
代表質問に臨む小野寺政務調査会長
自由民主党の小野寺五典です。私は、自由民主党・無所属の会を代表して、石破内閣総理大臣の所信表明演説に対し、質問いたします。
政権が発足して1週間、国民の皆様は、石破総理がどのような国づくりを進めていかれるのか、大きな関心を持って見ておられます。自民党に厳しい目が注がれる中、代表質問を通じ、総理の目指すわが国の方向性について、分かりやすく説明頂きたいと思います。
まず、政治の信頼回復について、お伺いします。
今回の政治資金に関する問題は、そもそも法律に定められた記載義務が守られていなかったことが原因です。自らが定めた法律を守れないようでは、国民の皆様から信頼は得られません。
私たちは、深い反省と危機意識に立ち、二度とこのようなことを起こさないため、先の通常国会において、政治家の責任を高めることや、パーティ券購入者の公開基準額を引き下げる等、政治資金規正法の改正を行いました。また、党として厳正な党紀処分を行い、一定のけじめを付けたところです。
今後は、政策活動費の在り方や透明性の確保、その監査に関する「第三者機関」の設置、政党交付金の交付停止等の制度創設、また、いわゆる旧文通費の使途明確化や公開、未使用分の国庫返納等、着実に進めていかねばなりません。特に、政策活動費については、国民の皆様から不信を抱かれないよう、その在り方について、真摯な検討を行う必要があります。
厳しい反省と強い倫理観のもと、不断の政治改革・党改革に取り組み、襟を正し、ルールを徹底して守らなければ、政治不信は解消しません。まさに、「信無くば立たず」であります。政治の信頼回復に向けた石破総理・総裁の決意を伺います。
次に、能登半島地震について伺います。
先月22日から降り続いた大雨によって、能登地方では広範囲に渡り洪水や土砂災害が発生し、15名の方が犠牲となられ、1名の方が未だ安否不明となっています。
まずは、犠牲になられた方々に心からお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。また、人命救助、捜索活動にあたられている消防、警察、自衛隊、そして、復旧・復興に尽力されている皆さんに、心から感謝申し上げます。
元日の大地震から復興途上にある中で、再び大きな災害に見舞われたことは、まさに複合災害というべき事態です。「できることは何でもやる」これは地震発生以来の政府与党の一貫した方針です。総理は、先週、予備費第7弾の指示、能登訪問、そして、激甚災害指定の表明など、対応を加速化されています。生活再建に向けた継続的な支援は不可欠であり、地震対策と一体となったきめ細かな対応が必要です。
総理は、事前防災の徹底に向け、内閣府防災部局の人員拡充と予算増額を行い、防災庁設置を表明されました。都道府県・市町村とも連携し、国民の命と暮らしを守る体制を、着実に進める必要があります。
自然災害が頻発化・激甚化する中、日頃の備えとしての国土強靭化は重要です。現行の5カ年加速化対策は4年目に入り、今後必要な事業量が確保できるのかが見えない、との声が各地から聞こえています。5カ年加速化対策の5年目も必要・十分な予算を確保するとともに、次期「中期計画」の策定にあたっては、災害の頻発化や激甚化、資材価格等の高騰、防災庁設置も踏まえ、これまでを上回る規模が必要ではないかと考えます。
能登の復旧復興に向けた決意とあわせ、防災庁設置などわが国の防災体制の強化、避難所のあり方、そして、「国土強靭化実施中期計画」策定に向けた考え方について、総理に伺います。
次に経済について、伺います。
日本経済は今、歴史的転換点を迎えています。コストカット型のデフレ経済から、30年ぶりの高水準の賃上げ、名目GDP600兆円の達成など、変化の胎動を見せ始めています。岸田政権の3年間の集中的な取組みによって、成長型の経済ステージへと動きはじめています。
ここで歩みを止めてはいけません。国内投資を増やし供給力を拡大させ、構造的な賃上げなどの政策を強化することで、成長と分配の好循環を実現させていかなければなりません。「経済あっての財政」の考えのもと、成長を高める対策が求められています。
一方、足元の急激な物価高から国民生活を守ることが必要です。特に影響を受ける低所得者世帯の方々をはじめ、医療・介護・保育・教育等の現場、中小企業や農林水産業等、地域の実情も踏まえ、きめ細かく対応すべきです。
そして、何よりも大事なのが賃上げです。物価水準を超える賃上げを継続的に実現することが成長に繋がります。生産性向上支援や価格転嫁対策等、あらゆる政策を総動員しなければなりません。
総理は、先週、総合経済対策の策定を指示されました。当面の物価高対策、物価高に負けない賃上げ、そして成長と分配の好循環の実現に向けた取組みについて、総理の認識を伺います。
成長と分配の好循環の成功例が、半導体への投資です。九州の半導体企業への投資は、設備投資のみならず、大学や高専も含めた人材育成にも取り組んだことがポイントでした。モノの投資に加え、ヒトの投資を地域で行ったことにより、賃金上昇や設備投資の増加が地域全体に広がりました。
こうした投資は、半導体に限りません。経済安全保障やGXの観点からも、蓄電池や洋上風力発電、バイオなどの産業は、日本にしっかり残し、競争力を高めていく必要があります。石破政権の新たな成長戦略として、地域経済への活性化も含めた成長投資を進めていくべきだと考えます。総理のご見解を伺います。
経済成長と国民の資産所得増加を図るため、資産運用立国の実現に向けた取組みを着実に進めていくことが大切です。本年1月にNISAは大幅拡充され、iDeCoの拠出限度額及び受給開始年齢の上限引上げについても、 本年中に結論を得ることになっています。
継続的な賃上げと貯蓄から投資への流れによって、所得と成長の好循環につなげていくことが大切です。石破総理は、内外からの投資を引き出す投資大国の実現も表明されました。資産運用立国と投資大国の実現に向けた総理の決意を伺います。
次に、外交・安全保障について伺います。
ロシアのウクライナ侵略、中国の力による現状変更の試みが顕在化する中で、国際秩序は重大な挑戦に晒されています。中東情勢は緊迫の度合いを増し、グローバルサウスと呼ばれる国々の存在感もますます高まっています。
わが国周辺では、北朝鮮の度重なるミサイル発射、中国による領海侵入や領空侵犯、空母遼寧の接続水域航行、ロシアによる領空侵犯など、挑発的行動が活発化しており、決して見過ごすわけにはいきません。国民の命と暮らし、領土・領海・領空を断固として守り抜くため、政権として、毅然と対応すべきであります。
こうした中、深圳の日本人学校に通う男子児童が登校中、中国人の男に刺殺されました。本当に悲しく、断じて許せない事件です。未だ明確な動機や背景の説明すら無く、「偶発的な事件」と説明する中国政府の対応は、常軌を逸していると言わざるを得ません。蘇州で日本人学校のスクールバスが襲われた事件や、靖国神社への中国人による侮辱行為など、中国による反日教育が根底にあるとすれば深刻です。
石破総理。在留邦人の安全対策の徹底と、中国政府への厳しい対応を求めます。
日米同盟を基軸に、普遍的価値を共有するパートナーとの連携を強化しながら、自らの防衛力も高めていく。その基盤となる自衛隊員の生活・勤務環境や処遇改善にはしっかりと対応すべきです。こうした自らの努力を積み重ねるとともに、首脳外交も活発に展開し、わが国の平和と繁栄を追求しなければなりません。政権の外交・安全保障の基本方針と自衛隊員の処遇改善等の取組みについて、総理の考えを伺います。
北朝鮮による拉致問題は、被害者のご家族が高齢になる中、一刻も早く解決しなければならない重要課題です。拉致、核、ミサイルを含め、諸懸案の解決のために北朝鮮とどのように向き合うのか、総理の考えをお聞かせ下さい。
総理は初代地方創生大臣を務められました。
まち・ひと・しごと創生法の制定や地方創生推進交付金の創設に尽力され、雇用創出や移住支援、政府関係機関の地方移転、国家戦略特区による岩盤規制改革など、様々な施策によって、地方移住の関心も拡大し、人口が増えた地域も出るなど、成果が上がっています。
この取組みをさらに後押しするため、総理は、地方創生の交付金を、当初予算ベースで倍増することを目指すとともに、「新しい地方経済・生活環境創生本部」を作り、次の10年の基本構想の策定を指示されました。総理の考える、地方創生のあるべき姿について伺います。あわせて、地方の主産業である農林水産業への支援策を伺います。
教育は国の礎です。人づくりこそ国づくりです。
他方、教師を取り巻く厳しい勤務状況や教師不足の解消は喫緊の課題であり、こうした環境を抜本的に改善し、質の高い公教育を実現することが必要です。わが党では、来年の通常国会に、教育職員給与等特措法の改正案を提出し、教職調整額の率を少なくとも10%以上に引き上げること等を提言し、骨太2024でもこの方向性は決定されています。今後詳細をしっかり詰める必要はありますが、教師の処遇改善と教職員定数の改善等にどのように取り組まれるのか、総理の決意を伺います。
最後に、憲法改正について伺います。
憲法改正は自民党の党是であり、党内において、多くの議論が積み重ねられてきました。8月末には、わが党の憲法改正実現本部において、選挙困難事態における任期特例に加え、早急に取り組むべき改正の重要テーマとして、自衛隊明記及び緊急政令について、論点整理が行われました。今後はこれを踏まえ、幅広い会派との協議を進めるとともに、条文化作業を加速し、速やかな改正原案の起草・国会提出につなげていく方針です。石破総理の、総裁としての憲法改正に向けた見解を伺います。
結びにあたり、冒頭述べたように、先の国会で、政治資金規正法の改正や厳正な党紀処分を行いましたが、わが党を取り巻く情勢はかつてないほどの厳しさがあり、国民の皆様はこれから先、本当に自民党が変われるのか、改革が止まることはないのか、厳しく見られておられます。だからこそ、石破総理の原点である「政治の使命は勇気と真心をもって真実を語る」という姿勢が大事だと思います。
政治に停滞は許されません。自民党は、石破総理・総裁を先頭に、政治の信頼回復に向けた取組みを、手を緩めることなく進めるとともに、山積する内外の課題解決に向け、全力を尽くしていくことをお誓い申し上げ、私の質問とさせて頂きます。ご清聴ありがとうございました。