連携に加え、同時被災のリスクを回避するため域外との連携も重要である。

    また、自治体と民間企業との連携を促進するとともに実効性を高める取組を進め、災害時の自治体負担の軽減と、民間企業の強みや専門性を活かした被災者支援等について、横展開を図るべきである。

  • (3)インフラ
    • ①廃棄物処理施設

      人口減少に伴い、廃棄物の量そのものは減っていくが、収集・運搬や処理施設の維持管理のコストは減らないため、人口当たりの処理費は増加する。また、施設の更新・故障や災害等で稼働できなくなった場合の対応(バックアップ)も必要である。自治体間の広域処理に加え、例えば、一定の処理能力を有する施設を保有する民間企業との公民連携があり得るところ、一部自治体では、既に委託を行ったり、企業と連携協定を締結し、バックアップが必要となった場合の速やかな委託を可能としている。これらの取組も活用し、地域の事情に応じた持続可能な処理体制の構築を進めるべきである。

    • ②社会インフラ

      市町村においては、インフラの整備・維持管理に必要な技術者の確保に困難を生じており、官民それぞれが技術者の確保に取り組みつつ、限られた技術者がより広範に活躍し、強靱で持続可能な上下水道を構築する必要がある。日本下水道事業団による地方公共団体の委託に基づく下水処理場等の建設代行や、被災した水道施設の修繕や復旧工事を行うことができる特例などについて、国は、先行事例の収集やノウハウを含めた情報提供により、地方公共団体が制度を活用しやすい環境を整えるべきである。また、国においては、特に、広域型の「水の官民連携」に取り組む自治体を重点的に支援すべきである。

      的確なインフラメンテナンスを確保するため、複数自治体や複数分野にまたがるインフラを群としてとらえ、効率的・効果的にマネジメントしていく「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(群マネ)が有効であり、国においては、「モデル地域」での検討や「群マネの手引き」(=群マネの類型や先行事例、実施プロセス、計画策定の考え方等を解説)の公表を行っているところであり、国は地方の群マネの推進に向け必要な方策を講じるとともに、必要な制度整備やインフラメンテナンスの担い手確保に係る環境整備を行うべきである。

【本文】

1.はじめに

高市政権では、「日本列島を強く、豊かに」を掲げ、「農山漁村・中山間地域をはじめ、47都道府県のどこに住んでいても、安全に生活することができ、必要な医療・福祉や質の高い教育を受けることができ、働く場所がある」ことを目指している。我が国の経済成長や、食料・経済分野を含む安全保障の観点から、農林水産業・観光資源・産業投資など、地域の底力を発揮していくことが今後ますます必要になる。

このような取組を進めるうえで、地域に住まう住民の暮らしを支える地方公共団体、とりわけ基礎的自治体である市町村が果たす役割は極めて大きい。しかしながら、人口減少という事態に直面※1し、市町村が対住民サービスを維持・向上させることには困難が伴う状況が生じている。

行政改革本部・地方自治体に関するPT(座長:田中良生、事務局長:福原淳嗣、補佐:坂本竜太郎、根本拓)においては、市町村が担う行政サービスのうち、特に「地域住民の暮らしを支える」という観点から以下の分野について、地方行政調査会との役割分担を踏まえつつ検討を行った。

一つには、単独の市町村では人的・財政的に制約があることから、広域連携・官民連携を進める必要がある。また、事務・事業ごとの縦割りを解消して、効率的・効果的な事務執行を行うことが適当である。

例えば、複数自治体や複数分野にまたがるインフラを群としてとらえる「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(群マネ)の考え方は、医療・介護・福祉を始め他分野でも応用ができるのではないか。

そして、こうした「平時」における広域・官民・複数分野の連携は、より迅速な対応が求められる災害発生時など「有事」においても大きな力を発揮することになる。

以下、検討を行った個別分野ごとに提言を行うが、政府においては、こうした取組を他の分野でも進めていくべきであり、行政改革推進本部としても取組を促す観点から制度面・運用面の課題について点検を行っていく考えである。

2.提言

  • (1)医療・介護・福祉(生活支援)

    地方の公立病院は、地域の拠点病院として地域の初期医療や救急医療を担うなど、地域医療体制を支え、「地域の命を守りぬく」という重要な役割を果たしている。一方、人口減少が進行する中、経営環境は厳しさを増しており、ヒアリングを行った西予市においても、指定管理者制度の導入をはじめとする経営改善の取組を進めてきたところであるが、医師・看護師等の医療従事者不足などの課題に直面している。

    限られた医療・介護資源を有効に活用する方策として、「地域医療連携推進法人」※2の仕組みがある。公立病院についても同制度を活用することで、多様な主体の連携・協力の下、地域医療の維持・確保につなげていくことが期待される。国においては、後掲する「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(群マネ)の取組も参考にしつつ、自治体病院を含む医療機関の連携の取組を後押ししていくべきである。

  • (2)災害対応

    災害が激甚化・頻発化する中、国民の生命・安全を守る営みそのものである災害対応は、より一層の強化が必要である。災害対応は一次的には市町村の事務であるが、市町村によって対応のレベルに差が生じることは本来あってはならないことである。防災庁の発足を契機に、我が国の災害対策が一段も二段も向上することを期待する。

    国においては、これまで自治体による災害対応が適切に行われるよう、各種ガイドラインの整備や財政措置などを講じているところであるが、市町村(特に小規模自治体)の実情もよく把握し、体制面やノウハウの共有も含め一層の支援を行うことが必要である。都道府県による支援体制の強化も重要である。

    広域連携に当たっては、近隣での連携に加え、同時被災のリスクを回避するため域外との連携も重要であり、有事に有効に機能するためには平時に円滑な事務執行体制を構築しておくことが重要である。

    また、自治体と民間企業との連携を促進するとともに実効性を高める取組を進め、災害時の自治体負担の軽減と、民間企業の強みや専門性を活かした被災者支援等について、横展開を図るべきである。自治体と民間企業の連携協定では、災害時における対応のみならず、平時における地域活性化に資するケースも生まれていることは注目に値する。

  • (3)インフラ
    • ①廃棄物処理施設

      人口減少に伴い、廃棄物の量そのものは減っていくが、収集・運搬や処理施設の維持管理のコストは減らないため、人口当たりの処理費は増加する。また、施設の更新・故障や災害等で稼働できなくなった場合の対応(バックアップ)も必要である。

      国においては、平成9年以降広域化を促進し、近年では、2050年度までの長期を見据えた長期広域化・集約化計画の策定を促すなど、取組が進められている。

      自治体間の広域処理に加え、例えば、一定の処理能力を有する施設を保有する民間企業との公民連携がありうる。一部自治体では、既に委託を行ったり、企業と連携協定を締結し、バックアップが必要となった場合の速やかな委託を可能としているところ、これらの取組も活用し、地域の事情に応じた持続可能な処理体制の構築を進めるべきである。

    • ②社会インフラ

      市町村においては、インフラの整備・維持管理に必要な技術者の確保に困難を生じており、今後その傾向はより強まることが想定される。官民それぞれが技術者の確保に取り組みつつ、限られた技術者がより広範に活躍し、強靱で持続可能な上下水道を構築する必要がある。

      下水道分野においては、現在、下水道法等の一部を改正する法律案が国会に提出されており、都道府県の主導又は自治体間の個別協議による広域連携を可能とする措置が盛り込まれていることから、法案の成立・施行を図り、都道府県や大都市による中小自治体の執行体制の補完を推進すべきである。日本下水道事業団が、地方公共団体の委託に基づき下水処理場等の建設を代行し、これまで全国で1,500箇所以上に関与している。また、令和7年には、同事業団が、被災した水道施設の修繕や復旧工事を行うことができる特例が水道法で新たに規定されたところである。老朽化対策の必要性が今後高まる中、自治体の体制確保はより困難なものとなっていくことが見込まれることから、国は、先行事例の収集やノウハウを含めた情報提供により、地方公共団体が制度を活用しやすい環境を整えるべきである。

      また、「水の官民連携」の導入に向けた取組が各地で進められているが、長期的な視点に立って自治体の体制補完を図るために有効な取組であり、国においては、特に、広域型の「水の官民連携」に取り組む自治体を重点的に支援すべきである。

      また、社会インフラの老朽化に対して、予防保全への転換を強力に進めていくうえで、地方自治体は、財政面、組織体制面ともに極めて厳しい状況下であり、的確なインフラメンテナンスを確保するため、複数自治体や複数分野にまたがるインフラを群としてとらえ、効率的・効果的にマネジメントしていく「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(群マネ)が有効である。国においては、「モデル地域」での検討や「群マネの手引き」(=群マネの類型や先行事例、実施プロセス、計画策定の考え方等を解説)の公表を行っているところであり、引き続き、自治体の取組を促進することが必要である。

      このため、市町村がインフラマネジメントを的確に行えるよう、国は地方の群マネの推進に向け必要な方策を講じるとともに、必要な制度整備やインフラメンテナンスの担い手確保に係る環境整備を行うべきである。

なお、PTの議論では、①都道府県と市町村の役割分担のあり方、②広域連携における都道府県のリーダーシップ、③既存の連携枠組みにおける課題、などについても意見が出たところである。これらの意見については地方行政調査会と連携し、同調査会における検討に資することとしたい。

別紙 地方自治体に関するPT 開催実績

【第1回】 2026年4月10日(金)8:00~@706号室 テーマ:「市町村における事務処理に関する現状と課題」
(説明)総務省
(質疑対応)総務省、消防庁、厚生労働省、国土交通省、環境省
【第2回】 2026年4月23日(木)8:00~@706号室 テーマ:「市町村における事務処理について自治体ヒアリング」
(説明)愛媛県西予市(リモート出席)、鳥取県若桜町(リモート出席)
(質疑対応)総務省、消防庁、厚生労働省、国土交通省、環境省
※地方行政調査会との合同開催
【第3回】 2026年5月14日(木)16:00~@ブロック第5会議室 テーマ:「市町村における事務処理について関係省庁よりヒアリング」
(説明)内閣府(政策統括官(防災担当))、総務省、厚生労働省、国土交通省、環境省
(質疑対応)内閣府(政策統括官(防災担当))、総務省、厚生労働省、
国土交通省、環境省

※1 ヒアリングを行った愛媛県西予市は(H16(合併時):47,034人→R8:32,529人)、鳥取県若桜町は(H12:4,998人→R8:2,555人(→2050には1,092人との予測))

※2 地域の医療機関相互間の機能の分担、連携を推進し、質の高い医療を効率的に提供することを目的とする制度(都道府県知事が認定)。参加法人等の間で、病床融通や、医薬品・医療機器等の共同購入、医療従事者の適正配置などが可能。