「こども・若者」輝く未来創造本部 提言
令和8年5月28日
自由民主党政務調査会
「こども・若者」輝く未来創造本部
令和5年4月、こども施策を総合的に推進することを目的としたこども基本法が施行され、政府のこども施策の司令塔となるこども家庭庁が発足し、4年目に入った。これまで、令和5年度からの3年間で、「こども大綱」の策定、「こども未来戦略」の「加速化プラン」に盛り込まれた3.6兆円規模となるこども・子育て施策の抜本的強化の実現、こども・若者の意見を聴き施策に反映する「こども若者★いけんぷらす」の取組、ライフデザイン・プレコンセプションケアの推進、こどもを性犯罪から守るためのこども性暴力防止法の成立、「はじめの100か月」から生涯にわたるウェルビーイングを実現するために社会全体で共有したい考え方をまとめた「はじめの100か月の育ちビジョン」の策定など、こども政策はあらゆる分野で大きく強化・拡充され、これまでの縦割り行政では対応できなかった課題に取り組み、一定の成果を挙げている。
一方、こども家庭庁に対しては、「何のために作ったのか」、「効果が見えない」、「少子化傾向の反転につながっていない」との批判もあることから、これまでの取組を総括し、国民に対するより丁寧で分かりやすい説明・情報発信が求められる。また、こども家庭庁は、こどもの心身の状況や置かれている環境等に関わらず、次代の社会を担う「全ての」こどものバイオサイコソーシャル・ウェルビーイングの実現を図ることがその原点であり、最終目標でもある。発足3年が経過したからこそ、こども家庭庁の全ての職員が、この点を改めて認識し、「こども基本法」に掲げられた「基本理念」に基づき、省庁の「縦割り」に横串しを刺すとともに、子育て環境の地域間格差にも配慮しつつ、国・地方の「横割り」の壁を乗り越え、こども政策の司令塔として、より大胆かつ強力に推進していくよう求めたい。
当本部としても、引き続き、いかなる環境にあっても全てのこどもが健やかに成長できる「こどもまんなか社会」の実現に向け、議論を一層深化させ、着実に前進させていく。
その際、自殺、いじめ、不登校、こどもの貧困などの課題は依然として深刻であり、また、若者の価値観やライフスタイルの多様化、デジタル化の進展、地域間格差の拡大など、社会構造の変化にも的確に対応する必要がある。
これまで、当本部においては、本年4月以降、有識者や関係団体から計6回にわたるヒアリングを実施したほか、議員による意見交換、当選1回の議員を対象とした勉強会を重ねるなど、精力的に議論を続けてきた。
これらを踏まえ、当面、具体的に強化するものとして、下記の取組を進めるよう政府に対して提言する。
記
1. こどもが健やかに育つための成育環境の整備
- ○ いじめや性被害、アルゴリズムによる情報提供が抱えるリスク等の新たなリスクに対応し、関係者の参画の下で青少年が安全・安心にインターネットを利用できる環境の整備を推進するとともに、青少年インターネット環境整備法の在り方を含め、中長期的課題について令和8年中を目途に具体化を図ること。あわせて、人とのつながりの重要性を再認識し、乳幼児・こども・若者の育ちの支援方策を検討すること。
- ○ こども性暴力防止法の円滑な施行(令和8年12月25日)に向け、執行体制・専用システムの整備や事業者支援、周知広報、調査研究等を推進すること。
- ○ 小児・周産期医療の提供体制の確保・維持・充実、妊婦健診・出産・産前産後ケアへの支援強化と見える化を進めること。特に、産後ケア事業の質の向上・量の拡大を図るため、委託費単価や各種加算の見直し、安全性や助産師等の活用を含めた専門性の向上などを行うほか、父親支援を含めた産後の子育て家庭の包括的な支援の充実を図ること。また、妊娠前から切れ目のない相談支援・メンタルヘルス支援や特定妊婦等への支援体制を整備すること。こどもの健やかな成育と保護者のウェルビーイングにも着目した環境の構築を進めること。
- ○ 妊娠・出産・子育てにおける孤独・孤立防止を図り、プッシュ型の支援も含め、関係機関の連携を強化し、地域ぐるみでこどもの育ちを支える体制を構築するとともに、各地域における「はじめの100か月の育ちビジョン」の認知拡大と同ビジョンに基づく具体的な取組を推進すること。
- ○ 設置者や施設類型に関わらず、質の高い教育・保育が保障されるよう内容の整合性を図るため、関係省庁の連携による3要領・指針の告示改正に向けた一体的な検討を進めること。あわせて、幼稚園・保育所・認定こども園が行う幼児教育の質的向上を図るとともに、5歳児健診を通じて就学に向けて必要な支援につなげるなど、地域にかかわらず小学校教育等との円滑な接続が図られるよう支援すること。また、「こども誰でも通園制度」について、自治体への伴走的支援を行い、全国での円滑な実施を進めるとともに、安全で質の高い支援の提供のため、不断に改善を図ること。
- 〇 こどもたちが多様な背景・特性、経済状況や地域等に左右されず、豊かな体験機会を得られる環境整備を進めるとともに、自然・文化芸術・職業体験等について官民連携で機会の提供等を拡充すること。
- 〇 「こども未来戦略」加速化プランを着実に実施し、企業と連携した子育て環境を整備すること。あわせて、若年世帯や子育て世帯が希望する住まいを確保できる社会を実現すべく、空き家を含む既存住宅の円滑な市場流通の促進、UR団地等における子育て世帯向けの住戸供給など働きやすい居住環境の充実等に取り組むこと。また、男性の家事・育児への参加などの共働き・共育ての推進、長時間労働の削減や生産性の向上などの働き方改革を進めること。また、子育てに不安のある家庭を支える家庭支援事業の普及を図ること。
- ○ 放課後児童クラブの待機児童解消を目指した受け皿整備や、中高生・若者向けの居場所づくりの充実を図るとともに、部局横断的な体制整備を促進し、「こどもの居場所づくりに関する指針」も踏まえ、子育ての全期間を通じたこどもと子育て家庭の居場所と相談環境を整え、地域で支え合う体制を推進すること。
- 〇 「令和の日本型学校教育」の着実な推進に向け次期学習指導要領に向けた検討を進めるとともに、多様で質の高い学びと放課後等の体験を充実させ、不登校支援や地域と連携した学校づくりなど総合的に推進すること。また、主体的な参画等を通じ、思春期のこどもの成長につながる環境を充実させること。
2. 困難な状況にあるこどもへの的確な支援
- ○ こどもの視点に立ち、こども家庭センターを中核に、母子保健と児童福祉分野の相談支援を一元的に対応するとともに、教育・保育・医療等が連携し、妊娠期から学齢期まで切れ目なく支援すること。
- ○ 小中高生の自殺者数が538人(令和7年)と過去最多となり、こどもの自殺対策の強化は喫緊の課題であることに鑑み、こどもの自殺対策の強化のため、既存施策と連動し、心の健康の保持のための健康診断等に努めるとともに、多様な居場所づくりや、人材育成も含めた相談体制の充実と早期発見を強力かつ迅速に推進すること。「こどもの自殺対策緊急強化プラン」について、早期に見直しを図ること。また、ICT活用や救急医療機関を含む関係機関の連携により予防と支援を一体的に実施するとともに、オーバードーズ対策等にも対応すること。
- 〇 現場の職員の負担にも配慮しつつ、こども家庭センターや児童相談所の機能を強化し、虐待の未然防止と総合的支援を推進し、虐待防止対策体制を強化すること。また、家庭養育優先原則とパーマネンシー保障の理念の下、里親等委託や施設の小規模・地域分散化や高機能化、多機能化・機能転換等により社会的養護に関する施策の充実を進めるとともに、特別養子縁組の推進を図ること。
- ○ 校内外の教育支援センターや学びの多様化学校といった、多様な学びの場を確保するとともに、いじめ・暴力行為、不登校等の未然防止に向けた魅力ある学校づくりを進めること。こどもの悩みの背景には様々な事情が関係していることから、学校と地域機関が連携し、地域全体で支援を行うこと。
- ○ 経済的に困難な状況にある家庭のこどもの育ちを保証するため、教育・生活・食・就労・相談支援を一体的に推進し、「貧困の連鎖」の断絶と自立を支援すること。就学援助や奨学金、学習・生活支援、こども食堂等により、地域で切れ目のない支援基盤を構築するとともに、ひとり親家庭等には家庭の状況に合わせて、ワンストップ相談・伴走支援、住まい支援等も組み合わせて多面的・伴走型の支援を推進すること。
- ○ 離婚後のこどもの養育について、こどもの意見を尊重し、離婚前後の父母に対する養育費・親子交流の取決めや履行確保に係る支援を実施すること。共同養育計画書の作成・履行確保を促進し、離婚後も安定した養育環境を確保すること。
- ○ 保育所等、放課後児童クラブ、児童発達支援センターや放課後等デイサービス等、学校等の関係者が連携しながら、地域における障害児支援体制の強化とインクルージョン推進のための取組を一層進めること。
3. 若者の希望の実現に向けた環境整備
- ○ 若者期の特性を踏まえ、「支援」に限定しない新たな視座で若者政策を再設計し、自律性や自己肯定感、多様な他者との関係構築を重視し、省庁横断・地域連携により、若者自身も参画した包括的な地域モデルを創出すること。
- ○ 「若者10万人の総合調査」等により、若者の多様なニーズや意識を的確に把握し、今後の政策に反映すること。あわせて、審議会等へのこども・若者委員の登用を進め、若者の社会参画と共創を促進すること。
- ○ ヤングケアラーや被虐待経験などの困難に直面する若者など支援につながりにくい層へのアプローチ体制を構築するとともに、関係機関の連携を通じ、居場所・居住・就労等を切れ目なくつなぐ多層的な支援と孤独・孤立の予防を推進すること。
- ○ 若者が多様な生き方を選択・実現できるよう、ライフデザイン事業の推進、地方公共団体や企業との連携も含め「プレコンセプションケア推進5か年計画」に基づく性や健康に関する正しい知識の普及や相談体制の充実、若い世代の希望に沿った結婚支援や学び・経験・再挑戦を支える社会環境を整備すること。
4. 産・官・学の連携による「こどもまんなか社会」の実現
- 〇 「こどもまんなか社会」実現に向け、国と地方公共団体が緊密に協働・連携して施策を推進するとともに、財政力の低い地方公共団体に対する支援体制の強化、手続の簡素化・DX活用により、地方公共団体の負担軽減や持続可能で分かりやすい施策運営を推進すること。
- 〇 企業の力を活かし認可外保育施設やベビーシッターの質の向上や、放課後の居場所の多様化、病児保育の充実などを図るとともに、仕事と子育てを両立できる環境づくりを強化すること。
- ○ 企業によるこども・若者・子育て家庭のための取組が、企業価値向上にもつながる点を重視し、「こどもとともに成長する企業構想」を推進し、国が金融機関等と連携し、大企業および中小企業の取組を後押しすること。
5. 「こどもまんなか」を支える基盤の確保
- 〇 「こども若者★いけんぷらす」の取組を通じ政策形成への参画機会を拡大するとともに、自ら声を上げにくいこども・若者も含めた意見表明を支える環境整備や結果のフィードバックを強化し、さらに国・地方公共団体の審議会等へのこども・若者委員の登用や地域での好事例展開を進めること。
- 〇 保育士や教員等について、職務や経験に応じた適切な処遇の確保の観点も踏まえつつ、処遇改善と専門性向上を図り、働き方改革や配置・定数改善、DX推進により教育・保育現場の環境を整備するとともに、昨年の改正児童福祉法により法定化された保育士・保育所支援センターを基軸として、潜在保育士の再就職支援等の保育人材確保を進めること。退職手当共済制度における保育所等に対する公費助成については、保育人材の確保の重要性を踏まえた適切な対応を検討すること。また、人口減少が進む中で、それぞれの地域の実情に応じ、施設やサービスの多機能化の取組の推進等を通じて、安心して子育てできる環境を確保すること。地域区分の見直しについては、新たな補正ルールの在り方を含め、地方公共団体の意見を踏まえ丁寧に検討を進めること。公定価格について、地域や現場の実情を踏まえ、不断の見直しを図ること。
- ○ 児童相談所等の人材確保・育成、地域全体でこどもを支える担い手づくりを強化すること。
- 〇 こども政策DXを引き続き推進し、母子健康手帳の電子化などによる子育て当事者の利便性向上、子育て関連当事者・地方公共団体の事務負担軽減、支援の質の確保・向上を図ること。
- 〇 「伝える」広報から「伝わる」広報への転換を進め、政府が運営するHP等やSNS、メディア連携を活用するとともに、誤情報対策や若者・有識者の意見反映を通じ、必要な人にタイムリーに情報が届く発信を行うこと。
- 〇 数値目標に基づく検証・評価とPDCAを徹底するとともに、こども予算の全体像を分かりやすく公開し、国民理解と信頼の確保を図ること。
なお、令和9年度予算要求に向け、補助金等については、国民からの提案募集の結果を踏まえ、深度ある見直し等の対応を行うよう併せて提言する。
以上
「こども・若者」輝く未来創造本部
開催一覧
令和8年5月22日現在
| 【第1回】 | 令和8年4月1日(水)12:00~13:00 @702号室 | こども・若者政策に関する有識者からのヒアリング 柴田 悠 京都大学教授 中室 牧子 慶應義塾大学教授 |
| 【第2回】 | 令和8年4月3日(金)12:00~13:00 @702 号室 | こども・若者政策に関する関係団体からのヒアリング 日本シングルマザー支援協会 (リモート出席) 全国ひとり親居住支援機構 OVA Ridilover |
| 【第3回】 | 令和8年4月8日(水)12:00~13:00 @702 号室 | こども・若者政策に関する関係団体からのヒアリング サンカクシャ 日本若者協議会 育て上げネット ヤングケアラー協会(リモート出席) |
| 【第4回】 | 令和8年4月10日(金)12:00~13:00 @701号室 | こども・子育て関係団体からのヒアリング 全国保育推進連盟 ・保育三団体協議会 全国認定こども園協会 ・全国認定こども園連絡協議会 認定こども園連盟 ・全日本私立幼稚園連合会 児童健全育成推進財団 子育てひろば全国連絡協議会 |
| 【第5回】 | 令和8年4月15日(水)12:00~13:00 @704号室 | 社会的養護・障害児関係団体からのヒアリング 全国里親会 ・全国児童養護施設協議会 社会的養育地域支援ネットワーク 全国児童発達支援協議会 ・全国重症心身障害児(者)を守る会 日本知的障害者福祉協会 |
| 【第6回】 | 令和8年4月24日(金)12:00~13:00 @702 号室 | プレコンセプションケアの取組に関するヒアリング 日本産科婦人科学会(リモート出席) 日本助産師会 新潟県燕市(リモート出席) 浅野製版所 |
| 【第7回】 | 令和8年5月15日(金)12:00~@702号室 | 提言(案)について |
| 【第8回】 | 令和8年5月22日(金)12:15~@702号室 | 提言(案)について こどもまんなか実行計画2026(案)について こども白書(案)について |