丁寧で寛容な政治を

冒頭発言
ワンチームで国難に取り組む

　今から1カ月前の8月26日、私は総裁選への出馬を表明した。国民の皆さまの中に、「国民の声が政治に届かない」、あるいは「この政治の説明が心に響かない」、こうした厳しい切実な声があふれていた。

　今まさにわが国の民主主義そのものに強い危機感を持ち、私はわが身を顧みずこの総裁選、真っ先に手を上げた次第だ。

　あれから1カ月、素晴らしい候補者とともに国民の皆さまに寄り添い、声に耳を澄まし、積極的な政策論戦を行ってきた。

　このことによって、自民党が国民政党として国民の皆さんに寄り添い、そして、自由闊達（かったつ）な政党であるということを示すことができたと思っている。

　しかし、わが国は今、国難と言われる厳しい状況の中にある。

　新型コロナ対策、これからも全てをかけて必死に取り組んでいかなければならない。国民の皆さんがコロナによって、心をバラバラにされてしまっている。こうした状況に対して「ぜひみんなで頑張ろう」と、心をしっかりと取り戻しワンチームとしてこの国難に取り組んでいく雰囲気をつくっていかなければならない。

　そして、新型コロナ対策には国民の皆さまの協力が欠くことができない。年内に数十兆円規模の経済対策を策定することによって、共に協力していただける雰囲気をつくっていきたいと思っている。

　その先に、経済、新しい資本主義を構築していきたいと考えている。経済には成長と分配が共に求められる。成長なくして分配なしだ。しかしながら分配なくして次の消費、さらには、需要も喚起されない。

　今こそ成長と分配の好循環を実現し、全国津々浦々に成長の果実を届けていきたい。できるだけ幅広い国民の皆さんの所得・給与を引き上げる。こうした経済政策を採っていきたいと考えている。

　外交・安全保障についても三つの覚悟を訴えてきた。

　民主主義をはじめとする基本的な価値観を守り抜く覚悟、そして、わが国の平和と安定を守り抜く覚悟、環境をはじめとする地球規模の課題に貢献することによって国際社会で存在感を示し、国益を守っていく覚悟。こうした三つの覚悟のもとに外交・安全保障政策を進め、自由で開かれたインド太平洋を構築していきたいと考えている。

　それ以外にも、わが国においては少子化問題、さらには、人生100年時代を見据えた全世代型の社会保障制度の構築、ICT（情報通信技術）を活用した個別な教育の推進、現場を重視し、地域に寄り添った多様で豊かな農林水産業の構築と推進、こうしたさまざま課題が山積している。

　私の特技は人の話をよく聞くということだ。ぜひ、こうした課題に対してできるだけ多くの国民の皆さまの声を聞かせていただきながら、一つ一つ丁寧に答えを出していきたい。丁寧で寛容な政治を行い、国民の一体感をしっかりと取り戻していきたい。