記者会見経済災害外交安全保障憲法

高市内閣総理大臣年頭記者会見

会見を行う高市総理

【冒頭発言】

皆様、新年おめでとうございます。
総理就任以来、77日がたちました。この間、物価高に立ち向かうための経済対策の策定、その裏付けとなる補正予算の編成と国会審議、「年収の壁」引上げによる所得税減税などの来年度税制改正大綱の取りまとめ、そして、来年度予算案の閣議決定。外交では、「ASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会議」、「AZEC(アジア・ゼロエミッション共同体)首脳会合」、「日米首脳会談」、「APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議」、「G20」、「中央アジア+日本対話・首脳会合」など。目の前の課題に対し、懸命に駆け抜けた77日間でございました。
本日、新しい年の始まりに当たり、神宮に参拝し、清冽(せいれつ)な空気に触れ、改めて身の引き締まる思いが致しました。昨年も、青森県東方沖を震源とする地震など、我が国では災害が相次ぎました。被災された皆様に改めてお見舞いを申し上げます。新しい年が全ての国民の皆様にとって、安全で幸せな1年となりますよう、お祈りを申し上げます。
そして、長い歴史と固有の文化を誇り、美しい自然を守り、和を尊び、家族や社会が互いに助け合いながら暮らしてきたこの日本を守り、列島の隅々まで、強く豊かにして、次の世代に引き継いでいきたい。その覚悟を新たにしております。
本年は、丙午(ひのえうま)の年です。丙(ひのえ)には、前の年からの「陽気」、いわば「エネルギー」が一段とはっきり発展する、という意味があるそうです。
昨年は、ガソリン税及び軽油引取税の暫定税率が廃止されることが決まりました。半世紀以上にわたって続いてきた暫定税率をなくすことができた。やれば、できる。やれば、できるんです。昨年生まれたこの前向きな改革へのエネルギーを、本年、もっともっと力強いものとし、いかに困難な改革にも果敢に挑戦したいと考えています。
昨年は、私自身、様々な機会で、日本人の底力、エネルギーに触れてきました。
能登では、珠洲(すず)市立大谷小中学校の皆様とお話をする機会がありました。キーホルダーやステッカーなどを企画・制作し、その収益を被災地に寄附する活動に取り組んでいらっしゃいます。「いつもがんばっててすごい、私も、あなたも!」。これはそのステッカーに書かれているメッセージの一つです。およそ1年にわたる避難所生活を経て、現在は応急仮設住宅で暮らしながら、それでも他の人を励まそうとする強さに、激励に伺ったはずの私が逆に励まされました。
また、日本の優れたコンテンツを生み出すアーティスト・クリエイターの方々ともお話をさせていただく機会を持ちました。一流の皆様のエネルギーをビンビンと感じながら、日本人は必ずや世界の市場で戦えるとの確信を深めました。
また、午(うま)には、午前と午後を分ける境目という意味もあり、丙午は、エネルギーに満ちた状態から、次なる時代への移行に備えるべきタイミング、すなわち「分水嶺(ぶんすいれい)」とも捉えられます。本年も、我が国にとって大きな「分水嶺」になるかもしれません。
日本を取り巻く国際情勢が大きく変化する中で、大局観を失うことなく、我が国がどのような次の時代を切り拓(ひら)いていくかを見据え、この1年、政権運営に当たっていかなければならない。そう強く感じています。
「日本列島を、強く豊かに」。やるべきことは明確です。まず現役世代が、「今日よりも明日は良くなる」、そうした実感を持てる日本でなければなりません。昨年末、国民民主党の皆様の御協力も得て、いわゆる「年収の壁」引上げに当たり、中間層も含めた幅広い現役世代を対象に、所得税負担の軽減を行うこととしました。さらに、日本維新の会との連立合意に基づき、いわゆる「教育無償化」もこの4月から実施します。
令和8年度予算には、このような未来を見据えた「大胆な投資」をたくさん盛り込みました。こうした投資を、我が国の力強い経済成長につなげ、税収の増加を通じて、更なる投資を可能とする「投資と成長の好循環」を生み出してまいります。
同時に、8年度予算における公債依存度は、7年度当初予算を下回るレベルに抑えました。「政府債務残高の対GDP(国内総生産)比」を着実に低下させてまいります。「財政の持続可能性」を確保しながら、投資すべき分野には大胆に投資していく。これこそが、「責任ある積極財政」です。
本年の経済状況には、明るい見通しが出てきています。「政府経済見通し」では、物価上昇率について、24年実績がプラス3パーセントだったのに対し、26年はプラス1.9パーセントと、物価安定目標であるプラス2パーセントに近い数字となっています。特に、いわゆる「教育無償化」はマイナス0.3パーセントの寄与となります。そして、ガソリン・軽油の「暫定税率廃止」の影響もあり、エネルギー価格は、24年のプラス0.6パーセントから、26年はマイナス0.1パーセントの見込みとなります。
本年の名目GDP成長率は3.4パーセント。実質賃金も1.3パーセントの伸びを見込んでいます。特に、実質賃金がプラス1パーセントを超えるのは、コロナ禍期間中の特殊要因があったと考えられる2021年を除けば、2005年以来21年ぶりになります。こうした明るい動きを政策の力で、更に力強いうねりにしてまいります。
「責任ある積極財政」を通じて、「強い経済」を構築する成長の肝は「危機管理投資」です。「危機管理投資」とは、経済安全保障、食料安全保障、エネルギー・資源安全保障、健康医療安全保障、国土強靱(きょうじん)化対策、サイバーセキュリティなどの様々なリスクや社会課題に対し、官民が手を携え、先手を打って行う戦略的な投資です。世界共通の課題解決に資する製品・サービス・インフラを国内外の市場に展開できれば、更なる日本の経済成長につながります。
例えば、半導体のサプライチェーンの強靱化。数年前、コロナ禍に伴う半導体不足により、我が国の基幹産業である自動車の生産がストップしたことに加え、給湯器の故障が直せないなど、生活に支障が生じたことを覚えておられる方も多いと思います。「経済安全保障」への投資とは、こうした事態を防ぐことです。
また、「半導体大国 日本」の復活をかけた国家的プロジェクトである「ラピダス・プロジェクト」。2ナノの最先端半導体を、国内生産を可能とするプロジェクトです。これが成功すれば、AI(人工知能)ロボティクスや自動運転など、我々の暮らしを左右する技術を他国に依存するリスクが低減するとともに、海外にも輸出を拡大させていくことで、日本の「戦略的ポジション」を高めていくことができます。
ハードウェアである半導体の上で動くソフトウェアとして最も重要なのがAIです。AIは、どのようなデータを学習させるかで性能が大きく変わりますが、現在、世界をリードしている米国や中国が学習させているのは、主に言語や画像、動画です。
日本には、産業や医療、物流といった官民の「現場データ」が豊富にあります。特に、我が国が強みを有する製造業やサービス業が積み重ねてきた質の高いデータを集積し、学習させることで、ロボットが自律的に人間を支援する、精密なものづくりを行う工場が無人で制御される、といったことが可能となる「フィジカルAI」が実現できます。日本はこれで世界に打って出ます。
AI・半導体産業基盤フレームによる10兆円以上の公的支援などを活用し、予見可能性を高めることで、50兆円を超える官民投資を促し、約160兆円の経済波及効果を実現します。
次に、宇宙関連技術。能登半島地震の際は、発災時刻が日没近かったことや、道路・通信の寸断などにより、被害状況の把握が困難でした。我が国のスタートアップが世界に伍(ご)する技術を有している「合成開口レーダー衛星」、いわゆる「SAR衛星」であれば、夜間でも、天気が悪くても、広い範囲で高解像の画像を得ることができるため、被害状況の把握に役に立ちます。
さらには、「SAR衛星」と気象衛星を用いることで、水道管の漏水リスクを効率的に把握することが可能であり、老朽化したインフラの予防保全など、国土強靱化にもつながります。
そのほか、世界最高レベルの測位精度を誇る衛星「みちびき」や衛星データとAIを組み合わせた分析により、防衛・防災分野のみならず、農作物の生育モニタリング、ドローンによる種もみ直播(ちょくはん)、漁業での効率的な漁獲法や漁場の助言など、食料安全保障の確保にもつながるような、様々なユースケースが期待されます。
こうした宇宙分野への投資を1兆円規模の「宇宙戦略基金」のみならず、法改正によるルール整備も含めて後押ししていきます。
食料安全保障に向けては、全ての田畑をフル活用できる環境作りを進め、日本の農作物や食品の輸出先を開拓し、需要と供給の両方を強化します。
例えば、日本には、「グルテンフリー」ではなく、「ノングルテン」という、より厳しい基準を満たす米粉を作る技術があります。欧米でも小麦アレルギーの方が多い中、パスタやピザ生地など、米粉加工食品を世界市場に展開していきます。
そして、フードテックもアグリテックも重要です。日本が誇る「完全閉鎖型植物工場」や「陸上養殖施設」などへの投資を促進します。
こうしたテクノロジーを活用することで、自然災害の頻発化や高温などの自然環境の変化にあっても、農水産品の安定的な生産が可能となります。
まだまだ語りきれないほど日本には未来を切り拓くすばらしい技術・産業がたくさんあります。日本の学術機関から生まれたペロブスカイト太陽電池や省エネ型のデータセンターの普及、日本企業が基幹技術を保持するフュージョンエネルギー、さらには量子、バイオ、サイバーセキュリティなど、戦略分野に投資を行っていくことで、安心で希望に満ちた社会を構築してまいります。
国力の基盤となるのは「人材力」です。高市内閣では、「人材力」を強化していきます。
人づくりの礎は教育です。指導体制や学習内容の充実を図り、教育の質を向上させていきます。あわせて、公教育改革、高校教育改革を進めます。
そして、日本人の底力を解き放つためには、国民の皆様お一人お一人がいきいきと活躍されることが重要です。日本人の誰もが日本国の主役でなければなりません。性別、障害の有無、生まれた年代、地域、家族の状況によって不公平がない社会を目指します。
また、育児・こどもの不登校、介護が原因の離職を減らすため、ベビーシッターや家事支援サービスの利用促進に向けた負担軽減に取り組みます。また、標準的な出産費用の自己負担の無償化など、妊娠・出産に伴う経済的負担を軽減するための法案を通常国会に提出します。3.6兆円規模の「こども未来戦略」の「加速化プラン」に基づき、「こども誰でも通園制度」の本格実施などの取組を進めてまいります。また、企業の活力をいかした「子ども・子育て支援」も推進します。
そして、税・社会保険料負担で苦しむ中・低所得者の負担を軽減し、所得に応じて手取りが増えるようにします。そのためにも、野党の皆様にも参加を呼びかけ、今月、「国民会議」を立ち上げます。「給付付き税額控除」の制度設計を含め、「社会保障と税の一体改革」について、与野党の垣根を越え、有識者の英知も集めて議論し、結論を得ていきたいと思います。
通常国会では、こうした改革を可能とする令和8年度予算、そして、税制改正を始めとする各種法案の成立を目指してまいります。特に、予算関連法案の成立によって、昨年末に成立した令和7年度補正予算と一体となった力強い経済運営が可能となります。
「政治の安定」なくして、力強い経済政策も、力強い外交・安全保障も推進できません。日本維新の会との連立合意を基礎としつつ、国民民主党を始めとする野党の皆様にも協力を呼びかけてまいります。
さらには、皇室典範や憲法の改正。今、やらなければならない課題が山積しているときに、立ち止まっている暇はありません。本年は政治のリーダーシップをしっかりと発揮していく年にしなければなりません。「分水嶺」となるかもしれない丙午の年頭に当たって、そう強く感じています。
さて、ここ伊勢では、次の式年遷宮に向けて、本年、御木曳初(おきひきぞめ)が行われます。神宮は、20年ごとに新しく造り替えながら、1300年にわたる歴史を紡いできました。新しくするからこそ、永遠となる。守るためにこそ、チャレンジを恐れてはならない。国民の皆様の暮らしと命を守り、日本の誇るべき国柄を未来を担う次の世代へとしっかりと引き継いでいくために、本年も果敢にチャレンジしてまいります。神宮のあるこの伊勢の地で、そう強く決意しております。
本年が、国民の皆様にとりまして「希望の年」となるよう、全力を尽くしてまいります。私からは以上でございます。本年もよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。