東日本大震災 復興加速化のための第15次提言

~第3期復興・創生期間のスタートにあたっての決意~

令和8年6月9日
自由民主党

はじめに

平成23年3月11日、東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故が発生して以来、自由民主党はこれまで被災地の皆様と共に復興に全力で取り組んできた。あれから今年で15年。第3期復興・創生期間を迎え、特に現在進行形である福島の復興は一層重要な局面に入り、更なる加速が必要となる。第14次までの提言の実現を引き続き求めるとともに、本提言では当面取り組むべき更なる課題を挙げた。

まずは、これからの5年間でこれまでに応えきれていない課題を徹底して成し遂げる。次に、中期的な課題の解決への道筋をつける。また「残された課題」の解決へ向かっていく。

このために、引き続き、党をあげて復興を完遂していく決意である。

特に、次の5年間で、復興に向けた道筋をつけ、魅力ある地域を作らなければならない。

そのためにも、地域の賑わいを取り戻すため、住民が生計を立てられるよう、農林水産業を始めとする産業の構築を進める必要がある。震災によって失われたものが大きい地であるからこそ、そこに新たな芽がでる余地があるともいえ、企業の誘致・イノベ構想の実現を進めていくべきである。また、若い世代をはじめ、福島に魅力を感じて移住してきた人々と帰還者が共に安心して生活していくためにも、住民の生活サポートにも包括的に取り組む必要がある。これらの取組にあたっては国、県、市町村等がそれぞれの役割を十分に果たしていくことが求められる。なお、それぞれの予算要求において昨今の物価や人件費等の高騰に十分対応する必要がある。

これらの取組を切れ目なく進め、次の5年間で、被災地の方々が頑張って未来を拓こうという確かな希望を描けるような、魅力ある地域を作ることを目指す。

1. 次の5年間で応えきれていない課題を徹底して成し遂げる

(1)農林水産業の再建

  • 農業については、この5年間での営農再開面積の目標11,000haに関して、これを所与とせず、それを上回る営農再開を目指すこと。
  • 農業の再建を確実に成し遂げるため、農地の集積・集約化、スマート農業等の技術の開発・導入、経営の大規模化、広域的な産地形成で全国のモデルを目指すこと。また、福島県やJAグループによる広域的な産地形成に向けた主体的取組(「アクションプラン」の策定)を国として後押しすること。
  • 収益性の高いモデル地域となることで地域外からの法人参入、新規就農者の確保を促すこと。
  • 各市町村の地域計画の実効性を担保するため、国、県、市町村が緊密に連携して新たに策定や継続的な見直しに向けた伴走支援を強化し、農地の担い手への集積・集約化をさらに加速すること。
  • これらの営農再開に向けた各地域の取組を強力に推進するため、ハード・ソフト両面の支援策を一体的・機動的に提供できる営農再開基金を活用するとともに、取組の進捗をKPIで把握し、改善を図りながら、営農再開を着実に進めていくこと。
  • 林業については、帰還困難区域の森林のうち、平均空間線量率2.5μSv/h以下のスギ・ヒノキ人工林約3,400haの整備に必要なすべての林道を5年以内に通行可能とするとともに、その人工林について今後10年間でできる限り整備することを目指し、具体的な整備目標を令和8年度中に策定すること。
  • 併せて、森林・林業・木材産業の再生に向けて、引き続きふくしま森林再生事業、福島県産材の利活用、里山・広葉樹林再生プロジェクトの取組を推進すること。
  • そのため、支援が途切れることのないよう各種事業を大くくり化して、効率的、弾力的かつ安定的な事業実施を可能とすること。
  • 福島県の水産業については、生産・加工・流通・消費の各段階における対策を継続すること。生産段階においては、海洋環境変化の影響を受けずに安定生産を可能とする陸上養殖技術を用いた養殖を含めて効果的な支援を行うこと。あわせて福島県の漁業の本格的な再生に必要な漁業調整が進むよう取り組むこと。

(2)特定帰還居住区域の営農再開

  • 特定帰還居住区域においては、帰還を希望する住民の意向を丁寧に反映し、地域の実情に応じて柔軟に区域に含められる運用とすること。
  • 帰還する住民が高齢化などにより耕作が十分にできない場合、新たに他の農業法人等に耕作させることを可能とすること。
  • 特定帰還居住区域の営農再開に係る調整に当たっては、市町村職員だけでなく、内閣府原子力被災者生活支援チーム・農林水産省・復興庁など関係省庁等が積極的に取り組むこと。
  • 特定帰還居住区域における営農再開も見据えたハード・ソフト両面での支援策を継続すること。
  • 特定帰還居住区域の農地においては、土壌の放射性物質の状態や空間線量を確認しつつ、必要に応じて営農再開関連事業や除染を通じた適切な追加的措置を行うこと。

(3)企業誘致等(イノベ構想の実現)

  • 次の5年間で、社会課題解決や新技術の社会実装に向けた「実証の聖地」の取組・機能を強化し、地域の稼ぎ・日々の暮らし・担い手の拡大の視点から効果的な投資を呼び込み、関連産業の集積へ繋げること。
  • 地域経済の核となるプロジェクトを組成できるよう、各地の強みや復興計画等に沿った事業や、住民目線で必要とされるような企業の誘致・進出等も戦略的に推進すること。また、域外の企業が、その従業員も含め移転・進出できるよう環境整備を行っていくこと。こうした企業が、コミュニティの中心的存在として持続的に地域貢献する姿を目指すこと。
  • また、イノベ構想を更に発展させるための、中核的な拠点となる福島国際研究教育機構(F-REI)が行う過酷環境ロボットや放射線医療・研究等の取組を呼び水とし、産業化に向けて関係企業との連携を推進すること。
  • 補助金等の支援策だけでなく、国家戦略特区等も活かした規制緩和も進め、あらゆるチャレンジが可能な福島ならではの環境を整備していくこと。
  • 地域の様々な支援機関や、ベンチャーキャピタルを含む地域に根ざした金融機関等の取組を後押ししつつ、地元企業とのマッチング等を推進すること。
  • 相双機構は、事業再開、事業継続及び創業を促進し、また、進出企業を中心とした新たなサプライチェーンを構築すべく、地場のものづくり企業がそれぞれの強みを活かして設計・加工・組み立てまで対応できるよう、共同受注体制の構築支援等を進めること。さらに、イノベ機構等の公的な支援機関に加え、民間主導のインキュベーションセンターなど地域の支援機関とも連携し、開発・実証・事業拡大といった段階に応じた一貫した支援体制を構築し、伴走支援を強化すること。
  • 浜通りのみならず福島・東北で、産業人材の不足・流出が深刻な中、福島ロボットテストフィールド等の環境も活用し、産業人材の育成交流を促進すること。この際、福島・東北全体をけん引する産業イノベーション人材の育成等に向け、高校教育の機能強化や魅力向上を図るとともに、既存の教育拠点(高専、職業訓練校等)とも連携しつつ、人材育成機能の充実が必要とされている現状も踏まえ、必要な取組を検討すること。
  • 地域の実情や要望も踏まえて、浜通り地域等の産業集積が地域に定着し、広域・面的にも波及するものとなるよう取組を推進すること。
  • 本年3月には、福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)等で低炭素水素を製造、利用する計画を水素社会推進法に基づき、国が認定したところ。引き続き、福島県浜通りを中心とした地域を再生可能エネルギー・水素社会の先進地にするべく、「新エネ社会構想」の更なる高度化・具体化を図ること。この際、関係省庁や県、地元自治体、F-REI、地元企業、大学での連携を推進すること。

(4)住宅不足への対処

  • 福島第一原子力発電所周辺自治体の住宅不足を改善するため、福島再生賃貸住宅(民間供給型)の補助率引き上げ(5分の1→5分の2)や入居要件の緩和等もアピールして活用を促すこと。特に、双葉町・大熊町については民間供給に向けた検討会を立ち上げ、事業者とともに活用策を検討すること。
  • 福島第一原子力発電所周辺の住宅不足の著しい地域については、被災地域の復興等の幅広い事業を実施するために福島県に造成された基金の使途として、帰還に資する住宅環境整備支援を新たに位置づけるなど、国において引き続き必要な対応をとること。

(5)帰還者・移住者の生活のサポート

  • 復興が進んだ地域がある一方、避難指示解除がされたばかりで、ようやくスタートラインに立った地域やいまだに帰還困難区域を抱えている地域もあるなど状況は様々。このように状況が様々である中、生活のしやすさを実感でき、希望の持てる暮らしを実現できるよう集中的に取り組み、復興を加速させること。
  • 福島県が福島県立医科大学の附属病院として整備を進める、大野駅前に予定されている「双葉地域における中核的病院」について、施設整備、医療人材確保に引き続き取り組み、早期の開業を実現すること。また、中核的病院をはじめ、ニーズを広域的・継続的に把握しつつ、診療体制等を構築すること。
  • 移住者を含む子育て世帯が安心して地域コミュニティで生活できるよう、親が相談できる場や、子どもを安心して預けることができる施設の整備等を進めること。
  • 被災者の高齢化、避難の長期化等、被災者を取り巻く環境が変化する中、心のケア、見守り相談支援をはじめとする被災者支援に取り組むこと。
  • 外国人を含めて移住者と帰還者がともに地域で安心して生活できるよう、地元のニーズを踏まえながら自治体において対応できる職員を確保すること。
  • 医療、介護、教育、子育て、買い物について、近隣の自治体どうしが連携して施設やサービスを共同して利活用できるよう、住民への情報提供を充実させるとともに、スクールバスなどの移動支援を行うこと。
  • 子どもたちが、地域の将来を担う人材となれるよう、義務教育から高等教育にわたるニーズを見極めて対応の検討、支援を行うこと。

(6)福島国際研究教育機構(F-REI)を期待に応える存在に

  • F-REIは、福島をはじめ東北の復興を実現するための夢や希望となるものとするとともに、世界に冠たる「創造的復興の中核拠点」を目指すものとされている。
  • この中で、現在58の研究事業が行われているが、F-REIの強みをより明確化していく必要がある。
  • いよいよ、福島浜通りにおける本格的な研究施設の完成を数年後に控える中で、まさに今、有望な研究者を引き付けるビジョンが必要となっている。
  • F-REIが他にはない広大な実証の場を有している強みを持っていることを活かしつつ、5つの重点分野のうち、廃炉、宇宙、災害現場、気候変動下の農作業や林業などの過酷環境でも活躍できるロボット、最先端の放射線がん治療薬の研究などの放射線フロンティア医療・研究を特に重点的に取り組むべきテーマとして研究体制の整備を進め、内外にアピールしていくことが重要である。
  • また、これらの一大研究・実証拠点となるために必要な予算措置を行い、これらの研究費を速やかに倍増する必要があり、こうした取り組みを政府・与党として後押しし、各省庁は人材・予算を集中投資すべきである。(具体的な提言は17ページ以降)

(7)常磐線のアクセス改善

  • F-REIの施設整備を見据えて、沿線自治体、国土交通省、復興庁、JRからなる協議体を早急に設立して、常磐線のアクセスの改善策について結論を出すこと。

(8)帰還困難区域等におけるインフラ整備

  • 産業・生業の再生や避難者の帰還・定住等を一層進める必要があるため、帰還困難区域等において道路や河川等のインフラ整備に取り組むこと。

(9)交流人口・関係人口、観光

  • 福島第一原子力発電所と中間貯蔵施設の現場視察は、震災当時の状況やその後の進捗を目で見て肌で感じていただく上で非常に重要。このため、戦略的な情報発信に向けた視察者の受入拡大を目指すとともに、交流人口・関係人口の拡大にもつなげる観点から、集客力のある他の地域資源と組み合わせるなど、地域コンテンツのパッケージ化等を行うこと。この際、ホープツーリズム等とも連動させること。
  • 福島県の観光はいまだ復興の途上にあることから、持続的な観光を推し進めるため、観光関連復興支援事業等の活用により、浜通りの復興を観光資源としたホープツーリズムの推進、福島県への教育旅行の誘致や浜通りのナショナルサイクルルートの指定を含むサイクルツーリズムの推進など、滞在コンテンツの充実・強化を行い、訪日外国人等の受入環境の整備やプロモーションの強化と合わせて引き続き進めていくこと。

2. 中期的な課題の解決への道筋をつける

(1)廃炉

  • 廃炉は、より本格的で難易度の高い作業段階へ移行。東京電力の経営改革が進展する状況においても、引き続き、安全確保を最優先に、長期にわたる廃炉を支えるべく、技術・資金・人材を安定的に確保するための体制整備を進めること。
  • 燃料デブリの取り出しについて、東京電力自らが、協力会社任せにせずに、高い緊張感をもって廃炉作業を確実に進めること。
  • 長期・高線量の作業環境となるなか、これまで以上に周辺環境や作業員に対する安全確保を最優先に廃炉作業を進めること。
  • 地域との共生の観点から、廃炉にまつわる経済効果を周辺地域に浸透させていく取組を推進すること。
  • 燃料デブリの取り出しや調査により原子炉内部の状況把握を進め、今後の廃炉の全体像や技術的見通しについて議論を深めていくとともに、具体的な進捗について適切に情報発信していくこと。
  • 技術的に極めて難易度の高い廃炉現場に最先端の技術導入を図り、得られた成果を他分野にも展開していくことにより、廃炉を「拡がりのある分野」へと発展させていくべく、我が国の科学技術力・産業競争力の強化を牽引することが期待されるF-REIとも連携し、成長戦略の戦略17分野にも位置づけられるフィジカルAIの導入等の先端的な技術開発を一層推進すること。
  • 廃炉作業における困難な課題への果敢な挑戦を、政府・与党も積極的に発信し、広く理解や機運の醸成に努め、現場で従事する方々が誇りをもって働ける環境づくりを推進すること。
  • ALPS処理水の処分については、廃炉及びALPS処理水の処分が完了するまで、国および東京電力が全責任を持って取り組んでいく必要がある。引き続きモニタリングやIAEAによる評価を通じて安全を確認し、それを科学的根拠とともに発信することで地元の皆様や国内外の関心を持つ多くの方の安心につなげるとともに、引き続き、一部の国・地域に対して輸入規制の即時撤廃を強く求めるほか、漁業者等への支援に取り組むこと。
  • 原子力損害賠償については、損害がある限り賠償するという政府方針の下、引き続き被害者の方々に寄り添い必要十分な賠償が行われるよう、また、しいたけ原木など、残された賠償の課題についても、実態を把握の上で適切な対応がなされるよう、東京電力を指導すること。

(2)県外最終処分に向けての復興再生土の活用等

  • 「福島県内除去土壌等の県外最終処分の実現に向けた再生利用等推進会議」の下、各省庁一丸となって復興再生利用に取り組むこと。
  • 特に、これまで福島第一原子力発電所からの電力という大きな利益を受けてきた首都圏をはじめとする地域において、復興再生土の利用を進める。併せてそのための促進策を検討すること。
  • 復興再生土の利用等に向けて、中間貯蔵施設からの除去土壌の掘り出しの試行を始めること。
  • この取組みと並行して、最終処分場の候補地選定プロセスの具体化等の検討を進め、その進捗を踏まえつつ、2045年3月までの福島県外での最終処分の実現に向けた道筋の段階的な具体化を進めていくこと。

(3)風評払拭・情報発信

  • 原発事故は長期間にわたる避難指示などによりいまだに周辺住民の生活に甚大な影響を及ぼしており、決して風化は許されない。
  • 一方で、すでに多くの地域において放射線量は大きく減少しており、原発事故に関する誤った情報が広まらないように、風評払拭のための取組を、国際的な発信の機会も活用しつつ、政府全体で取り組むネット上等の偽情報対策を含め、戦略的に推進すること。
  • 農林水産省が実施する福島県産農産物等流通実態調査も活用しながら、流通・外食事業者等に訴求して、新たな販路開拓・棚の回復も含め、「食」の復興に向けた取組を進めていくこと。
  • 廃炉、復興再生土の利用等の国民理解を得るべく、廃炉プロセス等の徹底した透明性確保や、復興再生土の利用についてはパネルディスカッションを進めるなど、大小様々なイベントなどのあらゆる機会も含め、利用に関する安全性等の分かりやすい発信を行うこと。
  • 風評を乗り越え、交流人口・関係人口増加を目指すべく、浜まつりやマリンスポーツ等の地域の魅力を発信する地元の取組に対して支援・連携すること。
  • 解除後に残る商業施設等の扱いについて、景観の改善や復興を加速する観点も踏まえ、各自治体が行う取組が円滑に進むよう、国も後押しすること。
  • F-REIを始めとして伝承館や東北大学等の機関が連携しつつ、東日本大震災のデータや知見を集積するとともに、防災・復興に関する研究を一層進めていくこと。
  • 福島地方環境事務所が地方環境局となることも踏まえ、環境再生事業を加速するために必要な体制を現地において整備すること。

3. 「残された課題」の解決へ向かっていく

(1)食品等の規制

  • 食品等の基準値や出荷制限・摂取制限については、山の恵みを取り戻したいという地元の切実な声に寄り添った対応を行うこと。
  • 昨年の提言を受けて、政府において、全国データを活用して、食品由来の放射性セシウムによる年間被ばく線量を推定する調査が行われた。その結果、天然きのこ類、天然山菜類、野生鳥獣肉、淡水魚類については年間摂取量は少ないものの、高濃度で検出される例が未だあることが確認された。令和8年度からは、さらに福島県内の実態についてより詳細にデータを収集し分析を進め、これらの食品について特別な区分の基準を設けて対応することについて検討を進めること。
  • 出荷制限については、地元自治体とも相談しつつ、地域別の解除を進めること。
  • また、個体ごとに非破壊検査等により検査を実施し、基準値を下回ったものについて出荷を可能とする出荷制限の一部解除については、地元の声を踏まえた活用がなされるように促すと同時に、地元への周知を図り、また、非破壊検査の対象となっていない品目については、これまで以上にスピード感をもって進めるため、検査方法の確立を進めるとともに、出荷を迅速に行えるよう、検査機器の導入や検査プロセスの見直しなどを進め、検査を迅速化すること。
  • 摂取制限については、令和8年中に、対象品目について、検査をして安全性を担保された自家消費食品の摂取を可能とすること。また、その速やかな運用開始に向けた、検査体制の構築等を進めること。

(2)残された家屋等の扱い

  • たとえ長い年月を要するとしても、将来的には帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組むとの決意を示しており、与党も政府と一体となって取り組んでいくこと。
  • 残された土地・家屋等の扱いについては、まずは、2020年代をかけて帰還意向のある住民が帰還できるようにするとの方針に基づいて、帰還意向の確認や特定帰還居住区域の計画認定、それに伴う除染および避難指示解除を進め、その進捗を見極めつつ、政府において地元自治体と丁寧に協議した上で結論を出すこと。
  • 帰還困難区域内での活動の自由化等の今後の活動の在り方について、科学的・専門的な議論を行っていくこと。

(3)地震津波の被災地域及び共通の課題

  • 水産業については、引き続き、生産、加工、流通、消費の各段階における対策を行うこと。
  • 林業については、特用林産物の産地再生に向けた取組を引き続き進めること。
  • 地震津波の被災地域において、心のケア等の中長期的な対応が必要な課題については、政府全体の施策を活用することなどにより、引き続きソフトランディングに向けて必要な支援をすること。
  • 本年5月に開園した福島県復興祈念公園などの各地の施設等とも連携しながら、震災の記憶と教訓を後世に継承するための取組を推進すること。

(4)復興庁と防災庁の連携

  • 復興庁は、東日本大震災からの復興のために作られた組織である一方、新たに設置する防災庁は事前防災、発災時から復旧・復興までの一貫した災害対応の司令塔となる組織であって、両組織の任務が明確に分かれているものであり、今後も現在の復興庁が果たしている役割や機能が必要なことに変わりはない。防災庁設置にあたっては復興庁がこれまで積み重ねてきた知見を最大限活用し、復興庁と防災庁が協力できる部分は最大限協力しながらそれぞれの政策課題に取り組むこと。

福島国際研究教育機構(F-REI)の今後の方向性について

本提言の別添資料であることを示す「(別添)」のラベル図

1. 現状認識

政府の計画におけるF-REIの研究テーマは「ロボット」「農林水産業」「エネルギー」「放射線科学・創薬医療、放射線の産業利用」「原子力災害に関するデータや知見の集積・発信」の5つの分野となっている。

現在は、これらのテーマのもとに、他大学・独法に間借りする形で58の研究事業が行われている。

一方で、

  • 何がF-REIの強みなのか
  • 何に重点を置いた研究拠点としていくのか
  • 既存の研究独法と何が違うのか、どういう役割分担になるのか

といった点を強く意識しつつ、より明確化していく必要がある。また、様々な研究機関がある中で、F-REIとしての勝ち筋を見出していく必要がある。

F-REIはこれから数年間で福島浜通りに本格的に研究施設を整備する予定であり、まさに今、有望な研究者を引き付けるビジョンが必要となっている。

2. 検討の視点

1の現状認識を踏まえて、以下の視点でF-REIの今後の研究の方向性を検討する必要がある。

  • ① 特に重点的に取り組むべき分野を絞り込み、集中的に投資するべき
  • ② F-REIの重点分野については、他の研究開発独法等との役割分担を明確化して、各省の研究開発予算を集中投資するべき
  • ③ 実際に使われることを前提に、企業や現場のニーズをくみ取り、それを研究内容に反映させるニーズプル型開発を進めるべき

3. 今後のF-REIの研究の方向性(特に重点的に取り組むべきテーマ)

今後特に重点的に取り組むべきテーマについては、科学技術をめぐる最新の動向やF-REIにおいて現在取り組んでいる研究内容を踏まえれば、以下の2点となる。また、F-REIは福島において広大な実証の場を有しているという、他にはない強みがあることを踏まえ、研究者や企業等を呼び込んでいくべきである。このほかのF-REIの研究分野についても、引き続き取り組んでいくことに変わりはない。これらの取組は、防災を含めF-REIが目指す産業化にもつながるものである。

  • (1)「宇宙や廃炉等の過酷環境でも活躍できるロボット」=国内随一のロボット開発・実証拠点
    • F-REIのロボット研究は、「廃炉」という「過酷環境」の克服を原点として出発。いま、成長戦略の戦略17分野でもロボット技術・ドローン技術は特に注目されている。
    • 今後さらに、多様な「過酷環境」を克服し、廃炉、宇宙(火星探査等)、災害現場、気候変動下の農作業や林業等の、人が作業することが困難な環境に対応して自律的に活動できる、フィジカルAIも活用したロボット開発を重点的に実施するべきである。
    • また、JAEA楢葉遠隔技術開発センターにおける廃炉環境を活用するとともに、福島ロボットテストフィールド(RTF)において、要救助者探索が必要な実際の現場を再現したモックアップやシミュレーション環境(デジタルツイン)を整備し、F-REIを中核として企業も参加可能な開発環境とすべきである。
    • F-REIを先進的なドローンの実証のメッカとするため、RTFの周辺エリアにおいて、ドローンのレベル4(有人地帯での目視外)飛行×エリア単位飛行において評価すべきリスクの見える化をF-REIが実施し、事業者による実証飛行を促すべきである。
  • (2)「放射線フロンティア医療・研究」=放射線医療利用と廃炉技術開発両方の拠点
    • 福島が新たな放射線がん治療薬(RI治療薬)により最先端の治療拠点となることを目指すべきである。
    • 放射線がん治療薬の製造に優れた加速器を導入して研究開発を進め、福島医大と連携して臨床研究を進めるべきである。
    • 放射線に関する技術・研究の裾野を広げ深化させるため、JAEA楢葉遠隔技術開発センター、宇宙や廃炉・放射線技術等に関連する企業等との連携を進めるべきである。

4. 既存の研究開発独法との今後の役割分担

以下の重点分野について、他の研究開発独法等との役割分担を明確化して、各省の研究開発予算をF-REIに集中投資するべきである。

  • ①ロボット
    • 産総研等でもロボット開発が行われているが、F-REIは「過酷環境」で機能を発揮するロボット・ドローンに特化すること。
  • ②放射線
    • 理研では加速器の技術開発や基礎研究中心の取り組みを行う中で、F-REIは放射線の医療・創薬、農業等への「利用」にフォーカスすること。
  • ③農業
    • 農研機構が基礎から応用まで幅広い分野の研究を行う中で、F-REIは他分野の技術も活かし、スマート農業や土壌再生等の研究に特化すること。
  • ④エネルギー
    • 産総研等で再生可能エネルギーや省エネ技術の研究が行われているが、F-REIは福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)とも連携しつつ既に重点を置いている福島における水素エネルギーの活用や森林資源等の活用に特化した研究を更に行うこと。

5. 提言

1~4の検討を踏まえ、F-REIの今後の方向性として以下を進めるべきである。

  • 従来の広範に過ぎる研究体制を転換し、我が国と世界の将来のニーズに対応した研究拠点とするため、重点分野の絞り込み、集中投資を行うこと。
  • 「宇宙や廃炉等の過酷環境でも活躍できるロボット」と「放射線フロンティア医療・研究」を今後、特に重点的に取り組むべきテーマとして、研究環境の整備を進めつつ、各省庁とF-REIから内外にアピールしていくこと。
  • F-REIは福島において広大な実証の場を有しているという、他にはない強みがあることを踏まえ、研究者や企業等を呼び込んでいくこと。
  • 「AIホワイトペーパー2.0」(デジタル社会推進本部AI・web3小委員会)では、AIロボット・フィジカルAIについて、高品質なデータを得ることの必要性や、試験場の整備の必要性を提言した。F-REI及びRTFは、この提言の指摘を実現する重要な場の一つとして環境整備を進めること。
  • そのため、経済産業省を中心に、F-REI及びRTFが、フィジカルAIも活用した世界水準の過酷環境ロボット・ドローンの一大研究・実証拠点となるために必要な施設・設備の内容について、企業のニーズをくみ取りながら早急に検討し、予算措置すること。
  • 放射線フロンティア研究について、福島が新たな放射線がん治療薬により最先端の治療拠点となるべく、現場のニーズを踏まえつつ、文部科学省及び厚生労働省において必要な研究事業を検討すること。
  • これらの研究事業については、社会実装のため、福島に誘致したスタートアップや地元の医療機器メーカー等が実証や製品化を担う姿を目指すこと。
  • これらの研究事業の研究費を速やかに少なくとも倍増すること。
  • F-REIが、重点分野をはじめとしてタイムリーに研究費を使えるよう、予算執行の柔軟化を引き続き進めること。

14次提言のフォローアップ

本提言の参考資料であることを示す「(参考)」のラベル図

(1)ALPS処理水の処分

  • 令和7年度は、約55,000m³(トリチウム総量約16兆ベクレル)のALPS処理水を7回に分けて放出。令和8年度は、1回放出を増やし、約62,400㎥(トリチウム総量約11兆ベクレル)のALPS処理水を8回に分けて放出する計画。令和8年4月20日に通算19回目の放出を完了。これまでのモニタリング結果やIAEAによる評価からALPS処理水の海洋放出が安全であることが確認されている。
  • 令和7年8月26日に、第8回廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議、第8回ALPS処理水の処分に関する基本方針の着実な実行に向けた関係閣僚等会議(合同開催)において、「政府としてALPS処理水の処分が完了するまで全責任を持って取り組む」という方針に変わりはなく、①安全確保、説明・情報発信、②風評影響対応、なりわい継続支援、③将来技術の検討等を引き続き実施することを確認。
  • ALPS処理水の海洋放出に伴うものをはじめ、日本産食品に対する輸入規制については、令和7年11月に台湾が規制を撤廃し、計50か国・地域で規制撤廃が実現。
  • 引き続き、一部の国・地域に対して輸入規制の即時撤廃を強く求めるとともに、漁業者等への支援のため、生産、加工、流通、消費の各段階における対策に取り組んでいる。

(2)さらなる帰還・移住の促進

  • 福島県内4箇所の心のケアセンターにおいて、医師、保健師、看護師、精神保健福祉士などの多職種チームを構成し、被災者の心のケアに関する取組を実施。
  • 一般会計における教職員加配(568人)・スクールカウンセラー派遣(33人)に加え、復興特会において教職員加配(394人)・スクールカウンセラー派遣(161人)、スクールソーシャルワーカー派遣(33人)を実施。
  • 地域の実情に応じた施策を更にきめ細やかに実施するため、令和8年度、双葉町に「福島復興浜通りセンター」を整備し、より現場に近いところで復興を一層推進。
  • 12市町村への移住・定住を進めるため、ふくしま12市町村移住支援センターの機能強化として、東京にサテライトオフィスを設置予定。

(3)観光の振興

  • 福島県が実施する滞在コンテンツについて、これまでの「見る」「聞く」「考える」というホープツーリズムの基礎となる3要素に加え新たに「体験活動」型の取組等を加えて充実・強化。また、サイクルガイドの育成などの受入環境の整備、SNSでの発信などプロモーションの強化などの取組を支援。
  • 多言語対応やキャッシュレス決済対応等により訪日外国人旅行者が快適に旅行できる環境整備促進の取組を支援。
  • ジャンボタクシーの導入やキャッシュレス化の取組を支援。

(4)福島国際研究教育機構(施設整備)

  • 施設整備については、これまで用地の取得、敷地造成や建物の設計を進めており、2025年度には敷地造成工事に本格的に着手。

(5)福島イノベーション・コースト構想のさらなる具現化による新産業創出となりわいの再建

  • 「福島新エネ社会構想」の実現に向けて、令和7年9月に福島新エネ社会構想実現会議を開催し、「福島新エネ社会構想加速化プラン3.0」を策定。
  • 特に、水素については、令和7年5月に、燃料電池商用車の導入促進を図るため、 福島県を中核とする東北重点地域を選定し、希望する福島県内の水素ステーションに対し、商用車への水素の充てん量に応じた追加的支援を開始。令和8年度予算においても、福島県における水素輸送設備、水素利用設備の導入等に対する支援を盛り込んでいる。
  • 令和8年度税制改正において、福島県における産業集積の形成及び活性化を促進するため、イノベ税制について対象事業を拡充したうえで適用期限を3年間延長。また風評税制についても適用期限を3年間延長。

(6)農林水産業の再建

  • 令和8年度予算において、地域の実情に応じてハード事業とソフト事業を一体的・機動的に実施できるよう、営農再開関連3事業を統合し、福島県に基金を設置する「福島県営農再開・高付加価値産地展開支援事業」を創設。
  • 福島県の農業の創造的復興を図るために、福島県及びJAグループ福島と共同で関連施策のKPIの設定に向けて検討。
  • スマート農業の推進・定着に向け、福島県下でロボット農機の遠隔監視型の運行システムの実証試験を実施。
  • 野菜価格安定制度について、令和8年度から、原子力被災12市町村を対象として面積要件を緩和する特例を追加。
  • 令和8年1月に、森林作業の作業種・作業場所・作業期間の組み合わせの工夫により、年間被ばく線量を低減する手法を分かりやすく提示する森林作業ガイドラインを公表。
  • 令和8年度予算において、水揚量を回復させる取組への支援を行うがんばる漁業復興支援事業等の各種事業を措置。

(7)原子力損害賠償

  • 原子力損害賠償紛争審査会により令和4年12月に策定された中間指針第五次追補(事故直後に指示の出た避難区域についての賠償額を加算、帰還困難区域内の慰謝料増額等)などに沿って賠償を実施している。

(8)風評払拭・リスクコミュニケーション

  • 復興大臣の下、関係府省庁のタスクフォースを開催。令和7年10月、復興に向けた課題の情報発信に関する施策を「リスクコミュニケーションの分野横断的な考え方と各課題に係る情報発信等施策パッケージ(追補版)」として取りまとめ除去土壌の復興再生利用等にむけた取組を追加。
  • 福島県の復興の現状や課題、地域の魅力を様々なメディアやイベント等を活用して、国内外に広く情報発信。その一環として、除去土壌の復興再生利用や放射線の基礎知識について、専門家にも指導いただきながら、科学的根拠に基づいた正確で分かりやすい動画を制作し公開。
  • 地方公共団体が自らの創意工夫によって地域の魅力や食品の安全性等を発信する取組の支援(地域情報発信交付金)を強化。