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第210回臨時国会閉会にあたって岸田内閣総理大臣記者会見

本日、臨時国会の会期末を迎えました。69日間の会期を予定どおり終え、総合経済対策を動かすための第二次補正予算、さらに、将来の感染症危機から国民を守るための感染症法改正を始め、ほとんど全ての政府提出法案を成立させることができました。
臨時国会を終えるに当たり、総理大臣として、先頭に立って実現に向けて力を尽くした旧統一教会の被害者救済と総合経済対策の2点を中心に、所感と今後の対応をお話しいたします。

この会期中、内閣総理大臣として、旧統一教会による被害に苦しむ方々と直接お会いいたしました。その体験は、胸が苦しくなる、正に凄惨の一言に尽きるものでありました。
問題の深刻さを深く心に刻み、信教の自由や財産権などを保障する憲法や、現行の我が国の法体系の下で最大限の規定を盛り込んだ新法をつくるように指示をするとともに、今国会での成立に向けて、強い覚悟で臨みました。

関係省庁のスタッフは、夜を徹し、また土日を返上して、前例のないスピードで法案策定作業を進めてくれました。政府・与党の緊密な連携の中、茂木幹事長を先頭に与野党調整も進めていただきました。被害に苦しむ元信者や家族が直面する困難を前に、与党も野党もない。野党の御意見もできる限り取り入れつつ、与野党の垣根を越えた、圧倒的多数の合意の下で新法を成立させることができました。審議を見守っていただいた国民の皆様、円滑な審議に御尽力いただいた関係者の皆様に心から御礼を申し上げます。

しかし、我々は新たなスタート地点に立ったばかりです。被害者がこの制度を利用しやすい環境を早急に整備することに全力を傾けます。省庁横断のチームで、法テラスなどの関係機関とも密接に連携をしながら、必要な政府支援を迅速に行い、新たな制度をしっかりと運用してまいります。

次に、物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策です。
国会では、2つの予備費を含め、財政支出39兆円という今回の経済対策の規模について活発な論戦が行われました。来年の世界経済については、時を追うごとに下振れする方向で、見通しの改定が相次いでいます。先行きの不透明さが増すときこそ、国民生活、雇用の安定、事業継続に向けて万全の備えを用意するとの私自身の判断に沿って策定したのが今回の総合経済対策です。

今回の対策により、リッター25円程度の値下げ支援を行っているガソリン・灯油の激変緩和措置を継続することに加えて、電気料金についても、来年1月から全国一律の料金支援を始めることが可能となり、同様の支援措置を講ずる都市ガスと併せ、標準的な家庭で9月までに合計4万7,000円の支援を行ってまいります。事業者向けにも再エネ賦課金相当の電気料金支援や、同レベルのガス料金支援をスピーディーに実施いたします。今回、5つの大手電力会社から値上げ申請が行われました。これに追随する動きもあります。政府としては、今回の値上げ申請に対し、厳正で厳格な査定を徹底してまいります。

子ども・子育て支援についても力を入れました。我が国の未来は子供にかかっています。岸田内閣として、引き続き「こども真ん中政策」を徹底してまいります。

まずは妊婦や子育て家庭への伴走型の相談支援を充実させるとともに、妊婦健診時の交通費や、ベビー服等の育児関連用品、産後ケア、家事支援サービスなどに使える10万円相当の経済的支援を一体的に所得制限を設けることなく、来年以降も継続してお届けいたします。また、来年度から、出産育児一時金を現行の42万円から50万円へ大幅に増額いたします。これは過去最高の引上げ幅です。こうした取組を先行させつつ、来年4月に発足するこども家庭庁の下、政府の総力を挙げ、「こども真ん中」社会の実現に向けた道筋を来年6月までにお示しいたします。

成長戦略も重要です。今回の対策には、日本の未来を切り拓(ひら)く「新しい資本主義」実現のための対策も数多く盛り込みました。
大切なことは、企業や家庭に眠る現金や預金を設備投資や研究開発投資、そして賃上げといった未来への投資に官民が力を合わせ、分配していくことです。このため、半導体、グリーン・トランスフォーメーション(GX)、次世代の通信技術、さらに、バイオ、宇宙、こうした戦略分野への国内投資を7兆円規模の補正予算で支援いたします。

官民連携による投資を重視する「新しい資本主義」の取組を通じて、企業の国内投資意欲は高まっています。今週、国内投資拡大のための官民連携投資フォーラムを設立いたしました。その場で、経済界から年間100兆円という5年後の設備投資の見通しが示されました。バブル期に匹敵する過去最高水準の投資であり、名実ともに日本経済を新たなステージに引き上げることができるものです。今回の補正予算を活用し、純粋な民間投資としてはリスクが高いですが、地域の経済への波及効果が大きい、こうした先導的な投資を更に引き出していきたいと思います。

そして、日本経済再生の鍵を握るのは構造的な賃上げです。構造的賃上げの実現に向けて、リスキリング、転職、正規社員化などを支援する、5年で1兆円の「人への投資」パッケージを盛り込みました。リスキリングのみならず、転職、キャリアアップまで一気通貫で支援する仕組みづくりや、主体的に成長分野であるデジタルやグリーンについてのリスキリングに取り組む個人への直接支援など、働く個人一人一人に着目し、その努力を支援する仕組みを全力で広げてまいります。産業構造の大きな変革に合わせて、失業なき労働移動を進め、構造的な賃上げを実現していくための制度的な土台を早急につくっていきます。

これらの対策について、できる限り早く、広く御活用いただけるよう、私が本部長を務める物価・賃金・生活総合対策本部の下で補正予算の全事業の進捗状況を毎週チェックし、集計していく体制を整えました。地方議会の日程なども踏まえて、万全に対応してまいります。

最後に、新型コロナ(ウイルス)対策について申し上げます。
いわゆる第8波への対応については、インフルエンザとの同時流行も念頭に、これまで拡充・強化してきた医療体制に加え、発熱外来や電話診療、オンライン診療の体制強化などに取り組んできました。

今国会では感染症法を改正いたしました。足元の新型コロナ(ウイルス)対応のみならず、次の感染症危機のリスクもにらみ、医療機関の人員確保、円滑な入院調整、病床確保、緊急時の保健所機能や検査体制強化、さらには機動的なワクチン接種を行うため、新たな備えを強化してまいります。

これから年末年始、感染が拡大しやすい時期を迎えます。体制を整備し、加速してきたワクチン接種は1日100万回を超えました。国民の皆様には、御自身や大切な方を守るため、引き続き早期のワクチン接種をお願いいたします。また、寒い時期ではありますが、換気をうまく行っていただくなど、感染対策に万全を期すようお願いいたします。国民の皆様、是非共にこの年末年始を乗り越え、来年は平時の生活を全面的に取り戻そうではありませんか。

年末、防衛力の抜本的強化、令和5年度予算編成と税制改正、グリーン・トランスフォーメーション実行計画の取りまとめなど、重要な課題が山積しています。これらの課題一つ一つにベストの結果を出してまいります。

特に防衛力の抜本的強化は、厳しい安全保障環境を前に、一刻の猶予もない、待ったなしの課題です。今後5年間で緊急的に防衛力を抜本強化する。その結果として、令和9年度には防衛力とそれを補完する取組をGDP(国内総生産)比2パーセントに強化する。その強化された防衛力を維持・強化するための安定財源を確保する。年末、この3点を三位一体で国家の意思として毅然として内外に示す、強い決意を持って臨んでまいります。