「防災庁創設年における防災体制の抜本的強化に向けた提言」

令和8年6月11日
自由民主党政務調査会
災害対策特別委員会

今国会において「防災庁設置法案」等が成立すれば、年内には防災庁が創設されることになる。防災庁の設置による国民の大きな期待に応えるためには、組織、予算の充実はもとより、徹底した事前防災をはじめ、国民の命と財産を災害から守り抜くための取組を確実に行わなければならないことは論を俟たない。

当委員会では、そうした問題意識の下、計4回様々な分野のヒアリングを行ったうえで、以下の提言を行う。本提言に基づいて、国、地方自治体、関係機関、国民等が一体となって防災体制の抜本的な強化を図り、我が国が世界一の防災立国となることを期待する。

なお、インフラ整備等のハード面の取組については、「自由民主党国土強靱化推進本部」はじめ関係者と連携しながら取組を進めていく。

1.国・地方自治体による災害対応体制の抜本的強化

(1)大規模災害時の国、都道府県が主体となった災害対応の実施

災害対応は一次的には住民に近い市町村が担うが、大規模災害時には都道府県や国が市町村を支え、直接対応することが重要である。災害対策基本法や災害救助法はそのような考え方に沿っているが、現実には災害救助法が適用された場合も、実施主体の都道府県よりも被災市町村が対応することが多く、過度な負担が課されている状況にある。こうした運用を改め、都道府県が主体となり責任を持って対応にあたるほか、国もプッシュ型も含めてしっかりと支援していくよう、防災庁と全都道府県が連携強化を図るべきである。

(2)政府の災害対策本部の体制強化

大規模災害発生時には、政府(東京)に災害対策本部が、被災都道府県には現地対策本部が置かれ、両輪となって災害対応に当たっている。現地対策本部は被災地の状況や現場のニーズの把握に適しているが、被災地であらゆる支援を行う体制を維持することは困難である。このため、防災庁に置かれる災害対策本部に霞が関の各府省の職員が参集し、十分な被災者支援ができるだけの組織・人員を確保することが必要であり、体制の見直しを行うべきである。

(3)災害対応にあたる職員の確保・育成と支援

災害対応に当たる国の職員については、各府省がその能力を最大限に発揮できる災害対応体制がとれるよう、実践的な名簿を整備するとともに、定期的に研修や訓練を行うことで、顔の見える関係を構築すべきである。また、実際に対応した職員のノウハウを共有できるような仕組みを構築すべきである。

他方、防災庁に置かれる都道府県毎の担当者と自治体の担当者が日頃よりコミュニケーションや訓練を行うことで、国・都道府県間でも顔の見える関係を構築すべきである。

災害対応は過酷でもあり、職員が安心して、意欲をもってこれに取り組めるよう、危機管理用宿舎の整備のほか、処遇の改善、被災地の活動環境の整備を着実に進めるべきである。

(4)「場所」から「人」への支援への転換

これまで、発災時には避難所に避難し、そこで支援を受けることが原則とされてきたが、被災者それぞれの事情により自宅避難や車中泊を余儀なくされることもあり、こうした方々へもきめ細かい支援が求められる。「『場所(避難所)』から『人(被災者)』への支援」の考え方の下、どこに避難しても被災者一人ひとりに寄り添った支援が受けられるようにすべきであり、見回りなどの人的体制や防災DXを充実させるとともに、平時から官民が連携して災害ケースマネジメントの実施体制の構築を図るべきである。

また、要支援者が適切に避難できる環境を整えることも重要であり、低調な個別避難計画(全国における作成率14%)の作成促進を図るべきである。

(5)備蓄体制やプッシュ型支援の見直し

災害発生時に、女性、子育て世代、高齢者など性別や世代に応じた必要な物資が確保されるよう、国や地方自治体の備蓄品目や国のプッシュ型支援の不断の見直しを行うべきである。

民間においては、フェーズフリーの考え方も踏まえた備蓄の促進が重要であり、例えば道の駅に必要な防災用品(液体ミルクや紙おむつ等各世代を広く想定したもの)を扱う販売店や「防災自販機」(仮称)を設置し、住民・観光客が平時購入することでローリングストックを実施、災害時には防災用品を無償提供するなど、様々な工夫をすべきである。こうしたフェーズフリーの観点や広域的な物資支援の観点から、国は地域の資機材の整備や備蓄の支援を行うべきである。

(6)TKB(トイレ、キッチン、ベッド)をはじめとする避難生活環境の向上

災害関連死を防ぎ、被災者が発災直後から尊厳ある生活を営めるよう、指定避難所等においてTKBをはじめとする避難生活環境の確保に必要な物資・資機材を整備するとともに、官民連携による輸送や設営の担い手確保、食事についてはコールドチェーン等の活用も含め温かい食事を速やかに提供できる体制などのオペレーション体制の確立を図るべきである。また、これらの物資・資機材の標準化・規格化やユニット単位での運用、避難所に関するルールの更なる統一化についても検討を進めるべきである。

(7)国や自治体による災害情報発信の工夫

昨今の北海道・三陸沖後発地震注意情報等を通じた呼びかけにもかかわらず、国民の備蓄など災害への備えが広くは行われていない実態があり、国民の行動変容につながる災害情報発信が必要である。また、SNSやインターネットでの偽・誤情報も含め災害に関する様々な情報が溢れる中、正確な情報に基づく発信が求められる。事前防災から発災時の避難誘導、被災後の生活再建に至るまで、情報発信の相手方、広くこどもや高齢者、障害者を含む全ての国民の関心を惹きつけ、ニーズに合ったわかりやすい災害広報の在り方について、偽・誤情報対策も含めて検討し、実施すべきである。

(8)「自助」・「共助」を育む取組の推進

災害の多い我が国においては、これまでの災害の教訓も踏まえ、「公助」にのみ頼ることなく、国民一人ひとりが災害を我が事として捉え、自ら備蓄などの備えをし避難行動を発災時にはとれる「自助」や、地域で身近な人同士で助け合う「共助」の力を育む取組を進めるべきである。例えば、学校や地域における避難訓練については、「自助」や「共助」の力を育む場として積極的に活用していくべきである。また、安全な土地への居住を促すなど、まちづくりの観点からも防災の取組を推進すべきである。

2.すべての国民がその能力を活かして防災に貢献するための人材育成

(1)保健・医療・福祉の連携体制の構築

災害発生時には、DMAT、DHEAT、DWATなど保健・医療・福祉分野の専門家による様々な支援が行われるが、これらが一体となって情報共有や連携も含めた運用がなされるよう平時からの活動支援や体制整備、訓練の実施を行うべきである。また、一体的な有事対応の場の整備、船舶活用医療体制の整備、緊急支援からの早期復旧、業務継続のための取組を推進すべきである。

(2)こどもたちの学びと居場所の確保

災害発生時においてもこどもたちの学ぶ機会を失わせてはならない。学校施設等の老朽化対策や防災機能の強化等耐災害性の強化に加え、文部科学省や教職員等によるD-ESTなどを通じて、こどもたちの学びの機会の確保を支援するとともに、被災地におけるこどもの遊び場の確保や避難所における役割の付与などの居場所づくりを進めるべきである。

(3)災害時の動物救護活動の強化

災害発生時に、人とペットの災害対策を行うことは、飼い主の円滑な避難や被災地の公衆衛生の確保にも繋がる重要な取組であることから、人とペットがともに災害から避難する体制を整備するとともに、獣医師による救護活動(VMAT)を推進すべきである。

(4)民間やボランティアによる災害支援体制の強化

行政のみで災害対応を行うことは不可能であり、専門能力を持った企業やNPO、ボランティア等がともに災害支援するための環境整備が急務である。そのためには、国は、JVOADによる全国でのNPO等の活動支援・活動調整が円滑に進められるよう後押しする必要がある。

また、官民が平時から顔の見える関係を構築するとともに、発災時の役割分担の整理や訓練などを行い、発災時の円滑な運用を確保すべきである。

(5)多様な視点を取り入れた担い手の確保や育成、防災大学校(仮称)の設置

女性やこども、高齢者、障害者等の多様な視点も取り入れながら、幅広い防災の担い手の確保や育成を進めるほか、こどもの防災リーダーを育成する取組をはじめ、国民一人一人の防災意識の向上を図るなどの防災教育を充実させることが重要である。また、災害対応のリーダーとなる自治体首長への研修も必要不可欠である。

こうした目的からも、防災庁設置後速やかに防災大学校(仮称)を設置し、民間の専門的人材やボランティアも含めた体系的な研修を行い、幅広い防災人材の育成を図るべきである。

3.最先端の科学技術の活用と防災産業の発展

(1)防災DXの推進

災害発生時に、関係府省や地方自治体等の災害対応機関が持つ災害情報を集約し、効果的な災害対応に繋げるため、新総合防災情報システム(SOBO-WEB)の活用を徹底するとともに、デジタル技術を活用した迅速な被災者の状況把握や被災者支援手続の効率化・適正化を一層推進すべきである。

(2)先端科学技術の徹底的な活用

迅速な情報把握から避難生活の支援まで、災害対応には先端科学技術の活用が不可欠である。ドローン・衛星・AIを活用した新たなサービスも含め、技術開発、商品化、現場実装の好循環を生み出すために、国において、研究テーマを設定し、企業等からの提案を募り、審査を行い、実装までを一気通貫でスピード感をもって支援すべきである。また、大規模地震を引き起こす地殻変動等を可能な限り早期に捉える科学技術の研究を推進すべきである。

(3)防災産業の振興、海外展開の促進

防災技術については、認証・認定制度も活用しながら官民の需要を創出し、現場での活用を踏まえたニーズを新たな開発・商品化に反映させるとともに、フェーズフリーやデュアルユースの観点も取り込んで、防災産業を振興すべきである。

また、我が国の防災技術については、海外からも高い期待があり、ターゲット国等を明確化して、日本企業の実証事業等を支援するとともに、令和9年秋に日本で開催されるアジア太平洋防災閣僚級会合など多国間防災協力の場も活用し、海外展開を強化すべきである。

開催実績

第1回 令和8年3月18日 避難所等における生活環境の改善についてヒアリング
加藤 篤 氏(特定非営利活動法人日本トイレ研究所 代表理事)
島村 允也 氏(特定非営利活動法人日本トイレ研究所 研究員)
越智 裕文 氏(江崎グリコ株式会社 グループ渉外部技術参与)
水谷 嘉浩 氏(避難所・避難生活学会 常任理事)
第2回 令和8年4月7日 災害時の保健・医療・福祉の支援・連携体制についてヒアリング
小井土 雄一 氏(DMAT(災害派遣医療チーム)事務局長)
手塚 直樹 氏(日本赤十字社 救護班 業務執行理事)
佐藤 展章 氏(日本赤十字社 救護班 救護・福祉部長)
植田 信策 氏(日本赤十字社 救護班 医療事業推進本部参事監兼事業局救護・福祉部主幹)
田仲 教泰 氏(DWAT(災害派遣福祉チーム)センター長/全国社会福祉協議会常務理事)
蓮子 輝之 氏(DWAT(災害派遣福祉チーム)副部長/全国社会福祉協議会総務部)
第3回 令和8年5月11日 発災時における政府、民間団体の支援・連携体制及び支援者支援の現状についてヒアリング
栗田 暢之 氏(認定NPO法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD) 代表理事)
兵谷 芳康 氏(一般財団法人全国危険物安全協会理事長)
櫻庭 英悦 氏(高崎健康福祉大学特命学長補佐・農学部客員教授)
第4回 令和8年5月25日 地震予知についてヒアリング
長尾 年恭 氏(東海大学、静岡県立大学 客員教授)
平田 直 氏(東京大学 名誉教授)
災害時における動物救護についてヒアリング
佐伯 潤 氏((公社)日本獣医師会理事(動物福祉・愛護職域担当))((公社)大阪府獣医師会会長)
(帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス学科教授)
第5回 令和8年6月9日 提言(案)について