ニュースのカテゴリを選択する

機関紙「自由民主」2941号より

在籍型出向で雇用を守る

2021年7月13日

お知らせ広報物新型コロナウイルス経済雇用

木原稔内閣総理大臣補佐官に聞く

 コロナ禍の長期化で経営状況が悪化した企業を中心に、雇用の維持が課題となっている。今号では、そうした状況を乗り越えるための新たな取り組みとして注目される「在籍型出向」について、労働政策担当の木原稔内閣総理大臣補佐官に聞いた。

在籍型出向の意義を語る木原稔内閣総理大臣補佐官

在籍型出向の意義を語る木原稔内閣総理大臣補佐官

失業なき労働移動

雇用維持と人材活用を両立

 ――コロナ下での在籍型出向とはどのような制度ですか。

 木原稔内閣総理大臣補佐官 コロナ禍の影響により人手が余る企業(送出企業)と、コロナ下でも人手不足の企業(受入企業)との間で契約を結び、労働者が送出企業との雇用関係を継続(在籍)したまま、受入企業で働く形態です(図1)。まさに「失業なき労働移動」を具体化した取り組みです。

 ――なぜ在籍型出向が注目されているのでしょうか。

 木原 雇用の維持と人材の有効活用を両立できるからです。
 コロナ禍で、政府は雇用調整助成金について前例のない特例措置を講じ、休業などによる雇用維持を支援してきました。その結果、失業率はリーマンショック時より低い水準で抑えられた反面、働く方々の能力が十分に発揮されないといった懸念も生じています。
 このため、休業だけではなく、在籍型出向を活用した雇用維持も推進するバランスのとれた雇用対策が重要と考えます。

図1 在籍型出向とは

 ――具体的な事例やメリットは。

 木原 図2などの事例があります。メリットとして、①送出企業は、業績の回復まで自社の労働者の雇用が維持できる②受入企業は、人材確保に加え、他社の従業員の受け入れによる職場活性化・生産性向上も期待できる③出向労働者は、新たな業種や異なる職場文化で働く経験が積める――などが挙げられます(下表)。

図2 在籍型出向の活用事例

在籍型出向推進へ

助成金や協議会設置で後押し

 ――政府による支援の内容は。

 木原 厚生労働省は、令和2年度第3次補正予算と令和3年度予算で約635億円を計上。送出企業と受入企業の双方に、出向時の賃金や訓練経費などとして日額最大1万2000円、出向成立に要した初期経費として最大15万円を助成する「産業雇用安定助成金」(図3)の創設、全国および各地の「在籍型出向等支援協議会」設置などに取り組んでいます。産業雇用安定助成金を活用した在籍型出向は、今年2月の創設から6月18日までに4831人分の計画が提出されています。

図3 産業雇用安定助成金(約581億円

 在籍型出向の活用に当たっては、地域の皆さまに仕組みや意義、ノウハウを十分ご理解いただく必要があります。地域在籍型出向等支援協議会はそのネットワークをつくるもので、商工会議所や連合といった労使団体、金融機関や行政機関などが参加。47都道府県に設置します。私もいくつかオブザーバーとして参加しています。

 ――最後に一言。

 木原 休業だけで雇用を守ろうとすれば、労働者の能力発揮や自己実現の機会が失われることになりかねません。雇用の維持や生産性の維持・向上といった観点だけでなく、「全ての人に活躍の場があり、生きがいを感じられる社会をつくる」という観点からも、在籍型出向の活用は極めて重要だと考えます。今後も積極的に進めてまいります。

さらに詳しく知りたい方は厚生労働省の特設ページへ。
右QRからアクセスできます。

厚生労働省の特設ページ

在籍型出向の主なメリット

出向する労働者

  • ●出向元での雇用が維持され、出向期間が終われば元の会社に戻れる
  • ●これまでと異なる経験ができ、職業能力の向上につながる
  • ●従来通りの収入を確保できる

送り出す企業

  • ●活動の再開・拡大時に必要な技術・ノウハウを失わずに済む
  • ●新たな知識・経験を得た労働者が戻ってくる
  • ●企業活動が停滞している間の人件費の負担が軽くなる

受け入れる企業の労働者

  • ●人手不足の解消により、業務負担などを軽減できる
  • ●日常業務への刺激となり、見直し・改善につながる

受け入れる企業

  • ●社会人としての基礎スキルを持った人材を確保できる
  • ●新卒採用と比べて人材育成の負担が小さい
  • ●既存の社員への刺激になり、職場が活性化する
  • ※ 在籍型出向は、労働者の個別的な同意または就業規則などの社内規定に基づいて行う必要があります。
  • ※ 在籍型出向の利用に当たっては、出向の必要性や出向期間中の労働条件などについて、出向先企業や労働者とよく話し合った上で、明確にしておくことが重要です。
機関紙「自由民主」

実際の紙面はこちら(一部抜粋)
他にも各種政策や党活動、議員の素顔など掲載しています。

「自由民主」インターネット版

更新日 毎週木曜日更新
年間購読料 5,200円 (税込)

タブロイド版での購読をご希望の方はこちら

機関紙「自由民主」

発行日 毎週火曜日発行
年間購読料 5,200円 (税・送料込)
定価1部 110円 (税込)
  • ※ 機関紙「自由民主」は、雑誌のオンライン書店「Fujisan.co.jp」からもお買い求めいただけます。(クレジットカードでのお申込みが可能です)

Fujisan.co.jp