「日本文化を、強く豊かに。」~文化立国実現に向けた国家戦略の構築~

(提言骨子)

令和8年6月4日
自由民主党政務調査会
文化立国調査会

Ⅰ.はじめに

昨年の提言を踏まえて編成された令和7年度補正予算及び令和8年度当初予算は、国際観光旅客税財源を含めて対前年度を上回る規模になり、文化立国実現に向けた更なる一歩を踏み出した。しかし、諸外国との比較においてわが国の官民による文化投資は未だ少なく、自動車関連産業を上回り約100兆円ともいわれる文化関連産業が日本全体の成長の起爆剤となる基幹産業であることを今こそ強く認識すべきである。高市政権の17の戦略分野の1つとして「コンテンツ」が掲げられる中、マンガ・アニメ・ゲーム・音楽・実写・映画のみならず、それらに厚みや多様性をもたらす、わが国の歴史等に根差した伝統文化や舞台芸術・美術、文化財の保存・活用等の幅広い文化芸術の振興が必要。また、それらの果実の基盤となる文化施設の整備に国の責務として本格的に向き合う時期に来ている。

わが国の「勝ち筋」となる文化への成長投資が価値を生み出し、更なる投資拡大につなげて新たな文化の創造や文化財の継承を図ることで、経済を強く豊かにする好循環を実現するため、これまで補正予算で獲得した分や国際観光旅客税の文化庁分倍増を含め、文化庁予算について2030年度までに年間4,000億円を目指し、大幅な拡充を提言する。

Ⅱ.文化芸術への投資拡充を図る上で重要な3つの柱

1. 文化芸術がけん引するコンテンツ産業を通した成長戦略の実現

自動車に次ぐ海外市場規模であるコンテンツ産業の海外売上高を2033年までに20兆円とする目標達成に向け人材の質・量ともに必要であり、これまでと異なる次元の支援策が急務。複数年度で弾力的に支援するクリエイター支援基金も含め、予算全体を倍増し、複数年度化して、政府全体で5年5,000億円以上の予算措置を確保する必要がある。

  • 〇 クリエイター等向けの人材育成支援(クリエイターの「挑戦」を通じた育成、キャリアステージに応じた切れ目のない支援、プロデューサー等グローバルビジネス人材の育成、大学・専門学校等における産業界・製作現場のニーズを踏まえた人材育成)
  • 〇 人材育成・活躍促進の基盤強化(発表や交流の機会の充実、舞台芸術の振興、海賊版対策の抜本的強化、メディア芸術ナショナルセンター(仮称)構想の推進)
  • 〇 次世代への投資(学校での感性・創造性を育む教育・体験(STEAM教育)の充実、文化部活動の地域展開)
  • 〇 アート振興(美術品の通関・保税制度見直しや海外流出防止、アートフェア、減価償却上限引上げ)

2. 「文化財の匠プロジェクト2.0(仮称)」や文化資源を中核とした「地域未来戦略」

文化資源は、「地域未来戦略」による強い地域経済を実現する切り札。特に、観光産業について2030年度までに訪日外国人旅行者数6,000万人・旅行消費額15兆円とする目標とする中、訪日外国人観光客の6~7割は日本の豊かな文化を求めて来日しているなど、文化資源は観光産業成長の中核をなす

  • 〇 活用の前提となる文化財の適切な保存・修理と強靱化 (文化財の強靱化、「文化財の匠プロジェクト2.0(仮称)」の策定、文化財修理センターの整備、高松塚古墳壁画の保存・活用)
  • 〇 地域における文化芸術活動基盤等の強化 (祭り等の伝統文化・生活文化の振興、文化的価値を生み出し地域活性化を担うコーディネーターの育成、こどもや障害者の鑑賞・体験機会充実等)
  • 〇 文化資源を活用した全国各地のインバウンド創出・拡大(地方誘客拠点の整備、文化財の公開促進、本格的な日本文化を体験できるコンテンツの造成、日本博を通じた全国各地の文化芸術の活用促進)

3. 多様で豊かな文化芸術を生み出す土壌の抜本的強化

上記の取組が経済成長や地域活性化、観光振興という果実を生むためには、国立文化施設をはじめとした文化施設(博物館、劇場・音楽堂等)の機能強化や、地域の様々な文化の継承・振興が前提。

  • 〇 わが国の伝統文化の中核となる国立劇場の再整備と伝統芸能の継承基盤充実
  • 〇 文化芸術の「顔」として国内外に存在感のある国立文化施設の機能強化
  • 〇 地域における文化施設の機能強化(首都圏の劇場不足に対応した劇場・音楽堂等の基盤強化、「文化施設連携プラットフォーム(仮称)」の形成促進、「見せる収蔵庫」や魅力ある博物館の取組推進)
  • 〇 方言の保存・継承、文字・活字文化のオールジャパン体制での発信・国際展開

Ⅲ.おわりに

ソフトパワーを十全に引き出すべく、諸外国の事例も参考にしつつ、文化に関連する施策を推進する司令塔としての文化省(仮称)の創設も視野に体制を抜本的に強化すべき。