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記者会見

谷垣禎一総裁 定例記者会見

平成23年5月19日(木)
於:党本部平河クラブ会見場

冒頭発言

【谷垣禎一総裁発言 】

まず、今日の本会議で、政府案の東日本大震災復興基本法が提出され、東日本大震災復興特別委員会の設置が決まりました。私どもからも、対案として、東日本大震災復興再生基本法案を提出しまして、今日の本会議で趣旨説明、質疑がありました。これから今日設置された特別委員会で活発に議論していかなければならないということです。政府案と我々の案、どこが違うのかということですが、ごく簡単に申し上げれば、政府案は、やはり政治主導という考え方に毒されていまして、自分は企画・立案と総合調整だけやる。実施は各省庁に任せるという形の復興対策本部を設置するということに留まっています。やや、省庁丸投げとか省庁縦割りをそのままにした匂い、感じが強くします。それに加えまして、この復興再生に関する計画、あるいは資金の確保に関する具体的規定がないというのも大きな問題だと思います。発災直後ならともかく、2か月も経ってから、この程度のものでは、私は極めて内容が薄いと申し上げざるを得ないだろうと思っています。わが党の案は、復興に対する推進力、実行力を高めるためには、やはり権限を集中させて、省庁横断的な復興政策の実施が可能になるようにしないといけない。企画・立案だけでなく、実施まできちっとそこでやらせるようにしなければ、一元的にやらせるようにしなければいけないということで、復興再生院というものを盛り込んでいます。今回の政府案は、阪神・淡路大震災の基本法案、これは発災直後にできたものですが、それをなぞったような形になっています。阪神・淡路大震災の場合は、どちらかといえば、都市の再生が中心だったと思いますが、今回の被害は、都市の再生だけではなく、農業、水産業の復興など非常に多面な要素がありますので、もう少し違った形のものがないといけない。高齢化とか少子化も進んでいる。そういうことを考えると、省庁横断的で実施までやれる権限をきちっと作っていくということが大事だと考えています。政府においても、わが党の考え方を踏まえた柔軟な対応をしていただく必要があるのではないかと思っています。これが一番目です。
二番目は、二次補正予算がやや議論になりつつありますが、避難生活も相変わらず続いています。がれきの処理等もまだまだ十分進捗していない状況を見れば、なかなか復興というフェーズにたどり着けない。まだ復旧だということになりますと、一次補正予算はあれで十分なのかということになってきます。復旧・再生に向けたかなりの規模の二次補正予算というものを成立させて、切れ目なく実施していく態勢をとる必要があると思っています。今、被災地の苦悩を置き去りにして、そのまま何もしないで国会を閉じるというのは、延命のための党利党略としか言いようがないわけでして、そういう国民の期待に正面から応えることができないというのであれば、政権担当能力がないということに当然なってくると思います。内閣不信任案の提出等々も視野に入れざるを得ないということであろうと思います。
三番目は、青森県知事選挙ですが、今日告示され、6月5日投票です。わが党の推薦候補である現職の三村申吾知事の必勝に向け、全力を挙げて取り組みたいと思います。私自身も随時、必要に応じて、応援に入りたいと思っています。
それからもう一つ申し上げますが、津波対策法を、自公で昨年の6月11日に提出していました。これは大津波が起こる前です。今から考えますと、その時に津波対策法を出していたのは、ある意味では先見の明があったわけだが、まだ当時は、法案を出しましたが、国会では審議に入れない状態でした。民主党・政権の方も、さすがにこの問題、自公の出したものを放っておくわけにはいかないということで、やっと重い腰が上がりまして、何かの報道を拝見しますと、自分のところの案を作ったかのごとき記事が出ていて、やや傍ら痛いという思いで、一言加えさせていただきました。

質疑応答

Q
青森県知事選挙について、自民党としてどのようなことを主張されますか。また、今回の選挙結果が国政にどのような影響を与えるとお考えですか。
A

どのような主張をするかは、三村候補が主張されるわけですが、被災県ですので、やはりどういう復興をしていくのか、災害に強い地域をどのように作るのか、相当大きなダメージを受けた水産業等々の産業をどのようにやっていくのか。こういうことが当然、大きな争点になるだろうと思います。六ヶ所村の核燃料サイクル施設や、大間原発ももうじき完成ということですので、その問題もあると思います。
(知事選の結果が)どのような影響を与えるかは、今からまだ結果がわからないので、申し上げるのは早すぎますが、ただ菅政権は、政権が発足してから、地方選挙でほとんど勝利していない。相乗りのようなものは別ですが、私どもと対峙するような形の選挙でお勝ちになった例(ためし)はほとんどない。特に、3月11日の震災が起こってからもそうです。ということは、この政権には、地域の選挙ではありますが、こういう国家的危機を乗り切ることが民主党政権にはできないのではないかという一つの表れではないかと受け止めていますので、我々も性根を入れて頑張らなければなりませんが、そういった事柄を含んでいると思います。

Q
政府案の東日本大震災復興基本法の修正協議という話も出ていますが、修正の余地があるとお考えですか。また、その議論をどのように進めるべきだとお考えですか。
A
委員会でこれから議論が始まるわけですから、議論してもらえればいいと思います。先程申し上げたように、政治主導と言いますか、こういう問題を実際にどのように処理するかの哲学なり、基本的な手法の違いがあると思いますので、そこらをどのように煮詰めるかは、よほど与党の側が柔軟に、悪く言えば無原則に対応しないと難しいかもしれません。
Q
(政府与党が)会期の小幅延長と小規模な二次補正予算を実現したとしても、内閣不信任案提出を出す姿勢に変わりはありませんか。
A
政治というのはしょっちゅう変わりますから、目の前を隠ぺいし、糊塗(こと)するような姑息なものであれば、そんなものはぶっ飛ばさなければならないということではないでしょうか。それは、しょっちゅう変わりますから。しょっちゅう変わったものに柔軟に対応しなければいけないこともありますから。
Q
先日、内閣官房参与の平田オリザ氏が、東京電力による放射能汚染水の海への放出は米国の要請によると発言したことを謝罪し、撤回しましたが、この発言についての総裁の所見をお聞かせください。また、内閣官房参与を大量登用する問題が、過去指摘されていましたが、改めて、震災や原発の対応に対して、彼らがどのように機能しているとお考えですか。
A
これはやや不用意な発言と申しますか、十分に考慮された、熟慮の上の言葉ではない言葉がしばしば出てくるということは、政権の弛緩と言いますか、緩みが表れているのではないかという感じを持っています。結局、政治主導というものが、今の民主党政権のマニフェストの根幹を貫く、言わば売りでした。その政治主導というものが何ら発揮されないばかりか、なかなか物事の処理も進んでいかない。結局、頭で考えた机上の空論であったことが、今や明らかになり、それを支える法案も撤回するということです。そういう政治の現実に対して、直視しない考え方がこういうことを生んでいる。参与を多用して、結局そこに緊張の緩みが見られる。そういう状態を生んでいると思います。
Q
発言の内容自体は、どのようにお考えですか。
A
そういうことはなかったと、そういうことを知る事実はなかったと撤回されたわけでしょう。その中身がどうかは、これから検証していく必要がありますが、今の段階では否定されたのだから、本当に否定することなのかどうかということは、検証していかなければならないということになります。
Q
菅総理は、電力の発電と送電の分離という考えを示しましたが、発送電の分離についての総裁のお考えをお聞かせください。また、そのことを党で検討するお考えはありますか。
A

この話は、それをどう考えるか以前に、菅さんの政治に対する姿勢が表れていると思います。それは、行き詰まると、もっと大きな花火をぶち上げて、そっちに人の目を引きつけるという目眩ましです。だから今回も、いろいろ行き詰まってくると、分離だとバーンとぶち上げる。これは、今までもしばしばありました。例えば、普天間で行き詰まると、消費税だと。よく考えて、きちんと案を持って、腹を決めて、発言されているのかという問題です。つまり、目眩ましのために打ち上げるということであれば、そうでないから、打ち上げたときは皆あっと驚くけれども、段々馬脚を現す。私は今回もそうだと思います。
この論点に関して言えば、かつて自民党政権の時にも、かなりこれを議論したことがありまして、真面目に議論するとなかなか難しい問題です。メリットもあるけれども、デメリットもある。我々の時は、分離するという結論に至らなかったことがあります。そういう経緯もありますが、こういう事態も踏まえて、頭は柔軟でなければなりませんが、思いつきで打ち上げるようなものではないというのが私の考え方です。

Q
青森県知事選挙について、六ヶ所村の核燃料サイクル施設や大間原発の問題も争点になるとおっしゃいましたが、これらはいずれも自民党政権下で推進された政策です。今回の選挙結果が、それらの問題ついて、どのような影響を及ぼすとお考えですか。
A

これは確かに、自民党政権時代、原子力発電は必要であると。特に、六ヶ所村に関して言えば、核燃料サイクルという考え方でやって行こうということでやってきたわけです。私は前に申し上げたことがありますが、この日本のエネルギー事情からすると、それは決して根本的に誤っていた選択ではないと考えてまいりましたし、今でもそのように思っています。ただ民主党も、その政策をある意味で採用されて、民主党政権になってからのエネルギー計画でも、(現在)原子力発電は30%くらいだと思いますが、何年か後に50%に持っていくという政策を立てておられるので、やはりこれに対するコミットというのが日本の政界、反対論者もいますが、現実にはコミットしないとなかなか難しいなということで来たのだと思います。こういう巨大科学は失敗すれば、大変なことになりますから、現にそれが起こっているわけで、徹底的な検証をして問題点をきちっとやっていくことが必要だと思います。

Q
今、超党派の議連でたくさん勉強会が行われていますが、その動きについてどのようにお考えですか。また、小池総務会長も超党派の勉強会に参加していますが、党幹部がそのような勉強会に参加されることについて、どのようにお考えですか。
A
私も過去、超党派の勉強会や議連など、いろいろなことに参加してきました。闊達に議論することは、決して悪いことではないと思います。そういう意味で政策勉強を、党の幹部であろうと若い方であろうと、どんどんおやりになることは結構だと思います。ただ、今起こっているのは、菅政権のパフォーマンスに対して不平不満がたまっている。どうしたら、それを打開できるのか。その鬱憤(うっぷん)のやり場という面があると思っています。
Q
参議院の西岡議長や古賀誠元幹事長が、サミット前の内閣不信任案提出を求める発言をしていますが、不信任案の提出時期について、総裁はどのようにお考えですか。
A
それは、視野広く、いろいろなことを考えていくということです。
Q
サミット前に、このようなことがあれば可能性が広がるというお考えはお持ちですか。
A
視野広く、考えていくということではないでしょうか。
Q
今日の読売新聞に、西岡議長の寄稿という形で記事が掲載されていますが、総裁のご感想等をお聞かせください。
A
与党ご出身の議長からあのような発言が出るということは、よくよく異例なことだと思います。あそこで議長がおっしゃっていること、なぜそのように考えるに至ったかは、私自身も共感する点が多いという点は、率直に言って、事実であります。しかし、ああいうことが起こるということは、ある意味では難しい局面にいて、被災者の苦しみや被災地の難問をなんとか乗り越えていく。その任務を背負っているのは政権であることは間違いない。与党出身の議長から、ああいう声が出るということは、菅政権が取り組もうにも、その足場がグズグズになっているということを意味しているのではないかと思います。
Q
青森県知事選挙に関連して、原発事故が起こったことで、安全対策について不安の声もあるようですが、党としての原子力政策について、ご所見をお聞かせください。
A
これは今、検討しているので、私個人の考えを滔々(とうとう)と申し上げる場でもないと思います。今申し上げられるのは、徹底的に検証して、問題点をえぐり出して、それに対する対応を打ち出すということだと思います。それに加えて、やはり相当節電等々をしないと、この夏も乗り越えにくい。しかし、事柄は東電管内だけでなく、融通し合っているようなことで、浜岡原発停止もあり、(電力不足が)全国に広がっています。そうしますと、好むと好まざるとにかかわらず、いろいろな代替エネルギーといったものも考えなければならないということは、当然あるだろうと思います。
Q
青森県知事選挙について、地元の支持団体の様子を見ると、昨年の参議院選挙と比べ、随分民主党から自民党にシフトしている状態が伺えます。これを今の政権に対する不満なのか、自民党への期待が含まれているのか、それとも現職の三村候補ということで支持がシフトしているのか、総裁のご所見をお聞かせください。
A
まだ結論が出ていないので、先取りして言うのは、躊躇いたします。ただ、先程からこの選挙の争点は何かという問い掛けもありまして、原子力問題なども、当然青森県の事情からすれば、(争点で)あるだろうということは申し上げました。見ていると、例えば(民主党推薦の)候補者の方は、非常に原発は不安だからということを出しておりますが、応援に入られた岡田幹事長は、出来上がった大間原発はやるんだということをおっっしゃっています。この党が何を考えて、おやりになろうとしているのか、有権者の目から見ると、よくわからないだろうなと。人によって、皆その時に都合の良いことを言うのかなという思いがあるのではないか。現段階では、そういうことです。
Q
菅総理が、全量固定価格買取法案を今国会で成立させたい意向を示しましたが、現段階で、賛否等について自民党はどのようにお考えですか。
A
今まで政府が出してきた法案が、本当に実効的なものなのか、私はかなり検討の余地があるのではないかと思っています。これは党で議論した結論までには至っていませんので、若干そのことを申し上げるだけに留めておきます。
Q
また、環境税についてはどのようにお考えですか。
A
環境税に対しては、いろいろ議論がありました。環境税の議論はこれからも必要だと思いますが、取り囲む環境がかなり変わっています。エネルギー計画自体が、今まで50%まで持っていくのに、あと十数基原発を作る前提で組み立てられていたのと全然違っていますから、環境税の議論も、まったく同じ平面でやるわけにはいかないだろうと思います。新しい発想、新しい仕掛けが必要なのかなと思っていますが、まだ私の頭で十分整理しているわけではありません。