金融調査会 提言2026

令和8年5月21日
自由民主党政務調査会

序文

高市政権においては、「責任ある積極財政」の考え方の下、大胆かつ戦略的な「危機管理投資」と「成長投資」を進め、「強い経済」を実現するための取組を進めている。

まず、高市政権では、コーポレートガバナンス改革等を通じて、中長期的な企業価値の向上を推進している。企業は、自社の成長段階を考慮した上で、利益を「成長投資」(設備、研究開発、人的資本、知的財産等への投資)に適切に振り向け、その成果を従業員や投資家に還元・分配する役割を果たしていくことが求められている。そして、こうした企業の持続的な成長と成長投資の促進に貢献できるような金融機関やアセットオーナーのあり方が問われている。

また、決済サービスが、AI時代も見据えて、様々な取引や事業と一体化し、進化していくことは、中小企業を含む多くの企業・個人に利益をもたらし、経済成長の土台としても国際競争力の確保の観点からも極めて重要な要素である。

他方、こうした「強い経済の果実」をしっかり享受できる地方経済を構築するため、投資銀行サービス提供能力、地域貢献力等の「地域経営力」の強化を図り、地域金融機関に新しいメインバンクサービスを生み出す必要がある。故に、地域企業の価値向上や地域課題の解決に一層貢献していくための方策や、このための環境整備に関する施策を強力に推進していく必要がある。

一方、足元では金融業界における利用者保護等の観点から不適切な事案の発生等が見受けられとともに、「金利ある世界」への移行、サイバー攻撃の高度化等、金融・経済を巡る複合的な環境変化に適切に対応し、金融機関・金融システムへの信頼の確保に向けて対応することも急務となっている。

こうした中、本調査会では2025年11月以降、伊藤達也金融調査会長の下で、金融を取り巻く政策課題について幅広く取り上げ、上記の課題や政権の掲げる課題に対し、丁寧な議論を重ねてきた。その際には、財務金融部会をはじめとした党内の様々な会議体との合同会議や、調査会の下にある企業会計に関する小委員会、また、本年3月に新たに立ち上げた決済・イノベーション推進PTにおいて、各分野の第一線で活躍されている有識者等を講師に招くなど、機を逸することなく精力的な議論に取り組んできた。

以下では、本調査会・小委員会・PTでのこれまでの議論を踏まえ、政府において、今後、骨太の方針や日本成長戦略等に盛り込むべき施策について提言を行う。

なお、金融・経済を巡る情勢は日々変化しており、それに伴い求められる政策対応も当然に変化していくことから、本調査会では、国内外の動向を感度高く注視するとともに、今後も必要な対応について議論を継続的に進めていく。

1.「強い経済」の実現に向けた金融の役割の更なる発揮

1-1.金融機関・市場による資金供給・成長支援機能の強化

① これまでの取組・背景

2023年12月に策定された「資産運用立国実現プラン」に基づき、政府においては、金融・資本市場のメカニズムを通じて、経済の持続的な成長と国民の資産所得の増加を後押しするため、家計、企業をはじめとするインベストメント・チェーンを構成する各主体に対して様々な改革が進められてきた。

本調査会においても、従前より様々な観点からの施策を提言し、政府においてこれを踏まえた取組が進められた結果、家計の安定的な資産形成、資産運用業・アセットオーナーシップの改革、コーポレートガバナンス改革といった幅広い施策が着実に進展してきた。

高市内閣の下では、「強い経済」の実現に向け、資産運用立国を更に推進・発展させるとともに、金融の力で成長戦略を加速させるため、日本成長戦略会議の下に、「新戦略策定のための資産運用立国推進分科会」が設置された。

本調査会においても、分科会における議論の状況をフォローアップし、新戦略策定に向けた議論を行った。

② 今後の対応

高市内閣が掲げる戦略17分野等への成長投資や、日本企業の事業再編・再構築を金融面で支えていくため、金融機関、とりわけ銀行等による資金供給・成長支援機能を強化すべきである。

まず、戦略17分野について、戦略に関する政府の検討の進展に応じて、関係する官民の金融機関が情報交換、意見交換、その他必要な調整を機動的に実施できる枠組みの整備が重要である。この中には、必要に応じて、更なる投融資の促進のための政策等を官民で連携して検討する場(「官民戦略投資連携フォーラム(高市フォーラム)」(仮称))を設定すべきである。また、官民連携を強化するため、公的金融における戦略17分野への投融資方針を策定・整理するほか、官民金融機関による共同投資プロジェクトについて民間金融機関の資本規制を緩和すべきである。

金融機関の資金供給・成長支援機能の強化を後押しする観点から、大型化するM&A案件や事業再編への資金ニーズへの対応力を高めるため、一定の要件の下で、銀行等の大口信用供与等規制の限度額超過を承認することを明確化すべきである。

また、株式非公開化・カーブアウト案件についても銀行等の投資専門子会社による100%出資を可能とするため、議決権保有規制を緩和すべきである。

加えて、銀行グループによるファンド運営において、他の機関投資家の資金も積極的に活用できるよう、自己資本比率規制における他のLP投資家の出資分の取扱いについて、合理化を図るべきである。

併せて、プレイヤー及び金融商品の多様化を図り、厚みのある金融市場を創ることも重要である。

そのため、銀行がアレンジするシンジケートローンに、日本でのライセンスがない外国金融機関の参加を促進するための制度や、適切なモニタリングを前提に健全なPDファンドの参入を促進するための制度を整備すべきである。

また、適切なモニタリングを前提に、PEファンドやVCの健全な発展を図ることが重要であり、JICによるファンドへの出資機能の強化等や、銀行等によるファンドへの出資・融資に係る規制の合理化を行うべきである。併せて、機関投資家の投資判断に資するよう、PEファンド業界全体のベンチマークや情報提供を充実させるべきである。

加えて、金融機関が企業向け貸出債権を投資家に売却して新たな貸出余力を生み出すとともに、セカンダリー市場を活性化するため、貸出債権のうち売買目的のものは、信用リスクではなく市場リスクによる管理を可能とするよう、制度を整備すべきである。

なお、足元懸念されているプライベートクレジットについては、金融庁は、モニタリング等を通じて、金融機関における海外ファンド関連のビジネスにかかるリスクテイクの方針やリスク管理態勢、取組状況と、リテール向けの販売・管理態勢等を確認していくべきである。

最後に、資産運用を通じ国民が経済成長の成果を最大限享受できるよう、後述する株式投資単位の更なる引下げに向けた検討を含め、資産形成の促進に資する取組の継続的な推進や、金融経済教育や広報強化といった環境整備に努めるとともに、アセットオーナーの機能向上、資産運用サービスの高度化を促進することも必要である。

金融経済教育については、金融リテラシーに地域差があり、また、世代ごとに身に付けるべき知識・判断力が異なる。こうした違いを踏まえ、金融経済教育推進機構(J-FLEC)において、関係省庁とともに、都道府県の金融広報委員会、地方自治体、金融機関等との連携を強化し、各地域・世代に即した金融経済教育を推進すべきである。

アセットオーナーの機能向上のためには、関係省庁において、アセットオーナー・プリンシプルの周知を進め、プリンシプルの受入れを一層進めるとともに、各アセットオーナーによる運用の点検を通じて、運用の高度化に向けた取組を後押ししていくべきである。

資産運用サービスの高度化に関しては、本年4月に新たに発足した資産運用業協会による政策対応力や国内外への情報発信等の機能強化を後押しすべきである。

また、資産運用会社の運用力向上や海外基盤の確立に向けた、金融グループによる外国の資産運用会社の機動的な買収を可能とするため、銀行等が資産運用業と一般業務を兼営する外国会社を保有可能となるよう、銀行の子会社規制を緩和すべきである。

併せて、資産運用会社のミドル・バック業務や信託銀行の資産管理業務の効率化・合理化に向けた方策を検討すべきである。

1-2.市場の魅力向上・投資家保護に向けた取組

① これまでの取組・背景

(市場の魅力向上に向けた取引所の取組)

市場の魅力向上に向けた取組として、東京証券取引所(東証)は、2022年4月に行われた市場区分の見直し後、上場企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上を支えていく観点から、そのフォローアップに取り組んできた。その一環として、東証は、2023年3月、プライム・スタンダード市場の上場企業に対して、「資本コストや株価を意識した経営」の実現に向けた対応を要請しており、これまで、同要請に基づき取組を開示している企業のリストや上場企業による取組事例の公表などの施策を順次実施している。また、足下では、スタンダード市場の魅力向上等に関する議論にも着手している。

グロース市場については、高い成長可能性を有する企業向けの市場として設けられたものの、上場後5年以上経過した企業(上場後プライム市場等に市場区分を変更した企業を含む)の約半数が時価総額100億円未満に留まっているなど、高い成長性を実現できている企業が多くない状況にある。こうした中、東証は、同市場の上場企業が上場後も高い成長を続け、同市場から未来の日本経済の成長を牽引するスタートアップが多く輩出されるよう、2025年9月、同市場上場企業に対し、「高い成長を目指した経営」の働きかけを行うとともに、同年12月、同市場上場企業が機関投資家の投資対象となり得る規模へと早期に成長することを促すため、十分な助走期間や影響を受け得る企業のスタンダード市場への区分変更に係る措置を併せて講じた上で、同市場の上場維持基準を「上場5年経過後から時価総額100億円以上」へと見直した。また、東証は、好事例集の公表や機関投資家との接点づくり等の支援を実施している。

市場区分見直しに関しては、見直し後の上場維持基準に満たない企業であっても、上場維持が認められる経過措置が導入されたが、この経過措置は、2025年3月以降に順次終了しており、これまで東証は、経過措置適用会社の状況に係る情報発信や経過措置対象会社に対する働きかけなど、上場企業・投資者双方の観点から経過措置が円滑に終了するよう努めてきた。

このほか、東証は、個人投資家が日本企業に投資しやすくなる環境整備を進める観点から、投資単位が高い株式について、これまで累次の働きかけを行ってきた。こうした働きかけもあり、一定の上場企業が株式分割の決議を行ってきたところであるが、日本の上場企業の投資単位は海外と比較すれば引き続き高い水準にとどまっている。このため、東証は、2024年10月より「少額投資の在り方に関する勉強会」を開始し、2025年4月、同勉強会の報告書として東証の今後のアクションプランを取りまとめるとともに、投資単位の更なる引下げについて要請を行った。本年3月には、同要請後の上場企業の取組状況等を公表するとともに、更なる対応を促している。さらに、日本取引所グループでは、日本株の代表的な指数であるTOPIX(東証株価指数)の機能向上を図っており、今後は、プライム市場だけではなくスタンダード・グロース市場の銘柄への拡大や流動性基準による定期的な銘柄入替の実施を予定している。

(市場の公正性・透明性確保や投資者保護に向けた取組)

我が国の金融・資本市場の魅力を向上させていく上で、市場の公正性・透明性が確保されていることや投資家保護が図られていることは、その大前提となるものである。本調査会では、近年の不公正取引等の違反事案に対し、抑止力をより一層高めていく観点から、違反行為に対する課徴金のあり方等について検討を行うべき旨を昨年提言した。また、足下では暗号資産の投資対象化が進展しており、それに伴い詐欺的な投資勧誘等の喫緊の課題も生じている。こうした状況を踏まえ、本調査会では、暗号資産取引に係る投資家保護の徹底を図ることにより、市場の健全な発展を促す観点から、暗号資産を金融商品と位置付け、必要な制度整備を図ることが適当である旨を昨年提言した。

このような本調査会の提言を踏まえ、政府において検討が行われ、公開買付けに係るインサイダー取引規制の対象者範囲の拡大や課徴金制度の見直しなど、有価証券に関する不公正取引規制等の見直しを行うとともに、暗号資産取引に係る規制を資金決済法から金融商品取引法に移管し、利用者保護の充実を図るための見直しを行うこととされた。本年4月には、これらの規制見直しを含む「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案」(以下、改正金商法案)が閣議決定・国会提出された。

② 今後の対応

(市場の魅力向上に向けた取引所の取組)

市場の魅力向上に向けた取組については、東証からのプライム・スタンダード市場の上場企業に対する「資本コストや株価を意識した経営」に関する開示要請に対し、例えばプライム市場の上場企業のうち90%以上が開示を実施するなど、中長期的な企業価値向上に向けた取組を開示し実行する企業が増加している一方で、スタンダード市場の上場企業においては開示を実行する企業は半数程度に留まっている状況にある。東証は、プライム市場について、開示内容の充実や投資家との対話の質の向上といった実効的な取組の推進を、スタンダード市場については、開示率の向上に向けた更なる取組を、それぞれ行うべきである。また、スタンダード市場の魅力向上等については、足下で議論を開始したところであるが、同市場の性格や上場企業の上場目的等も踏まえつつ、引き続き議論を行うべきである。

グロース市場については、東証は、同市場上場企業に対し、「高い成長を目指した経営」の働きかけを行うとともに、好事例集の提供や機関投資家との接点づくりといった支援策を講じているところであるが、2030年の新基準の適用開始に向け、グロース市場が上場後も高い成長を続ける企業が集まり、日本経済の成長を牽引する企業を多く輩出する市場となるよう、「高い成長を目指した経営」の働きかけのフォローアップに加え、好事例集の充実やこれを活用した企業向けセミナーや機関投資家との対話イベントの開催といった一層の伴走支援の取組を行うべきである。

市場区分見直しの経過措置については、対象企業の改善期間が順次終了し、監理銘柄への指定等のプロセスが進んでいく中、東証においては、対象企業の改善計画の進捗状況のフォローアップや、基準適合に向けた取組、市場区分変更や他取引所への重複上場、非公開化等のコーポレートアクションの実施といった必要な取組の検討・実施を促すなど、投資家に不測の事態が生じないよう、引き続き必要な対応を行うべきである。

このほか、投資単位の引下げについては、東証の働きかけを受け、株式分割を行った上場企業も多いが、株価上昇の影響等もあり、依然として投資単位が高い上場企業が存在している。東証は、上場会社の負担軽減にも配慮しつつ、引き続き、単元未満株の取り扱いも含め投資単位の更なる引下げに向けた具体的な検討を進めるべきである。TOPIXの見直しについては、日本取引所グループにおいて、マーケット・ベンチマークとしての連続性の確保に留意しつつ、より効率的な運用に資するよう投資機能性の向上に向けた取組を進めるべきである。

(市場の公正性・透明性確保や投資者保護に向けた取組)

今後、改正金商法案が国会審議を経て成立した後には、金融庁は制度の円滑な施行に努めるべきである。その際、特に暗号資産取引に係る規制については、規制のエンフォースメントの実効性を高めるため、暗号資産交換業者はもとより、自主規制団体の機能の抜本的な強化を行うとともに、金融庁・証券取引等監視委員会の体制強化も図っていくべきである。また、法改正とあわせて、金融経済教育推進機構(J-FLEC)と連携しつつ、暗号資産取引も含めた金融リテラシーの向上に向けた必要な取組を推進していくべきである。

1-3.スタートアップ企業等への成長資金の供給促進

① これまでの取組・背景

世界に伍するスタートアップ・エコシステムを作り上げ、持続可能な経済成長と社会課題の解決に貢献するスタートアップを育成・創出していくことは、我が国の「強い経済」を実現していく上で不可欠であり、高市政権の成長戦略においてもスタートアップ施策は分野横断的課題の一つとして掲げられている。

本調査会においても、リスクの取れる主体の資金がスタートアップに向かう流れを強化していくため、これまで累次の施策を提言し、例えば、ベンチャーキャピタルを通じた投資を促進するための「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項」の策定、非上場株式を組み入れる公募投資信託の枠組み整備、非上場株式の流通プラットフォームの創出に向けた参入規制の緩和、株式投資型クラウドファンディングや株主コミュニティに係る規制緩和など、政府において具体的な措置を講じてきた。

足元においても、スタートアップ企業等への成長資金の供給促進に向けて、政府及び自主規制機関において、以下をはじめとする更なる制度見直しを行ってきた。

・ 投資信託への非上場株式の組入れを促進する観点から、組入比率に係る上限(原則として純資産総額の15%まで可能)超過時の対応を柔軟化(投資信託協会の制度改正)

・ 証券会社等の市場仲介者による仲介を促進する観点から、非上場株式の勧誘・取引について、原則勧誘禁止から一定の取引制度(投資者保護を考慮して制度設計された勧誘制度)に基づき勧誘・取引を行う規制体系へ転換(日本証券業協会の制度改正)

・ 特にシード・アーリー期のスタートアップに対する成長資金の供給を促進するため、国家戦略特区において、出資総額が少額であるプロ向けのベンチャーファンドについて、投資家同意の下でファンド監査を不要とする特例を措置(内閣府令の改正)

これらの施策とあわせて、1-2.で前述した東証グロース市場改革の取組を通じて、スタートアップのスケールアップを金融面から後押ししている。

② 今後の対応

ベンチャーキャピタルに対する国内外の機関投資家からの資金供給を促進するとともに、ベンチャーキャピタルからスタートアップに対する支援強化(成長のサポートやIPOに偏らない出口の多様化)を図る観点から、「ベンチャーキャピタルにおいて推奨・期待される事項」が投資家・VC間でより一層活用されるよう、フォローアップ・見直しを行うべきである。

東証の上場ベンチャーファンド市場の利用活性化を促進する観点から、上場後のポートフォリオ構築期間を延長するなど、ファンドに係る運用の自由度の向上等に向けた東証の制度改正を行うべきである。

プライマリー及びセカンダリー取引を行う投資家層の拡大を図る観点から、特定投資家(プロ投資家)への移行要件の緩和・明確化により、特定投資家による投資を促進すべきである。

この他、ディスクロージャー制度に係る規制見直しについては、3-4.で後述している。

1-4.金融機関・金融システムへの信頼の確保

① これまでの取組・背景

2025年における財産犯の被害額は、約5,000億円(前年比約1,000億円増)と、過去最多となった2024年の被害をさらに上回り、その被害の大半はSNS型投資・ロマンス詐欺を含む特殊詐欺による被害(約3,200億円)が占めている。政府においては、2025年4月に策定した「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」を踏まえ、インターネットバンキングに係る対策の強化や、預金取扱金融機関間での不正利用口座に係る情報共有に向けた補助金交付や制度改正等に向けた取組、官民一体・業界横断的な広報活動などを進めている。

また、証券会社のインターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引について、被害は2025年春頃をピークとしつつ、低水準ではあるが現在も被害が継続している。そうした中、政府は投資家への注意喚起を行うとともに、不正取引の実態や手口に関する情報発信を実施してきた。あわせて、金融商品取引業者のみならず預金取扱等金融機関等の金融機関に対しても、フィッシングに耐性のある多要素認証の必須化等を求める監督指針等の見直しを行った。

加えて、高度な脆弱性発見能力を有するフロンティアAI等の出現により、サイバー攻撃の準備・実行が従来の予想を超えて大幅に効率化・加速されるなど、サイバー脅威の性質そのものが大きく変化しつつある。そうした中、AI技術の進展が金融分野にもたらす変化やそれへの対応等について議論するため、金融庁は「AI脅威に対する金融分野のサイバーセキュリティ対策強化に関する官民連携会議」を開催した。

更には、グローバル金融危機後の低金利環境の中で、高い利回りやリスク分散を求める年金基金や保険会社などの機関投資家の投資対象として、プライベートクレジットの運用資産残高が拡大しており、近年はリテール向け商品の残高も増加している。我が国金融機関の一部においても、近年、プライベートクレジットを含む海外ファンド関連のビジネスを拡大している。こうした中、海外では、個別企業の信用不安やソフトウェア企業に融資するファンドへの償還請求が増加する事例が相次いでいる。

本調査会では、こうした金融システムの信頼に関わるリスクを取り上げ、その対応等について議論を行った。

② 今後の対応

特殊詐欺等への対策については、預金取扱金融機関間での不正利用口座に係る情報共有の枠組み構築に向けて引き続き官民が連携して取り組むとともに、不正利用口座の早期検知・迅速な凍結も含め、金融機関による取組の実効性が確保されるようフォローアップを行うべきである。こうした詐欺等の被害防止に向けた金融機関の取組について利用者の理解・協力が得られるよう広報・啓発活動を進めるなど、「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」に掲げられた施策を着実に進めるべきである。

また、インターネット取引サービスへの不正アクセス・不正取引については、証券業界のみならず、金融業界全体において、利用者を狙うサイバー攻撃の手口が不断に高度化・巧妙化しているため、今後とも国民が安心して金融取引ができる環境が整備されるよう、政府において、改正した監督指針等に基づき、金融機関を注意深くモニタリングしていく必要がある。

加えて、AI技術の進展によるサイバー脅威については、とりわけフロンティアAIモデルの実用化により、緊要性が増していることを踏まえ、政府、金融業界、ITベンダー等の関係事業者が知見を持ち寄り、官民が連携して実効性のある対策を早急に検討・推進していくことが不可欠である。その際、個別金融機関の「レジリエンス」に対する経営体制の強化といった自助、政府による公助に加え、金融ISACや金融情報システムセンター(FISC)等による金融業界の共助の枠組みを強化していくことが必要である。併せて、国際的にも、金融安定上の課題として金融安定理事会(FSB)等において、各国当局と連携して対応していく必要がある。

更には、プライベートクレジットについて、我が国金融機関においては、ポートフォリオの分散管理や投融資先の選別等、リスク管理の高度化に取り組んでおり、足元懸念されている金融商品へのエクスポージャーは限定的であるが、引き続き、金融機関における海外ファンド関連のビジネスにかかるリスクテイクの方針やリスク管理態勢、取組状況に加え、リテール向けの販売・管理態勢等を確認していくべきである。また、金融安定理事会(FSB)等において、金融システムの安定等の観点から、プライベートクレジットに係る国際的な議論が進展しているところ、政府としてこうした議論に引き続き貢献していくべきである。

2.強く豊かな地域経済をつくるための「地域金融力」の強化

2-1.地域における投資銀行サービスの拡充

① これまでの取組・背景

人口減少や少子高齢化、金利上昇など、地域金融機関をとりまく経営環境は足もとで大きく変化しているが、こうした中において、地域金融機関に求められるサービスにも大きな変化がみられる。すなわち、単に担保保証に基づく伝統的な融資のみならず、債券の発行支援等の資金調達業務(キャピタル・マーケッツ業務)、M&A(合併・買収)アドバイザリー業務、企業再生・財務アドバイザリー業務、これら業務に付随した経営支援など、一般的に投資銀行業務の一部とされているサービスが、今後、地域経済をけん引する中核企業の成長には不可欠なものとなってきており、地域金融機関は、金融・非金融の両面から、こうした幅広い金融仲介機能を発揮する必要があるケースが増加すると考えられる。成長投資への意欲を有する事業者に対しては、事業の将来性に基づく融資を行う一方で、こうした投資銀行サービスへのニーズにも応えていくことが特に重要と考えられる。

政府ではこれまで、こうした観点から、地域金融機関による地域企業の価値向上に向けた取組を促してきた。

例えば、「事業性融資の推進等に関する法律」の本年5月の施行に向けて、これまで現場の融資担当者等との議論を踏まえ、事業計画等に基づくコミュニケーションや企業価値担保権の適切な活用等に関する実務的な着眼点を整理した文書(「事業者と金融機関の信頼関係に基づく事業性融資に関する基本的な考え方」)のとりまとめ等に取り組んできた。

② 今後の対応

大手の地域金融機関に対して、外部の高度専門機関との連携を確保しつつ、投資銀行サービス提供能力の増強等に向けた取組について、中期計画等に盛り込むことを促すべき。

こうした地域金融機関の取組を後押しするため、金融庁は、銀行に関する規制の緩和(大口信用供与規制、投資専門会社に関する規制、自己資本比率規制の合理化等)を行うとともに、REVIC等に対して、人材等の仲介事業や人材育成のための業務を発展させる観点から、その機能強化について、他の業態の専門機関等もまじえて、検討することを求めるべきである。

更に、こうした能力向上を図りつつ、政府の「戦略産業クラスター計画」の実施と連携し、地域のサプライチェーンの成長・再生に関する取組への参加状況や取組事例の発信を行う大手地域金融機関を後押しするべき。

加えて、M&A・事業承継支援については、後継者不在への対応が我が国の中小企業にとって非常に重要な経営課題であるという点や、全国各地での支援態勢の構築に向けた金融機関への期待が大きいという点を踏まえ、本年4月1日に適用開始された改正後の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」等に沿った金融機関による支援態勢の整備をさらに促進すべきである。

2-2.新たなメインバンクサービスの創設

① これまでの取組・背景

地域金融機関が、地域とともに持続的に発展し、地域経済の「要」としての役割を果たすためには、有望なプロジェクトへの資金供給にとどまらず、金融・非金融の両面から、幅広く金融仲介機能を発揮する必要がある。また、デフレ脱却を目指す上では、成長投資への意欲を有する事業者に対しては、事業の将来性に基づく融資により、そうした資金ニーズに応えていくことが特に重要と考えられる。

例えば、前述の「事業性融資の推進等に関する法律」の本年5月の施行に向けた取組に加え、昨年12月には、地域金融機関をはじめとする様々なプレイヤーが、連携して、地域金融の地域経済に貢献する力(=「地域金融力」)を発揮していくため、①地域企業の価値向上への貢献・地域課題の解決、②地域金融力発揮のための環境整備からなる、「地域金融力強化プラン」を策定した。

② 今後の対応

金融庁が毎年実施している企業アンケート調査においても、メインバンクが経営上の課題や悩みを聞いてくれると回答している企業の割合は足下で増加するなど、金融機関による取引先等の課題解決に向けた姿勢には一定の変化がうかがわれる。こうした地域金融機関の改善は、引き続き、継続していく必要がある。

具体的には、金融機関の営業担当者と取引先等との間で、事業の将来性について事業計画等に基づき認識が共有され、将来キャッシュフローの見通し・資金使途等に見合った適切な返済計画・融資手法等が選択されるとともに、事業の進捗について継続的に認識が共有されていくことが求められる。また、事業計画等から乖離した場合には、早期に(事業計画等の見直し含め)経営改善に向けて協議・支援することが重要である。このため、政府は、現場の融資担当者の意見を踏まえつつ、事業性評価のノウハウ・知見等を業種ごとに整理した「業種別支援の着眼点」や企業価値担保権の活用事例の把握・周知等も通じ、営業担当者の専門性の向上・人材の育成を後押ししていくべきである。

更に、金融機能強化法等の運用において、資金交付先等における事業性融資、経営支援に関する機能の拡充を重視するなど、単なる優良事例の紹介にとどまらず、金融行政において、地域金融機関に適切なインセンティブを与える体制を整備すべきである。

一方、こうした地域金融機関の取組にもかかわらず、その融資の大宗が、成長企業ではなく、担保・保証をつけやすい企業に対して行われる状況がみられるとの意見も多い。このように、現在の地方経済や地域金融機関が直面している環境を踏まえれば、地域金融機関は、そのビジネスモデルを、単に、個別の持続的長期的な資金提供にとどまらず、DX・事業承継・M&A・人材支援等を通じて地域資源を再編し、成長企業を育てる「面的な地域変革型メインバンク」に転換していく必要がある。

強い地域経済の構築や、魅力ある地域資源を活かした地場産業の成長支援を通じ、政権公約である「日本列島を強く豊かに」を実現するため、政府は、地域金融機関におけるこうした新たなメインバンク機能の一層の発揮を促すべきである。

こうした観点から、「地域産業成長プラン」(「地域産業クラスター計画」及び「地場産業成長プラン」)を踏まえつつ、中小企業庁と金融庁が連携し、地域金融機関の参加も得て、地域ごとに伴走支援・再生支援の現状・課題を可視化しつつ、特に重点的に支援を行うべき事業者に対して、地域金融機関を含む関係機関のタイムリーな伴走支援・再生支援を実現する、県別「地域未来金融アクションプラン」(仮称)を策定し、「成長型再生」を後押しすべきである。

2-3.地域金融機関の「地域経営力」の抜本的強化(地方創生やローカル・ゼブラ企業等との連携)

① これまでの取組・背景

地方創生に関わる様々な支援策を通じて、宿泊施設、カフェ、特産品販売、子育て支援など、地域における新たなチャレンジは各地に広がってきたが、その多くは、引き続き、補助金や寄付に依存し、資金や人材の調達に苦しんでいる。また、これまで地域に根付いてきた、外食、小売り・流通、教育・子育て支援などの地域の暮らしを支えるサービス業においても、コロナ禍により担保資産が枯渇したり、人口減少による市場の縮小によって、自立的な資金や人材の調達が難しくなっており、その事業承継を諦め廃業を進める動きの拡大は、地域の人口減少を更に加速化させつつある。

こうした状況を改善するためには、個別事業への「点」での支援ではなく、事業間における不動産等資産の集約・連携や街づくり全体への面的支援など、地域の事業者が協力してエリアの未来への投資を促す枠組みを形成する必要がある。こうした街づくり等の観点から支援に「面」で取り組むことによって、複数事業の再生やまちの活性化による個別事業の再生・活性化に成功する事例は、徐々に生まれつつある。

本調査会においても、地域金融機関から官民連携のまちづくりへの参画事例の紹介があったところ、そうした事例はこうした方向性に沿うものである。

また、一定の投資収益の確保を目指しつつ、社会的課題の解決を図ろうとする投資手法であるインパクト投資は、地域を含めた社会経済の持続可能性を確保していく上では重要である。このインパクト投資の活用促進に向けて、2023年11月、官民の幅広い関係者が参画する「インパクトコンソーシアム」が立ち上げられ、インパクトの測定・管理に資するデータ・指標の整理やIMM(Impact Measurement and Management、インパクト測定・マネジメント)といった手法の活用の仕方等について、精力的に議論が行われてきた。

他方で、こうして検討されてきたインパクトの測定・管理方法については、情報共有から実際の活用や普及のステージに移りつつある。政府は、こうしたインパクト投資に関するノウハウを自ら率先して活用すべきである。

② 今後の対応

金融庁、中企庁等は、新たに関係業界や有識者等による検討会を立ち上げ、地方創生の下に立ち上がってきた事業や、地域の暮らしを支えるサービス業を、街づくりや地域経営等の視点から「面」的に支える仕組みに関して、金融機関に期待される役割を整理し、政府による支援策を検討すべきである。

例えば、個性ある商店街を通じた街づくり、温泉等の観光を核とした街づくり、特定の物産やサービスなど事業者を核とした街づくり、地域の豊かな自然を核とした街づくり等各エリアの特性を踏まえた様々な類型の事業に対して、各事業者の資産を集約し効率的な運用を行う手法や、デジタル技術や非財務KPI・インパクト指標による効果的開示を活用して地域の支援に関心の高い者から低い調達コストで資金を確保する手法、ローカル・ゼブラ企業に必要な成長資金を確保する手法、取組当初のチーム組成等、地域事業を「面」で支える新たなファイナンスのノウハウや手法を、地域金融機関が関与しながら、確立することを促進すべきである。

あわせて、金融庁、内閣府等は、「PPP/PFI推進アクションプラン」も踏まえつつ、内閣府及び国土交通省が推進するPPP/PFI地域プラットフォームへの地域金融機関の参画を促し、地域金融機関の官民連携によるまちづくりに向けた案件形成力の強化を後押しすべきである。

さらに、金融行政(機能強化法の運用等)等におけるインパクト指標の活用やローカル・ゼブラ企業への支援の方策を検討すべきである。

本調査会においても、地域の暮らしを支え新たな需要の取り込みにも有効なインフラの整備に向けて、官民連携のあり方や、インフラファイナンスに対する地域金融機関の機能強化について、研究・検討を深めていく必要がある。

2-4.財務局を含めた検査・監督体制の見直し

① これまでの取組・背景

我が国では、バブル崩壊による資産価格の急落を主要因として、多くの金融機関では、貸出先の債務返済能力が著しく低下し、多額の不良債権が発生するに至った。こうした中で、金融監督庁は、金融機関の裁量の余地が少ない一律の基準を策定し(検査マニュアル別表)、自己査定結果の検証を進め、2005年には、主要行の不良債権比率について半減目標を達成するなど、当時、政府のこのような対応は一定の成果を挙げたと考えられる。

しかしながら、その後、人口減少や少子高齢化の進行、技術革新を通じた新たな競争の登場など、金融機関の経営環境は徐々に変化してきた。こうした状況を踏まえ、2018年、金融庁は、「検査・監督基本方針」を公表し、最低基準検証に留まらず、健全性についての将来を見据えた分析を行い、金融機関のビジネスモデルの持続可能性を検証する動的な監督に取り組んでいく方針を掲げた。さらに、金融庁では、当該方針の下で、検査マニュアルの廃止や、「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」の公表、早期警戒制度の見直し等、金融機関の検査・監督を巡り、様々な取組を進めてきたところである。

このように、2018年に、検査・監督の在り方が大きく見直されたが、その後、財務局も含め、新型コロナウイルス感染症拡大による立入検査の抑制や、FATF(金融活動作業部会)第4次対日相互審査の結果を踏まえたマネロンターゲット検査への集中的な取組などの中で、信用リスクや市場リスク等他のリスクに対する検査のOJTの機会は減少している。一方で、高度化するサイバーリスクへの対応等新たなリスクに柔軟に対応するモニタリングについても、様々な手法を駆使しつつ、進化をすすめていく必要がある。

② 今後の対応

足元では、資本参加先を含む一部の協同組織金融機関において不正融資や法令違反が明らかになったほか、経済・市場の変動への対応に加え、高度化するサイバー攻撃やマネロンへの対応等が求められるなど、金融機関をとりまく経営環境は大きく変化している。こうした状況を踏まえ、政府では、財務局を含めた一層の人材育成・人員増、モニタリング手法の高度化等により、地域金融機関に対する検査・監督機能の強化を図っていく必要がある。

具体的には、経営管理態勢や法令等遵守態勢等の深度ある検証を実施するための情報受付窓口等の活用や、資本参加先が策定する経営強化計画のフォローアップ等の継続的な確認、早期警戒制度運用の更なる高度化等を実施すべきである。また、新たに金融庁に設置した「協同組織金融モニタリング室」も活用し、財務局との緊密な連携のもと、事案に応じて立入検査を有効に活用していくべきである。

更に、検査事案(問題発見が遅れた事案、利用者保護上の問題事案等)を、事後的に検証し、検査手法の改善等を図る独立した常設部署を設置することにより、検査の質向上に向けたPDCAサイクルを構築すべきである。

こうしたモニタリングを実施していくうえで、人材の育成も重要な課題である。実践的な着眼点(研修資料)の作成、「協同組織金融モニタリング室」への出向等の形で財務局からの研修生の受入れ等を図る。また、上記の検査の質の改善に向けたPDCAの構築等を踏まえ、金融庁及び財務局における体系的中期的な検査・モニタリング人材の育成・確保(専門検査官制度の導入等も含む)の施策を充実するべきである。こうした検討及び財務局全体における業務改革の進捗状況を踏まえつつ、財務局における金融人材の配置、人事交流等のあり方についても、金融庁と財務省とが共同で検討を行い、明確にし、それに基づいて、従来の機構定員のあり方にこだわらず、金融庁及び財務局のモニタリングに必要な人員の確保を図るべきである。

2-5.協同組織金融・中央機関の在り方

① これまでの取組・背景

会員・組合員の出資による協同組織の金融機関である信用金庫・信用組合は、相互扶助の理念のもと、会員・組合員や地域のニーズに応えるなど地域密着型の経営を行い、地域の「要」として地域金融力を発揮してきた。

他方、信金中央金庫や全国信用協同組合連合会といった全国の金庫・組合を総合的に支援する中央金融機関は、各金庫・組合の事業者支援能力の強化に向けた各種経営・業務支援や、業界全体の信用力の維持・向上を目的とした資本支援制度の運営等を実施してきたほか、多くの金庫・組合が利用する共同システムの運営や、業界内外を繋ぐ通信ネットワークの構築等の業界インフラの整備・運営も行うなど、厳しい経営環境下においても、各金庫・組合がその役割を果たせるよう下支えしてきた。

こうした中、信用金庫・信用組合の足許の経営状況は、全体として、金利上昇に伴い利鞘が下げ止まり、収益にも増加傾向が見られるほか、損失吸収力となる自己資本比率は、最低所要自己資本比率を十分に上回って推移するなど健全性を維持している。

しかし、人口減少を背景として、個人預金量が減少する信用金庫・信用組合の数は増加する数を上回りつつあるほか、昨今の金利上昇に伴い有価証券評価損は拡大傾向にあるなど、引き続き、厳しい経営環境下に身を置くことが予想される。

そのため、信用金庫・信用組合が、地域の「要」として持続的に地域金融力を発揮していくためには、今後、人口減少・少子高齢化の進行や経済・市場の変動、また経営基盤を大きく損なう程の大規模災害の発生など絶えず経営環境が変化していくことが見込まれるなか、抜本的な経営改革を含む将来の収益性・健全性を見据えた対応が求められる。また、一部の金融機関における昨今の不祥事の発生等も踏まえ、経営管理態勢や法令順守態勢等の見直し、更なるガバナンス発揮に向けた対応等(「自助」)にも不断に取り組んでいく必要がある。

② 今後の対応

人口減少・少子高齢化が進行し、地域企業の人手・後継者不足が深刻化する中、今後、地域金融には、地域企業の経営課題に、これまで以上により積極的に対応していくことが求められる。例えば、地域企業と長期・継続的な取引関係を築く中で、予兆管理、早期の企業再生・経営改善支援等を進める等、メインバンク機能を強化することが重要である。また、各金融機関のこうした取組を、中央機関はしっかりとバックアップすべきである。

他方、金融庁は、信用金庫・信用組合を含む地域金融機関による自助をより強固なものとするための対応(「公助」)として、早期警戒制度の見直し及び体制強化等によるモニタリング機能の強化や、後述(2-6.)の金融機能強化法改正による資本参加制度・資金交付制度の期限延長・拡充等の地域金融機関が将来にわたって十分な経営体力・収益基盤を確保できるようにするための環境整備等について、地域金融力強化プランの中で対応を進めているところであるが、モニタリングの結果等を踏まえ、引き続き、信用金庫・信用組合等の協同組織金融機関が地域金融力を持続的に発揮していくための具体的な施策を検討すべきである。

また、将来の人口動態等を踏まえると、相対的に規模の小さい協同組織金融機関を取り巻く環境は、今後、ますます厳しいものとなることが想定される。協同組織金融機関は、各地域においてその役割を果たす存在であることが期待されているため、各金融機関による「自助」では存立基盤の確保が難しい場合には、早期是正措置の発動や国の資本参加等、いきなり「公助」に移行するよりも前に、中央機関が、改正優先出資法を活用した柔軟な支援を含む上述のような各種指導・支援を国と連携しつつ適切に実行したり、各金融機関共通の課題について業務効率化と負担軽減を図るための「共同化」のプラットフォームを提供するといった役割(「共助」)をより積極的に果たすべきであり、このことを可能とする組織体制の見直しや構築を行うべきである。

2-6.金融機能の強化に向けた取組

① これまでの取組・背景

人口減少等を背景として、地域金融機関の経営状況には二極化の兆候が見られる。地方創生実現に不可欠な地域金融力を強化するためには、地域金融機関自体の経営基盤強化に向けた環境整備を強力に推進すべきである。このため、本調査会では、2025年の提言において、政府に対し、2026年3月末に申請期限が迫っていた資金交付制度の延長や使途の拡大なども含めた抜本強化のほか、南海トラフ地震を含めた大規模災害に備えるため、同様に申請期限が迫っていた資本参加制度の延長など、地域金融力発揮のための環境整備を強力に推し進めるよう求めてきた。

この資本参加制度と資金交付制度の期限延長・拡充等については、本調査会として複数回にわたり審議を行い、昨年12月に金融庁より公表された「地域金融力強化プラン」において、地域金融力発揮のための環境整備に向けた主要施策として盛り込まれた。また、これらの措置を含む「金融機能の強化のための特別措置に関する法律等の一部を改正する法律案」については、本調査会において財務金融部会と合同で審査を行い、本年2月に閣議決定・国会提出され、本年4月に成立した。

② 今後の対応

政府に対しては、同法の円滑な施行に向けた取組を求めるとともに、本調査会も必要なフォローをしていく。また、地域の「要」たる地域金融機関は、その置かれた状況や役割を踏まえ、平時から大規模災害等への備えを怠らないようにするとともに、有事には、被害や影響を受けた地域企業に丁寧に寄り添い、資金繰り支援をはじめとするきめ細かな対応を徹底することを通じて、地域を支える役割を果たすべきである。こうした観点も含め、地域金融機関が、地域金融力の強化に向けて、経営基盤の強化を図る必要があれば、資本参加制度(本則及び災害特例)や資金交付制度の活用も含め、取り得る様々な選択肢を吟味し、フォワードルッキングに対応していくべきである。

3.企業会計に関する小委員会

3-1.コーポレートガバナンス改革の推進

① これまでの取組・背景

2015年のコーポレートガバナンス・コード適用開始から約10年が経過し、プライム市場上場企業の大宗が3分の1以上の独立社外取締役を選任する等、コーポレートガバナンス改革には一定の進捗が見られる。他方で、コードは中長期的な企業価値の向上のための自律的な取組を企業に促すという性質を有するものであるにもかかわらず、コードの形式的な対応にとどまり、コードの趣旨や精神に照らして、中長期的な企業価値の向上に向けた取組を検討・実践していない企業が多いとの指摘もある。

これまでも、金融庁は「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム2025」を策定し、関連する施策を遂行する等、コーポレートガバナンス改革の実質化を促進してきた。また、本小委員会においても、政府及び東京証券取引所に対し、企業や投資家の形式的な対応をより実質的なものに変えていくための施策や企業の稼ぐ力を更に向上させるために必要な措置の検討を進めるように求めてきた。現在、金融庁及び東京証券取引所では、5年ぶりのコーポレートガバナンス・コードの改訂について検討しているところであるが、本小委員会においてもコードの改訂を議論の中心に置きつつ、数次に亘り議論を行ってきた。

② 今後の対応

直近では企業業績は好調に推移しており、2024年度の経常利益は2013年度比で2倍近い131兆円となっているものの、研究開発投資等を欧米と比較すると、まだまだ十分でない現状にある。中長期的な企業価値向上ひいては日本経済の成長のためには、高市政権が掲げる「成長投資」を企業が積極的に行うことが、極めて重要である。特に、成長投資の一環としての賃上げを含めた人的資本投資や知的財産投資等の拡大が喫緊の課題であるほか、地域社会への投資という観点も重要である。また、現預金を含めた金融資産を成長投資へ有効活用することも重要な観点であると考えられる。

これらを踏まえた上で、金融庁及び東京証券取引所は、成長投資促進のためのコーポレートガバナンス・コードの改訂を早期に進めるべきである。その際には、コードの目的は、短期的なものではなく、中長期的な企業価値の向上であることを強調すべきである。合わせて、東京証券取引所においては、コーポレートガバナンス・コードの改訂の趣旨にあわせて、コーポレートガバナンス報告書の内容を見直していくべきである。

また、コーポレートガバナンス・コードに記載されている内容の実効性を持たせる観点から、金融庁と東証は、改訂されたコーポレートガバナンス・コードの実施状況を分析・評価するとともに、グッドプラクティスを公表するなど、浸透のための施策を検討すべきである。

「スチュワードシップ・コード」の趣旨に沿った対話やスチュワードシップ活動に関する情報提供が適切に行われているかの確認を含め、上場企業や機関投資家の両コードの取組状況をフォローする。

3-2.有価証券報告書の定時株主総会前開示に向けた環境整備

① これまでの取組・背景

有価証券報告書には投資家の意思決定にとって有用な情報が豊富に記載されていることから、投資家との建設的な対話等のために、定時株主総会の3週間以上前に開示されることが最も望ましい。昨年3月の金融担当大臣からの要請を受け、2025年3月期決算企業のうち、有価証券報告書を定時株主総会前に開示した企業は57.7%となり、前期に比して著しく増加したものの、8割の企業が1日から2日前の開示に留まっている。金融庁が行ったアンケート結果を踏まえると、2026年3月期に総会前開示を実施する上場企業は77%程度となる見込みとなっている。これらを踏まえ、金融庁は、法務省等と連携し相談窓口の設置や勉強会の開催等、前向きに取り組む企業を支援する施策を進めている。

② 今後の対応

今後総会前開示を更に推進して、3週間以上前の開示を達成するためには、企業の準備時間の確保、企業の業務負荷の軽減及び十分な監査時間の確保が課題である。この課題を解決するためには、単に企業の有価証券報告書の作成スケジュールを前倒しするのではなく、定時株主総会の開催の後倒しが有効な手段となり得る。また、企業負担の軽減のために、開示項目の簡素化を進めるとともに、金融商品取引法上の有価証券報告書と会社法上の事業報告等の一本化・監査の一元化という制度上の対応は極めて有効である。

これらを踏まえ、法務省は、有価証券報告書と事業報告等の一本化・監査の一元化を含んだ会社法改正法案の速やかな国会提出と、関連改正箇所について、2028年3月期を目標としつつ、早期の施行を図るべきである。監査の一元化と合わせて、監査の期間を確保した上での総会前開示を進めるため、会社法監査の期限に係る義務を緩和することも検討すべきである。また、金融庁においては、引き続き上場企業の総会前開示に向けた取組状況をフォローするとともに、各企業の取組を丁寧に支援する等により定時総会前開示の機運醸成に努めるべきである。

3-3.サステナビリティ情報の開示・保証

① これまでの取組・背景

投資家が投資判断を行う上で重要な情報であるサステナビリティ情報が、比較可能性が担保された状況で開示されることは重要であり、またその情報の信頼性を確保し投資家保護を図る観点から、第三者による保証制度も重要である。これまで、本小委員会においては、国内外の動向も踏まえつつ、サステナビリティ情報の開示・保証に関する論点について議論を重ねてきた。また、金融庁より、検討の結果として、本年1月に金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」報告が公表されるに至った。同報告の中では、グローバルな投資家との建設的な対話を志向するプライム市場上場企業の、時価総額の大きな企業から順次サステナビリティ開示基準に準拠した有価証券報告書の作成を義務付けること、開示基準の適用開始時期の翌年から保証を義務付けること、保証業務提供者に対し登録制を導入し、監査法人・監査法人以外のいずれの者も登録要件を満たす場合は参入可能な制度とすること等が提言された。

② 今後の対応

今後、同報告の内容も受けた関連法案が国会審議を経て成立した後には、金融庁は、諸外国の制度の運用状況を含めた国際的な動向や国内企業及び保証業務提供者の準備状況にも注視しつつ、制度の円滑な施行に努めるべきである。その際、保証業務提供者による保証の質を確保するために、独立性を含む保証業務提供者の業務管理体制の状況を注視するとともに、保証業務の責任者である業務執行担当者において適切な知識・経験・能力があることを担保できるよう制度の運用を図るべきである。また、具体的な保証基準等の検討にあたっては、日本公認会計士協会等の関係者と適切な連携を図っていくべきである。

併せて、成長投資の一つである知的財産等の無形資産への投資については、政府において企業の積極的な開示を促していくべきである。

3-4.スタートアップ企業等への成長資金の供給促進に向けたディスクロージャーに係る対応

① これまでの取組・背景

スタートアップ企業への成長資金供給の促進のためには、投資家保護に留意しつつ、発行体の開示負担にも配慮した開示制度の整備が重要であることから、これまで党や政府の会議等において累次議論が進められてきた。本調査会でも資金調達に必要な開示に伴うコストの分析・調査を行い、その結果も踏まえ、有価証券届出書の提出免除基準等の見直しを図るべきことが提言された。また、金融庁より昨年12月に公表された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告では、有価証券届出書の提出免除基準を1億円から5億円に引上げ、5億円以上10億円未満の募集については、より簡易な様式による有価証券届出書を利用可能にすること、特定投資家私募(プロ向け私募)の勧誘の相手方に、特定投資家の要件を満たしているが移行手続を行っていない者(潜在的特定投資家)を追加すること等が提言された。

② 今後の対応

今後、これらの内容も踏まえた関連法案が国会審議を経て施行された後も、政府においては、実際の制度の利用例等も踏まえつつ、成長資金の供給の促進に向けた制度のあり方について継続的に検討を行うべきである。あわせて、特定投資家私募で調達した際に発行された有価証券のセカンダリー取引を活発化することは特定投資家私募の制度利用促進にも寄与することから、セカンダリー取引活発化のための措置を検討し、実施していくべきである。さらに、資金調達をする場合に規制がかかる端緒となる勧誘の概念が過度に広すぎないかという点についても検討を行い、規制範囲の適正化を図るべきである。

3-5.監査法人・公認会計士を巡る課題

① これまでの取組・背景

監査法人・公認会計士は、「資本市場の番人」として、監査業務を通じて、企業の適正な情報開示、そして健全な企業活動を支える重要な役割を担っている。信頼性が確保された企業の情報開示は、企業と投資家の建設的な対話の前提となるものであり、監査法人・公認会計士による監査業務が適切に実施されることによって、建設的な対話が促進され、企業の持続的な成長や企業価値向上等に向けた資金の流れの創出に繋がっていくことになる。

こうした監査法人・公認会計士を巡っては、公認会計士の合格者数は堅調に増加している一方、監査法人に所属する公認会計士の数は緩やかな増加にとどまっており、監査業務以外の業務に従事するいわゆる「監査離れ」が長期にわたり進んでいること、上場会社の監査の担い手は大手監査法人から中小監査法人へと裾野が拡大していること等変化が生じている。こうした変化を踏まえ、本小委員会では、監査業務の魅力向上及び中小監査法人の監査品質の向上、それに向けたキャパシティビルディングについて、数次に亘り議論を行ってきた。

② 今後の対応

日本公認会計士協会においては、公認会計士の志願者数、合格者数と比較して、監査に従事する者の数があまり増えない現状を踏まえ、公認会計士の本来業務である監査の魅力向上に向けた施策を検討すべきである。また、中小監査法人を含めた監査の担い手における監査の質をより一層向上させるように努めるべきである。特に、適格な中小監査法人の人材育成やデジタル化等の経営基盤強化を支援するキャパシティビルディングの取組を焦眉の急として推進すべきである。そのためには、日本公認会計士協会においては、関係機関と連携し、監査業務に関連する共通IT基盤・プラットフォームの構築に取り組むべきである。さらに、監査品質を向上するために、経営基盤を強化し規模の拡大を目指す中小監査法人に対して、中小監査法人間のネットワーキングの強化等も、協会として支援に取り組むべきである。

また、金融庁においては、こうした協会の取組を後押しするとともに、ITや人的基盤など中小監査法人が抱える様々な経営課題について対話を行うなど、中小監査法人の監査品質向上に向けた取組を一層強化すべきである。

加えて、金融庁、公認会計士・監査審査会においても、有効な検査・モニタリングの在り方について十分に検討を行い、検査自体がプロセス責任の追及に偏ることや、チェック型監査を助長し「監査離れ」を惹起することがないよう適切に対応するとともに、中小監査法人の実情を十分に理解した上で、協会とも連携して監査品質の向上を後押しするようなきめ細かな支援を実施すべきである。

さらに、監査法人は、スタートアップ企業に対し、監査を通じて把握した内部管理体制の不備等について適切に指摘・助言することによって、内部管理体制の構築等、上場に向けてのスタートアップの取組を促しつつ、質の高い監査が安定的に提供されるよう取り組むべきである。

3-6.会計不正事案への対応

① これまでの取組・背景

企業による適正な情報開示、財務情報の信頼性を確保する会計監査は、資本市場における重要なインフラとして機能している。

過去、会計不正については、米国のSOX法を参考として内部統制報告制度が導入され、その後も、「不正リスク対応基準」や「監査法人のガバナンス・コード」の策定、上場会社等監査人登録制度の導入等、会計不正の抑止に向けて関連制度が見直されてきたところである。

しかしながら、昨今、新規上場時の会計不正や日本を代表する大企業における会計不正等、上場企業による会計不正が相次いでおり、我が国資本市場に対する信頼に影を落としかねない事態となっている。

② 今後の対応

会計不正は、資本市場に対する投資家の信頼を害するものであり、健全で活発な資本市場の形成を妨げる。最近会計不正事案が続発していることは誠に遺憾であり、関係者においては、事案の究明、必要な処分、再発防止策の策定をしっかりと行うべきである。

オルツの会計不正事案は、監査法人の交代が行われた後に同社が上場したが、上場前から経営幹部が関与した売上架空計上が行われていたものである。また、ニデック、KDDI等、日本を代表する大企業においても最近不正会計が続発している。これらの背景には、経営者による過度な業績プレッシャーをはじめ、経営トップへの権限の集中、内部統制や監督機関による牽制機能の不全、会計監査人・投資家・市場に対する不誠実さ、不正を正当化する企業風土、上場企業グループとしての自覚とリテラシーの欠如、事業管理・子会社管理をはじめとする経営の仕組みの不全等、事案により多岐にわたるもののそれぞれ重要な原因が指摘されている。

これらの事案を受け、まずは上場企業こそが、一義的な責任主体であることから、コアな経営者自身が適正な情報開示の重要性をあらためて認識すべきである。したがって、上場企業の財務情報開示に関する規律向上については、有価証券報告書の記載内容が適正であることを確認する確認書(金融商品取引法第二十四条の四の二)における「有価証券報告書の記載内容の適正性に関する事項」の記載事項を、米国等の制度も踏まえて追加することに向けた法令改正により、より充実し、実効的な開示となるよう後押しすべきである。また、コーポレートガバナンス・コードの改訂を通じて、上場企業に、経営者の内部統制や全社的リスク管理体制の適切な整備への責任に対する意識の向上、情報開示に対する規律の向上等を求めるべきである。

次に、独立社外取締役に関しては、経営者に対する牽制機能と不正に対する抑止力(ブレーキ)が働くようにすべきである。具体的には、コーポレートガバナンス・コードの改訂を通じて、独立社外取締役が十分にその機能を発揮することを求めるとともに、取締役会の機能の強化を求めるべきである。また、取締役会の機能強化に関するグッドプラクティスを収集・公表することによって、その浸透を図るべきである。

加えて、監査人が適切に職業的懐疑心を発揮し、監査の信頼性を確保することが重要である。日本公認会計士協会をはじめとする関係者は、3-5.において記載したように監査品質の向上など能力強化に向けて、支援に取り組むべきである。

また、「架空循環取引」のような繰り返される不正の手法については、日本公認会計士協会において、これまでも循環取引の防止及び発見に関して参考となる情報を提供してきたところ、監査人が会計不正を未然に防ぐことができるよう、こうした情報を研修等も通じて改めて共有・徹底するなど、関係者が協力して具体的な抑止策を講じるべきである。

最後に、新規上場に関連して発生した会計不正事案を受けて新規上場に係る主要なゲートキーパーである日本取引所グループ、日本証券業協会、日本公認会計士協会が、新規上場時の会計不正事例を踏まえた対応策を公表したところ、上場準備会社の過度な負担を回避することにも留意しながら、政府も含めた関係機関の連携強化を図りつつ、これらの対応策を着実に実施し、再発防止に取り組むべきである。

本小委員会においては、経営者に対するサンクションの強化を求める意見や内部統制の実効性を問題視する意見も聞かれたところである。有価証券報告書等の虚偽記載等の会計不正に対する刑事罰の在り方については、過去の法改正の経緯・趣旨や、刑法上の詐欺罪や会社法上の特別背任罪の法定刑との平仄にも留意しつつ、会社の経営者に対する抑止力が十分に働くよう、事案に応じた厳正な科刑の実現が図られていくことが肝要である。また、こうした不正が繰り返されることがないよう、情報開示主体である上場企業の規律の向上、監査人の監査品質の向上、上場審査の実効性の向上等について、政府をはじめとする関係者が協力し、幅広い視点で検討した上で、再発防止に向けて不断の施策が講じられるべきである。

3-7.金融経済教育を通じた企業会計、監査や開示制度の重要性の発信

① これまでの取組・背景

政府は、全国での金融経済教育を推進するための主体として、2024年4月に「金融経済教育推進機構(J-FLEC)」を設立した。J-FLECでは、若年層から高齢者層まで、幅広い世代を対象とした金融経済教育を推進すべく、年齢層別の教材の作成や、企業・学校等の講師派遣の実施、イベント・セミナーの実施等に取り組んでいる。

2025年12月末のNISAの口座数は約2800万口座となり、18歳以上の国民の4人に1人が口座を保有する状況となっている。そのような中、多くの国民が一人ひとりのライフプランに沿って安定的な資産形成を行うため、金融経済教育の重要性はますます高まっている。

また、経済活動を正しく理解し、広く社会で活躍するためには、会計に関する基礎的な素養(会計リテラシー)もますます必要となってきている。日本公認会計士協会においては、会計リテラシーの普及・定着に向けて、セミナーの開催や授業支援教材の提供等、教育現場への支援活動に取り組んでいる。

② 今後の対応

決算情報等の開示制度は、その信頼性を担保する監査制度と相まって、投資判断の基礎を成す重要な社会インフラとして機能している。また、企業会計(財務会計・管理会計)は、企業の適正な財務情報開示の前提であり、かつ、健全な企業経営を支える基盤である。このため、J-FLECの教材の改訂や日本公認会計士協会の教材・ウェブサイト(会計探究ラボ)の活用等を通じて、その重要性を金融経済教育の中でも取り上げていくべきである。

また、監査や開示制度を支える会計リテラシーを幅広い世代へ普及させていくことも重要である。現在、次期学習指導要領改訂に向けた議論も進んでいるところ、会計が経済活動を支える基盤となる機能を果たしていること等の重要性について、学習指導要領解説等において関連する記載を充実するべきである。

4.決済・イノベーション推進PT

4-1.次の時代を見据えた決済アーキテクチャ構築の必要性と方向性

  • (1)見据えるべき新たな時代

    世界経済がグローバルに繋がる中、商取引・金融取引がクロスボーダーで行われるのに合わせて、資金決済も国内だけでなくグローバルに行われてきた。こうした中、資金決済は、これまでも改良が重ねられてきたが、足元では、デジタル化の進展と相まって、企業・個人のいずれにおいても、より「早く」「安く」「便利に」決済を行いたいニーズが一層高まっている。特に、予め一定の条件を定め、これを満たすと自動実行される仕組みを組み込める「プログラマビリティ」の機能を、決済インフラが備えることには期待が大きい。

    例えば、国際運送の場面や中小企業間取引において、モノの引き渡しと支払いを同時に履行する仕組みが考えられる。これは、取引及び支払の確実性を高めるだけでなく、特に中小企業にとっては、迅速な入金が行われることによって、資金繰りの安定にも資するほか、商取引と決済の管理事務が容易になり生産性向上が期待される。

    また、給付行政の分野においても、特定の条件を満たす対象者を自動的に判別し、給付を実行することができれば、行政機関の事務負担を大幅に軽減することが可能となるほか、子育てや食料品といった特定の目的に給付金の使途を限定するが可能となることで給付行政への効果・信頼の向上にも繋がり得る。

    そして現在、こうした迅速性やプログラマビリティの重要性を一段と高めているのが、加速度的に進化しているAIである。特に、エージェントAIの普及に伴い、人の意思決定を代替・補完する形でAIが経済活動を自律的に実行する「エージェンティック・コマース」が本格的に発展していく。

    言語の壁もなくなるエージェンティック・コマースの時代には、従来以上に商取引はグローバルに行われていく。我が国経済の様々な製品・サービスが、「AIにより選ばれる」環境を整えることが、我が国経済・社会の成長において不可欠となる。決済インフラも、従来から進められてきた安全性・迅速性の確保はもとより、前述のプログラマビリティ、そして、各国の時差に関わらず、24時間365日取引できることが求められるようになる。

    こうした多様化・高度化する決済ニーズに対応するため、民間部門では新たなサービスの提供や関連技術の進展が進んでいる。既に広く国民に受け入れられている○○ペイのようなプラットフォーマーによる決済アプリのほか、地域金融機関も地域独自の決済サービスを提供し、地元の加盟店が支払う決済手数料率を抑えたり、自治体の施策と連携したりするなどの動きも出てきている。また、我が国の中核的な決済インフラである全銀システムにおいても、環境変化を踏まえたアップデートの必要性を認識した上で、改良に向けた議論が進められている。

    そのなかでも特に近年注目を集めているのが、ステーブルコインやトークン化預金といった、ブロックチェーン技術を用いた新たな決済手段である。これらは、迅速性や24時間365日の稼働といった高度な機能を備えており、前述した「エージェンティック・コマース」が求めるプログラマビリティへの需要とも親和性が高い。今後、こうした新技術の特性や利点、リスクを適切に評価しつつ既存の決済システムの中に取り込んでいくこと、すなわち「オンチェーン」と「オフチェーン」の最適な組み合わせにより決済システムから得られる便益を最大化していくことが間違いなく必要となる。

    このように決済のグローバル化が進み、新しい技術が進展する状況において、仮に新たな時代に対応した決済システム構築において他国に後れをとった場合、我が国の企業・家計は他国の決済システムへの依存度を深めることとなる。より深刻な場合には、自国内の決済が他国通貨建てとなり、我が国の経済の存立が他国に委ねられることとなるおそれすらある。

    他方、個々の決済サービスがそれぞれ独自に発展していった場合、サービス間の相互運用性が確保されず、全体としては非効率な決済エコシステムが形成されてしまうおそれに留意が必要である。これは、部分最適の積み重ねが全体最適を損なう、いわゆる「合成の誤謬」が生じる典型的なケースである。特に、国際的な取引が活発化する中において、他国の決済システムや国際的な共通基盤との相互運用性が確保されなければ、我が国独自の仕様に閉じた、いわば「ガラパゴス化」した決済システムとなり、国際競争力や利用者利便を損なう可能性がある。

    また、決済は国民生活や経済活動を支える極めて公共性の高い分野であることから、高度なセキュリティと信頼性を確保することが不可欠である。その一方で、技術革新は急速に進展しており、その内容やリスクを的確に把握した上で、効率性と安全性のバランスを踏まえた適切な規制や制度設計を行っていくことが重要となる。

    こうした観点からは、新たな決済手段だけでなく、全銀システムのような既存の決済インフラについても、時代の要請に応じたさらなるアップデートや高度化を検討し、新旧のシステムを含めた全体最適を追求していく必要がある。

    このように、これからの時代において日本経済の競争力を最大化していくためには、新たな時代を見据えた「世界最高水準の決済アーキテクチャ」を構築することが重要な課題となる。

  • (2)「世界最高水準の決済アーキテクチャを構築」するための「7つの方向性」

    我が国としては、政府・中央銀行・民間が一体となり、新たな時代におけるプログラマブルな決済が活用できる環境を戦略的に後押しし、世界最高水準の決済アーキテクチャを構築していくべきである。その実現のためには、以下の「7つの方向性」に沿ったビジョンある対策の実行が重要である。

    • ①「競争」を通じた良質なサービス提供の最適配置

      トークン化預金やステーブルコインなどのオンチェーン決済を含む新たな決済手段について、ユーザーとしては、利便性、コスト、信頼性等を総合的に勘案しながら、最適な決済手段を選択していくこととなる。国は安全性や利用者保護の観点からの適切な規制・監督や、新技術の実証・実装の後押しをしつつも、個々の場面においてどの決済手段が最終的に主流となるかについては、ユーザーによる取捨選択と、提供者による試行錯誤を通じて、徐々に定まっていくべきである。

    • ②「協調」の強化―相互運用性ある全体構造への昇華

      一方で、最適配置の積み重ねが各決済手段のサイロ化をもたらし、結果として全体最適が損なわれることは、我が国の社会・経済全体の利益最大化の観点から好ましくない。したがって、我が国の取組が個別事例の集合にとどまるのではなく、決済アーキテクチャの全体的な構造が、相互運用性が確保された形で、より広範な裨益が得られるものとなることが重要であり、関係者間の協調を通じた共通の枠組みや基盤の構築が推進されるべきである。

    • ③プログラマビリティ・24/365のメリットを経済全体で享受

      経済成長、経済全体の効率化といった「攻め」の観点からは、ブロックチェーンの中核的特性であるプログラマビリティや24時間365日取引を実行できることを活用し、複数の取引及び決済を一体的に設計・執行する「取引連携型決済モデル」を発展させることが有用と考えられる。そこで、ブロックチェーンの便益を最大化させるために、周辺のシステム等とのAPIを通じた接続についても勘案しつつ、ブロックチェーンの実装の加速に積極的に取り組むべきである。

    • ④安定的な金融システム・金融仲介機能・通貨代替リスクへの対応の維持・強化

      ブロックチェーンのベネフィットを決済システムの中に取り込む必要がある一方で、「守り」の観点として、ブロックチェーン技術が持つ限界(パブリックチェーンにおける大量取引の迅速処理の限界や量子コンピュータによる危殆化リスク)にも十分に注意しなければならない。そこで既存の決済インフラもアップデートしながら、金融システムの安定、金融仲介機能及び通貨代替リスクへの対応の維持・強化を進めるべきである。

    • ⑤規制の点検・見直しを含むテクノロジーの進展への柔軟かつ迅速な対応

      既存システムに対する利用者のニーズに配慮しつつ、オンチェーン・オフチェーン両面の便益を最大限享受していくために規制の点検や見直しを行うべきである。例えば、ステーブルコインといった新しい技術を用いた決済手段の国内における通用性をより高めるべく、ステーブルコインに金銭に準じた取扱いを認めてよいかが各法令において不明確であるといった課題など、障害と思われるものについては前倒しで検証・見直しを実施する。

      また、ブロックチェーンそのものが将来的に陳腐化する可能性も排除できない中で、特定の技術・特定の決済手段に過度に依存することなく、戦略を柔軟かつ迅速に見直す姿勢を維持するべきである。例えば、量子コンピュータの登場により、ブロックチェーンに関してセキュリティ上の課題が生じる可能性について、技術の進展を踏まえつつ、柔軟に対応する。

    • ⑥グローバルに開けた通用性とグローバルな発信

      米国やアジアを念頭に、世界における円建てステーブルコイン・トークン化預金の通用性を確保するとともに、ユニバーサルな制度構築を目指し、積極的に国際発信・提案することを通じて、我が国が世界をリードしていくべきである。

    • ⑦国際的な決済システム間の相互運用性の確保

      円建てステーブルコイン・トークン化預金のみならず、既存インフラを用いた決済手段が「ガラパゴス化」することで、国際競争力や利用者利便を損なうことがないよう、新旧システムを含めた我が国の決済システム全体の国際的な相互運用性を確保していくべきである。

4-2.当面の取組

「7つの方向性」を踏まえつつ、世界最高水準の決済アーキテクチャ構築に向けて、まずは、政府・民間事業者が一丸となって以下の対応を進めていく必要がある。

  • (1)政府においては、関連する民間事業者と連携しつつ、以下の点について対応を進めるべきである。
    • ①金融庁
      • 民間の資金決済の分野については、金融庁・日本銀行・全銀協が関与してきたが、これまでは必ずしも制度的な責任の所在が明確でなかったところ、オンチェーン対応等の新たな変革にも対応していく上で、司令塔は不可欠である。そこで、今後は、金融庁を資金決済の司令塔に位置づけ、日本銀行・財務省がこれに協力していく。このため、金融庁における体制についても必要な組織拡充を検討する。
      • 金融庁が現在進めている決済高度化プロジェクト(PIP)に おいては、(i)国内決済に加えて、グローバル企業のアジアを含む海外のキャッシュマネジメント等での利用を見据えた、3メガバンク共同でのステーブルコイン発行に向けた検討、(ii)証券決済の効率化及び24時間365日対応化を見据えた、ブロックチェーン上での証券決済推進に係る検討、(iii)トークン化預金を民間ベースで複数の銀行間で移転する仕組みの構築に向けた検討など、オンチェーン決済に関する実証実験が進められている。金融庁は、こうしたオンチェーン決済の活用場面の貿易決済を含むその他の分野への拡大を含め、オンチェーン決済の社会実装について、上記「7つの方向性」に沿って、PIPを通じて全面的な支援を継続・拡大していく。
      • AIとオンチェーン決済が技術的・社会的に進展する中にあっては、安定した金融システム、金融仲介機能の保持、通貨主権の確保、セキュリティの確保、利用者保護といった守りの面にも目を配りつつ、利用者利便の向上、資金効率及び金融仲介機能の向上といった攻めの面も同時に達成しなければならない。そこで、金融庁は、関係省庁・金融業界・有識者等からなる検討会議を立上げ、以下の論点を含むAI・オンチェーン時代の金融の在り方について、検討を進め、来年初までに中間整理をまとめる。
        • AIの浸透に応じた市場・金融機関監督の在り方

          今後、金融資本市場における取引の指示や判断におけるAIの活用が進むことも想定される。その際、例えば特定のAIに依存することで市場参加者が同様の決定を下す群集行動などにより市場が不安定化するリスクも懸念される。

          また、金融機関における融資判断などにおけるAIの活用が進む中、特定の地域や業種において金融排除が生じることも回避すべきである。

          以上のようなリスクを踏まえながら、AIの浸透に応じた市場・金融機関監督の在り方を検討していく必要がある。

        • ステーブルコインの制度的枠組みの在り方

          ステーブルコインの発行・仲介に関しては、国際的な規制の議論が進んでいるほか、米国をはじめ各国における制度整備も進んでいる。我が国は世界に先駆けてステーブルコインの制度整備を進めてきたが、今後も技術革新を迅速に新たな金融サービス提供につなげられるよう、ステーブルコインのユースケースの動向を踏まえながら、例えば、裏付け資産の在り方を始めとする制度的枠組みについて点検を行い、必要があれば金融審議会等での議論に繋げていく必要がある。

          特に、ステーブルコインのレンディングは、資産の運用・管理の多様化の手段の1つとして期待され、我が国においてステーブルコイン普及の推進力になり得ると考えられる。他方、レンディング事業者等が破綻すると元本毀損の恐れがあるほか、預金からの振り替えが大きく進むと社会全体として金融仲介機能を損なう恐れがある。このため、暗号資産レンディングについては現在規制の導入が検討されていることなども踏まえながら、制度的枠組みを検討する必要がある。

        • DEXを始めとするDeFi(分散型金融:DecentralizedFinance)への対応

          AIの浸透により、必ずしも人間向けのユーザー・インターフェース(UI)が必要ではなくなることから、現在以上に、DEX(分散型取引所:Decentralized Exchange)を通じた暗号資産等の取引が進むとの指摘がある。また、将来的には様々な資産のトークン化が進むと、暗号資産に限られない資産がDEXで取り扱われるようになるとも指摘される。

          この点、DEXについては、プロトコルの開発・設置を行い、その後は特に関与しなければ、サービス提供における人為的要素は少ないという特徴がある。他方、プロトコルの不備により利用者が不測の損害を被るリスクや、マネーローンダリングに悪用されるリスクも指摘される。こうした点を踏まえ、金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」報告書では、DEXについて、明確な規制の手法が確立されていないものの、現在の暗号資産交換業者に対する規制とは異なる、技術的性質に合わせた過不足のない規制の在り方について、各国の規制や運用動向も注視しながら、継続して検討を行うことが適当とされており、速やかに議論を開始する必要があり、必要があれば金融審議会等での議論に繋げていく。

          その際、DEXのプロトコルの開発・設置のほか、DEXに接続するアプリ等のユーザー・インターフェースや、複数の暗号資産等の交換だけでなく、レンディング等のその他の金融取引の仲介機能等を含め、広く議論することが求められる。

        • ウォレット提供業者の位置づけ

          暗号資産等の取引を行う際は、自身が署名鍵を管理する場合と、暗号資産交換業者等の金融機関に管理をゆだねる場合とがある。オンチェーン決済の社会実装が進む中、自身で管理を行うには紛失リスク等があるため、一般個人や多額の資産を扱う法人などを中心に、ステーブルコイン等の管理は金融機関(電子決済手段等取引業者)に委ねられるケースが多いと考えられる。

          一方、様々な金融資産のトークン化も進むと、ワンストップで各種資産の管理を行えるウォレットサービスの利用が、個人向けはもとより、法人や機関投資家向けに登場することも予想される。こうしたサービスでは、自身で署名鍵を管理する方法(必ずしも自身単独ではなく、セキュリティの観点から分割して管理することも予想される)が用いられると考えられるが、利便性の観点からこうしたサービス提供業者が、トークン化資産に関するプラットフォーマーとなっていく可能性も考えられる。

          こうしたサービスを提供するウォレット事業者については、現状日本を含め多くの国では規制はなされていない一方、将来多額の資産の管理をこうしたサービスを通じて行うこととなった際に、金融リテラシーの向上、ひいては利用者保護上、対策が必要となることも考えられる。同時に、仮に国内からこうした事業者が育たず、海外事業者に依存することになると、新たなデジタル赤字やデータ主権といった課題も引き起こしかねない。

          こうした事態を見据えて、ウォレット事業者についても、技術的性質に合わせた過不足のない規制を含む対策の在り方について、各国の動向も注視しながら、検討を行う必要がある。

        • ブロックチェーン技術を用いた決済システムの将来

          ブロックチェーン技術の基盤となっている暗号技術については、量子コンピュータによる危殆化への対応が急がれている。特に、ブロックチェーン技術の金融業務における利用が進むと、その必要性は増していく。

          こうした点を踏まえて、オンチェーン決済等を提供する金融機関等において、用いられているブロックチェーン技術についての量子コンピュータによる危殆化リスクの把握や代替手段の検討を進めるべきであり、必要があれば政策的対応策等を検討する。

          そのうえで、オンチェーンとオフチェーンの双方の優位性とリスクを勘案したうえで、金融システムのどの部分をオンチェーン化し、一方でどの部分をオフチェーンのままとするべきであるのか、特にオンチェーン部分とオフチェーン部分の接続性をどのように確保するべきか、また全体としてAPI等を用いたシステム間の接続等を通じていかに相互運用性を高めていくか、といった次の時代の全体的な金融システムのあり方について、検討がなされるべきである。

    • ② 内閣官房デジタル行財政改革事務局
      • ステーブルコインについては、出資金の支払い、債権の弁済、給与支払いや税金支払いなどにおいて、金銭に準じた利用ができるか必ずしも整理がなされていない。そこで、諸法令におけるステーブルコインの取扱いの整理・明確化を進めていく。具体的には、金融庁の情報提供を踏まえ、各制度を所管している府省庁において、利用者保護と利用者の選択肢が増えることによる利便性向上とを勘案しつつ、早期に結論を出すべく検討を進めるとともに、デジタル行財政改革会議等においてフォローアップを行うべきである。なお、その際、税務・会計上の取扱いに不明確な点があれば、併せて整理を進める。
    • ③ デジタル庁
      • オンチェーン決済においては、そのプログラマビリティの機能を活かして、例えば子育てや食料品などの特定の目的のために支払いに資金使途を制限することも可能となる。こうした性質はきめ細かな給付を可能とするものであり、給付行政の信頼性向上及び効率化に繋がるものであるから、ステーブルコインやトークン化預金の公金給付への活用可能性について検討を進めていく。
    • ④ 財務省・総務省(地方自治体)
      • 今後、従来取引されてきた金融商品はもとより、財産的価値を有するあらゆる資産が、トークン化され、市場で取引されるようになる可能性がある。こうした環境では、従来から市場で活発に取引されていた資産も、熾烈な競争にさらされることとなるため、今後も、国債や地方債が引き続き幅広い投資家から選好されるよう、国債・地方債のトークン化対応について検討を進める。
      • 併せて、国債・地方債の元利払いについても、投資家のニーズに併せてオンチェーン決済を可能とすることも検討を進めることが求められる。
  • (2)民間事業者等においては、以下の対応を進めるべきである。
    • ①日本銀行
      • トークン化預金の普及にあたっては、銀行をまたがるトークン化預金の移転のファイナリティを確保するため、日銀当座預金のオンチェーン対応も求められる。具体的には、ブロックチェーン上の決済手段と日銀当座預金とのスムーズな交換を可能とするため、(i)日銀当座預金そのもののトークン化、ないしは(ii)ブロックチェーン上の取引システムと日銀ネットとの連結、が考えられる。
        最終的にいかなる手段が選ばれるにせよ、我が国が新たな決済アーキテクチャ構築において後れを取ることがないよう、日本銀行においては、いずれの方法をとる場合においても遅滞なく実装を進める観点から、それぞれの実装に向けた論点整理及び実現に向けた道筋を含めて、速やかに検討を行い、取組を着実に進めるべきである。まずは、年内に実装に向けた論点整理と実現に向けた道筋に関する検討状況について取りまとめ、公表すべきである。
    • ②全国銀行協会
      • 全銀協は、上記1(1)の「早く」「安く」「便利に」決済を行いたいとのニーズに応え、またブロックチェーンのプログラマビリティを備えた競争力のあるアーキテクチャを構築するために、上記「7つの方向性」に沿って、オンチェーン及びオフチェーンを含む決済システム全体のあり方について検討を進めるべきである。その際は、日本銀行の協力を得つつ、金融庁も資金決済の司令塔として、リーダーシップをとって検討を後押しすべきである。
      • 具体的には、レガシーアーキテクチャーとなっている全銀システムの抜本的なアップデートが急務であり、決済取引のリアルタイム化、低リスク化、国際化、ブロックチェーン技術の取り込み等の時代の要請に応える「新たな決済システム」としての全銀システムの構築が、上記「7つの方向性」に沿って目指されるべきである。そこで、現在検討が進められている「新たな決済システム」を構築するとの判断を早急に下したうえで、遅くとも2030年の稼働を目指すべきである。この検討に際しては、2030年までの間も技術が日進月歩であることを踏まえた拡張可能性を具備することに配慮することも不可欠である。
      • また、既にトークン化預金に取り組む金融機関は現れているが、社会全体がオンチェーン決済に対応し、ブロックチェーン技術のプログラマビリティを活かせるようにしていくためには、日銀・全銀ネットからなる決済インフラそのものが、オンチェーンに対応していくことが必要である。
        これを欠くと、トークン化預金を導入した金融機関から他の金融機関に送金する際、最終的にはオフチェーンに切り替えて処理する必要がある。そうなると、低コスト・稼働時間の長さといったブロックチェーンの利点が必ずしも活用できない。
        この点、現状の決済システムでは、全銀システムが(イ)送金元から送金先への決済情報(送金額、送金人情報、受取人情報など)の伝達機能(メッセージング機能)、(ロ)1億円未満の送金は金融機関間では生じる債権債務関係を束ねて日次で相殺する機能(ネッティング機能)を担い、日銀ネットが(ハ)銀行間の資金の最終決済機能(ファイナリティ機能)を担っている。
        (ハ)は前述のとおり最終的には日本銀行において当座預金のオンチェーン対応を進めることが期待されるが、オンチェーン時代における(イ)・(ロ)の機能分担の在り方について、全銀協・日銀は、金融庁と連携の下、検討を進める必要がある[1]。その際、以下のA~Dの対応が考えられるが、こうした選択肢も念頭に、世界に先んじたオンチェーン対応した銀行決済インフラの確立を急ぐべきである。
      • A) (イ)・(ロ)について、現状と同様に全銀システムが対応する。全銀ネットは、オンチェーン対応した日銀当座預金と、各金融機関のトークン化預金の中継機能を担うこととなる。
      • B) (イ)~(ハ)の全ての機能を日銀がブロックチェーンベースで担う。日本銀行が、各銀行のトークン化預金と日銀当座預金をスマートコントラクトで連携するとともに、メッセージング機能やネッティング機能も提供することとなる。
      • C) (イ)については全銀システムまたは別の民間事業者が、(ロ)についてはいずれかの金融機関が幹事となり、同様にトークン化預金を発行している各金融機関が当該幹事金融機関に口座を開設し、その口座間で資金の移動を実現する。なお、決済インフラ全体の可用性確保の観点からは幹事行は複数存在することが求められる。
      • D) (イ)・(ロ)について、日本銀行や全銀システムではない民間事業者が担う。当該民間事業者は、ネッティングの有無・方法によっては、現在の全銀システムと同様、資金清算機関として免許取得が求められる。

      <各選択肢の概要と各機能を担う主体一覧>

      • A オンチェーン決済においても、既存のシステムにおける機能分担を維持
      • B オンチェーン決済では、日本銀行がすべての機能を担う。
      • C オンチェーン決済では、いずれかの民間事業者がメッセージング機能を担うとともに、いずれかの金融機関(複数可)が「幹事行」としてネッティング機能を担う。
      • D オンチェーン決済では、全銀システムはいずれの機能も担わず、全銀システムに替わる他の民間事業者が機能を担う。但し、当該事業者は資金清算業者として免許を取得。
      (イ)メッセージング機能 (ロ)ネッティング機能 (ハ)銀行間ファイナリティ
      A 全銀システム 全銀システム 日本銀行
      B 日本銀行 日本銀行 日本銀行
      C 全銀システム または
      他の民間事業者
      いずれかの金融機関
      (幹事行方式)
      日本銀行
      D 他の民間事業者 他の民間事業者 日本銀行

【コラム:日本における決済システムの歴史と現状】

1. 決済システムの進化

決済を支える技術は、経済活動の拡大・複雑化とともに、「紙」→「電子」→「オンライン」へと段階的に進化。手形・小切手といった伝統的手段は、紙の証票に基づく仕組みとして整備され、簡便で確実な決済を担ってきた。他方、「紙」による決済は、物理的な作成・搬送・保管・照合作業を伴うため、事務コストと時間コストの削減効果を取り込むべく、決済の「電子化」が開始された。具体的には、民間金融機関における手作業を効率化すべく、小口決済を含めて膨大な決済件数を処理するための全銀システムが1973年に稼働し、そのようなインフラを前提とした上で最終決済を電子的に行う日銀ネットが1988年に稼働している。

次に、コンピュータと通信回線の普及により、決済のオンライン化が加速。銀行振替は高速化し、インターネットバンキングの普及で利用者の利便性も飛躍的に向上した。銀行システムを中核とする現在の決済システムは、後述のとおり、この「オンラインの口座振替」を中核に動いている。そして、オンライン化が進むほど、システム障害・サイバーセキュリティに関する対応の重要性が増した。

他方、決済を担う者として、銀行のみならず、資金移動業者、前払式支払手段、クレジットカードなどがその存在感を増しており、いわゆる「4コーナーメカニズム」のように、送金人⇒送金人側金融機関⇒受取人側金融機関⇒受取人(銀行送金であれば、送金人⇒送金人側A銀行⇒受取人側B銀行⇒受取人)という決済フローにおける4主体が役割分担することを前提に、銀行法、資金決済法、割賦販売法等の法制も整備された。

また、決済は、単一のモデルによって遂行されるものではなく、ホールセール/リテールの別や、内国/クロスボーダーの別などの用途別に最適化された多様な決済手段・インフラが併存する構造へと進化した。結果として、ユーザーに多くの選択肢があることにより利便性は向上したものの、全体構造は複雑になり、相互運用性確保の重要性が向上することとなった。

2.現行の決済システムの基本構造

現代の決済システムにおいては、紙幣を物理的に運ぶのではなく、口座の残高を帳簿上で付け替える(振替する)ことで成立する。銀行間決済では、最終的な決済は、中央銀行に各金融機関が保有する当座預金口座の残高を振り替える形で実施されている。

日本国内の銀行間送金(振込)は、大きく言えば ①全銀システムが送金データを処理・集計し、②日銀ネット上の日本銀行当座預金で最終決済する二層構造で運用されている。

うち1件1億円以上の内国為替取引については、支払指図ごとに必要情報が全銀システムから日銀ネットへ送信され、日本銀行当座預金上で1件ごとに即時に決済が完了する仕組みである(即時グロス決済)。

他方、1件1億円未満の内国為替取引は、全銀システム側で個々の支払指図を集計し、金融機関ごとの受払差額(ネット額)を算出したうえで、その結果を日本銀行へオンライン送信し、日本銀行当座預金の入金・引落しによって最終に決済している。このようにネットで決済する方式だと、即時性は失われる反面、膨大な件数の小口振込を効率的に処理できるという利点がある。

なお、全銀ネットは、送金人の取引銀行が持つ債務を引き受け、また、受取人の取引銀行が持つ債権を取得することにより、銀行間の複雑な資金決済の関係を、全銀ネットと各加盟銀行の間における決済の関係に整理。このような業務が安定的に行われることは、金融安定の根幹であり、適切なリスク管理が求められることから、全銀ネットは資金決済法上の「資金清算機関」として規制(免許制)・監督に服している。

外国送金(クロスボーダー決済)は、国内送金とは異なり、当事者の銀行が共通に利用する単一の中央銀行決済基盤が存在しないため、典型的にはコルレス銀行(国際的に展開する銀行)を介した「口座間振替」の連鎖で実現している。具体的には、送金元銀行と送金先銀行が、グローバル銀行(コルレス銀行)にそれぞれ口座を開設し、その口座間の振替により資金移転を成立させている。そして、口座間の振替を間違いなく安全に行うべく、送金指示、受取人情報、送金金額及び通貨などの情報を標準化されたフォーマットで送受信する機能を提供している基盤が必要であり、これを担っているのがSWIFTである。SWIFTを通じたメッセージの送受信は、クロスボーダー送金の実施にとって事実上必須であるため、金融制裁実施において、制裁対象のSWIFTからの排除が行われる。

なお、コルレス銀行モデルの実務上、中継銀行が複数連なることが多く、各段階で照合等の事務処理、マネロン対応などが行われている。これに加えて、時差による営業時間のズレがあることで、送金を完了するには日をまたぐことになるなど、決済の即時性・安価性が確保されないケースがある、との指摘がある。

3.ブロックチェーンの登場

このような中で、約10年前からブロックチェーンへの注目が高まっている。ブロックチェーンとは、「取引記録をブロック単位で過去から1本の鎖のようにつなげ、暗号技術によって改ざんを防止し正確な取引履歴を維持しようとする技術」とされており、過去の記録を変更すると連鎖的に整合性が崩れ、改ざんを可視化するものである。そして、ブロックチェーンの特徴は、取引台帳管理を単一主体が独占せず、ネットワーク参加者による合意によって、各参加者の記録の同一性を同期的に確定していく点にあるため、改ざんされにくい形で記録を残せるほか、関係者が記録を参照できるといった利点がある。

ブロックチェーンの利点として、特に重視されているのは、ブロックチェーンがもつ「プログラマビリティ」である。すなわち、取引や決済のルールをプログラムとして定義し、条件を満たされた場合に自動的に処理する仕組み(スマートコントラクト)を利用して、複数の取引及び決済を一体として同時に自動実行し得る点は、個々の経済活動のみならず、広く経済の効率化を導きうるものとして注目を集めている。例えば、小売・輸送・貿易分野において、「納品された」「検品が完了した」「必要書類が揃った」といったイベントをトリガーに支払いを自動実行できれば、支払いのための期間短縮や照合等の事務コストの削減につながる。多くの分野で既にブロックチェーンの利用が広がっており、今後、商流・物流・決済の自動化が進むことが期待されている。

なお、ブロックチェーンにおいても、特定の管理主体がおらず、誰でも参加可能なパブリックチェーンと、管理主体がおり、参加者が限定されるプライベートチェーンが存在する。パブリックチェーンについては、悪意ある者を含む不特定多数の参加者がいるため、重厚な合意アルゴリズムを必要とする結果、処理の確定スピードが失われる傾向がある。また、取引や処理実行も重くなる結果、そのための費用を利用者が多く支払う必要があるため、コストも高くなる傾向にある。そして、通常は取引履歴が公開されるため、透明性は高まる反面、プライバシー確保とは相反する。プライベートチェーンについては、一般的にその反対の特徴を保有している。

そして、ブロックチェーン上で使える新しい決済手段としては、トークン化預金とステーブルコインが挙げられる。この点、トークン化預金とは、預金者及び残高のデータをブロックチェーン上で管理するものであり、ステーブルコインとは、法定通貨を対価としてブロックチェーン上にて発行されるコインを指す。設計者において、決済手段を設計する段において、パブリックチェーン・プライベートチェーンの特徴の差異等も踏まえて、採用ブロックチェーンを決定している。

4.トークン化預金及びステーブルコインの現況

  • (1)国際的な動向

    2019年6月にFacebookがリブラ構想を発表以後、G20/FSB(金融安定理事会)を中心にステーブルコインを巡る国際的な議論が進展している。FSBは、G20の指示の下、2023年7月にステーブルコインに関する国際的な規制監督枠組みに係るハイレベル勧告を最終化している。その後、各国で当該ハイレベル勧告の実施が進められたところ、その実施状況をモニタリングする観点から、2025年10月に規制実施に関するピアレビュー報告書が公表された。

    日本は、他の国に先駆けてステーブルコインに係る法制を整備し、上記報告書上も高い評価を受けている。EUが日本に続いて規制を整備したほか、米国・英国は、現在規制の最終化に向けた取り組みを進行中である。特に、米国ではステーブルコインに対して、発行者以外の者がインセンティブを付す事例や、ステーブルコイン・レンディングによる運用事例が見られ、規制の最終化に向けた議論の中では、ステーブルコインへの直接・間接の付利が大きな論点となっている。

    このような規制の動きを踏まえ、いずれの国においてもステーブルコインの発行又は発行のための検討も進んでいる。米国では、非銀行の新興企業であるサークル社が米ドル建てのステーブルコインであるUSDCを発行しており、同じく米ドル建てのUSDTと併せて、世界のステーブルコイン取引の大半を占めている。EUでは、大手金融機関グループがユーロ建てステーブルコインを発行。英国では、選定事業者が金融当局(英FCA)の規制サンドボックス下で英ポンド建てステーブルコインの発行を検討している。その他、主要国の大手銀行で構成されるコンソーシアムがG7通貨に連動するステーブルコインの発行を検討している。

    これに対して、同じくブロックチェーンを用いた決済手段の代表例でもあるトークン化預金については、法的な性格は既存の預金と変わらないことから、各国ともに既存の銀行規制の枠内に位置づけられている。したがって、各国とも、少なくとも大きな法制上の整備は必要ないものと思われる。しかし、金融機関がこれを実装するにあたっては、現行の基幹系システムの発展の程度に応じて、投資の積み重ねが不可欠とされる。現状、米系銀行の取組が先行しており、日系企業では円建てステーブルコインによるキャッシュマネジメントの研究を進める一方、ドル建てでは米系銀行のサービスを検討する例も見られる。他にも、EUでは、大手金融機関がトークン化預金の発行を検討しているほか、英国でも大手金融機関が共同でトークン化預金の実証実験(GBTD)を開始した。また、国際決済銀行(BIS)主導で、日本銀行を含む主要中央銀行のほか、邦銀を含む大手金融機関がトークン化された中銀当座預金・民間銀行預金を用いたクロスボーダー決済について検証を進めており(Project Agora)、取組は着実に進んでいる。

    ただ、邦銀を含め、トークン化預金に係る取組において既に後れを取っている金融機関が挽回するには時間がかかるため、経済的には同等の機能を有するものの、トークン化預金と比して投資の必要性が小さいとされるステーブルコインの発行に注力している。

  • (2)国内の動向

    前述のとおり、日銀ネットや全銀システムが既存の決済インフラとして、相応の利便性・安全性あるサービスを提供してきており、インフラとしての高い信頼を勝ち得てきた。他方で、その高度化のための検討も進められてきたところであり、本年3月に、全銀協は決済取引のリアルタイム化、低リスク化などを内容とする新たな決済システムの構想を発表している。

    他方、我が国は、ブロックチェーン上の決済手段についても取り組みを進めてきたところであり、前述の通り、2023年には、世界に先駆けてステーブルコイン法制を整備している。これを受けて、国内でもステーブルコイン発行に関する取り組みは進められており、具体的には、JPYCが第2種資金移動業登録を受け、円建てステーブルコインの国内で発行した。また、3メガバンクは、国内決済に加えて、グローバル企業のキャッシュマネジメントや貿易取引等のクロスボーダー法人決済での利用を見据えて、共同でステーブルコインを発行するべく、金融庁の決済高度化プロジェクト(PIP)の枠組みも用いながら検討を進行中であり、来年3月の実運用を目指している。SBI新生信託銀行も早期の実発行に向けた取組を進行中である。

    トークン化預金については、そもそも預金は従来からの取引・業務において既に馴染みがあることから、国内・国外、そして金融機関・顧客ともに、ステーブルコインに比して活用における心理的ハードルが低い傾向にある。国内のトークン化預金に関する状況としては、一部金融機関がすでに実装しているものの、銀行間接続や日本銀行の取組に係る検討はまだ初期段階である。この点、ディーカレット社・GMOあおぞら銀行・アビーム社が、銀行間接続に係る実証実験をPIPの枠組みを用いて行っているほか、日本銀行において、日銀当座預金のトークン化及びその活用に関するサンドボックスプロジェクトが内部で進行中である。

    なお、中央銀行デジタル通貨(CBDC)については、必ずしもブロックチェーンを用いるものではないものの、財務省・日本銀行において、将来の可能性を見据えた研究が進行中である。

【参考】開催実績

2025年11月18日(火)
[幹部会]
1.金融調査会におけるトピックス
2.今後の進め方について
2025年11月18日(火)
[デジタル社会推進本部・AI・Web3小委員会との合同会議]
1.ステーブルコインについて
・金融庁、JPYC株式会社
2.暗号資産等について
・日本暗号資産ビジネス協会
3.暗号資産税制に関する緊急要望
2025年12月4日(木)
[財務金融部会との合同会議]
1.令和7年度補正予算案について
2.令和8年度予算編成大綱案について
3.令和8年度税制改正の検討状況について
2025年12月5日(金) 地域金融の課題について(有識者ヒアリング)
・家森 信善 神戸大学経済経営研究所教授
・野崎 浩成 東洋大学国際学部教授
・佐藤 雅典 株式会社ジェイ・ウィル・コーポレーション代表取
締役社長
・後藤 玲央 ユニゾン・キャピタル株式会社パートナー
2025年12月8日(月)
[財務金融部会との合同会議]
地域金融力強化プランについて
2025年12月10日(水)
[企業会計に関する小委員会]
監査法人・公認会計士制度を巡る現状についてヒアリング
・日本公認会計士協会(JICPA)
2025年12月15日(月)
[財務金融部会・企業会計に関する小委員会との合同会議]
1.金融審議会における検討状況
2.地域金融力強化プランについて
2026年2月20日(金)
[財務金融部会との合同会議]
金融機能の強化のための特別措置に関する法律等の一部を改正する
法律案(条文審査)
2026年2月25日(水)
[企業会計に関する小委員会との合同会議]
1.コーポレートガバナンス改革の推進について
2.一体開示・有報の総会前開示に向けた環境整備について
3.市場の魅力向上に向けた取引所の取組についてヒアリング
・東京証券取引所
2026年3月2日(月)
[幹部会]
今後の金融調査会の運びについて
2026年3月11日(水) 中小企業金融をめぐる課題について(有識者ヒアリング)
・古田 秘馬 株式会社umari代表取締役(※リモート出席)
・村田 直輝 株式会社山口フィナンシャルグループ執行役員
・藏重 嘉伸 株式会社YMFG ZONEプラニング代表取締役
2026年3月13日(金)
[財務金融部会・企業会計に関する小委員会との合同会議]
金融庁提出予定法案に関する勉強会
・金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案
2026年3月17日(火)
[中小企業・小規模事業者政策調査会との合同会議]
1.地域金融機関の在り方について
2.有識者ヒアリング
・田川 欣哉Takram Japan株式会社代表
・櫻井 稔Takram Japan株式会社デザインエンジニア/ディレクター
2026年3月24日(火)
[決済・イノベーション推進PT]
1.国内外のCBDCに係る動向について
2.ブロックチェーンを用いた決済高度化について
2026年3月27日(金)
[財務金融部会・企業会計に関する小委員会との合同会議]
金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案(条文審査)
2026年3月27日(金)
[企業会計に関する小委員会との合同会議]
コーポレートガバナンス改革の推進について
2026年4月1日(水)
[決済・イノベーション推進PT]
ブロックチェーン等を活用した国内の取組について有識者ヒアリング
1.地域におけるリテール決済に係る取組
(PayPay株式会社、鹿児島銀行、北國銀行)
2.ステーブルコイン・トークン化預金を巡る国内外の状況について
(野﨑 浩成 東洋大学教授)
3.ステーブルコインの実用化に向けた取組
(JPYC株式会社、株式会社三菱UFJ銀行・株式会社三井住友銀行・株式会社みずほ銀行)
2026年4月2日(木)
[企業会計に関する小委員会]
最近の会計不正事案について
2026年4月3日(金) 1.政府の日本成長戦略会議(新戦略策定のための資産運用立国推進分科会)での議論状況について
2.地域未来戦略について
3.産業発展に向けた今後の金融仲介の在り方について
一般社団法人全国銀行協会
2026年4月8日(水)
[企業会計に関する小委員会]
中小監査法人のキャパシティビルディング等の支援についてヒアリング
(日本公認会計士協会、Mooreみらい監査法人)
2026年4月9日(木)
[デジタル社会推進本部デジタル基盤小委員会との合同会議]
1.金融データ連携(API化)について政府の取り組み
・経済産業省、金融庁
2.データ利活用制度の在り方に関する基本指針のフォローアップについて
・瀧 俊雄(一社)電子決済等代行事業者協会 代表理事
2026年4月10日(金) 1.金融機関・金融システムへの信頼確保のための取組
・金融犯罪対策
・証券不正アクセス事案を踏まえた対応
・プライベートクレジットの状況について
2.有識者ヒアリング
・島津 敦好 株式会社カウリス代表取締役CEO
2026年4月14日(火) 1.検査・監督体制の見直し
2.協同組織金融機関のあり方についてヒアリング
・多摩信用金庫
・信金中央金庫
・大東京信用組合
・全国信用協同組合連合会
2026年4月15日(水)
[決済・イノベーション推進PT]
1.トークン化預金の実用化に向けた取組
(株式会社ディーカレットDCP)
2.ブロックチェーンを活用した決済高度化に向けた取組事例
(野村證券株式会社、三菱商事株式会社、株式会社トレードワルツ)
2026年4月16日(木)
[総務部会・財務金融部会・郵政事業に関する特命委員会合同会議との合同会議]
議員立法「郵政民営化法等の一部を改正する法律案」について
(法案審査)
2026年4月17日(金)
[企業会計に関する小委員会]
金融経済教育を通じた会計・監査や開示制度の重要性の発信等について
(金融経済教育推進機構、日本公認会計士協会、金融庁)
2026年4月20日(月)
[国家サイバーセキュリティ戦略本部との合同会議]
1.高度自律型AIの脅威に対するサイバーセキュリティ対策の抜本的強化について
・Anthropic
・OpenAI
2.現状認識と対応策について
2026年4月22日(水)
[企業会計に関する小委員会]
企業会計に関する小委員会 提言(案)とりまとめ
2026年4月22日(水)
[決済・イノベーション推進PT]
有識者ヒアリング
1.全銀システムの高度化に向けた取組
・一般社団法人全国銀行協会
2.日本と海外のキャッシュレスの状況比較
・PayPal
2026年4月24日(金) 1.事業性融資の推進等に関する法律の施行について
2.有識者ヒアリング
・渡邉 佳史 ストームハーバー証券株式会社 代表取締役社長
・村上 敬亮 東京大学公共政策学研究部(公共政策大学院)特任教授
3.新しい金融戦略の検討状況について
2026年5月13日(水)
[幹部会]
金融調査会 提言(案)について
2026年5月14日(木)[決済・イノベーション推進PT] 決済・イノベーション推進PT提言(案)とりまとめ
2026年5月19日(火) 金融調査会 提言(案)とりまとめ

[1]なお、(ロ)の機能がないと、各金融機関が送金依頼に即時に対応するべく多額の流動性を常時手元に準備する必要が生じ、社会全体の資金効率が悪くなるとされているが、こうした課題の克服可能性を含め、オンチェーン時代のネッティングの在り方については併せて検討する必要がある。