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記者会見

第81回党大会 安倍晋三総裁演説(発言詳細)

平成26年1月19日(日)
於:グランドプリンスホテル新高輪

冒頭発言

安倍晋三総裁

【安倍晋三総裁演説】

第81回党大会にあたりまして、自民党総裁として年頭のご挨拶を申し上げます。本日は、全国各地域にあって日頃自由民主党を苦しい時も、困難な時も支えていただいている皆さまに、お正月大変お忙しい中多数ご出席をいただきました。特に今年は女性の皆さんの姿が増えたような気がいたします。本年も自由民主党は、日本を女性が輝く国にしていくために全力を尽くしていくことをまずもってお約束を申し上げます。

昨年夏の参議院選挙、本日ご来会をいただいた皆さまをはじめ、全国の党員、党友、支持者の皆さまの力強いご支持をいただき、大きな勝利を得ることができました。やっとねじれを解消することができました。改めまして、この場をお借りしまして、党を代表して、皆さまに衷心より厚く厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

今年はこの後東京都知事選挙、そして長崎県知事選挙、山口県知事選挙が予定されております。各都連、県連が推す候補、わが党が支援する候補にどうか、大きなお力を与えて当選を果たさせていただきますように、党を代表してお願い申し上げる次第です。先程、友党公明党の山口代表から温かいご挨拶を頂きました。昨年、共に数々の課題に取り組み、様々な成果を挙げることができました。国民のために安定した政治を、この思いこそ連立の絆であります。風雪に耐えた自民党・公明党、この連立政権において、本年も大きな結果を残していくべく、協力をしながら頑張っていきたいと思う次第です。また経済界を代表して、米倉経団連会長にもお出ましいただきました。何回も海外出張にご同行いただき、一緒に経済外交を展開させていただきました。本年もよろしくお願いしたいと思いますし、今年は特に、賃上げの方もお願いしたいと思っているところであります。

 今年は午年であります。私は年男なのです。先般、この話をある新人議員にいたしましたら「ああ、安倍さん、48歳ですか」と言われた。私が「違いますよ」と言ったら「すいません、36歳ですか」と。皆さん、こういう議員は出世します。冗談です、これは。私は還暦を迎えるわけでありますが、しかし、大きな障害を力強くひらりと乗り越えていく駿馬のように、今年も難しい課題に怯むことなく、たじろぐことなく挑戦してまいる決意であります。

昨年この会場におきまして、皆さんと共にインドネシアの若者が東日本大震災の被害に苦しむ日本を、大好きな日本を励まそうとつくってくれた歌を皆様と共に聴きました。「桜よ咲き誇れ、日本の真ん中で咲き誇れ。日本よ咲き誇れ、世界の真ん中で咲き誇れ」。そう歌って、私たちに勇気を与えてくれました。このアジアの若者たちの思いに、自由民主党こそ応えていくべきだ、この会場でそう誓い合い、昨年は日本を取り戻す闘いに邁進いたしました。

一昨年日本経済は危機的な状況でありました。7、8、9月、一昨年のGDPはマイナス3.2%、経済の底が抜けそうな状況でありました。私たちは政権を奪還し、3本の矢の政策によって、強い経済を取り戻す挑戦をいたしました。その結果、昨年1、2、3月、GDPはプラス4.5%、まさにV字回復することができたのです。先月の日本銀行の短観によりますと、企業の業況判断、大企業はもちろんのこと、中小企業においてもプラスに転じました。非製造業において、プラスに転じるのは、何と21年と10か月ぶりのことであります。ということはつまり、22歳以下の若い皆さんは経験したことがないような経済を、今、私たちはつくりだそうとしているのです。雇用においてもリーマンショック後、有効求人倍率は0.42倍まで落ちてしまいました。つまり2人の求職者に対して、1人分以下の職しかないという状況だった。これが皆さん、やっと1倍になった。つまり、1人の求職者に対して1人分の職があるという状況をつくることができたのです。また、昨年冬のボーナス、ボーナスは自分のボーナスも気になりますが、人のボーナスも気になるところであります。連合の調査によりますと、平均で昨年冬のボーナスは3.9万円増えました。雇用も収入も良くなっています。数字は正直です。一昨年、日本をずっと覆っていたあの厚く黒い雲を、皆さん、私たちは間違いなく吹き飛ばすことができたのです。これこそ連立政権の、そして日本人の成果ではないでしょうか。
しかし、ここからが正念場です。この景気回復の温かい風を、全国津々浦々までお届けしていくことが今年の私たちの責任であります。そのためにも、企業の収益の改善を賃金の上昇に結びつけていく必要があります。賃金が上昇すれば消費は拡大し、さらに企業の収益は良くなる。そしてまたさらにそれは設備投資へと向かい、さらなる賃金上昇を呼ぶ。この景気の好循環をつくらなければなりません。そのため、昨年、米倉さんにもご協力いただき、政労使の懇談会を立ち上げました。私から経営者の皆さんに賃金を引き上げていただくよう、お願いをいたしました。資本主義経済の国では、確かに異例のことだったと思います。何と言っても総理大臣が、労働組合の委員長のような役回りをするわけでありますから。しかし、皆さん、経営者の皆さんはそれに応えていただいた。他の国では考えられないと思います。日本は古来より、朝早く起きて田を耕し、水を分かち合い、秋になればご皇室とともに五穀豊穣を祈った瑞穂の国であります。長い間続いたデフレから脱却をするためには、それぞれができることをやらなければ、日本を再び輝く国にすることはできない、この思いを一つにすることができました。これこそまさに瑞穂の国の資本主義ではないでしょうか。私はそういう国をつくっていきたいと思っています。
 そしてこの4月から消費税を5%から8%に引き上げさせていただきます。年金、医療、介護、世界に誇るこの社会保障制度を守り、そして次の世代に引き渡していくという責任を果たすためには、伸びていく社会保障費に対応する必要があります。また子育て支援をもっと拡充していく必要があります。そのための消費税であります。しかし同時に、やっとつかんだ、15年ぶりにやっとつかんだこのデフレから脱却できるかもしれない、このチャンスを逃すわけにはいきません。経済成長できなければ、財政健全化もできない。ですから私たちは消費税引き上げの影響を緩和し、今年の7月からは現在の勢いを取り戻すことができるように、今のこの成長軌道に戻ることができるように、5.5兆円の経済対策と1兆円の税制対策を行います。経済成長と財政の健全化、同時に達成するのはこの道しかありません。私はぶれることなく、この道を進み、強い経済を取り戻してまいります。そのためにも、24日から始まる通常国会において、補正予算、本予算の一日も早い成立を期していきたい。これには与党も野党もありません。野党の皆さまのご協力をいただきながら、デフレ脱却をめざしていきたい、こう決意を新たにいたしている次第であります。

先日、被災地、宮城を訪問しました。被災地は3度目の冬を迎えています。一昨年、いつ仮設住宅を出て、どこに住めるのか、この見通しはまったくありませんでした。私達は政権を奪還し、すべての地域で計画をつくった。現在、高台移転では、200以上の地区で着手、そして災害公営住宅1万世帯分で着手しました。全ての事業の約6割が動き始めています。その大層で来年の3月、完成します。
また福島においては、福島の復興を加速させるために、先月新たな方針を決定しました。福島の復興なくして日本の再生はありません。廃炉あるいは汚染水対策、東電任せにはせず、国も前面に出て行ってしっかり対応してまいります。国が判断すべきは決断をして、福島の復興をさらに加速させてまいります。

昨年暮れ、長い間、懸案でありました国家安全保障会議を設立いたしました。そして今年1月、国家安全保障局をスタートさせました。この2つをしっかりと機能させるため、特定秘密保護法を成立させました。国民をテロリストやスパイや工作員から守るため、大切な秘密は漏洩からしっかりと保全しなければなりません。これはもう世界の常識であります。この法律によって、国民を、国民の命を守るため、あるいは国益を守るための、必要な大切な情報がもっともっと世界から日本に入ってくるようになります。この法律によって、一般の国民の皆さんの生活に悪い影響が出ることは一切ありません。まして一般の国民の皆さんが罪に問われることはありません。総理大臣として明確にお約束を申し上げます。かつて日米安保条約を改定した際、この改定によって日本は戦争に巻き込まれると言われた。あるいは通信傍受法を作った際、この法律ができれば、あなたの電話が盗聴されると言って、脅かすようなキャンペーンが繰り広げられました。果たしてどうなったでしょうか。そんなことは全く起こっていないのです。報道の自由が侵害されることはありません。知る権利が侵害されることはありません。言論の自由が侵害されることはありません。今度も私達が言っていることが正しい、断言したいと思います。
この国家安全保障会議において、日本で初めて国家安全保障戦略を策定しました。日本の外交安全保障政策を透明性を持って内外に示すものであります。私はこの戦略に則って、今年も地球儀を俯瞰する戦略的外交を展開してまいります。早速先般、日本外交のフロンティアであるアフリカを訪問し、中東も訪問しました。21日にはダボス会議に出席いたしまして、日本の首相としては初めて基調講演を行い、安倍政権の政策を世界に発信したいと思います。

皆さん、今、この瞬間も、そして昨年の暮れも、正月も、自衛隊、海上保安庁の諸君は厳しい冬の海で、空で離島で、しっかりと日本を守っています。厳しい緊張感の中で、任務を遂行しています。私は彼らを誇りに思う。皆さん、この会場から、彼らに感謝の気持ちを届けようではありませんか。ありがとうございました。
国際協調主義に基づく、そしてこれから更に世界の平和と安定に貢献していくという積極的平和主義の旗を掲げ、日本人の生命と財産、美しい海を、領土、領空を、日本人の誇りを断固として守り抜いていくことをお約束申し上げます。

思い起こしますと、一昨年、「日本はもう成長できない、成熟国会日本は黄昏を迎えている」、こんなことをまことしやかに言う評論家が出ました。あれから1年ちょっと経った。先月、私は従業員9人の小さなメッキ工場に行きました。そこは冬のボーナスを倍にしたそうであります。従業員を大切にせよ、という先代の言葉を大切にする若い社長さんは、中学を卒業して、あるいは高校を中退して入ってくる若い社員、定時制工業高校に通わせ、卒業まで支援しました。リーマンショック後、苦しい時も、歯を食いしばり、自らの給料を削って、若い社員たちの職を守った。この気持ちに応えようと、若い工員たちは製造工程に工夫を重ね、生産性を上げ、技術を磨き、営業努力を重ねました。そして、景気回復の波に乗ったのです。これが日本です。これが日本人の力なのではないでしょうか。

2020年、再び東京にオリンピック、パラリンピックがやってきます。かつて、1964年、日本に初めてオリンピックがやって来た時、日本人皆、体に溢れるような力を感じていていました。あの時のように、日本は今、黄昏ではなくて、新しい朝を迎えているのです。今年1年間、日本が世界の真ん中で輝く国になるように、一緒に頑張っていこうではありませんか。
 平成26年が、日本と皆さま方にとって、輝ける年となるよう祈念いたしまして、総裁としての年頭のご挨拶とさせていただきます。皆さん、一緒に頑張りましょう。ありがとうございました。