自律的で強靱なエネルギー供給構造の構築に向けた提言
(資源・エネルギー戦略調査会 提言)
令和8年6月2日
自由民主党政務調査会
1.はじめに
厳しい資源制約を抱える我が国にとって、エネルギー安全保障の確立は死活的課題である。
今般の中東情勢の不安定化により、この現実が我々の前に改めて突きつけられた。
我が国はこれまで、省エネルギーの徹底、化石燃料調達先の多角化、化石電源から非化石電源への転換等により、エネルギー安定供給の確保に努めてきた。関係機関や関係者のご尽力に心から敬意を表したい。ただし、今般の状況を踏まえ、エネルギー安全保障の確立に向けた取組の更なる加速化が必要であることは論を俟たない。
経済安全保障の中核とも言い得るエネルギー安全保障の確立は我が国の経済社会を支える基盤であり、今後危機管理投資などを通じて自律的で強靱なエネルギー供給構造を構築しなければならない。
緊急に対応が必要な課題については、既に累次にわたって党から提言を出してきたところであるが、当調査会としては、資源・エネルギー政策において中長期的に対応が必要な政策について検討を行ってきた。
自律的で強靱なエネルギー供給構造の構築に向けては、以下の3つの視点が重要であると考える。
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①ホルムズ海峡依存を低減する観点からの石油調達先の多角化等(脱ホルムズ)
我が国の一次エネルギー供給の約3分の1を占める石油輸入の9割以上をホルムズ海峡経由の輸入に依存する構造は極めて脆弱である。このような我が国経済社会の存立がかかる脆弱性を可能な限り速やかに解消しなければならない。
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②原子力の活用やペロブスカイト太陽電池をはじめとする国産エネルギーの導入加速化を通じたエネルギー自給率の向上
さらに、我が国のエネルギー自給率はOECDでも最低レベル(16%)にあるが、これを可能な限り引き上げなければならない。そのためには、原子力の活用やペロブスカイト太陽電池をはじめとする国産エネルギーの導入加速化が必要である。
特に当調査会としては、東京電力福島第一原子力発電所の事故の反省を十分に踏まえつつ、安全性の確保と地域の理解を大前提に原子力発電の一層の活用が必要であると考える。原子力は準国産エネルギーであり、我が国は自国のサプライチェーン内で商用原子炉を建設・運転する技術を有する強みを有している。これまで原子力発電は「国策民営」の形で推進されてきたが、現下のエネルギー情勢を踏まえ、さらに国が一歩前に出てこの強みを活かす政策を打っていかなければならない。
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③資源開発の川上段階における権益確保の強化
「資源は資金さえあれば市場から最安価格で自由に調達できる」という前提が崩れ、現在は、資源の輸出や輸送手段が国際紛争や国際的威圧の交渉カードとなっている。我が国としては、このような事態に備え、川上段階から国を挙げて資源権益を確保し、輸送手段も確保していかなければならない。また我が国が強みを持つリサイクル技術の活用等により、輸入依存度を可能な限り低減する必要がある。
今般の事態によって改めて明らかになった我が国のエネルギー供給構造の脆弱性について、官民一体となって構造的課題解決に向け総力をあげた対応を進めるべきである。自律的で強靭なエネルギー供給構造を構築することは国政を担う我々自由民主党の大きな責任であると考える。
以上の基本認識に基づき、資源・エネルギー戦略調査会として、政府に対して以下のとおり、必要な対応策を提言する。
2.脱ホルムズ
(1)調達先の分散化促進のための支援
今般の中東情勢の悪化により、サウジアラビア東西をつなぐ石油パイプラインやエジプトに位置する紅海から地中海に繋がるパイプラインをはじめとした原油輸送の代替ルートが活用されており、本邦企業による上流権益及び安定的な輸送ルートの確保を促進することの重要性が確認された。サプライチェーンの上流から中流、下流にわたって複数のリスクが存在し、特に各国の政策・規制の変更や地政学的要因等によって生じる不確実性等に対応するため、レジリエンスの向上に貢献する施策を検討すること。
また、平時からホルムズ海峡外の調達先から石油を調達・輸送する長期契約を締結していることが、緊急時における供給の安定性や価格上昇の抑制に資すると考えられることも踏まえ、政府の関与の下、こうした契約の締結を促進するための措置を検討すること。
加えて、石油やLNGについて、更なる供給源の多角化を進め、世界における日本企業のLNG取扱量が日本の輸入量を大きく超える状況を保持し、実質的なLNG貯蔵・備蓄能力を確保できるよう、リスクマネー供給を通じた上流権益取得・維持のための支援や長期契約確保支援をはじめ、資源の安定供給確保に必要な施策を講ずること。
更に、現在の不安定な国際情勢では、事態のさらなる悪化・深刻化や、紛争当事国に対する制裁などにより、海上保険に対する欧州の民間保険会社による再保険が付保されなくなるという脆弱性が明らかになりつつある。このような再保険の仕組みは、代替調達を進める際にも、海上輸送を不安定化させるリスクを内包している。このため、2012年のイラン特措法を参考にしつつ、石油に限らないLNGなど重要な物資・製品の海上輸送を可能とする政府再保険等の仕組みも含め、第三者賠償に対する保険のみならず、船舶保険や貨物保険も含め、重要物資の代替調達の実施に当たって保険の確保が支障とならないように早急に検討し、必要な対応を講ずること。
(2)多様な原油の処理を可能とする製油所の設備の改修促進
我が国における製油所は、主に中東産原油を精製することを念頭に最適化された設備構成とされている。原油は産地ごとに性状が異なるため、今後、原油の調達先を多角化していくためには、性状の異なる原油の精製を効率的に行うことが可能となるよう、製油所の設備の改修を行う必要性も生じる。このため、今後、そのような設備改修投資をはじめとして、原油の調達先の多角化に資する取組を促進するための方策を検討していくこと。
(3)強靱な国内の石油製品・LPガス流通体制の構築
危機時を含め、国民に燃料油が広くいきわたるよう、SS過疎対策を強化し、SSネットワークの維持に向けた取組を進めていくこと。また、LPガスは、地政学リスクの低い北米や豪州からの輸入が9割を占め、長期保存が可能かつ、約100日分の備蓄も有しており、エネルギー安全保障にも資する重要な分散型エネルギーである。今般、ホルムズ依存度が低いことの有効性が改めて確認されたことも踏まえ、その強靱な流通体制の維持や利用促進に取り組むこと。
(4)ナフサの在庫積み増しや調達多角化による安定供給の確保
中東地域からのナフサや石化製品の供給が減少したことにより、国内でのナフサの精製を継続しつつ、川中製品の在庫活用、中東以外の地域からのナフサの代替調達を進めることが急務となっている。こうした多様な調達先の確保により、供給リスクの分散を図るとともに、素材の安定供給を確保すること。また、ナフサ以外の原料の活用やケミカルリサイクル等を通じた、化学製品原料の多角化を進めること。
その上で、ナフサについては、現在、石油化学メーカーは備蓄を行っていないところ。安定供給に万全を期す観点から、必要な民間在庫を確保することで、ナフサ不足による経済への悪影響を避けることが重要である。こうした取組を通じて、安定供給に向けた環境整備に係る方策を検討していくこと。
また、石油や石油製品等の流通の目詰まり等については、国民の声に真摯に向き合い、現場の実態を踏まえて、きめ細やかな対応を進める必要がある。その対応状況についても、国民に対して速やかかつ丁寧な情報提供を徹底すること。
(5)パワー・アジアの取組を含む戦略的資源外交
4月に高市総理から発表した「パワー・アジア」の枠組みも活用し、アジア各国の代替調達への金融支援や備蓄制度構築など具体的な取組を進めていくこと。中東産油国との間でも、日本への供給拡大や共同備蓄の取組強化に加え、アジア各国での備蓄拡大においても緊密に連携すること。「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」についても、経済・エネルギー強靱性の視点を加えて進化させ、エネルギー供給体制の強化やエネルギー源多様化、産業の高度化の取組を具体化させること。
(6)工場・中小企業・家庭の省エネ・非化石転換・電化の推進
化石燃料への過度な依存から脱却し、エネルギー危機にも耐え得る需給構造への転換や脱炭素化を進めていく上では、徹底した省エネルギーに加えて、電化や非化石転換に今まで以上に取り組む必要がある。このため、工場や事業所、家庭における省エネ・非化石転換に向けた設備導入を加速するとともに、専門家による省エネ診断の推進、サプライチェーン企業や金融機関、省エネ支援機関等が連携した省エネ推進体制の強化、更なる省エネの推進のための新たな技術開発・導入等に取り組むこと。また、ヒートポンプやコージェネレーションなどの熱供給の効率化を含むエネルギー使用の合理化なども一体的に進めること。
3.電力全般
(1)発電設備及び送電網整備への資金面等での支援
DXやGXの進展に伴い電力需要の増加が見込まれる中、安定供給の実現と電力の脱炭素化を両立していくためには、今後、短期間に集中して、大規模な電源や送電網の整備を進めることが必要である。そのために、今国会に提出されている電気事業法改正案を一刻も早く成立させ、同法案に盛り込まれている電力広域機関による財政投融資を活用した貸付制度を活用していくこと。また、この制度を活用して資金調達が難しい長期かつ大規模な投資を支援していくために、しっかりと必要な予算を確保し、積極的に取り組むこと。
同時に、こうした国民生活に不可欠なインフラである、発電及び送電網全体を支える担い手を維持・拡大する諸施策を検討すること。また、災害時の備えに万全を期す観点から、事業者間の連携強化、無電柱化の推進、地域間連系線の整備など、国民生活や経済活動の基盤である電力の安定供給の確保に向けた対応を着実に進めること。
(2)経済社会の電化の推進
鉄鋼業や化学工業などをはじめとする製造業などにおいても、脱炭素を進めるために一部の工程、プロセスを電化することで、クリーンな素材としての価値を高め国際競争力を高めていくこと。また、カーボンニュートラル実現の観点から物流などの運輸部門においても、電化を推進していくこと。
(3)データセンターの迅速な立地に向けた「ワット・ビット連携」の推進
データセンターの迅速な立地に向けて、脱炭素電源や電力インフラの観点で適した地域へデータセンターの立地を誘導し、電力インフラと通信インフラを整合的に整備する「ワット・ビット連携」を推進していくこと。その際、再生可能エネルギー・蓄電池や原子力発電、コージェネレーションの活用など、多様な方法により「ワット・ビット連携」を実現すること。
(4)トランジション期における火力の適切な活用
水素・アンモニア混焼やCCSなどによる火力発電の脱炭素化に向けた取組に加え、トランジション期においてLNG火力を活用していくことが必要である。さらに、安定供給を確保する観点から、今後も一定期間、高効率石炭火力を含む既設火力を維持・確保することも重要である。このため、長期脱炭素電源オークションにおいて、水素・アンモニアやCCSの支援内容について必要な見直しを進めつつ、LNG火力の新設・リプレースを促進するために十分な募集量での募集継続を行うことを含め、安定供給に必要な火力発電の維持・確保のための措置を講じること。
4.原子力・再エネ
(1)中長期的な原子力発電の見通し・将来像の提示
原子力を持続的に活用していくためには、人材・サプライチェーン・技術等の産業基盤の維持・確保が必要不可欠である。原子力発電の開発・設置には十数年から20年程度という相当長期のリードタイムが必要であることを考慮し、現状のエネルギーミックスで示されている原子力の2040年度における見通しにとどまらず、新たに「中長期的な原子力発電の見通し・将来像」を政府が示すことで、次世代革新炉の開発・設置等に取り組む事業者の予見性向上や投資促進、産業の将来性向上に繋げること。
(2)脱炭素電源が安定して発電収入を確保できる環境整備
原子力を含めた発電事業の収入の予見性確保に向け、長期脱炭素電源オークションを着実に実施するとともに、更なる投資を効果的に促進するために包括的に必要な見直しを不断に行っていくこと。
また、中長期の電力取引の活性化は、小売電気事業者にとって安定的な電力の調達に資するのみならず、発電事業者にとっても予見性の向上に資することから、安定的な電力取引の環境整備に向けて、今般の電事法改正に基づいて中長期市場を創設すること。
需要家と発電事業者によるコーポレートPPA等の長期契約は電源の投資予見性の確保につながることから、GX戦略地域制度に基づく脱炭素電力を活用する需要家への設備投資補助金等を通じてこうした契約を促進すること。
(3)廃炉段階の事業環境整備
廃炉の本格化が見込まれる中、業界全体で連携し、我が国商用炉で初となる原子炉本体の解体工法の確立や、優良事例やノウハウの共有、先進技術の導入による廃炉の円滑化を推進するとともに、廃炉等に伴って生じる廃棄物の処理・処分を加速するべく、国は、電気事業者による処分場確保の取組に対し必要な支援を行うとともに、放射性廃棄物として扱う必要のないクリアランス物について、国の実証事業や電気事業者における利活用を通じたリサイクル利用の拡大を図ること。
(4)核燃料サイクルの確立や最終処分場建設に向けた取り組みの促進
国策である核燃料サイクルの確立に向け、六ヶ所再処理工場の竣工を官民の総力を挙げて必ず実現するとともに、同工場の長期安定利用に向けた技術開発等に取り組むこと。また、国際的な信頼を確保しながら同工場を稼働するため、プルサーマルを推進するとともに、保障措置体制を強化すること。
リサイクル可能な有用資源である使用済燃料を一時的に貯蔵し、原子力発電の安定稼働にも資する、核燃料サイクル政策上の重要施設である中間貯蔵施設の建設・活用を促進すること。また、こうした取組をはじめとする使用済燃料対策に関する事業者間連携を進めるとともに、国も事業者とともに前面に立って主体的な理解活動等を行うこと。
高レベル放射性廃棄物の最終処分は、原子力を安定的に利用していく上で避けて通れない重要な課題であり、文献調査地区の拡大に向けて、地元発意を待つだけでなく、国の責任で地域に協力をお願いしていくことも進めていくこと。また、最終処分は全国が向き合うべき課題であり、国民的理解の醸成に向け理解活動に取り組むべきであり、特に、国として科学的により良い場所を選定するためにも、文献調査や概要調査を行うことがまずもって必要であること等について丁寧に説明し、全国の基礎自治体首長や都道府県知事の理解と協力を得るよう、国策として、国が前面に立って取り組むこと。
(5)再稼働や次世代革新炉の開発・設置に向けた審査の合理化、検査の効率化による設備稼働率の向上
再稼働や次世代革新炉の開発・設置に向けては、プラント設計や工事を迅速に進めるため、早期に地理的条件を確定することが重要であり、先行してハザード審査(地盤・地震・津波等)を行う仕組みを整備するなど、安全性の確保を大前提に、審査プロセスの合理化に取り組むこと。次世代革新炉の規制基準の明確化に向けては、事業者との意見交換の枠組みを維持し、対話を加速すること。また、設備稼働率の向上に向けては、オンラインメンテナンスの拡大や検査頻度の見直しなど、定期検査の効率化に取り組むこと。
(6)次世代革新炉・フュージョンエネルギーの早期社会実装に向けた、公的な支援体制の抜本的な強化
米国などではスタートアップ等により、SMRはじめ次世代革新炉の開発が活発になっていること、例えば高温ガス炉では原子力×水素といったように、異分野との連携の重要性が増していることを踏まえ、様々な主体が行う原子力の研究開発への政府による資金供給機能の強化に向けて、NEDOを念頭に必要な措置を講じること。また、フュージョンエネルギーに関するスタートアップ等の研究開発を強力に推進するため、NEDOを念頭に資金供給機能の強化に向けて必要な措置を講じること。
フュージョンエネルギーの早期社会実装とそれに繋がる世界に先駆けた2030年代の発電実証に向けて、そのための研究開発の強力な推進に加えて、産業の振興、安全の確保、人材育成、国民の理解促進等を図ることについて、国としての方針を示しつつ、産業化を見据えた国家基盤技術としての位置づけを明確する「フュージョンエネルギー推進法(仮称)」の検討を進めること。
(7)地域と共生した再エネの最大限の導入・送電網整備
昨年末に決定された「メガソーラー対策パッケージ」に基づき、不適切事案に対する法的規制の強化や、当該規制を運用する自治体との連携強化等、必要な施策を迅速かつ着実に実行すること。加えて、地域との共生が図られた望ましい事業は促進する観点から、屋根設置等の地域共生が図られた導入形態やペロブスカイト太陽電池等の次世代型太陽電池への支援の重点化を行っていくこと。また、太陽光パネルのリサイクル推進に当たっては、その市場形成が重要であることを踏まえ、「太陽電池廃棄物の再資源化等に関する法律案」に基づく措置や予算措置等を通じて、太陽光パネルのリサイクルの費用低減と体制整備を図ること。
再生可能エネルギーの更なる導入に向け、送電網の着実な整備が重要であるため、広域連系系統のマスタープランを踏まえた地域間連系線の整備や、地内基幹系統の計画的な整備を進めていくこと。
(8)国産ペロブスカイト太陽電池の公共施設・インフラ空間等への社会実装加速
ペロブスカイト太陽電池等の次世代型太陽電池については、政府調達を最大限に活用しつつ、自治体を含めた公共施設・インフラ空間等に対して2035年に5GWの導入を目指し、関係省庁が連携して積極的に導入を進めていくこと。さらに、海外市場への展開も見据えた国際標準の策定を進めるとともに、サプライチェーン全体での国産化を推進していくこと。
(9)洋上風力の国内サプライチェーン構築に向けた事業環境整備
洋上風力の国内サプライチェーンを構築し、洋上風力のコストを低減するためには、着実な案件形成によって関連企業による投資の予見可能性を確保することが不可欠である。このため、事業の着実な実現に向けた事業環境整備として、事業実現性を重視する方向で、洋上風力発電事業者を選定する公募制度の見直し等を進めること。国内に風車製造拠点を設立することは、我が国の技術・産業を活かした風車サプライチェーン構築に必須であり、このための海外の企業との連携や国産風車開発への支援に取り組むこと。
(10)次世代型地熱の開発推進、地熱発電促進のための法令の検討
我が国の地熱ポテンシャルを4倍以上に拡大する可能性がある超臨界やクローズドループなどの次世代型地熱発電技術について、グリーンイノベーション基金を活用した技術開発と国内有望地点での実証により、2030年代早期の実用化へ向けて取組を加速すべきである。また、地熱発電のさらなる促進のため、関係省庁とも連携しつつ、必要な法令の検討を進めること。
5.水素等・CCS
(1)水素大動脈構想の実現に向けた官民一体での集中投資
水素・アンモニアは脱炭素に加え、エネルギー安全保障と経済成長に資するエネルギーとしても重要。高温ガス炉や天然水素等、将来的な国産化や価格低減に資する研究開発・環境整備や商用化に向けた実証の推進に取り組むこと。また、水素大動脈構想の実現に向けて、東名阪をはじめとする幹線道路において2031年商用車1,000台以上、32年以降トラック1,500台以上、今後10年で商用車向け大規模ステーション30ヶ所程度の建設を目指し、官民一体の集中投資を推進すること。加えて、国際展開にむけた欧州・アジアなど需要国連携や供給源多角化に向けたインドなど供給国との連携、国際標準化戦略の推進、世界に先行したアンモニアバンカリング拠点構築をはじめとする海運・船舶分野での取組推進を図ること。
(2)SAF,E10などバイオ燃料普及の推進、安定的かつコスト抑制的なバイオ燃料の確保
バイオ燃料の活用は、脱炭素化のみならず、エネルギーの中東依存度の低減や、我が国の産業競争力の観点からも極めて重要。具体的には、国産SAF(持続可能な航空燃料)の更なる導入に向けた需要創出に取り組むこと。また、バイオエタノール混合ガソリン(いわゆるE10やE20)は我が国の内燃機関の強みを活かす上でも重要な取組であり、先行導入事業の実施やインフラ投資の促進など、その導入に向けた取組を最大限加速すること。さらに、海外におけるバイオ燃料製造業への日本企業の参画も含めて、バイオ燃料の安定的かつコスト抑制的な調達の確保に向けて政府として必要な措置を検討すること。
(3)カーボンリサイクル燃料の推進
合成メタン(e-methane)は、既存の供給インフラを活用できるため、ガスの円滑な脱炭素化に寄与する燃料である。本格的な社会実装を目指し、生産能力向上に向けた技術開発を進めていくとともに、需要先の拡大や国内普及を見据えた環境整備を進めること。また、合成燃料についても、2030年代前半までの商用化を目指し、技術開発支援や需要喚起を進めること。
(4)CCSによる石炭を含むエネルギー資源の将来にわたる有効利用の促進
CCS(二酸化炭素回収・貯留)は、実績のある国内産業技術・設備を最大限活用していく手段として有効であり、国際情勢による足下及び中長期的な投資環境の変化に対応可能な技術である。CCS事業の自立化に向けた支援制度の検討を進め、石炭火力発電を始めとした化石燃料の将来にわたる有効利用と、原油の国内精製能力の将来にわたる確保により、エネルギー供給構造の強靱化と脱炭素の両立を図ること。
6.鉱物資源
(1)重要鉱物の鉱山開発や製錬事業に対する支援及び国家備蓄の強化
レアアース等の重要鉱物は、我が国の産業に必要不可欠な資源であり、今後も需要の増加が見込まれるが、その供給の多くを特定国に依存している状況であるため、供給源の多角化等の取組により、国内サプライチェーンへの安定的な供給を確保することは非常に重要である。これまでも、例えばレアアースに関して、豪州での鉱山開発や、マレーシアやフランスでの分離精製事業に政府出資を行うことで、代替供給源の形成を進めてきているが、特定国に依存している他の鉱種も含めて、更なる代替供給源形成を加速化させるためにも、鉱山開発・製錬事業への出資や助成金支援を進めて、特定国依存の早期低減を図ること。あわせて、マンガン団塊や南鳥島沖レアアース泥を含む海洋資源開発の更なる促進や、供給途絶に備えるための国家備蓄の強化に取り組むこと。
(2)二次資源確保としてのリサイクル(サーキュラーエコノミー)の推進
重要鉱物の安定供給確保のためには、鉱山からの鉱石の供給に加えて、リサイクル材からの供給も重要である。リサイクル材を原料とした製錬事業への日本企業の参画を促すためにも、出資や助成金による支援とあわせて、制度的措置の見直しを進めること。また、リサイクル材の回収拡大や不適正な国外流出抑制等により、金属スクラップ等の国内資源循環を促進し、基幹産業にリサイクル材を質・量・コストの面で安定的に供給するサプライチェーンの強靱化を図ること。あわせて、国内での資源循環等の重要な機能を担っている国内製錬所の維持・強化も含めた、国際的な資源循環ネットワークを構築すること。
(3)国際連携による取組
サプライチェーンが国際的に繋がり、日本のみならず国際連携による取組の重要性が高まる中、同志国と連携し、重要鉱物に係る貿易政策・メカニズムについて協議を行うなど、供給源を多角化するための枠組みの検討を進めること。
7.国際展開
世界のエネルギー情勢が大きく変化する中、各国のエネルギー需給構造をより安定化・効率化するためには、一国での取組だけでなく、多国間及び二国間のエネルギー協力を戦略的に組み合わせつつ、国際的な協力を拡大することが重要。我が国の優れたエネルギー技術については、こうした点や、アジアを中心に世界のエネルギー安全保障に貢献する観点からも積極的に国際展開を推進すること。
特に、原子力については、世界での利用が今後拡大する見込みである中、我が国が有する技術や知見を用いて、原子力安全の向上や、原子力の平和的利用、核不拡散及び核セキュリティ分野において、引き続き積極的な貢献を行っていくべきであり、また、我が国原子力産業のサプライチェーンや原子力人材強化の観点からも、国際プロジェクトへの参画を積極的に進めていくこと。
また、我が国が優れた技術を有する火力発電や送配電システム、LPガス保安システムについても、同様に「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」パートナー国をはじめとし、広く官民で連携して国際展開を進めていくこと。