公務員制度に関するプロジェクトチーム提言(概要)

「優秀かつ多様な人材に選ばれる職場へ

~AI時代に向けた公務組織の変革~」

令和8年6月4日
自由民主党行政改革推進本部
公務員制度に関するプロジェクトチーム

課題認識

少子高齢化や生産年齢人口の減少、地政学的リスクの高まり、生成AIの進展などにより、行政を取り巻く環境は急速に変化している。こうした中で公務において高い水準の優秀な人材を確保し続けるため、国家公務員の採用、育成、処遇、人事管理の枠組みを時代に即した形へと進化させ、公務を「選ばれる職場」としていくと同時に、国家を支えているという働きがいと誇りをもって活躍できる環境を実現していかなければならない。

提言概要

Ⅰ 優秀な人材を獲得できる公務の実現

  • (1)多様かつ幅広い人材獲得のための採用活動の強化
    • 高校生や大学初期段階の学生など、将来的な志望者層に対する早期のアプローチを強化すること。
    • 特に人材確保が困難な技術系職員の獲得に向け、政府一体となって採用活動を抜本的に強化すること。
    • かつて公務に従事した人材を再び活用するアルムナイ採用を積極的に活用すること。
    • 中途採用について、各省庁の採用ルートの実態に即した採用戦略の立案及び広報の充実を図ること。
  • (2)人材獲得にかけるリソースの充実
    • 内閣人事局が強力な司令塔となって、各府省等を人、予算の両面で下支えできるような抜本的な対策を講じること。
    • 各府省等は、継続的かつ専門的に人材獲得に取り組む体制を整備し、採用広報や人材紹介サービスの活用などに十分な予算を確保・投入し、採用活動の質と量を大幅に向上させること。

Ⅱ 一層働きがいのある職場の実現

  • (1)公務への貢献に応える仕組みの検討
    • 高度な職務や責任を担う職員に対して相応の処遇をするなど給与制度をメリハリのついたものにすること。
    • 転勤に応じた職員に対して効果的な給与上のインセンティブを拡充するなどの措置を早急に講じること。
    • 官舎や庁舎といった物理的環境について、特に地方機関に目を配りつつ、全国規模で計画的に推進すること。
  • (2)年齢に関係なく活躍できる組織と組織の新陳代謝が両立できる仕組みの検討
    • 民間の動向を踏まえつつ、能力・実績主義を徹底した人事配置が可能となるよう、役職定年制の在り方や、60歳前後で年齢のみを理由に一律給与が7割となる措置について、法律上の期限である令和13年3月末を待たず、国家公務員の給与制度や処遇の在り方について早期に示すべく検討すること。
  • (3)人材の定着のための働きやすい職場環境の整備及び人材育成の仕組みの検討
    • 無給の休暇に加え、短時間勤務制度の対象の一般職員への拡大を検討すること。
    • 各府省等において必要なスキル・経験を言語化し、組織における人材戦略・育成方針を明確化し、共有する仕組みを整備するとともに、個々の職員のスキル・経験を言語化・共有する仕組みも構築すること
    • 上司や人事部門が職員一人ひとりのキャリア形成意識を支援しながら、人事配置の意図を明示できる体制を早急に整備すること
    • 職員が時代にあったスキルを効果的・効率的に身に着けることができるよう、職員による主体的な学びを後押しする取組を検討すること。

Ⅲ 生成AI時代における公務の再設計 - 熟練・育成・採用・組織の転換-

  • 政府全体として、「業務のAI代替可能性」「人間とAIの最適分担」などについて、横断的な研究に着手するとともに、生成AI時代における国家公務員の育成の在り方についても検討を行うこと。
  • 生成AIを活用して、業務効率化を図るとともに、戦略的人事管理の基盤インフラとなる各府省等共通の人事管理システムを整備すること。

まえがき(課題認識と対応の方向)

課題認識

現在の我が国は、国内において少子高齢化や生産年齢人口減少の予想以上の加速という課題を抱える一方、国外に目を向ければ、従来のグローバル化による市場統合の潮流に変化が生じ、地政学的リスクの高まりを背景とした経済のブロック化や再編の動きもみられる。

加えて、ここ数年の生成AIの進展はめざましく、知識創造の在り方の変革をもたらすとともに、人間との「協働」の在り方も再定義されつつある。このように行政を取り巻く環境はかつてない速度で変化しており、行政が的確かつ迅速に社会課題を解決する必要性もますます高まっている。

近年、国家公務員を志望する者は(下げ止まりの明るい兆しもあるが)減少傾向にあり、少子化や生産年齢人口減少の中、今後も優秀な若年層、技術系や高度な専門性を有する人材の獲得はますます激しさを増すと考えられる。また、人材流動化社会や時代に合わせた高度な専門性の要請の中で、新卒のみではなく多種多様な人材獲得、育成の必要性も高まる一方である。

こうした状況の中、国家を円滑に運営していくためには、公務において高い水準の優秀な人材を確保し続けることが重要となる。そのためには、公務員の処遇改善が官優遇と叩かれていたような時代とは一線を画し、優れた人材が公務を目指せるよう、公務員を巡る環境を少なくとも民間から劣後しない水準に整えていくことが欠かせない。こうした考えの下、国家公務員の採用、育成、処遇、人事管理の枠組みを時代に即した形へと進化させ、公務が若者や専門人材にとって「選ばれる職場」となり、同時に、職員が国家を支えているという働きがいと誇りをもって力を発揮できる環境を実現していかなければならない。

対応の方向

現状認識を踏まえ、当PTとして、以下のとおり提言する。

  • Ⅰ 優秀な人材を獲得できる公務の実現
    • (1)多様かつ幅広い人材獲得のための採用活動の強化
    • (2)人材獲得にかけるリソースの充実
  • Ⅱ 一層働きがいのある職場の実現
    • (1)公務への貢献に応える仕組みの検討
    • (2)年齢に関係なく活躍できる組織と組織の新陳代謝が両立できる仕組みの検討
    • (3)人材の定着のための働きやすい職場環境の整備及び人材育成の仕組みの検討
  • Ⅲ生成AI時代における公務の再設計 - 熟練・育成・採用・組織の転換-

Ⅰ 優秀な人材を獲得できる公務の実現

(1)多様かつ幅広い人材獲得のための採用活動の強化

公務が優秀で多様な人材から選ばれる存在となるか否かは、採用の在り方そのものにかかっている。若手職員へのアンケートによると、公務員として働くことへの関心が大学2年生以前に形成されている層が6割を超えているという事実は、公務員試験の受験段階より前の早期段階からアプローチを始める必要性を明確に示している。高校生や大学初期段階の学生など、将来的な志望者層に対する早期のアプローチを強化し、公務に対する理解と関心を醸成することは必須である。内閣人事局、人事院、各府省等が連携し、政府全体として統一的かつ魅力的なブランドメッセージ、「なぜ公務なのか」、を明確に発信し続けなければならない。特に人材確保が困難な技術系職員の獲得については、関係府省庁による採用活動に加え、内閣人事局と人事院が関係府省庁の声によく耳を傾けながら、政府一体となった採用活動の抜本的な強化を図るべきである。

中途採用については、即戦力人材の迅速な確保の観点で、かつて公務に従事した人材を再び活用するアルムナイ採用を積極的に活用するべきである。特に、中途採用の実態として、人事院の経験者採用試験を経た者よりも各府省等独自の選考採用を経た者が多数を占める状況にあることを踏まえ、各府省等の採用ルートの実態に即した採用戦略の立案及び広報の充実を図るべきである。民間転職で利用される媒体として転職サイト(約5割が活用)をはじめ様々な転職サービスがあるところ、転職サイト等を活用した広報による認知度拡大や採用活動、経験者採用プロセスそのものに関するわかりやすい情報発信も必要となる。加えて、実際に入省した後に、国家公務員の魅力についてポジティブ・ネガティブ両面でギャップを感じる層が増えているというデータもあり、こうしたことから、採用広報にあたっては、処遇、必要とされているスキル、身に付くスキルやキャリアパス等、実像に合わせた情報を正面から示していくべきである。

(2)人材獲得にかけるリソースの充実

上記(1)の採用活動の強化を掲げる以上、人材獲得に必要なリソースについても抜本的な見直しが不可欠である。民間企業においては、新卒・中途ともに入社予定者1人当たり採用費が約30~50万円とのデータ[1]がある一方、公務についていくつかの省庁に確認したところ、採用者1人当たりの採用広報費用は数万円から数十万程度とのことであった。国家公務員の採用活動については、政策実施の予算と比較して優先順位が相対的に低く置かれ、限られた予算と体制の中で行われてきた感が否めない。国家公務員の採用広報及びリクルーティングについては、もはや各府省等の自助努力だけでは限界が来ている。内閣人事局が強力な司令塔となって、各府省等を人、予算の両面で下支えできるような抜本的な対策を講じなければならない。各府省庁においては、採用活動を担うリクルーターの配置を含め、継続的かつ専門的に人材獲得に取り組む体制を整備するとともに、採用広報や人材紹介サービスの活用などに十分な予算を確保・投入し、魅力的な公務ブランドの定着に向け、採用活動の質と量を大幅に向上させるべきである。

Ⅱ 一層働きがいのある職場の実現

(1)公務への貢献に応える仕組みの検討

人材を獲得したあと、その人材がどのように力を発揮し、成長し、長く貢献しつづけるように育成するかも極めて重要な課題である。近年、民間では、人材を獲得するために、これまでの新卒初任給など若手の賃上げのみならず、中堅層以上の処遇改善を通じて人材の育成・定着を図ろうとする動きも見られる。公務においても、近年、人事院勧告に基づき、若手の給与を重点的に手当てし、東京で勤務する大卒職員の月給は30万円を超えた。一方で、その時々の重要課題に対応するため高度な職務や責任を担うこととなった職員に対して相応の処遇をするなどのメリハリのついた給与制度には必ずしもなっていない。「貢献した分報われる」ことは、優秀な人材を確保するために必要不可欠であり、更なる改革を進めなければならない。そのためには、職務・役割の大きさに応じた給与体系の導入に加え、人事評価を昇任・降任、昇格・降格、給与(昇給や勤勉手当等)、人事配置へ活用する仕組みを透明化する必要がある。その際、人事評価の基準を明示し、評価結果のフィードバックを徹底するとともに、評価と処遇の連動性を高めることが重要である。

また、転勤を支える仕組みについても限界が顕在化している。全国に行政サービスを提供するという使命を担う以上、国家公務員は、離島やへき地を含む全国津々浦々の職場で業務を行わねばならず、転勤は欠かせない。しかしながら、近年のライフスタイルの多様化や金銭的負担により、地方機関を中心に、転勤を敬遠する職員が増えており、勤務継続不安にもつながっている。民間では、転勤の在り方を見直し、勤務地を限定する採用や、勤務地から転居を伴う異動をする社員には金銭的な補償やインセンティブを充実する動きが見られる中で、公務においても、必要な行政サービスの水準を維持する観点から、転勤に応じた職員に対して効果的な給与上のインセンティブを拡充するなどの措置を早急に講ずるべきである。さらに見過ごせないのが、官舎や庁舎の問題である。老朽化が著しく、民間企業からの転職者からは宿舎の設備が汚すぎて信用に関わるレベルであるとの声や、周辺の民間、役所関係の施設は新設・改修が進む中、周囲の景観になじまない古びた外観と内装でバリアフリーも非対応で採用活動にも支障が出ているとの声もある。仕事へのやりがい・誇りだけでは「選ばれる組織」とはなり得ず、物理的環境の改善は、今や不可避の課題であることから、特に地方機関に目を配りつつ、全国規模で計画的に推進すべきである。

(2)年齢に関係なく活躍できる組織と組織の新陳代謝が両立できる仕組みの検討

人口減少社会において、公務組織が持続的に機能するためには、職員一人ひとりが年齢に関わらず、意欲をもって最大限に能力を発揮できるような環境を整備し、役割や活躍に応じた処遇を確保していくことが必要である。

令和3年に成立した国家公務員法改正法により、国家公務員の65歳定年引上げに合わせ、管理職には60歳で一律降任となる役職定年制が導入された。これは、組織の新陳代謝を確保するためだったと考えられるが、国家公務員の年齢階層別人員構成の現状は、組織の中核である管理職を今後担うこととなる30代・40代が手薄であり、特に地方機関において、深刻である。このままでは組織運営そのものに支障を来しかねず、円滑な組織運用、人材活用・活躍の観点から、役職定年制の在り方の見直しは急務である。また、シニア職員の給与は、60歳前後で職務は変わらなくとも年齢のみを理由に一律給与が7割となる措置を取っているが、当該措置には不満の声もあり、意欲減退を招くおそれがある。

民間では定年を65歳に引き上げる企業が増加するとともに、再雇用であっても、シニア人材の役割やスキルを評価して処遇に反映させる動きが見られる。そうした動きを踏まえながら、公務でも、採用年次にとらわれない、能力・実績主義を徹底した適材適所の人事配置により、組織の新陳代謝を図りつつ、シニア職員の職務や能力、実績に基づいたメリハリのある処遇の実現を目指していく必要がある。職員に希望をもって生き生きと働いてもらうためにも、政府及び人事院は、年齢別構成や人事管理の状況も踏まえ、法律上の期限である令和13年3月末を待たず、国家公務員の給与制度や処遇の在り方について早期に示すべく検討すべきである。

(3)人材の定着のための働きやすい職場環境の整備及び人材育成の仕組みの検討

人材の定着は、処遇改善だけで達成されるものではない。安心して働き続けられる環境と、成長を実感できる仕組みの双方が不可欠である。ライフスタイルが多様化する中、育児や介護等の休暇・休業制度の取得促進やテレワーク・フレックスタイム制の活用推進による継続的な勤務が可能となる組織文化の醸成を図るのは当然のこと、こうした事情に限らず様々な事情を抱える職員が継続して能力を発揮できるようにするための柔軟な働き方を可能とする制度の導入はすでに避けて通れない課題となっている。現在、無給の休暇による勤務時間の短縮を可能とする制度が検討されているとのことであるが、これにとどまらず、短時間勤務の制度の対象を一般の職員にも拡大することを検討するべきである。

同時に、人材が定着していくためには、個々の職員がスキルや専門性を生かし、組織において活躍し、成長している実感を持つことが重要である。そのためには個々の職場における人材育成や人事部門による人材マネジメントが必要不可欠となる。

現在の大半の人事当局の体制は、個別の人事異動の調整に追われており、こうした業務に携わる余裕がない状況にある。そのため、各府省等において必要なスキル・経験を言語化し、組織における人材戦略・育成方針を明確化し、共有する仕組みを整備するとともに、個々の職員のスキル・経験を言語化・共有する仕組みも構築する必要がある。その上で、職員一人ひとりがキャリア形成意識を持ち、上司や人事部門がそれを支援しながら、人事配置の意図を明示できる体制を早急に整備しなければならない。

今後、AIや語学・国際経験をはじめ、業務遂行にあたって身に付けていることが求められるスキルは時代に合わせてますます変化、高度化していく。そうした中で、職員が時代にあったスキルを効果的・効率的に身に着けることができるよう、人材戦略に基づく職務付与や研修機会を提供するほか、職員による主体的な学びを後押しする取組も検討すべきである。

また、中途採用職員の早期戦力化の観点からは、政策の歴史的背景、ステークホルダー構造、国会対応や意思決定の作法等、公務に固有の暗黙知を形式知化し、ケーススタディやロールプレイ等も活用した体系的な習得機会を整備することが重要である。政府内・省内横断プロジェクト等への積極的な参画を促し、意欲ある人材が、業務を通じて所属部署を超えたネットワークを形成できるよう、組織的に支援すべきである。

Ⅲ 生成AI時代における公務の再設計 - 熟練・育成・採用・組織の転換-

人口減少下において行政を持続可能なものとするためには、公務においても積極的に生成AIを活用し、生産性を飛躍的に向上させることは不可欠である。これまでも各種デジタル手法を活用し、単純・定型的業務による負荷をできるだけ軽減し、生産性の高い労働に注力する環境整備を進めてきたが、生成AIによって「できること」がより一層増えることは想像に難くない。行政課題はこれまでも複雑化・多様化してきたが、その対応は主として人の経験や知識の蓄積に依存してきた側面が大きい。しかし、生成AIが急速に普及し始めたことで、単なる知識の蓄積と収集は人間固有の価値ではなくなり、公務の在り方は従来からの連続的な改善では対応できない段階に入った。

一方で、生成AIの出力は、あくまで読み込ませたデータに基づき、確率的に導き出されるものであり、正解が明確に定義しづらいテーマや、環境が高頻度で変化するような条件下では、十分な効果を上げられない可能性がある。また、いわゆるハルシネーションの問題も避けがたい。その出力が正しいのか、また、どのような場面で生成AIを活用することが望ましいのか、人間が判断する部分は必ず残る。言うまでもなく、「それを使って何をするのか」という構想については、人間でなければなすことができない。すなわち、人間と生成AIとの「共存」というのは、「人間が何をもって価値を生むのか」、さらには「公務員とは何を担う存在か」ということを問い直すことにもつながってくる。これからの公務には、生成AIの活用を前提とした役割・能力の再定義が不可欠である。

①公務員の役割はすでに変わり始めている

生成AIの進展は、国家公務員の役割と業務構造を直接的に変えることが見込まれ、公務においても生成AIの活用が始まっている。

従来、公務は

  • 情報収集・整理
  • 文書作成
  • 制度運用
  • 窓口対応

といった業務に多くのマンパワーを投入し、政策の着実な実施が支えられてきた。しかし、これらの業務の多くは生成AIによる代替、抜本的な高度化の対象となり得る。

こうした中で、生成AIと公務員の役割分担をどう設計するか。生成AIは処理・標準化・予測に強く、文脈に適合した出力を生成することにも長けているが、出力される情報が正しいかどうかは考慮しない。一方で人間は、その前提となる文脈や価値の枠組み自体を選び取り、出力された情報が正しいとするかどうかの最終的な判断と責任を担う。したがって、公務で人間が担うべき役割は、「処理」から「意味付けと判断」へ本質的にシフトする。生成AIは人間が担うべき役割を補完することで、質を向上させ、生産性を飛躍的に向上させる。

②熟練者の定義が変わる

この変化は、公務における「熟練者」とは誰かを根底から変える。従来の熟練の要素は、知識量、前例理解、正確な運用能力に支えられていた。しかし、これらは生成AIによって容易に代替される領域となる。これからの熟練者とは、「AIを前提とした環境で公共的意思決定を主導できる者」である。即ち、求められるのは、AIに何ができて何ができないかについて理解した上で、「AIの出力を評価・批判できる力」「社会課題を構造的に捉える力」「利害を調整する力」「不確実な状況で判断し、責任を負う力」などである。熟練とはもはや「知っていること」ではない。「何を選び、どの責任を引き受けるか」という意思決定の質そのものである。

③生成AI時代における国家公務員像の明示

この転換において決定的に重要なのは、「求める公務員像を言語化し、内外に示すこと」である。府省庁ごとに、「人間が担うべき役割」「必要なスキル(特にAI活用能力や変化に対応する能力)」などを整理しなければならない。そのために、政府全体として「業務のAI代替可能性」「人間とAIの最適分担」「必要能力の再構成」などについて、横断的な研究に着手するとともに、その人材像に整合的な「育成」の在り方についても検討を行うべきである。

④生成AI時代における公務組織内の意思決定の在り方の検討

生成AIがもたらす変化は個人としての公務員の役割だけでなく組織の形にも及ぶこととなる。従来の公務組織は、係員から事務次官にいたるまでのピラミッド構造の中で、おおまかに言えば

  • 上層:意思決定
  • 中層:調整
  • 下層:処理

という役割分担をとってきた。

しかし、生成AIは下層の業務を大きく代替する可能性もあり、それにより意思決定階層も変わっていくものと考えられる。今後のAI導入による変化を見極め、再設計された公務にマッチするよう検討を始めるべきである。

⑤「基盤インフラ」としての情報システムの整備

これらの変化への対応の前提となるのが、情報システムの整備による人事機能の高度化である。生成AI時代における公務員像を踏まえて戦略的な人材確保・育成を推し進めるためには、「スキルの可視化」「キャリア・経験データの蓄積」「最適配置の支援」「育成効果の分析」といったことについて、データドリブンな人材マネジメントを行うことが不可欠となる。政府は、業務効率化を図るとともに、生成AIも活用した戦略的人事管理の基盤インフラとすべく、各府省等共通の人事管理システムを整備するべきである。

公務員制度に関するPT 開催実績

<第1回> 令和8年4月2日(木)8:30~ 党本部リバティ4号室 1、公務員制度の現状と課題について
(説明)内閣人事局・人事院
<第2回> 令和8年5月19日(火)16:00~ 党本部リバティ4号室 1、「優秀・多様な人材の獲得及び人材マネジメント上の課題」について
(講師)吉井 弘和 ソトナカプロジェクト 発起人・共同代表
2、「地方支分部局の技術系職員をめぐる現状と課題について」
(説明)国土交通省
3、「シニア職員を巡る現状と課題について」
(説明)内閣人事局
<第3回> 令和8年5月22日(金)8:00~ 党本部リバティ4号室 1、「AI時代を見据えた公務人材の育成・確保」
(説明)鈴木貴之 東京大学大学院総合文化研究科教授

[1]「マイナビ2024年卒企業新卒内定状況調査(調査期間:2023年9~10月)」によると入社予定者1人あたりの採用費平均は全体で56.8万円となっている。

また、「マイナビ 中途採用状況調査2025年版(2024年実績)(調査期間:2024年12月)」によると従業員数1001名以上の中途採用費用の実績が平均1461.8万円、採用者数の実績が平均42.1となっており、1人当たりに換算すると34.7万円となる。