2010年8月15日
本日、65回目の終戦記念日を迎えるにあたり、我が国及び諸国の英霊に対し、衷心より感謝と哀悼の誠を捧げます。多くの兵士が、祖国を思い、家族を思い、戦地に赴かれました。我々は、彼らが後世に託した思いを尊び、これを実現させていく責任を負っています。
また、先の大戦において、多くの人々が戦火に斃れ、家を失い、筆舌に尽くしがたい苦難の日々を送られました。今日の日本国民が享受する平和と繁栄は、そのような先人のお蔭であることを片時たりとも忘れるべきではありません。
連合国との間に圧倒的な国力の差が存在していたにもかかわらず、何故開戦に至り、中途の講和も成らず、祖国が焦土と化し、尊い幾多の人命が失われたかについても、正確な認識を持つことが必要と考えます。平和は歴史の検証と、たゆまぬ努力があってこそ初めて得られるものであることを、ここに改めて強く認識するものです。
100年前の8月22日、「韓国併合ニ関スル条約」が調印されました。この国際法的な評価につき、我が国の立場はいささかも変わるものではありません。しかし、その後歴史がどのような経過を辿り、どれほど多くの犠牲を生ぜしめたか、就中、大韓帝国国民であった方々に与えた多大の苦難に正面から向き合う勇気と真摯さを持たねばなりません。
今、日・韓両国はそれぞれアメリカ合衆国と安全保障条約を締結し、地域の平和と安定に大きく寄与しています。子孫たる我々は、先人の思いを受け継ぎ、さらなる信頼関係の構築に努め、地域のためにその役割を果たしていかなくてはなりません。
本年はまた、「新日米安全保障条約」の署名から50年を迎える節目の年でもあります。その後日米両国のみならずアジア太平洋地域の諸国の努力により、この同盟は単なる2国間同盟にとどまるものではなく、地域の公共財として大きな役割を果たしています。
現在、我々の前には幾多の問題が山積しています。冷戦後も不透明かつ不安定な安全保障環境、地球環境の悪化、低迷する世界経済、続発する大規模災害等に国際社会としていかに立ち向かうか、我々は、理想を一歩一歩実現するためにも、諸国と手を携えて進んでいかなくてはなりません。8月6日、広島における平和記念式典には、パン・ギムン国連事務総長やルース米国大使も参加されました。「核兵器のない世界」を実現するためには、実効ある抑止を担保しつついかに量を削減し、安全に解体・処理しうるかについての知見を踏まえた冷徹な議論と、各国の誠実な条約遵守が不可欠です。
もはやアジア太平洋において、あるいはこの世界において、山積する諸問題に一国のみで対処することは不可能です。世界が安定し、全ての国が発展していくことは我が国の国益に直結するのであり、そのために我々は積極的な活動を惜しんではなりません。
8月15日にあたり、過去の歴史に深く思いを致すとともに、アジア太平洋地域および世界の発展と我が国の国益のため、そして次世代の日本国民のために、今後一層の努力を重ねていくことを国民の皆様にお約束申し上げます。