クマ等の鳥獣被害への対応に向けた提言
令和8年6月25日
自由民主党政務調査会
鳥獣被害対策特別委員会
令和7年はクマによる被害者数、死者数が過去最多となった。クマ本来の生息域である森林に近い環境だけでなく、多くの地域でクマが人里に侵入し、人身被害が増大・多様化・広域化しており、国民の安全安心を脅かす深刻な事態となった。
こうした状況を踏まえ、鳥獣被害対策特別委員会では、早急に効果的かつ具体的な対策を打ち出すため、新たに「クマ被害緊急対策プロジェクトチーム」を立ち上げ、クマ被害に対する速やか、かつ、重点的な対策について精力的に議論を行い、政府として速やかに取り組むべき事項について、令和7年11月13日に「クマ被害への対応に向けた緊急提言」をとりまとめた。
政府では、「クマ被害対策等に関する関係閣僚会議」を開催し、この緊急提言の内容を踏まえて令和7年11月14日にクマ被害対策パッケージを、令和8年3月27日にクマ被害対策ロードマップを作成し、関係省庁が緊密に連携し、実効性の高い対策を着実に、かつ、段階的に実行している。
令和8年度は、昨年に引き続き、クマの出没件数が多く、山菜採りによる死亡事故、市街地や農山漁村地域の集落など人の生活圏における人身事故が発生するなど、深刻な事態となっている。
このような状況を踏まえ、本委員会では実際のクマ対策の現場で奮闘する有識者から、被害の状況と対策に関してヒアリングを実施し、今現場に求められている対策について精力的に議論を行ってきた。
また、イノシシやニホンジカについては、捕獲強化に取り組んできた。令和5年度末の個体数推定の結果によれば、ニホンジカの個体数は中央値で303万頭、イノシシは122万頭であり、依然として高い水準となっている。過去5年間の捕獲頭数の平均値はニホンジカが69万頭、イノシシは59万頭であり、近年は自然増加数を上回る捕獲が行われていると考えられるが、引き続き、捕獲強化が必要である。
さらに、キョンについては、千葉県房総半島において急速に分布が拡大するとともに、個体数の大幅な増加が確認されており、今、集中的に対策を行い、千葉県北部及び茨城県への分布拡大・定着を阻止しなければならない。
今後、政府として着実に取り組むべき事項について取りまとめたので、以下のとおり提言する。下記の施策について関係省庁が一体となって重点的に取り組むことを求める。
制度運用改善
国民の命と安全を守るため、クマ被害対策ロードマップに基づき、緊急的な対応体制の確保、推定個体数及び捕獲目標数の明確化、自治体におけるゾーニング管理計画の策定等の徹底を図ること。
1、クマの捕獲に関する制度の柔軟な運用(鳥獣保護区、狩猟期間)
鳥獣保護区におけるクマの捕獲の促進、狩猟期間の延長について、都道府県の判断とはなるが、足並みをそろえてクマの捕獲に関する制度の柔軟な運用を実施するよう自治体に促すこと。
2、クマの捕獲から処理・活用に関する一連の体制の強化
クマの捕獲の準備から、捕獲した個体の処理及び活用までの一連の取組について、ガバメントハンターの確保、資機材の整備、罠の見回りや個体の運搬・処理体制の確保等に対する支援を強化すること。一般廃棄物処理施設等も最大限活用して、クマの処理が円滑に行われるようにするための処理施設の設備等の計画的な整備について、特にクマの被害が多かった東北地域において支援を強化すること。
3、捕獲したクマや人身被害に関する情報収集と科学的分析
捕獲したクマの性別、年齢、栄養状態等の情報や、人身被害の発生現場の状況、受傷者の行動、被害の状況等の情報について、自治体や捕獲者、受傷者の負担を考慮した上で収集し、整理・分析を進めること。
4、捕獲従事者に対する安全指導の徹底及び銃所持等の手続きに関するDX推進による捕獲従事者の負担軽減
ガバメントハンターを含む捕獲従事者に対して、鳥獣の捕獲・狩猟時の安全対策に係る指導を徹底し、事故防止を図ること。また、銃所持及び弾薬の譲受・譲渡に関する許可手続き等について、必要な支援環境等を充実させ、電子申請等の手続きを推進することにより、捕獲従事者の負担軽減を図ること。
5、全国でのクマの調査と個体数推定の実施と広域管理の推進
国が主導し、統⼀的な⼿法による全国でのクマの個体数推定の調査や行動に関する生態調査を国立公園内も含めて、政府の計画通りに確実な実施を進め、個体数推定を実施するとともに、広域的な管理を推進すること。
6、ICT、ドローン、ロボット等の技術を活用した効果的な被害対策や捕獲方法の技術開発支援
クマ等の被害対策や捕獲、捕獲後の運搬等を効率的及び効果的に実施するためのICTやドローン、ロボット等を活用した技術開発や導入のほか、技術の普及に向けて、当該技術の活用・実証などの取組を支援すること。
7、ドローンでの捜索・救助のための特例の制度周知の強化
人命や財産に急迫した危難のおそれがあり、緊急性・公共性が認められる場合は、クマ被害等が発生しない段階の予防的な措置であっても航空法におけるドローンでの捜索・救助のための特例を適用できることについて、わかりやすい言葉で周知・情報提供を徹底すること。
8、関係行政機関の対応力強化(研修、警察の駆除体制構築)
緊急銃猟や出没対応に従事する関係行政機関の職員に対して、クマの生態や対処法に関する研修を実施し、クマに関する知識・技能の向上を図ること。また、市街地等におけるクマの出没状況を踏まえつつ府県において警察によるクマの駆除体制の構築を検討するとともに、必要な装備資機材の整備を図ること。
9、クマを含む鳥獣対策に関する研究人材育成体制の構築
大学に蓄積された知見及び研究資源・人材を有効に活用しつつ、大学の拠点や自治体等の関係機関におけるネットワークの構築を促進し、クマの生息状況や被害防止対策に関する研究、人材育成を推進すること。
10、緩衝林帯整備の推進
クマの人の生活圏への出没防止に向けた緩衝林帯の整備を地方自治体が着実に進められるよう支援を推進すること。
11、個体数管理の徹底
ニホンジカ、イノシシ等の個体数の適正水準への減少に向けて、適切な個体数把握を行った上で、捕獲等の対策を進めること。また、千葉県房総半島で急速に分布を拡大しているキョンについては、捕獲の強化や北上防止柵の設置等の対策を集中的に進めること。
12、農作物被害の低減に向けた鳥獣被害対策の強化
強固な侵入防止柵の整備や老朽化した柵の再編整備等を推進するとともに、鳥獣被害対策タスクフォースの設置を含む行政等の体制・取組強化や、ハンターの育成・確保、ICTの活用、捕獲個体の処理施設の整備及び簡易な処理方法の実証・普及などを推進すること。
鳥獣対策交付金の支援メニューの統合等による事務手続きの簡素化を図ること。
13、ジビエ利活用に向けた原発事故による出荷制限への対応強化
個体ごとに検査を実施し基準値を下回ったものについては出荷可能とする出荷制限の一部解除については、地元の声を踏まえた活用がなされるよう促すとともに、検査体制の確立などの取組を支援すること。
財政的支援
上記の鳥獣被害対策に必要となる予算及びクマ被害対策ロードマップの実施に必要となる予算について、十分な財政措置を行うこと。