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記者会見

谷垣禎一総裁記者会見

平成22年5月28日(金)
於:党本部平河クラブ会見場

冒頭発言

【谷垣禎一総裁発言】

まず、普天間基地問題について、申し上げたいと思います。政権は数々の茶番を繰り返した挙句、自民党政権時代の案に限りなく近い案に戻ってきたということです。しかし、我々の案に限りなく近いところに帰ってきたと言っても、問題点がいくつもあります。
第1は、結局これは問題の先送りであるということです。「5月末に決着する」ということでしたが、それには政府与党の合意、移転先、特に沖縄との合意、米国との合意、総理はこの3つを挙げてきたわけですが、肝心の沖縄との合意、現地の合意が全くできていません。それから政府与党の中でも、福島大臣を罷免することによって、ようやく閣議決定がかろうじてできたということで、これが連立の破綻になるのかどうかという論点がまだ残されています。
それに加えまして、根本的な問題としては、「国外、最低でも県外」と言っていたわけですが、まったくそれが果たせなかった。これに「職を賭す」と言っていたことは、まさに飾言としか言いようがないということです。鳩山総理は、「辺野古に決めたらどんなに楽だったか」、「杭1本打てなかった」、「辺野古の埋め立ては自然への冒涜」といった言葉を次々と乱発してきたわけですが、まさに臆面もなくこの案に帰ってきたということです。
それからもう1つの問題点は、この問題を解決していく、自民党の案に限りなく近いと申し上げましたが、問題は沖縄との合意、信頼関係を決定的に欠いているということです。どうしてこの信頼の絆を回復していくのか、具体的な手立ては全く示されていないと言わざるを得ないと思います。私はここまで行くと、鳩山総理の手では絶対にこの信頼は回復できないと思います。要するに、鳩山総理が辞任されるか、あるいは解散して信を問うことをしなければ、信頼を回復する道筋はスタートしないと考えています。また、関係閣僚の連帯責任もあるでしょう。ですから、内閣不信任案を提出することも視野に入れて、政権の責任をただしていかなければいけないと考えています。
それから今日はもう1点申し上げたいと思います。普天間基地移設問題が進行している最中、それも放置したまま、問題の多い郵政改革法案を本日強行採決した。ご承知のように、郵政改革法案は、かつて120時間以上の審議時間をかけ、加えて国民に信を問うことまでやった重大法案です。これを逆の方向に持ってくる、大転換するにも関わらず、この衆議院においては6時間弱の審議で強行採決した。郵政票を取り込むための、行き過ぎた選挙至上主義の弊害が露骨に出ているということです。
何よりも、これはなかなかご理解を頂きにくい点ですが、国会、委員会の審議で、今まで与野党間で数々のルールを作ってまいりました。国会法や衆議院規則に必ずしも書いていないことですが、このようにして与野党間で合意を積み上げてルールを作ってまいりました。こういったものを一切無視するということであれば、要するに数に力で決めていくことになります。選挙で多数を取ったら、あとは数の力で押していく。国会の中で衆知を集めて、より大きな合意を作る。より良いものに仕上げていく。こういう民主主義のプロセスという考え方が決定的に欠落しているということであろうと思います。このようなことが積み重なれば、議会政治というものの質を高めていくことが不可能であるばかりか、むしろ議会政治と正反対のものに転化していくおそれがあることを私は感じています。
野党5党が与党に予算委員会の集中審議、衆議院議長に公正円満な国会運営を求めてまいりました。頬かむりしたままの政府与党の諸問題を、国会における説明責任を果たしていくと共に、議会の権威、権能をないがしろにするような国会運営がなされないこと、きちっと議会の権威、権能を守る国会運営をしていくことを強く求めたい、求めていかなければならないと考えています。

質疑応答

Q
鳩山総理は会見で率直な謝罪をしましたが、感想をお聞かせください。
A
率直な謝罪とおっしゃいましたが、総理は、煩悶のうえに深刻な決断の悩みとともに、こういう結論に至ったという言葉の重みを感じることは、私にはできませんでした。大変残念なことだと思います。会議が躍るという言葉がありますが、言葉が躍るということではないかということが率直な印象です。
Q
国会改革の必要性を唱えていた小沢幹事長主導で、郵政改革法案が強行採決されましたが、受け止めをお聞かせください。
A
小沢氏とか、そういう特定の名前は別として、私の考えは先ほど申し上げたことです。選挙のときに決まった数で、選挙の時に与党が約束したマニフェストに書いてあるからと言って、力で押していくということでは議論が発展するとか、より多くの民意を吸収するとか、民主主義が果たすべき機能が果たせないと思います。国会はそういう機能を果たすためにある。単に与党と野党が対決するというためにあるわけではありません。私は、そのあたりの議会の機能、憲政の機能に対する理解を全く欠いているのが今の民主党の国会運営だと思います。このことは外から理解しにくいと思いますが、結局、大事な民主主義、民主制というものを根底から掘り崩す、非常に危険な芽があると危機感を持っています。
Q
内閣不信任案の提出時期について、総裁のお考えをお聞かせください。
A
これはまだこれからの推移をよく見ていきたいと思います。まだいつと決め打ちで考えていません。
Q
会期末にこだわるということはありますか。
A
これは、これからまだ何日かあるので、臨機応変、1番効果的な時に使いたいと思います。
Q
鳩山総理は、自ら5月末までに期限を区切っていましたが、会見では今後も全力を尽くすと続投を宣言しましたが、受け止めをお聞かせください。
A
この普天間問題、これは日本の安全保障にとって極めて大事な問題だと思います。日米安保の実効性をどう保って行くか。日本のアメリカとの信頼関係をどう保って行くか。それからこのことは同時に、日本の近隣諸国との信頼関係をどう結んでいくかという問題でもありますが、この問題を解決するためには、特に沖縄の方々との信頼関係が必要ですが、それを全く欠いているのが現状だと思います。記者会見の印象についての質問がありました。言葉が躍ると申し上げましたが、多くの沖縄県民がそうような思いで見ているのではないかと思います。要するに鳩山総理の下では、そのような信頼関係を結ぶのはまったく不可能になっているというのが私の認識ですので、これを全力を挙げて解決するとおっしゃっても、まさに言葉が躍るだけと申し上げざるを得ないのは、まことに残念だと思います。
Q
福島大臣の罷免についてどのように感じていますか。またこの事態に及んでも、鳩山総理は3党の連立を模索すると述べていますが、受け止めをお聞かせください。
A
日本の安全保障の根幹に関する問題について、意見が一致しないということであれば、これは罷免ということもやむを得ないことだと思います。しかし、事ここに至るまでに、この問題を解決するために、総理はいかなるリーダーシップを発揮したのかということが問われなければならないと思います。ということは、根本の問題は、最低でも県外とおっしゃっていたのに、結局は、沖縄に戻ってくるという総理の迷走が根本にあることは、私は否定できないと思います。したがって、閣内の一致を作るために、総理としての権限を発動されるということは、ある意味では、当然と言えば当然ですが、問題はそこに至るまでの総理の政治運営というものは、鋭く問われる事態であると思います。
連立に関しては、私はよくわかりません。どうなっていくかは、社民党がこれからどう判断するかにかかっていると思いますが、この対立が安全保障の根本的な見方が違うということになると、連立が維持できたとしても、それは野合であるというそしりは免れないのではないかと考えています。
Q
福島大臣は、鳩山総理が就任する前から、辺野古反対を言い続けてきました。ここへ来てのこの罷免をどのように思いますか。
A
最低でも県外とおっしゃっていた方が、最後は県内に戻ってくる。ここに問題の根源があるのはおっしゃるとおりでしょう。
Q
総理の会見で、情報管理がうまくいかなくて、こういう結論になったという発言がありましたが、受け止めをお聞かせください。
A
認識の浅さを自白しているのではないかと思います。あのやり取りは、政治主導がうまくいっているのかという問いかけだったと思いますが、反省すべき点は情報管理と言われた。それだけの問題にとどまるのではない。私どもはそう見ています。むしろ、きちっとテクノクラークのノウハウ、テクノクラークのわが国の官僚機構が蓄積してきた知恵、こういうものを活用していくスキルが全くない中で、政治主導のみを呼号しても、得ることはなにもないということではないではないでしょうか。そのことは口蹄疫の処理にも明白に現れている。これは鳩山政権の根本的な弱点だと見ています。
Q
普天間問題の解決策としては、政府はこのような方針を示しましたが、自民党としてはどのように取り組んでいきますか。
A
基本的に我が政権時代の考え方に限りなく近いものであることは間違いありません。私どもは検討の結果、抑止力の維持とそれから沖縄の負担、危険の除去という観点から取り得る方策は、まずこれ以外にあるまいと考えてきたことも事実です。他にそんなに便利に案が見つかるとは考えていません。我々のやっていた時代とどう違うかということになると、沖縄との信頼関係を決定的に崩してしまったということが違います。我々の時代には知事にも理解いただいた、現地の住民にもご理解いただいた。当時の名護市長もご理解いただいた。ということで確実に2014年には普天間が帰ってくるというプロセスを歩んでいました。しかしそれを去年の選挙のときに最低でも県外ということで、そういった構造を全部崩してしまったのは、鳩山さん自身です。
それで解決が不能になることを危惧しまして、昨年、石破政調会長と官邸に行きまして、総理、平野官房長官と会って、そのときに申し上げたことは、年が明けると、名護市長選挙でいたずらにこの普天間移転問題が争点になるようなことにすると、おそらく解決不能になるであろう。昨年のうちにやらないと解決不能になる。年内におやりになるなら、我々は協力を惜しみませんということを申し上げましたが、一顧だにいただけなかった。まことに残念に思っています。
自民党はどうするか。そういう積み上げたものがグシャグシャに壊れたものをどう積み上げていくか。これはなかなか簡単に答えが出るところではありません。まず政権側からどのような道筋で作っていくのか、はっきりしたものを示すべきでしょう。その中で協力できるものがあるいはあるかもしれません。しかし、私の基本認識は、鳩山さんの手でそれをやることはまず不可能だと考えています。したがって、今のような信頼回復の手立てを講ずるということになっても、鳩山さんが退陣されるか、信を問うことが前提になるだろうというのが、私の考え方の骨子です。