原子力安全規制・原子力防災の充実・強化等に関する提言(中間報告)2026
令和8年6月2日
自由民主党政務調査会
原子力規制に関する特別委員会
<はじめに>
前身組織を引き継ぎ平成30年1月に発足した「原子力規制に関する特別委員会」は、同年6月、13項目からなる提言を取りまとめた。提言では、「安全規制については引き続き制度と運用の更なる改善が必要」とした上で、「3年後をめどとして、本提言に関する関係機関の取組を検証することとし、必要に応じ更なる見直しを提言」することとされている。
これに則り、本特別委員会では、対応状況を検証し、最新の内外の情勢を踏まえるとともに、自治体・事業者とのコミュニケーションのあり方や審査の効率的実施など、更なる改善が必要な事項と、あるべき対応の方向性を整理し、令和5年6月に政府・関係者に提言を行った。
その後、政府が、立地自治体地域の理解を得て女川2号、島根2号、柏崎刈羽6号を再稼働させたことは、これまでの本特別委員会の提言を実現する大きな進捗である。また、原子力規制委員会は、令和7年6月の長期施設管理計画の運用開始までに30年超で運転する原子力発電所の計画に係る認可を全て終了させたほか、令和8年4月に特定重大事故等対処施設(特重施設)の経過措置の見直しの方針を決定するなど、提言の実現に向けた一定の進捗が出ていることも評価できる。
一方で、安全性を最優先した上での審査の効率的実施は、引き続き原子力規制委員会・事業者双方にとって大きな課題であり、各施設のリスクに応じた規制運用の徹底や、次世代革新炉の開発・建設に対応する規制基準整備の必要性など、原子力の安全規制に係る新たな課題も提起されている状況にある。こうした状況変化を踏まえ、令和5年提言以降の状況変化に応じた修正や、新たに提起されている課題を追加し、本特別委員会の新たな提言とすることとしたものである。
言うまでもなく、原子力は安全性が最優先である。本提言は、原子力規制委員会が行う個別の技術的判断ではなく、関係者にとって納得感のある形で、原子力安全規制と原子力防災の制度・運用の更なる充実・強化を図ることによって、国民とりわけ立地自治体住民の安全・安心をより確かなものにすることを目的としている。
本提言が関係者において真摯に受け止められ、一日も早く実行に移されることを強く求める。
<規制の合理化と継続的改善~審査・検査の高度化>
(提言1)リスクに応じた効果的・効率的な審査の実施
- 安全性を高めるためには、有限であるリソースをよりリスクの高い事象に集中する「セーフティ・フォーカス」が重要であり、「効率性」は安全と対立する概念ではない。そして、厳格な審査のみに固執し、長期にわたり運転を停止させることは、事業者の予見可能性の低下から人材や投資の減少を招き、かえって安全上のリスクを生む懸念がある。原子力規制委員会は、米国NRCの例も参考としつつ、規制活動の効率性が重要であることを認識し、それを自らの活動の原則の重要な一要素として明確に位置づけて規制活動にあたること。
- 原子力規制委員会は、安全重要度に応じたグレーデッドアプローチにより、真に安全性の確保に必要なものに審査を集中する観点から重要度の低い変更については認可の対象を届出としたり、申請内容の合理化を図る等により申請者・審査者双方の負担を軽減する許認可制度の見直し、廃止措置施設中の施設や燃料製造施設等の発電用原子炉等に比べ放射線被ばくのリスクが小さいと考えられる施設の審査や施設管理・訓練等の規制要求へのグレーデッドアプローチの適用等の取組を進めること。
- 原子力規制委員会は、将来的な審査需要の見通しをもって円滑な審査の実施に十分な体制を維持するとともに、審査に必要な情報の整理へのAIの活用等の業務の効率化に取り組むこと。
- 研究炉や再処理施設の審査について、その施設の性格、出力、個別の安全機能等を踏まえてリスクを適切に評価し、審査についても真に安全性の確保を中心に行うなど、合理的な運用を図ること。
- 原子力規制委員会は、共通の機器設備に対する型式証明や施設に共通する安全事項の技術的妥当性を確認するトピカルレポート等の対象について、引き続き事業者と意見交換を行い、審査の合理化と実効性確保を図ること。
- 原子力規制委員会が、審査会合での議論をより実効性あるものとすべく、審査会合における指摘を事業者に確認の上で文書化すること、原子力規制委員会委員や原子力規制庁職員の現地確認の機会の増加を図ることなどの取組を継続していることは評価できる。また、原子力規制委員会と事業者の意見交換の場において、効率的な審査実施に向けた前向きな議論もなされていることも評価できる。
- こうした良好な取組を一時的、一回限りに終わらせることなく継続的に実施し、ヒアリングでの事実確認を踏まえ、審査会合前に会合での論点や質問・確認事項を整理して文書で提示し、事業者に準備を求めることなど、六ヶ所再処理工場など核燃料サイクル施設の審査を含め、効果的・効率的な審査会合の実現に向け、事業者とのコミュニケーションの更なる改善に取り組むこと。また、審査のスケジュールについて事業者と認識の共有を図るなど、審査運営の効率化を図ること。
- 我が国の原子力発電所の適合性審査では、許認可の審査の多くが行政手続法上の本来の標準処理期間である2年を遥かに超えて遅延している。原子力規制委員会は、この点を率直に認識し、既存の審査結果を活用するなど、審査迅速化の工夫をすること。そして、個別の申請案件毎に、標準処理期間にも留意しつつ、事業者との間で論点とその議論に要する期間を共有し、定期的に更新するとともに、遅れが生じた場合には、原子力規制委員会・事業者ともその理由を明確にすることなどにより、審査運営の効率化を図ること。
- 原子力規制委員会は、個別審査の細部にわたるまで原子力規制委員会委員が直接審査を行う規制運用が、審査の長期化の一因になっている可能性に留意し、米国のNRCの例にも学び、例えば、基準適合性に関する専門的知見に基づく審査原案の審議・作成については原子力規制庁事務方に委ね、原子力規制委員会は、事務方の審査原案の裁定に徹するといった役割分担で適切なチェックアンドバランスを確保するなど、高い独立性と大きな権限を付与された合議制委員会の趣旨を踏まえた、適切な規制運用体制の実現を図ること。
- 原子力規制委員会は、予見可能性の確保などデュープロセス(適正手続)に基づく規制行政を早急に実現すること。そのために、米国NRCが、自らの活動原則に「効率性」「首尾一貫性」を明記し、「現実的な規制がなされなければならない。リスク低減効果と整合させつつ投入資源を最小化する必要がある」「規制判断を安易に不当に覆すことのないこと、文書化した手順により迅速、公平かつ断固たる態度で運営されること、これにより原子力利用の実施と計画が安定的になされるべき」という考え方に沿って、第三者の専門性も活用しながら規制活動を実施していることに学び、原子力規制委員会は、場合により大きな手戻りも生じている自然現象の審査を含め、安全規制及び運用のあり方について、IRRS等の助言を参考にして、国際的な視野から常に点検し、改善すること。
- 原子力事業者は、先行審査の知見の共有や、経験を有する人材の相互支援など、円滑な審査対応に向けた連携体制の強化に取り組むこと。原子力事業者は、メーカーも含めた産業界全体でのバックアップ体制のもと、正確な資料作成と適切な説明を徹底し、審査の進捗に全力で取り組むこと。
- 安全規制の執行は、運転を止めるものとなってはならず、国民とりわけ立地自治体住民の安全を実効的に確保することが重要である。そのため、原子力規制委員会は原子力規制庁との間の頻繁、十分な意思疎通を図り、審査会合での手戻りなどによる事業者に大きな負担を求めることがないよう、留意すること。
- 審査は、客観的なガイドライン・判断基準に依拠して行われるべきであり、原子力規制委員会は、新規制基準の解釈を明確化・客観化すること。
(提言2)再稼働炉の最大限の活用を可能とする安全規制
- 高炉から電炉への転換などのGXの進展に伴う電化や、生成AIの普及拡大に伴うデータセンターや半導体工場などの増加により、将来の電力需要は増加する可能性が高い。天候に左右されず一定出力で安定的に発電可能な原子力は、増加が見込まれる製造業のGX、定格稼働するデータセンターや半導体工場等の新たな需要のニーズに合致する。また、緊迫する中東情勢を受けて、原油価格の高騰や供給の不安定化への懸念がある中、国民生活と経済活動を守る必要がある。代替調達や備蓄などにより当面の石油供給の確保の目処はついているが、政府及び事業者はエネルギーの需給逼迫に備える必要がある。現在稼働している原子炉を最大限活用できるよう、安全性の確保を前提に様々な取組や検討を行うとともに、次世代軽水炉をはじめとする次世代革新炉の建設等の将来に向けた検討を進めるべきである。
- 安全規制の適用期限に関しては、審査期間や稼働の実態を踏まえて適用することが望ましく、特重施設の設置期限については、原子力規制委員会がその見直しの方針を決定したことは評価できる。原子力規制委員会は、バックフィットルールの適用にあたり、発電所の運転停止を求めることが、かえって安全性向上を阻害する場合があることを認識し、引き続きリスクの大きさに合わせた適切な対応を図ること。
- 原子力規制委員会は、IRRS、IPPAS(IAEAによる評価サービス)ミッション、ICRPやIAEAの最新の勧告・基準等、世界の安全規制の動向を積極的に取り入れ、自らの活動の改善に取り組むため、こうした国際機関による評価を定期的に受検すること。
- 新検査制度の下、現地検査官と現場のコミュニケーションが改善され、制度が適切に運用されていることは評価できる。原子力規制委員会は、実態に即した合理的な検査に留意しつつ、継続的に運用改善を図るとともに、原子力規制委員会・事業者の双方が、安全性を確保しつつ、効率的な規制執行を実現するため、リスク情報について、オンラインメンテナンスの導入、定期検査の作業の合理化や点検項目の適正化の検討など、様々な分野での活用拡大に向けより一層努力すること。
- 近年原子力施設の周辺で活断層と特定できないものの、地形の特徴から活断層の存在が推定されるとする国土地理院の発表により、原子力発電所の基準地震動等の再確認作業が行われているが、これは原子力規制を一手に引き受ける原子力規制委員会の業務に手戻りを生じさせるものであり、問題と考える。原子力関係施設周辺の断層に係る調査について、国土地理院は原子力規制委員会と継続的に進捗状況を共有するとともに発表の仕方について慎重に検討すべきである。また、原子力規制委員会は、こうした学術研究の状況・熟度を発表元に十分確認しつつ、業務に手戻りを生じさせることを避けるよう、リスクに応じた取扱を慎重に検討すべきである。
(提言3)事業者の自主的な安全性向上に向けた取組の促進
- 原子力規制委員会は、リスク評価を踏まえた定期事業者検査の間隔の見直しによる長期サイクル運転や安全性を高める新型燃料の導入などについて、事業者の検討状況にあわせ、規制上の取扱について対応を早急に進めること。
- 原子力規制委員会は、安全性向上評価制度について、事業者に多大な負担を求める一方で、その活用が不十分な現状を踏まえ、記載項目の重点化や、事業者の自主的・継続的かつ現場の効率的・効果的な安全性向上の取組を促進する観点から、制度の見直しを図ること。
- 原子力規制委員会は、日本版インフォメーション・ノーティス制度を活用し、規制当局の関心事項を広く事業者に周知すること。
- 事業者は、立地自治体住民をはじめとする国民からの信頼が、原子力事業を進めていく上での基本であるとの認識のもと、継続的な安全性向上に向けた組織・運営体制の改革に取り組むこと。また、事業者を含む原子力産業界は、長期運転の安全を守るのは事業者自身であることを強く認識し、産業界で連携し、新たな知見・技術を積極的に取り入れ、社内のリスクマネジメント体制の整備を進めるなど、継続的な安全性確保に取り組むこと。その際、外部の目、知見を取り込み、互いに高めあう観点から、産業界の自主規制組織であるJANSIのピアレビューや、IAEAによる国際的な安全評価レビュー等を積極的に活用すること。特に、IAEA評価レビューについては、長期運転などの海外の最新知見を積極的に取り入れる観点から、産業界として計画的な形での活用を図り、成果の横展開を積極的に進めること。
- 事業者が継続的な安全性向上に向けた組織・運営体制の改革に取り組み、立地自治体住民をはじめとする国民からの信頼を維持することが事業実施の大前提であることを再確認の上、先に発生した事業者による基準地震動の策定に係る不適切事案を踏まえ、すべての事業者は、再度自らの組織の状態を点検し、同様の事案が起こらないよう安全文化の徹底に努めること。
- 原子力規制委員会は、上記の事業者による基準地震動の策定に係る不適切事案を申告がなければ把握できなかったことを踏まえ、今回の問題を受けて原子力エネルギー協議会(ATENA)が検討している地震動評価に関するプロセスの標準化や品質保証に関する改善策等を活用して事業者の申請内容の品質を担保するなど、不適切な内容の申請の抑止や必要な検証を可能とする方策について、法制度の改善も含めて検討すること。
- 事業者は原子力施設を効率的に管理し、安全性を確保できるようAIやAMT(Advanced Manufacturing Technology)等の新たな技術の活用を検討すること。原子力規制委員会はこうした事業者の取組が円滑に進むよう適時に規制上の必要な検討を行うこと。
<将来安定性を見据えた規制整備・制度構築>
(提言4)次世代革新炉の開発・建設等に対応する規制の検討
- 政府は、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設を進めるにあたっては、その根本的な目的が安全性の抜本的な向上を実現する点にあることを旨とし、計画的にこれを進めること。原子力規制委員会は、事業者にとって、技術開発や事業計画の検討に取り組む上で、規制の予見可能性を確保することが重要となることを踏まえて適切に対応すること。
- 原子力規制委員会は、次世代革新炉の導入が安全性の向上に資するものであることや、事業者にとって、技術開発や事業計画の検討に取り組む上で、規制の予見可能性を確保することが重要となることを踏まえ、その開発・建設に必要な規制基準の検討を進めること。その際には、次世代革新炉のうち高温ガス炉、高速炉、SMRに係る原子力安全規制のあり方について世界の最新動向を適切にフォローするとともに、開発段階から積極的に原子力事業者・メーカー・研究機関と安全性確保に係る技術的事項について意見交換を行い、安全規制の早期整備に努めるとともに、事業者が開発・設計を進める上で必要な安全規制の考え方を、適切な時期に示すよう取り組むこと。
- また、特に高速炉や高温ガス炉など、実用炉として許認可実績のない炉型の実証炉に関する規制のあり方については、審査や緊急時計画区域の設定などにおけるリスク情報の積極的な活用や、申請前から審査の論点を明確化するための事前レビュー制度の導入など、世界の最新動向を踏まえて検討を行うこと。
- 次世代革新炉の建替・新設や新基準未適合炉の審査については、予見性の低い敷地の自然現象について設置許可申請に先行して審査を行い、その評価を確定させ予見性を確保した後に、施設の設計を含む設置許可申請を行うことを可能とする法的枠組みについて検討すること。
- 原子力規制委員会は、次世代革新炉の建替・新設については、既存の審査を通して得られた知見を活用すること等により、合理的に審査を進めることができるよう、審査の進め方について検討を進めること。
- フュージョンエネルギーについては、安全性を確実に確保するため、原子力規制委員会は、科学的に合理的で国際整合性を確保した安全規制を開発状況に応じて段階的に検討し、整備すること。
(提言5)再処理施設の稼働への対応と保障措置の充実
- 我が国は、高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度低減、資源の有効利用等の観点から、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を有効利用する核燃料サイクルの推進を基本的方針としており、2027年春には六ヶ所再処理工場の竣工が予定されていることを踏まえ、政府は、核燃料サイクルの中核となる六ヶ所再処理工場とMOX燃料工場については竣工後の安全の確保と安定的な長期利用に向け、官民で対応を進めること。
- 原子力規制委員会は、日本原燃が示している使用前事業者検査に係る対応について対象となる設備機器等が膨大であるという再処理施設の特性に鑑み、その妥当性を確認するとともに、設計及び工事の計画の認可における類型化も踏まえ、「セーフティ・フォーカス」に基づく十分かつ効率的な検査を行うなど、その安全の監視に万全を期し、円滑な検査実施に必要な人員体制を構築すること。また、事業者は、六ヶ所再処理工場とMOX燃料工場の稼働に向けて、電力事業者等からの人的支援の下、原子力規制委員会の審査及び検査に的確に対応すること。
- 我が国は核兵器不拡散条約(NPT)に基づく国際約束の履行としてIAEAの保障措置を受け入れ、事業者等によるウラン・プルトニウム等の計量管理を行うとともに、IAEAによる査察等を受けている。日本は20年以上続けてIAEAから最高評価の「すべての核物質が平和的な活動にとどまっている」という拡大結論を得ており、これにより他国から核物質や原子力資機材の提供を受けることができているが、昨今の安全保障環境の不安定化や核拡散リスクの高まりに応じ、IAEAは保障措置の実効強化を求めていることから、政府及び事業者は、これに真摯に対応し、我が国の原子力の平和利用に疑念を抱かれることがないよう万全の対応を行うこと。
- 世界で唯一の商業用再処理施設である六ヶ所再処理工場と隣接するMOX燃料工場では、核兵器転用が容易なプルトニウムを大量に扱うため、核不拡散の観点から国際社会から高い関心が寄せられていること、従来の施設と比べて高度で厳しいレベルの保障措置が求められることを踏まえ、原子力規制委員会は、関係行政機関及び事業者と連携し、我が国全体の保障措置の充実強化に早急に取り組むこと。特に、事業者が保障措置において果たすべき役割を規制要求として明確にするとともに、国と定型的な事務を実施する指定機関(公益財団法人)とが連携して担っている現在の保障措置の実施体制について、IAEAの査察への柔軟かつ機動的な対応と、安定的な意思疎通を維持できるよう、例えば独立行政法人を設置することなども含め、見直しを検討すること。
- 政府は、困難に直面しているNPT体制の維持において我が国が中心的役割を果たそうとしていることを踏まえ、保障措置活動に従事する人材のIAEAへの出向・派遣を増やすなど、NPT体制を支える人材の供給や技術的貢献等も視野に、保障措置人材の育成や知見の蓄積を計画的に進めること。
(提言6)放射性廃棄物の管理・処分
- 原子力利用を行う際に発生させた高レベル放射性廃棄物の最終処分事業は、国のエネルギー政策を推進していく上での最重要課題の一つであり、その対策について現世代の責任として将来世代に負担を先送りしないよう確実に進めることが不可欠である。経済産業省、原子力発電環境整備機構(NUMO)、原子力事業者は、安全技術の更なる向上に努めるとともに、それぞれの責務を果たし高レベル放射性廃棄物の最終処分の実現に向けて国民理解・地域理解に弛まぬ努力を続けていくこと。また、国において最終処分地の選定に向けた文献調査が進められている状況を踏まえ、原子力規制委員会は、「特定放射性廃棄物の最終処分に関する基本方針」(平成27年5月22日閣議決定)に基づき、各段階において順次「安全確保上少なくとも考慮されるべき事項」を示すこと。
- 国は、前面に立って、原子炉の解体に伴って生じる廃棄物の処理・処分を含め、廃止措置の円滑な実施が可能となるような事業環境整備に取り組むこと。
- 研究機関や大学などにおいて、利用実態がない放射性物質が全国に分散して保管されており、安全上のリスクの顕在化が懸念されている。これらの管理上のリスクを低減させるため、関係行政機関及びJAEA等は集約管理を実現するための具体的な方策を策定し、その実施に向けた体制整備のために適切な資源投入を行うこと。
- 廃止措置の円滑化の上でクリアランス制度の社会定着が重要であるが、同制度の活用が十分に拡がらない現状を踏まえ、原子力規制委員会、事業者、政府をはじめとする関係者が、クリアランス制度の活用にあたっての課題を真摯に検討し、改善に取り組むこと。
- 福井県では廃炉を地域振興、産業育成のチャンスと捉え、昨年福井県原子力リサイクルビジネス準備株式会社を設立し、地域のクリアランス推定物を集中処理の実現に取り組んでいる。廃止措置工事への地元企業の参入は他の地域のモデルとなるものであり、原子力規制委員会はこうした新規参入者に対して予見性を高める観点から求めに応じて意見交換の場を設けるなど積極的な対応を行うこと。
<原子力防災と有事への備え>
(提言7)福島第一原子力発電所の着実な廃炉と教訓の活用
- 東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は世界にも例のない困難な事業であり、廃炉作業が安全かつ着実に進められるよう、リスクの所在を的確に把握し、そのリスクが着実に低減されているか監視を継続すること。
- 原子力規制委員会はデブリ取り出しに向けて引き続き東京電力や原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)と技術的な対話を積み重ね、安全性が確保された最適な工法が選択されるよう監視すること。
- 原子力規制委員会は、国内外の広い専門家の参加を得ながら継続して事故の調査分析を進め、得られた知見については、必要に応じて規制に反映するとともに国内外に発信すること。
- 政府は、福島県を中心とする陸域及び海域において、引き続き適切なモニタリング体制を維持し、モニタリングデータの科学的評価も含め、総合モニタリング計画に基づく放射線モニタリングを着実に実施すること。また、モニタリングの結果を国内外に適確に発信すること。
(提言8)原子力災害対応の実効性の向上
- 原子力規制委員会は、引き続き、最新知見等を踏まえ、立地自治体の意見も適切に反映し、原子力災害対策指針等の充実・見直しを不断に行うこと。特に、新規制基準に適合した原子炉に備わっている事故対応設備の性能等を踏まえ、原子力緊急事態における対応の基準となるEAL(緊急時活動レベル)を適切に見直し、立地自治体地域の負担が合理的なものとなるよう取り組むこと。
- 地域防災計画、避難計画の充実・強化に取り組むとともに、訓練結果の検証等を通じた実効性の向上に政府・立地自治体が一体となって不断に取り組むこと。
- 内閣府は、引き続き、立地自治体における放射線防護対策や資機材整備等の支援を行うとともに、放射線防護施設に係る運用・維持管理の考え方について、現場で実効的な対応が確保されるよう、立地自治体に対し、更なる周知を徹底するとともに、必要に応じて改善に取り組むこと。
- 政府は、原子力災害時に実効性ある対応が行えるよう、災害医療との連携を含む原子力災害医療体制の充実化に取り組むこと。
- 原子力災害は、多くの場合は地震等の自然災害との複合災害の形で発生すると想定され、そのような複合災害の際には、政府全体で取り組まれている自然災害対応との連携を強化することが極めて重要である。南海トラフ地震等と原子力災害の複合災害時も考慮した原子力防災の強化に向けて、立地自治体のニーズに効果的に対応できるよう、政府は、防災庁と内閣府等を緊密に連携させるとともに、屋内退避中の生活支援の継続等について関係機関に協力を要請するなど、関係機関間の連携をより高めること。
- 政府は、防災研究、人材育成、緊急時対応支援等により、防災支援組織の更なる充実を図り、対応要員の対応力を向上させること。
- 原子力防災について、放射線防護に関する様々な指標の持つ意味を含め、複合災害時の屋内退避の効果や屋内退避の運用に関する原子力規制委員会の判断の考え方について立地自治体住民の理解促進に積極的に取り組むこと。
- 原子力災害対策の重要性に鑑み、対象地域が拡大された「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特別措置法」(原子力立地地域振興特措法)について、さらなる支援措置の検討を進めること。
(提言9)避難道路等の優先的な整備の加速化
- 内閣府、国土交通省、経済産業省など政府の責任において、原子力災害対策の重要性に鑑み、立地自治体地域からの要望を十分踏まえ、地方負担分に電源立地関係の交付金を充当可能とする交付規則改正や原子力立地地域振興特措法の対象地域の半径10kmから30kmへの拡大など、講じられた制度改正を活用し、必要な避難道路等のインフラ整備や航路等の避難経路の確保を加速化すること。
- 経済産業省は立地自治体地域の要望を受け止め、立地自治体地域の課題解決に向けた方策の検討を行い、窓口として関係各省との調整をする役割を果たすこと。
- 経済産業省は立地自治体地域の要望の実現に向け、関係省庁の支援制度の活用への橋渡しや県への働きかけ等を行うこと。
- 内閣府は、立地自治体地域に寄り添い「緊急時避難円滑化事業」の更なる拡充と効果的な活用を進めること。
- 避難道整備をはじめ、万が一への備えのためにも、平時の立地自治体地域の活性化のためにも、新規立地や地域拡大を含め原子力立地関係各種交付金の拡充により、立地自治体地域に更に寄り添うこと。
- 「原子力立地地域振興特措法」の道路に関する国の補助率は一般補助率+5%として55%とされているが、平成30年より道路財特法により一般補助率が55%となっているため、肝心の「原子力立地地域振興特措法」による補助率嵩上げ効果が没却されてしまっている。この問題の早急解決のため、「原子力立地地域振興特措法」を早期に改正することで、避難道整備における国の補助率を嵩上げすることを検討すること。
(提言10)テロ対策・武力攻撃対処の強化
- 原子力規制委員会・事業者とも、改めてサイバー攻撃対策を含む核セキュリティ体制の強化、核セキュリティ文化の醸成に、徹底して取り組むこと。
- 事業者は、機微情報の取扱に留意しつつ、事業者間の相互レビューや、海外を含めた外部の知見・技術を積極的に取り入れ、自らテロ対策の強化を進めること。
- 原子力規制委員会・事業者は、核セキュリティに関する閉鎖性を認識しつつ、組織内の情報共有のあり方を反省し、改善するとともに情報開示の充実を図ること。
- ウクライナにおいて原子力施設への武力攻撃が現実となる中、引き続き、立地自治体住民の不安を払拭するためにも、国際的な対応を参考にしつつ、こうした連携会議を活用し、関係機関相互の連携強化に不断に取り組むとともに、警察、自衛隊等の関係機関と協力しながら訓練を徹底する等、国・立地自治体・事業者及び関係者は、有事を含む実効力を高めること。
- 急速に一般に広まり、技術開発も著しいドローンについては、原子力規制委員会は、事業者に検知や遅延等の防護措置の義務づけ、警察との連携強化などの必要な対応を行わせるとともに、引き続き警察等の関係機関と連携して対応の向上を図ること。また、関係省庁はウクライナ侵攻等最近の紛争ではドローンの軍事利用が現実のものとなっていることを踏まえ、様々な事態を想定した検討を継続すること。
- 昨今の国際情勢を踏まえ、原子力規制委員会は、職員の情報やデジタル機器の管理を徹底すること。
<原子力規制への信頼確保~対話・人材等の基盤強化>
(提言11)コミュニケーションの継続的改善
- 立地自治体住民の安全確保は規制の最優先事項であり、規制当局の活動について最も情報を必要としているのも立地自治体住民である。原子力規制委員会は、委員長及び委員、原子力規制庁幹部が、積極的・恒常的に、立地自治体と意見交換を行うこと。特に、審査が長期化している原子力発電所の立地自治体に対しては、その求めに柔軟に対応し、審査状況の説明を丁寧に行うこと。
- 原子力規制委員会は、ATENAなど原子力に関わる関係者と、対等な立場でオープンな意見交換を行うこと。また、ATENAは、原子力事業者やメーカー等が連携して自ら効果的な安全対策に取り組むための中心的組織としての役割を強く認識し、規制の改善を含む安全性向上の取組を手戻りなく進めるためにも、原子力規制委員会に対し、方向性検討の段階から丁寧で積極的な提案を行うこと。そして、原子力規制委員会及び原子力事業者の双方は、相互に学び合い、高め合うという問題意識を常に持ちながら、安全に関する知見や問題意識を共有する機会の創出・活用に努めること。
- 原子力規制委員会は、炉安審・燃安審について、更に広範な専門家の意見を聞くという視点で、多様な分野の専門家を擁する機関として、個別の諮問事項のみならず、原子力規制に関わる幅広い事案について意見交換を行うこと。
- 原子力規制委員会と原子力規制庁間、また原子力規制庁内の幹部と担当職員間における、理念共有や意思疎通の充実を図ること。特に、審査においては、大局的判断を担う原子力規制委員会委員、審査を取りまとめる幹部、細部を担う担当職員の三者間で、事業者への指摘内容に齟齬が生じることがないよう、相互の意思疎通を徹底した上で、事業者との議論に臨むこと。
- 需給逼迫やエネルギー価格高騰等の状況を踏まえ、原子力発電所が安定供給に果たす役割への社会的な要請は高まっているが、再稼働の大前提となるのは、適合性審査の的確性に対する信任である。原子力規制委員会は、適合性審査が適切かつ効率的に行われていることについて、立地自治体地域や社会全体にしっかりと説明責任を果たしていくことを旨として、一次情報のみのウェブ掲載など一方的な情報提供にとどまるのではなく、社会に見てもらい、理解してもらうことを意識した情報発信を行うとともに、幅広い関係者との双方向コミュニケーションを通じて、適合性審査や広報を含めた業務運営のあり方を不断に検証・改善していくこと。
- 原子力規制委員会は、川内原子力発電所で報告された検査官による恫喝の事案を真摯に受け止め、率直な技術的意見交換が実施できるよう、現場の検査官に対する明確な行動規範の策定や研修の実施等により組織内で徹底するとともに、引き続き事業者と協力して検査の現場の状況把握に努めること。
(提言12)原子力の安全性確保に係る基盤の強化
- JAEA、文科省はじめ関係機関は、廃止又は老朽化した施設への適切な資源投入を行うこと。また、先進医療に用いられる放射性同位体の生産等、幅広い用途への活用も視野に、原子力研究設備の整備を進めること。
- 原子力規制委員会は、研究基盤の確立へ、研究機関との連携強化など、理想的な組織体制のあり方を念頭において、引き続き、研究体制の見直しを行うこと。
- 安全人材を含めた原子力専門人材育成の維持・強化は喫緊の課題であるが、人材育成に関する政策は分野別に「縦割り」となっている。原子力規制委員会、経済産業省、文部科学省、内閣府原子力委員会は、こうした現状を踏まえ、原子力分野の人材について需給ギャップを分析するとともに、産学官全体で、効果的・効率的に人材育成を進めるための横断的な司令塔機能の構築やロードマップの策定を急ぎ、人材育成の機会の拡大、教育・研究基盤の強化等による人材の確保に取り組むこと。
- 立地自治体の原子力・防災人材の育成に対し、政府がサポートできるよう、原子力規制委員会を含む関係省庁が連携した枠組みの提供を検討すること。
- 原子力事業者に勤務する女性従業員の線量限度について、国際的な考え方を踏まえて緊急作業への従事に係る制限のあり方などについて検討すること。
- 原子力規制委員会は、幅広い視野を持つ専門人材を育成するべく、そのキャリアパスにおいて、発電所現場での検査官や国際機関、海外規制当局の経験を必須として盛り込むこと。また、学会などの場を積極活用し、規制庁職員と学術界・産業界のメンバーが率直な意見交換を行う機会を広く確保すること。
- 原子力規制委員会は現場の知識、経験や専門的知見が豊富な人材の確保のため、米国NRCの例にも学びつつ、透明性を確保した上で、産業界・学術界との人材交流を積極的に検討すること。特に、原子力施設の監視を行う検査官等の確保のため、民間企業出身者の中途採用を積極的に行うこと。更に、今後の課題として、例えば原子力規制庁のエージェンシー化による専門性の高い職員の待遇改善など、思い切った組織・制度的対応も含めて、知識・経験が豊富な優秀な人材を継続的に確保していく方策を検討していくこと。
- 令和8年1月のIRRSミッションでは原子力規制委員会設置法附則によるノーリターンルールや再就職の抑制等の原子力規制委員会職員の流動性が阻害されている状況を改善するよう勧告があった。専門知識を有する原子力分野の人材は産学官、推進・規制などの領域にかかわらず横断的な基盤である。「規制の独立性の確保」は引き続き重要であり、二度と「規制の虜」に陥ることがあってはならないという反省を深く刻み、許認可等の意思決定の中核となる原子力規制庁の幹部職員が推進側の行政組織と行き来するなどは引き続き認めるべきではない。その上で、例えば、若手のうちに推進・規制行政の双方において様々な政策を経験することは、広い視野と経験の獲得と、行政機関相互の技術基盤の充実・強化という点で原子力行政の質の維持・向上に大きく寄与すると考えられ、現在のノーリターンルールに関する原子力規制委員会設置法附則の規定ぶりについては再検討すべきである。また、再就職の抑制が原子力規制庁への就職・転職を阻害しないよう、原子力規制庁職員の退職後のキャリアにおいて「その職務の執行の公正さに対する国民の疑惑または不信を招く」ことのない形でその技術・知見を活用できるようにすべきである。原子力規制委員会は、人材の流動性向上に係る国会での検討に資するよう、設置法附則のノーリターンルールや再就職の抑制に係る規定の人材確保への影響についての現状と課題や諸外国の原子力人材の流動性の状況などを整理して示すこと。
- 原子力規制委員会及び事業者は、我が国の原子力の安全性確保の上で、地震・津波・地質・火山など自然災害の専門人材を確保していくことが重要であるほか、六ヶ所再処理工場の竣工に伴い対応の増大が見込まれる保障措置分野の人材や事故等に対応する原子力災害医療分野の人材確保の必要性を認識し、その戦略的な育成・確保、産業界や外部支援機関等との連携強化に取り組むこと。
- 政府が、サプライチェーンの維持・強化や人材の育成・確保が、原子力の継続的な安全性確保のために極めて重要であるとの認識のもと、今般の改正原子力基本法において、原子力利用に係る基本的施策の1つとして明確に位置付けたことは大いに評価できる。政府は、本規定を踏まえ、国を挙げて支援体制の確立など、必要な政策のあり方を早期に具体化すること。原子力規制委員会も、設置法に示された任務に照らして、原子力の安全性確保の基盤となる専門人材・サプライチェーン維持の重要性を強く認識し、自らの活動に反映すること。
- JAEAは、次世代革新炉の社会実装等に向けて、本年4月に新設された軽水炉工学研究センターや関連試験施設を有効に活用するとともに、安全評価技術や保守・補修技術に関する人的支援を充実すること。また、技術支援機関としての機能を強化し、安全性の向上等につながる研究開発の推進や次世代革新炉の規制基準の基盤となる技術的検討を実施すること。これらを支える人材育成の拠点として、JAEAの関連施設・設備を最大限活用する体制を整備し、実習機会の拡大等を図ることにより、大学・産業界等をつなぐハブ機能を強化すること。
- 原子力規制委員会は、国内外の原子力災害等に対応する全国的な放射線モニタリングネットワークの老朽化に対応し、立地自治体と連携してドローンやAIなどの先進技術を取り入れつつネットワークの維持・強化に努め、得られた情報を国民に分かりやすく発信すること。
<おわりに>
2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故は、我が国の原子力規制のあり方に抜本的な改革を迫った。2012年9月に設立された原子力規制委員会は、独立性、透明性、専門性などを理念として、厳格な規制基準の策定と審査を通じて、地に落ちた原子力規制に対する国内外の信頼回復に大きな役割を果たしてきた。その努力は評価されるべきである。
一方、近年、我が国を取り巻くエネルギー安全保障環境は急速に悪化している。ロシアによるウクライナ侵略、中東情勢の不安定化に加え、生成AIの普及に伴うデータセンターや半導体工場の増加などにより、電力需要は中長期的に増加局面に入っている。脱炭素かつ安定電源である原子力の重要性は、国民生活、産業競争力、エネルギー安全保障の観点から一層高まっている。
こうした中で、原子力規制委員会及び原子力規制庁も、設立当初の「信頼回復を最優先する行政組織」から、独立性と厳格な安全確保を大前提としつつ、限られた行政資源を有効活用する「効率的かつ実効的な行政機関」へと進化すべき時期を迎えている。
ここ数年、特定重大事故等対処施設に関する経過措置の見直しなど、制度改善が進められてきた。これらの取組を踏まえ、今後はオンラインメンテナンスの導入、定期検査制度の合理化、審査プロセスの効率化などを着実に進めるべきである。
また、グレーデッドアプローチを徹底し、リスクに応じて行政資源を重点配分することで、メリハリの利いた審査・検査体制を構築すべきだ。これにより、原子力の安全性を厳格に維持しながら、設備利用率の向上につなげるべきである。
原子力の利用を考える上で使用済燃料の問題は避けて通れない。竣工が予定されている六ヶ所再処理工場の安全確保と安定的な稼働に向けて官民で対応を進める必要がある。特に原子力規制委員会が担っている保障措置については、規制枠組みや対応体制の見直しを行うなどにより我が国の核利用に対する姿勢を顕示する必要がある。
次世代革新炉、高速炉、フュージョンエネルギーなど、新たな原子力技術の開発と実装は、今後のエネルギー政策において不可欠だ。原子力規制委員会及び原子力規制庁には、こうした新技術に対応できる審査・規制体制を早期に整備することを求めたい。
また、人材基盤の強化は喫緊の課題である。
発足以来導入されてきた、いわゆる「ノーリターンルール」は、原子力規制行政の独立性確保に一定の役割を果たしてきた。しかし、制度発足から十年以上が経過する中で、原子力規制庁における専門的人材の確保・育成は極めて厳しい状況に直面している。また、専門的知見を高めようとする若い人のキャリア形成や進路の選択が制約されているのは看過できない。今後は、独立性を損なわないことを大前提としつつ、若手職員については、原子力に関係する他の行政機関や研究機関との人材交流を柔軟に認めるべきである。
原子力規制庁職員については、原子力規制の独立性を確保する観点から、通常の国家公務員よりも慎重な再就職規制が運用されてきた。しかし、過度に広範な制限が長期化すれば、専門人材の確保・育成に支障を来すおそれがある。他省庁との均衡、規制の独立性、国民からの信頼確保の三点を踏まえ、合理的な制度への見直しを検討すべきである。
原子力規制委員会及び原子力規制庁には、今後も原子力安全の確保に全力を尽くしつつ、限られた行政資源を有効に活用し、国民からの信頼を維持しながら、我が国のエネルギー安全保障を支える規制機関として進化することを期待する。