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記者会見

茂木敏充政務調査会長 記者会見

平成23年12月9日

冒頭発言

茂木敏充政務調査会長

【茂木敏充政務調査会長発言】

今日の午後、参議院で一川大臣と山岡大臣の問責決議案が可決されましたが、両大臣のこれまでの言動を考えれば、問責決議案の可決は当然の結果だと考えています。野田内閣発足直後には鉢呂大臣が辞任、それに続いて今回二人の大臣の問責可決で、この三カ月の野田内閣は、ご本人は「安全運転」と言っていますが、未だに「仮免許内閣」であることが証明されたのではないかと思っています。野田総理は今回の参議院での問責決議の可決を任命権者として、重く受けとめ、即刻両大臣を罷免すべきです。党内融和のために問責大臣の居すわりを認めたり、また内閣改造時にこっそり交代させるような問題の先送りやあいまいな決着をすれば、まさに野田総理ご自身の任命責任そしてリーダーシップの無さが問われることになると思っています。
 
国会は今日で閉じるわけですけれど、振り返ると、この臨時国会には二つの特徴があったと思っています。その一つは、復旧・復興関係の対策・予算というものは、速やかに成立ができたことです。もちろんこれについては、三次補正予算、さらには議員立法の「二重ローン救済法」など、わが党が主導して成立させました。そして「復興庁設置法」についても、これは単なる調整官庁ではなくて、復興基本法に明記されています実施官庁としての権限を持たせることで、我々がリードして修正したように、復興関連予算そして政策といったものは、わが党主導で成立させることができたのではないかと思っています。

その一方で、全体の国会運営を見ますと、まさに民主党は、カレンダーを全く持たないで国会というものを運営している。その結果、34.2%と平成に入って最低の法案成立率でした。つまり三分の一の閣法しか成立させることができなかった。民主党の政権能力の無さが露呈した結果だと思っています。

おそらく民主党は「ねじれ国会だからなかなかできなかった」と言い逃れするのかもしれませんが、たとえば我々もねじれ国会を経験しました。平成19年の安倍内閣そして福田内閣、第168国会ですが、その臨時会では、法案成立率は73.7%でした。平成20年の麻生内閣、第170臨時国会でも41.17%という数字でして、これらと比べても、今回は圧倒的に低い法案成立率でした。まさに政権運営能力の無さ、これが露呈したことが数字の上でもはっきり表れていると思っています。さらに、例えば今回先送りになった重要法案である「国家公務員の給与法」にしても三党の政調会長の間では、我々の要求に対して、前原政調会長が「柔軟に対応する」としながら、実務者に下ろしてみると自治労出身の議員が出てきて、極めて硬直的な対応をするなど、やはり与党側の対応に大きな問題がありました。労働者派遣法の改正についても、与党側から「審議を急いでほしい」ということで、こちらは夜鍋までして、採決した訳ですが、その後、与党側で国会日程が全然調整できてなくて、「本会議での採決、勘弁してくれ」といった状態でして、まさに国会運営の問題点も露呈したと考えています。
 

今日はこの国会以外の事で3点ご報告します。その一つは本日付で政調会に「大都市問題に関する検討プロジェクトチーム」を設置することにしました。これは現在、国の財政だけではなくて、地方自治体の財政状況が大変厳しさを増す中で、都道府県と政令市による二重行政の問題、さらに大都市行政の肥大化の問題などの解消に向けて、新たな都市政策のあり方について検討を行うために設置をするものです。このPTの座長には元総務大臣で自らも政令指定都市、横浜のご出身であり、市議の経験もあります菅 義偉先生にお願いすることにしました。この後、菅座長のもとでメンバーの人選に入っていきたいと考えています。この検討PTですが、党の総務部会とも連携して、地方自治体組織のあり方、またその際必要となってくる地方自治法の改正も視野に検討を進めてもらいたい、そして早急に一定の方向を出してほしいと、菅座長にはお願いしています。


それから二点目でありますが、脱北者の保護に関します中国政府との誓約の問題についてです。今般、今年の初めに日本政府が中国政府の求めに応じて、北朝鮮からの脱北者の保護について、「中国の国内法を尊重し、脱北者を公館外から公館内に連れ込まない」とする文書、口上書を提出していた、との報道があったところであります。これを受け党の外交部会において、政府に確認を行ったところ、政府からは「中国において脱北者を保護しないという誓約はしていない」という説明でありました。しかしその一方で、脱北者を公館の外から連れ込むことに対しての誓約および文書があるのか、それともないのか、再三確認しましたが、政府からは明快な答弁がなかったということでした。約束してないのなら、ないと言えるはずであり、状況から見て、「連れ込まない」という密約をした可能性が非常に高いと考えています。北朝鮮に配慮する中国の圧力に屈して、このような誓約を飲まされたのであれば、人道主義を標榜するわが国の国益を大きく害するもので、大変大きな問題です。国内外より、わが国が人権を軽視していると受けとめられかねない、このような不当な圧力には断じて屈するべきではなかった、と考えています。

民主党政権の発足以降、わが国の外交におきましては、領土問題もそうでありましたが、譲ってはならない部分について相手国に押し込まれる、こういう事態が相次いでおります。しかも民主党政府はこのような都合の悪い事実、例えば尖閣のビデオもそうでしたが、今回の密約も一切国民に開示をしていないわけです。国民の知らないところで秘密裏にわが国の根本的価値観を揺るがすような約束が取り交わされているとすれば、政権として国民に対する重大な背信行為です。この「密約」がどのレベルで交わされた文書なのか、そしてまたその内容も含めて、政府として事実関係を確認し、それが国益を害するものであれば、より高いレベルで否定すべきだと考えています。

最後は、農業者の戸別所得補償制度の見直しの問題です。これはご案内の通り、8月9日の自民・公明・民主の三党の幹事長の確認書で、この農家の戸別所得補償を含めて政策効果の検証を行うということになっていまして、先日、前原政調会長の方から、この農家の戸別所得補償の効果について、「実務者協議に入りたい」というお話がありましたので、「まず政府が政策効果の検証をきちんと行って下さい」と申し上げました。そうしましたら「検証を進めているから、出来上がった段階で実務者協議に入りたい」というお話がありまして、こちらも了承しました。

ところが、この検証結果が出てきたのが一昨日です。何しろタイミングが遅い。平成24年度予算の計数整理、事務的な期限が12月9日、今日だと聞いていますけど、検証結果を7日に急に出してきて、「野党としての意見聞かさせてくれ」と言われても、いくらなんでも不誠実だと思います。同時に内容を見ても、政策効果の検証とはとても呼べないような内容のもので、とても必要な制度の見直しを検証する基礎にはなりえないと、我々は考えています。しかしながら、「とてもこんなんじゃ相手にできないよ」と言っても、わが国の農政をどうしていくかということについて、我々も責任を持たなければいけないということで、4点の申し入れを行いました。

一つは農家の戸別所得補償制度と言っているのですが実際は不完全な価格差の補てんでして、ネーミングがまず悪い。この農業者戸別所得補償制度の名称を変更することが必要だということです。

次に自給率の問題です。昨年自給率が1%低下しましたが、民主党として、食糧の自給率を平成32年度までに10%引き上げる旨の閣議決定をしている訳で、これを実現するための具体的な対策の経費を当然、来年度の予算に盛り込む必要がある。これが2点目であります。そして3点目ですが、5年以内に20~30ヘクタールの経営面積の経営体が大宗を占める農業構造を実現すると言っているけれど、この担い手の農地の集積、農業の規模拡大のための具体的対策の経費をきちんと予算の中に盛り込むべきということ。そして4点目、戸別所得補償制度を実施するために大幅に削減した食糧生産基盤整備のための予算を拡大すべきである。政権交代前の水準に戻すべきだと申し入れを行いました。

質疑応答

Q
大都市問題に関するPTの中では、「大阪都構想」というものを扱っていくのか。現時点での政調会長の「大阪都構想」へのお考えは、どういうお考えをお持ちかお聞かせ下さい。
A

私の知り得ている「大阪都構想」は、平成26年には大阪都に移行する、そのための様々なステップを踏んでいくということで、その過程でいくつか出てくるハードルの中に、一つは地方自治法の改正の問題、それから場合によっては憲法95条の関連によって、住民投票の問題が出てくるのだと思います。おそらく橋下新市長と言いますか、維新の会サイドは、「大阪都」という問題意識からスタートをして、この地方自治法の改正の問題も検討される。我々の場合はあくまで、全国の大都市が持っている課題の中で改善すべき点、必要に応じて地方自治法の改正なども検討し、ゴールの一部は結果によっては一致する部分は出てくるのではないかと思います。

Q
問責の件なのですが、それを受けた二閣僚がポストにとどまった場合、現在民主党と抱えている政策協議の案件、それぞれこの政策協議に影響が出てきますか。
A

影響は出ると思っています。ただあくまで問責決議は、参議院の院として為されたものでありまして、院としておそらく、一川大臣そして山岡大臣に対する今後の質疑等々は行える状況にはならないと思います。当然それとの関連で、政策協議と言ったものについても、影響は出ると思っていますが、今後どうするかについては、また検討していきたいと思っています。

Q
先程の問責の可決を受けて、一川大臣は、総理並びに官房長官と連絡を取り合って、「辞めずに引き続き職務を全うしてほしい」ということとあわせて、本人も辞める必要はないと改めて認識を示しており、輿石幹事長も「辞める必要はない」と言っているのですが、この対応についてどうお考えですか。
A

まず、本人の自覚が足りないと思っています。それに総理も適材適所という話ですが、「この方が不適格でなくて、どういう大臣が不適格になるんだ」と私はあえて問いたい。これ以上不適格な方っていうのは出てこないと思うくらい不適格な方だと思っています。こんな方にFXを決めてもらっていいのでしょうか。そしてまた、南スーダンへの自衛隊派遣を決めてもらっていいのでしょうか。環境影響評価書を沖縄に対して提出してもらっていいのでしょうか。全て誰が考えてもNOだと思います。

Q
脱北者保護の関係で、今後の対応について、今決まっている自民党としての対応があれば教えて下さい。
A

既に外交部会を開催しましたが、必要に応じてまた部会等で事実確認をする機会が出てくると思います。同時に今後の国会においてもこの問題はきちんと確認をとる、また議論をするようにしていきたいと思います。その確認の上で必要な是正措置がありましたら強く政府に求めていきたいと思っています。

Q
もうひとつ、国会運営の関係で、成立率が低いというものがありましたが、延長するかしないかという議論の中で最終的に国会が延びずに閉じてしまったということも、一つの成立率が低かった要因になったと思いますが、自民党としてはこれから追及していきたい問題、今の脱北者の保護といったものも含めていろいろあると思うのですが、会期を閉じてしまったということに対する対応、ご判断はいかがでしょうか。
A

まず、いつ閉じるかという問題の前に、開けるのが遅すぎました。国会は、あきらかに開くのが遅すぎたから、このような顛末になったのではないか。三次補正を出すのも遅かった、そして法案について審議に入るのも遅かった。全てスタート時点の間違いが、今回の低い成立率につながっていると思います。同時に、それぞれの委員会の現場でも、約束されたことが全く守られない。こういう状況が、先ほどの「労働者派遣法」が成立しなかったという問題にもつながっています。

Q
戸別所得補償の見直しの件ですが、2点お伺いいたします。諸々の疑問点が民主党側の検証にあるということですけれども、具体的に言うとどのような疑問点があるか教えて下さい。また、政策効果の検証をしていくことが三党合意、特例公債法を通す条件でありましたけれども、今の段階だと約束を破っているような状況かと思うのですが、今後の協議とか、国会運営への影響がどのように出てくるか、お考えを教えて下さい。
A

今後の対応については、例えば子ども手当の制度設計の問題等々について、3党で協議をすることはあるのだと思いますが、全体の予算について、事前に三党で合意をするということはあり得ません。我々は、わが党としての平成24年度の予算に関する考え方をとりまとめ、それを政府に対しても提案をします。それがどこまで反映をされるか、これも検証をしたいと思っています。我々の予算通りのことをやるのであったならば、それは政府ではなくなってしまうし、与党ではなくなってしまいます。また、政府・与党通りのことを我々がやるのだったら、野党ではなくなってしまいますから、事前に全てを合意するといったことはあり得ないと考えています。

A

(戸別所得補償の見直しについて)
(赤澤議員):それでは政調会長からお話のあったことを補足する形で説明したいと思います。疑問点の大きなものについては、疑問点諸々あると書いたことの、大きなものについて「記」以下で答えてほしいという訳です。それを解説してから、これに出ていないものをご紹介します。全体で2分か3分くらいだと思います。

 1.について言えば、「農業者戸別所得補償制度」という名前は、農業者からみると、「自分たちが所得補償してもらっていない」という、まず不満があります。この名前はご案内の通り、農業者に大変受けが良くて、「自民党は小規模農家切り捨て」と言われて、選挙で大変な影響があったと思いますけど、いざ制度をやってみたら、「自分たちの所得補償じゃないじゃないか」と、「看板に偽りありだ」という農業者の評価が一つあります。一方で、商工関係で生業を立てておられるような方たちからは、「なんで農家だけが所得補償してもらえるんだ」と、こういう不満の声も大変多く寄せられているので、名称は、制度の理解を国民的な理解を得ていくにあたって、非常に疑問が多いというのが我々の考え方であります。

 それから2.と3.の共通しているのは、目標は掲げて、「ちゃんとやります」とは言うんですけれども、実は全く、これまで民主党がやっていた農政が向かっていないと、だからこそ彼らの検証の中では、自給率が先ほど政調会長からご紹介があったように1%下がったのですが、「今の政策が自給率向上のために役に立たないと判断するには時期尚早」とだけ書いてあって、直さなくていいという言い方なんです。「そんな言い方をするのであれば、計画的にきちっと10%を平成32年までに上げていく。その道筋を明らかにし、具体的な効果の納得できるような対策を、その初年度分として24年度予算に盛り込んでくれ」と言っているのが2.であります。3.についても「20~30ヘクタールの経営面積が大宗を占める」ということを目指す訳ですけれども、予算委員会などでも指摘が多く出ているところですが、平均経営面積以下の2ヘクタール未満の農家に、戸別所得補償の予算の41.6%、1300億円を撒いたという訳です。自由民主党のコメ政策は2ヘクタール未満、平均経営面積以下にはせいぜい3%、それも2桁億ぐらいのものしか配分しておりません。いろんな意味で政策全体があきらかに規模拡大に逆行していますので、この辺については、「計画的に本当に5年以内にそれができると言うのならば、具体的な対策を見せてくれ」と、こういうことであります。

 あと、4.については、農業基盤整備をやっていく予算というのが大幅に削られたことについて、現場を歩けば大変心配をする声が挙がってきています。集中豪雨とか、台風とかの被害が出たときに、「直す予算が足りない」という声が大変強く出てきておりますので、災害の多い国であることを再確認した今、このやり方でいいのかと、農業基盤整備事業の予算を7割切ったと、ようやく自公政権当時の5割位に戻ってきただけだと、こんなことであります。

 それ以外に1、2本当におかしいなと思う点は、「コメの過剰作付が減った」と、民主党は総括しているのですが、それを見ると一番大きな理由は、震災で、地盤沈下などによって1m以上地盤が沈下して田んぼが海の底に沈んでいること、あるいは福島原発のまわりで作付けができない面積がある。だから作付け面積が大幅に減るのは当たり前なのですが、その辺のことを全く検証しないで、単に「作付面積が今年減っているから、この戸別所得補償制度は、過剰作付面積を減らすのに効果があった」と、そういう極めて粗い、「真面目に本当に検討しているのだろうか」と思われるようなものが、なかに含まれております。

 それから、もう一点だけ指摘をすれば、「経営安定対策」、「品目横断的経営安定対策」というものを我々やっておりまして、「ナラシ対策」というものがあります。戸別所得補償制度というものがきちっと機能していれば、これは発動の余地がないはずものなのですけれども、実はこれが発動されております。ということで、その「ナラシ対策」というものが発動されているということは、これはやっぱり「戸別所得保障制度というものがきちっとした補償制度になっていない」ということの証左のようなものであるということも指摘をさせていただきたいと思います。以上、「記」以下にある4つを解説したうえで、2点ほど、具体的な疑問点をさらに追加させていただきましたが、我々は彼らが出してきた7~8枚の紙に対して20以上、大きな疑問点があると思っておりまして、今後、予算委員会とか、そういったところでも明らかにしていきたい、とそういう考えでございます。