水政策・国土保全の推進に向けた提言

令和8年5月28日
自由民主党 政務調査会
水政策・国土保全調査会

国民に恵みと災いの双方をもたらす水を巡っては、気候変動による水害・土砂災害の激甚化・頻発化や渇水リスクの増大、能登半島地震・豪雨や火山噴火による水インフラの甚大な被害、埼玉県八潮市における道路陥没事故の発生など、国民の生命・財産やくらし、社会経済活動等を脅かす事態が生じるとともに、新たな産業等による水需要の変化や2050年カーボンニュートラル等、対応すべき課題は深刻かつ多様化している。

このため、次の事項に関し、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」をはじめ政府の重要計画に位置付けるとともに、令和9年度予算要求等に向けて所要の措置を講じるよう、政府に対し強く対応を求める。

【予算総額の確保】

  • (事前防災対策への投資の必要性)

    事前防災対策は、国民の安全・安心の確保に加え、将来生じうる災害からの復旧費等を抑制し財政の持続可能性に寄与するなど好循環をもたらすことから、これまで以上に強力に推進することが必要。

  • (稼げる国土の構築)

    地域の生産性の向上や、民間事業者が安心してかつ計画的に企業進出や設備投資など活発な経済活動・成長投資を進めることができ、さらには雇用増・税収増がもたらされるよう、「強い経済」の実現の前提として、民間事業者にとっても災害から安全・安心な「稼げる国土」を構築することが必要。

  • (上下水道インフラの更新、耐震化等への投資の必要性)

    埼玉県八潮市での道路陥没事故や能登半島地震等の教訓、気候変動の影響、資源・エネルギー安全保障の観点を踏まえ、老朽化が加速度的に進んでいる上下水道インフラの更新、耐震化や雨水排除能力の向上、資源・エネルギー拠点化を強力に推進することが必要。

  • (物価高・人件費高などへの対応)

    今後生じうる災害や、現下の原油価格高騰等による物価高、さらには人件費の上昇に対して、事業量が目減りすることがないよう予算措置を確実に行うことが必要。

日本成長戦略の戦略分野である防災・国土強靱化の取組として第1次国土強靱化実施中期計画等で掲げる目標を確実に達成することに加え、気候変動により降雨量が増大する速度に遅れることなく対策を進めることができるよう、施工余力が十分にあることも踏まえつつ、令和7年度補正予算と令和8年度当初予算を合わせた規模を上回る予算を継続的に確保すること。

【当初予算で通常歳出とは別で措置】

民間事業者や地方自治体が事業の進み方等を予見できるようにする観点からも、第1次国土強靱化実施中期計画の予算については当初予算で、通常の歳出とは別で措置すること。合わせて、当初予算で措置するにあたり、地方の財政負担が増えることにならないよう配慮すること。

【計画的な再度災害防止対策の推進】

大規模な災害からの再度災害防止対策に関しては、気候変動の影響等を踏まえ長期に渡り計画的かつ柔軟な対応が行えるよう、事業規模・期間を含めた計画の内容を明示するとともに、国の明確な姿勢を示すためにも災害復旧予算等の充実を図ること。

【流域治水の加速化・深化】

国民の生命・財産等を守るとともに稼げる国土を構築するため、気候変動による外力の増大を踏まえ、ハード・ソフト一体となった流域治水の取組や再度災害防止対策を加速・深化させること。ダム等の整備にあたっては、過去に中止となった施設についても選択肢から排除せず、対策の充実を図ること。

【急所となる河川施設の老朽化対策】

予防保全型メンテナンスへの移行を加速するとともに、埼玉県八潮市での道路陥没事故を踏まえ、故障すれば多数の地域住民や企業の経済活動等に重大な影響を及ぼす急所となる河川施設が機能喪失に陥るリスクを低減するため、計画的に施設更新を実施すること。

【デジタル等新技術を活用した防災技術の研究開発・実装】

施設管理に携わる者の高齢化・人員不足やAI・情報通信技術等の急速な進展を踏まえ、衛星・ドローンの活用や自動化・遠隔化など施設整備・管理の省力化・高度化等を実現するため、危機管理投資・成長投資を進める観点からも、新技術の開発・実装や防災産業の振興、海外展開を推進すること。

【強靱で持続可能な上下水道事業の推進】

埼玉県八潮市での道路陥没事故等を踏まえ、事故発生時に多数の地域住民に重大な影響を及ぼす上下水道管路の更新や複線化を集中的に進めるとともに、重要施設に係る管路の耐震化を上下水道一体で推進すること。収入・職員減等の課題に対応するため、複数自治体による事業運営の一体化や、集約型・分散型のベストミックス、し尿・浄化槽汚泥の下水処理場での受入れ等による施設配置の最適化を強力に進めること。また、質の高い「水の官民連携」(ウォーターPPP)、DXを実現する技術の標準実装を進め、上下水道の基盤強化を図ること。下水道については、法改正を含む制度の充実を図ること。また、下水汚泥資源の肥料利用拡大、PFOS・PFOAへの対応を実施すること。

【流域における良好な環境の保全・創出】

流域全体で生物多様性の向上や生活の質を高めるウェルビーイングの実現を図るため、流域関係者が連携した良好な環境の保全・創出や、河川空間の利活用支援や景観と調和した河川整備等を進めることにより、地域の伸び代を活かした更なる魅力向上に取り組むこと。

【流域総合水管理の推進】

流域治水に加え、渇水対策や水力発電等の水利用、流域の環境保全や賑わいの創出に一体的に取り組む「流域総合水管理」を推進すること。統一的な考え方による地下水採取の実態把握や地下水の適正な保全と利用について実効性のある仕組みを速やかに検討すること。

【水分野の海外展開の推進】

日本の強みである水分野のインフラや技術の海外展開を強力に後押しするため、国際社会と連携し、水分野の技術等の国際標準化を図るとともに、事前防災への投資を含む「水防災の主流化」に向けた取組を進めること。

【地方整備局等の体制強化、被災自治体への支援の充実・強化】

計画的に地方整備局等の組織・定員の拡充を進めるとともに職場環境の改善を図ること。災害対応業務の即応性や危険性などを十分に踏まえ、職員の処遇改善を含めた体制の充実・強化に努めること。

TEC-FORCE等が被災自治体を迅速かつ的確に支援できるよう、建設業をはじめとした民間企業・団体、学識者及び都道府県等の多様な主体との連携、人材確保・育成、資機材整備等の取組を進めること。