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記者会見

石破茂政務調査会長 定例記者会見

平成22年10月27日

冒頭発言

【石破茂政務調査会長発言】

お待たせしました。本日も政策会議が行われました。議題としましては、「国家公務員退職手当法の一部を改正する法律案」につきまして議論を致しました。これは、どういう法律案かと申しますと、民間と公務員の格差は色々ございますが退職金についても大きな格差があるのではないかということであります。国家公務員の場合は、退職しますと、全て退職一時金として2,960万円が貰えます。しかし、民間の場合は2,980万円です。国家公務員とほとんど同じ額と言われておりますが、民間の2,980万円は2つに分かれておりまして、企業年金一時金として1,535万円、退職一時金として1,445万円が貰えます。これを合わせて2,980万円という仕掛けになっているわけであります。国家公務員は2,960万円全部貰えるのですが、民間の場合は基礎年金を除いた年金、これが月額79,647円、貰えるわけでありますが、年金を貰おうということになりますと企業年金一時金の1,535万円は貰えず、退職一時金の1,445万円しか貰えないということになっているようであります。ですから、トータルして同じように見えますが、民間の場合には「年金を下さい」ということになりますと、企業年金一時金というものが貰えず、退職一時金1,445万円しか貰えないということになります。国家公務員の場合には退職金2,960万円が貰えると同時に年金も受け取ることができるということで、ここには大きな差があるのではないかということです。従いまして、この部分を改正しなさいというような内容のものでございます。
格差があることは事実なのでございますが、1つはこれと人事院勧告、人事院との関係はどのようになっているのかということを整理しなければならないということ。そして、先程の数字が本当にきちんとした数字なのかもう一度精査する必要があるということで法律の方向性、改正案の方向性自体は了とするが、人事院との関係あるいは金額の精査、さらに、これは国家公務員の話をしているわけですが、地方公務員との関係はどのようになるのかということがあります。そして、お金が貰えるということで一種の財産権。財産権というか中身は期待権なのだろうと私は思っておりますが、それの侵害というものをどのように考えるかなど、なお詰めるべき点がいくつかあるということで、今日は了承というものは見送ったわけであります。もう一度、部会で今申し上げた論点というものを整理した上で政策会議に出してもらいたいということで、内閣部会にもう一度戻したということになっております。法律の方向性は了と致しました。
もう1つは、昨日提出した「財政健全化責任法」につきまして、改めて、その趣旨等々につきまして、林政調会長代理から説明がございました。何故、この法律を出したのか。前回提出した法律とどこが違うかなど、これは単純に時間のズレによるものでございますが、何故これを今私どもは提出するのかということについて、もう一度、意識の統一を図ったものでございます。よく記者の皆様方から、この間、総裁が会見した時にも「これが賛成する条件か」とかいかにも、政局的と言いますか、そういう質問がいくつか出たように記憶しておりますが、私どもとして、これを今国会中に成立させなければ、平成23年度予算というものが、財政健全化の枠をはめないまま編成され、提出されるということになります。それからいくら財政健全化責任法だと言いましても、これは23年度予算というものが、提出されてしまった以上、その射程外に行くものであります。私どもとして23年度予算というものを考える時に、この臨時会中にこれを成立させなければならないという非常に危機感をもっておりまして、この臨時会において、この財政健全化責任法というものについて成立させるべきだということを本日確認したわけであります。補正に賛成するかしないかということは、まだ形式論理から言って、提出されていないものを賛成も反対もないだろうということになってしまうわけでございますが、この財政健全化責任法というものをまったく議論の外に置いて、補正予算の成立を急ぐのだという姿勢は到底、容認しがたいものであると考えております。また、補正予算が29日に出るということで、昨日も政府の側から私に副長官が説明にいらっしゃいました。まだ、計数整理中のものもありますので、最終的な形になって出てこないと分かりませんが、私どもとして、当然、組替動議を出すことになります。私も、去る常会におきまして組替動議の提案理由というものを本会議において説明に立ちましたが、あれはもう採決直前に出したものでございますので、その場で聞いている人は分かるかもしれないが、広くあまねく国民の皆様方に、「では、自民党の組替動議と政府原案と何が違うのか」と分かっていただけるような物理的な時間もございませんでした。私どもとして細かな計数まで整理するのは時間がかかりますが、わが党として、政府・民主党の提出する補正予算に比べて、自民党の補正予算はこうだということをきちんとビジュアルに示すという作業を急いで行うということであります。あまり、期限を区切りますと自縄自縛に陥りますが、何とか政府が提出する前に「ここが違うぞ」というものを間に合わせたいと思います。少しイントロダクション的にお話しをしますと、「なぜ財政健全化責任法が必要なのでしょうね」ということなのであります。今、こういうことを一般納税者、有権者の方々にご理解をいただくようにということで、作業をしているわけでありますが、これも何度も皆様方にとっては見慣れた図だと思いますが、とにかく対GDP比、絶対額だけで見ても仕方がないので、対GDP比で債務残高がどういうことになっているかを見てみますと、わが国は突出して、これが高いということでございます。そして、色々騒ぎになっているところもございますが、ギリシャなどよりもはるかに深刻な状況であるということも、これは多くの方々にご理解をいただかなければなりません。わが国の国債は国内でほとんどが消化しきれております。ギリシャの場合には、海外が相当に買っているというような状況の違いもございます。国民の貯蓄残高、金融資産の面でも違いがございます。ですから、ギリシャと日本を完全に同列において論じるつもりはございませんが、この債務残高の対GDP比については、国際的に突出した状況になっておるということは、きちんと説明しなければならないと思っております。別の観点からご説明致しますと、国債残高の累積というのはこのように飛躍的に増えつつあるということであります。これは、リーマン破綻からの世界的金融危機に対する経済対策などで、公債残高の累積が非常に高くなっています。このような状況で、子ども手当でありますとか、高速道路無料化でありますとか、あるいは農家戸別所得補償でありますとか、高校無償化でありますとか、このまま続けていいのでしょうか。そういうことをやればやるほど公債残高というものはどんどん増えていくということを私どもとしては危機感としてもっているものであります。そして、これはご存知のように国民1人当たり約500万の借金ということになっているわけでありまして、これはかなり危機的なことだと思っております。「なぜ、このようなことが起きるのでしょうね」ということを考えた場合、これも対GDP比でございますが、OECDで比べますと、政府の収入というものが、対GDP比で圧倒的に少ないということがございます。逆に言えば、まだ余力があるということかもしれませんが、これは日本の税金が高いとか安いとか、それはもちろん消費税あるいは法人税、所得税それぞれで見ていかなければなりませんが、全体をひっくるめました時に政府の税収入というものが、他国に比べてとにかく低い、これは間違いのない事実であります。これは客観的な数字でございまして、本当にこれでよろしいでしょうかということであります。「いやいや、そうではなくて」と、「無駄を削ればよいではないか、無駄を」ということでありますが、もちろん無駄というものは削らねばなりません。もちろん冗費というものは切っていかなければなりませんが、これまたOECDで比べました時に、GDPに占めます政府の支出というものはどうなのでしょうかということです。日本はそれ程、やたらにお金を使っているのでしょうかということを考えた時に、支出というものがGDPに占める割合というものはかなり低いということです。大きい政府、小さい政府と言いますが、これで日本は世界的に見て、大きな政府だということはなかなか言いにくい状況にあるのだと考えております。この部分を見ていただきますと、もちろん冗費はこれから先も削るけれども、対GDP比の政府支出というものは相当に低い水準にあるのではないでしょうか。無駄を切ると言っても、なかなかこれから先、山ほどお金が出てくるわけではないと思っております。そして、お金はなかなか使えないという状況にあります。しかしながら、ここにありますように、この社会保障関係費というものは、当然増えるわけであります。世界一の少子高齢化が進んでいる国でございますから、この赤い部分、社会保障関係費というものは当然増えていくことになります。それで、支出全体というものがなかなか伸びない、伸びないけれども、ここのところが絶対に増えていくということは他の予算に全てのしわ寄せがいくということになります。そうすると、税収入というものをどのように考えていくのだという話は避けて通ることができないと、私どもは考えております。そこで、第1弾として、プライマリーバランスの黒字化を目指すということになります。プライマリーバランスの黒字化というのは一体何のためにやるのかということは、とにかくこれ以上、借金を増やしませんということであります。ですから、国債費つまり元本の償還そして、利払い、それを除きまして政府の必要な経費、1年仕事をするのに必要なお金は税収その他で賄いますというのが、プライマリーバランスが均衡しているということを指すのだという風に理解をしておりますが、まずその状態を作り、これ以上、借金を増やしませんということを確定しないと、どこまで広がっていくのだということになります。そして、これ以上借金を増やさないということが確定し、これは並行して行うことでありますが、借金自体を減らしていくということにならねばなりません。「どんどん増えていきますよ」というのをどこかで歯止めをかけませんと、どのようにして、それを返すのだということになります。もちろん、借金の額というのはGDPの大きさによってその負担感が違いますので、GDPを上げるということ、すなわちGDPの名目の伸びというものが、金利の伸びを上回ればよいわけですから、そこへ向けて努力をしていかなければならないでしょう。ただ、今のように、やたらに借金というものがありますと、国と地方合わせて800兆円ですから、金利が1%上がっただけで利払いが8兆円増えます。それは消費税3%分でありまして、非常に妙な言い方をしますと、景気がよくなると金利の払いが増えて借金そのものも増えますよというようなことになるわけで、「何とか景気がよくなりませんように」とお祈りをするという変な現象が起こるわけであります。そのようなことは、本来あってよいことではなくて、これは、私個人の理解ですが、この財政というものを改善していかない限り、景気というものはよくならないのだということであると思います。そして高齢者の方々が、医療が不安である。年金が不安である。介護が不安である。ということがあって高齢者の方々に個人金融資産というものはかなり偏っている部分があります。それは、医療・年金・介護に対する不安ということを考えれば、それはある意味、必然のことでございますが、そういう方々が安心して、お金を使っていただけるという社会環境を作っていかなければなりません。医療も大丈夫、年金も大丈夫、介護も大丈夫ということをきちんとお示しをしない限り、高齢者の方々は不安から解消されることは絶対にありえないと思っております。そして、若い世代の方々も「本当にこのままで国は大丈夫なのか」という不安はもっておられるわけでありまして、そういうようなところをどのようにして政府として、日本国として、解決をしていくのかということは決して先送りが許されないことだと思っております。「23年度予算はまあいいや」というお話しにはなりません。23年度予算からきちんと財政を健全化させるということ、そして、医療・年金・介護は大丈夫だということを示していくこと。そして、将来にわたり経済というものは成長軌道に乗るということ。そして、いま国債の暴落が起こらないのは、先程、税の負担のGDP比をお示ししました。逆に見れば、まだ日本には余裕があるのだろうと諸外国からは見えております。投資家からは見えております。この国は必ずどこかで財政を健全化させるだろうということでございますので、まだ日本の国債というのは、暴落しません。裏返せば、金利が暴騰しないということで、進んでいるのだと思っております。ロシアの例を挙げるまでもなく、1回崩れるとデフォルトの世界に入るわけでありまして、それはある日突然来るものだと思っております。そういうことを日本国として、絶対に回避するのだという強い意志を示すことは1日も早く必要なことだと思っております。あまり上手な説明ではなくて、恐縮ですが、このような数字というものをきちんとお示ししながら、なぜ財政健全化責任法は必要なのかということを多くの国民の方にご理解をいただくことが、私どもとして、もっとも肝要なことではないかと思っております。この図表は更に工夫をし、精査をしながら、私どもの所属議員や支部長がどこの演説会場に行ってもきちんとお話しができるように更に努力をしてまいりたいと思っております。

質疑応答

Q
みんなの党との共同提案という話も出ているようなのですけれども、これはどういう状況になっているのでしょうか。
A
それぞれ担当者が、みんなの党の担当者とお話をして、どうなのかということを調整したうえで、公明党との関係も考えながら、わが党としての最終的な態度を決することになります。出来れば多くの党にご賛同いただくことは必要なことでございまして、みんなの党のみならず、当然、同じ与党を組んでおりました公明党、あるいは立ち上がれ日本、新党改革の皆様方、出来るだけ多くの皆様にご賛同いただくべく努力をしていかねばならないと考えております。
Q
事業仕分けなのですが、今日、特別会計の事業仕分けがスタートしました。午前中には貿易保険特別会計の廃止が判定されるなどしましたが、どのように見られていますか。
A
特別会計というのはそれ自体が埋蔵金の宝庫のように言われることがありますが、「それ本当にみんな使ってしまっていいのですか」ということがそもそもの議論の出発点としてあるのだろうと思っております。あるいはそれぞれの目的によって特別会計というのは存在をしているわけでございます。よくやり玉に挙がる空港特会というのがありますが、それぞれの特別会計によってその性格というものが異なるものだと思っておりまして、そこにおいてどれだけのものが必要なのか、ただ、そこにお金があるらしいので全部使っちゃいましょうというような発想は、私はかなり危険なものだと思っています。蓮舫大臣は、「あまり期待しないでください」というふうに仰り、玄葉大臣は「これを上積み分に使うんだ」と仰っておりまして、どちらが本当なのか私にはよく分かりませんが、そこで思わぬお金が出てくるというのは、かなり期待することは難しいだろうと思っております。その特別会計が、なぜ存在をしているのかということについて、ご存知の通り自民党時代に特別会計は相当に減らしました。何も民主党が、本邦初演でやっておるものではございません。私共として政権与党の時に、この特別会計というのは相当整理統合するということでやってまいりました。そこの趣旨に則ってやっておられることでありまして、そこにおいて精査されるべきこと、検討されるべきことは、私共の政権時代とそんなに変わりはないものだと思っております。
Q
財政健全化責任法についてお伺いしたいのですが、1点目に先送りは許されないという話をされたのですが、逆に言えば、今まで自民党政権時代に先送りされた結果というのが、現在の状況だとも言えると思いますが、どう総括されるのでしょうか。今回、絶対妥協しないという覚悟がどれくらいあるのかというのをお聞きしたいのですが。
A
これは麻生内閣において、所得税法の附則104条というものが、財政健全化責任法のモデルというか原型になっておるものでございます。私個人の見解としてですが、私は自民党として抜本的な税制改革というものに手をつけなかったということには、自民党議員の1人として、相当に贖罪感というのか、国民に向かって直接堂々と議論を挑まなかったということの、悔いはございます。私自身、自分の選挙区において、海部内閣の当選2回、平成2年の総選挙の時から昨年の総選挙に至るまで、「税制改正というものは絶対にしなければいけない」ということはずっと訴え続けてまいりました。ただそれが自分の選挙区内に止まっていたのではないか、もちろん閣僚として全国遊説も致しましたが、このことをあまり1点集中的に訴えたわけではございません。やはり私は、この税制の改正というものを先送りしてきた、このことの贖罪感は私自身にはございます。ただ、小泉内閣におきまして、私は小泉内閣でも閣僚を務めていたのでございますが、その時に小泉総理が、「消費税は上げない」としていました。まず徹底して無駄の削減をやり、確かに公共事業などはかなり切ったわけでございます。そして例の2,200億円の話もございました。それで「もうこれ以上切れない」というようなところまでは行ったのではないだろうかと思います。ただそこにおいて地方の疲弊であるとか、あるいは医師の偏在であるとか、そういう問題が起こったことも事実であります。小泉内閣において、とにかく消費税を上げないで、支出を削減していくという方向は、維持をされたのではないかと思ってはおります。「では自民党の決意は」とのことでありますが、わが党として、前の常会において財政健全化法は提出をしているということ、そして参議院選挙において、消費税10%を含む税制抜本改革、よく「おまえは増税しか言わないな」なにかもう「フーバーではないか」というようなご指摘をいただくのではあります。そうではなくて、法人税も下げますとあるいは設備投資減税もやりますと、しかし安定的な財源として、消費税に高齢化の対応というものは、安定的財源というものに着目をしても、委ねることが適切ではないかと考えておる訳でございまして、消費税も含む税制抜本改革、そしてそれを医療・福祉目的に使うと、目的税ということを言っているわけではございませんが、ということをクリアにしたと、そして23年度予算が、提出される前にこれを通さねばならんということは、わが党として不退転のものである、というふうに私は確信を致しております。
Q
104条にあるように、23年度中の税制の抜本改革というのは、あくまでもやる決意で、直前まで交渉なさるということですか。
A
そうでございます。ただ、もう23年度の概算は終わっている訳でありまして、そうしますと、時間的なズレというものは当然出て参りますので、後でキャッチアップするということは今回の法律案ではよく留意をして書いたつもりではあります。
Q
民主党の企業団体献金の禁止を撤回して再開するということについて、コメントをいただけますでしょうか。民主党が再開すると、経団連は政策評価というのを止めたことによって、どうしても献金が与党に流れる傾向が出てくるのではないかと思いますが、そういうことの懸念はないのでしょうか。
A
小沢前幹事長、あるいは鳩山前総理の問題等々、「だから企業団体献金の廃止なのだ」と言っていた話は、一体どうしたのでしょうか。私達は、「なんでそんなに論理が飛ぶのですか」と、企業団体献金を廃止することが、なんで小沢問題や鳩山問題の再発を防止する特効薬になるのか、全く理解ができませんでした。そこには恐ろしい論理の飛躍があったのだと思っております。今までそう言っていたにもかかわらず、企業団体献金は大丈夫というのは、どうも論理として全く辻褄の合わない話だというように思っていることが1つです。もう1つは、企業団体献金というのを止めますと、党によってバラつきはございますが、今でも政党助成金あるいは文書交通費、あるいは立法調査費、多くを国民の負担によって、政党というものを運用しているのでございます。それは本当に政党としていいのか、という議論は、どうもきちんとなされていないというふうに私は思っております。先般の予算委員会におきましても、私は、「権利を教授するものは義務を負わねばならない」というお話を致しました。それは、政党法というものを絶対に作らなければならないと、政党助成金、そのウェイトはともかくとして、国民の負担によって政党の運営のかなりの部分を賄っている以上、では、一体その金はどのように使われたのか、そしてその金を使う権限を有する者をどのようにして決めるのか、あるいは民主党さんは代表選挙において外国人の方も投票できると、わが党はできないと、いうことになっておりまして、誰が政党の代表者を決めるのか等々、国民に対する、それぞれの政党の義務を定めた政党法というものを議論する、その過程において、「政党とは何か」「政党とは一体誰によって賄われるべきものか」ということが、そういうお話をきちんとするということだと思っております。ですから総理もあの時に「必要性はあるね」みたいな話をされましたが、どうもとてもではないが、この国会において議論しようという感じも見られません。私どもとして、政党法というものを制定するということで、プロジェクトはまだ具体的に動かしておりません。私は政調会長として、この政党法というものの成立というものが、「政治とカネ」というものについて、1つの答えを出すものだと思っておりまして、わが党として、次回の総選挙に向けて、この政党法というものを、整理をしていかねばならんと思っております。また、「与党に偏るのではないか」というのは、私達も与党の時に、それは偏っていたのかもしれません。ただ、私は政権交代可能な2大政党、その是非はともかく、やはり「どちらなのだ」ということを考えた時に、経済界、経団連もそこは相当に考えるのだろうと思います。高度経済成長期と違いまして、今、政策を一歩間違えると、経済そのものがおかしくなるという時代でございますから、何でもいいから与党に擦り寄ってよい思いをしようというようなマインドの方は減っているのではないかと思っております。そういうふうに「何でもかんでも与党なのだ」ということは、かなり政治を歪めるものだと思っておりまして、私どもとして、与党の非をきちんと指摘をし、自由民主党に対しても、浄財をいただけるような、そういう努力は当然すべきものだと考えております。
Q
昨日国会の方に提出して、その後、各党への説明をなさっているようですが、各党の反応や感触はいかがでしたか。
A
本日、石井公明党政調会長のところへ、私と林代理とで行ってまいりました。公明党さんは石井政調会長のほかに財政金融部会長、あるいは政調会長代理にご同席をいただきました。基本的に「趣旨はそうだ」ということで、ご了解をいただいたところでありますが、なお本日初めてご説明を致しましたので、公明党の中で、色々な議論をなさり、補正予算との関連、あるいは本予算との関連、色々な公明党さんなりのご判断がこれからなされるというふうに考えております。趣旨についてはかなりの多くの部分を共有していただいたと、私は感じたということでございました。今後、まず公明党さんにご説明するのでありますが、たちあがれ日本、あるいは新党改革、同じような考え方に立っておるという理解をいたしております。当然、しかるべきやり方によって、一両日中にご説明をし、ご理解をいただきたいと思っております。みんなの党におかれましては、かなり、このことについては考え方が異なるのではないか、というふうに今考えておりますが、異なるから行かない、ということではなくて、みんなの党にも「私共としてこのように考えております」というご説明をしなければならない、それはかなり急ぐことだと思っております。
Q
与党側に対しては、どうなのでしょうか。
A
与党はどうなのでしょうか。もちろん説明することはやぶさかではございませんが、どこで、誰が、何を、決めているのかが、よく分からなくて、誰に説明に行くものであるのか、ですから、当然カウンターパートとしては、玄葉国務大臣になる訳でありまして、私として、これは総裁あるいは幹事長のご判断をいただくことでございますが、カウンターパートであります玄葉国務大臣・政策調査会長には、ご説明に行った方がいいと、むしろ行くべきであると思っています。
Q
法人税減税についてですが、政府の中で、財源措置として他の企業負担の免税や減税になっていた部分を増税して、それを財源にして法人税減税した分を別の企業負担で埋めるという案があるようですが、どのように考えますか。
A
まだ、詳らかには存じませんが、法人そのものに対する、もちろん法人税が払えている企業というのはそんなに多くないということは知っておりますが、今の時点で法人税が払えるというのはリーディングカンパニーなのだと思います。ただ、その他の社会保障経費というものも含めてきちんと議論をしなければなりませんが、韓国とかシンガポールと比べてみれば分かるのですが、税負担を相当に減らしております。これは地方税も含めて、固定資産税も含めれば、よりすごいことになりますが、他の国が税負担を減らす中にあって、わが国がこんなに高い負担があってよいのだろうかという気がします。法人税を減税する代わりに、他に法人負担を回すということ自体、私自身は考え方として正しいものだと思いません。よく日本共産党がご批判されますように、消費税を上げて、法人税を下げる、法人負担を下げる、それは個人いじめの大企業優遇ではないかというお話しがあります。ただ、企業というものは、別に日本にいる理由はどこにもないのであり、大企業は海外に行けるでしょう。しかし、中小・零細、地場産業などは外国に行くことはできないわけです。そうすると、企業というものが、日本から出ることによって、多くの雇用が失われることになります。私は企業というものを叩くことによって、国際競争力が減ずる、そしてまた、それを回避するために海外に企業が逃避して、失業者の山を作ってどうするのだと思います。あわせて、GDPを上げていく、先程GDPの名目成長率と金利の上昇の話を致しました。GDPを上げる主体は誰なのだと言えば、個人事業者という主体もありますが、基本的にGDPが付加価値の総和である以上、それは、企業がGDPを上げるということになるわけです。そうすると、企業の負担を減らし、企業が産み出す付加価値の総和というものを上げていくということをやらなければ、ここまで積もり積もった借金の負担軽減ということにはなりません。それは、年収1,000万円の方における500万円の借金というものと年収300万円の方の500万円の借金というものの負担感が違うということとかなり似たような議論だと思っておりまして、GDPを上げていくということが、この財政というものについての規律を取り戻し、なおかつ日本経済が成長していくことに直結するものだと思っておりますので、法人の負担について、こちらを減らしたからこちらを増やすというやり方は賛同しかねます。
Q
財政健全化責任法についてですが、先週の政調会長会見では、ビタ一文もまけられないということではないというお話しがありました。それは、23年度からやらなければならないというのが理由だと今おっしゃいましたが、では、どこなら譲歩できる余地があるのかということと、民主党は今、藤井元財務大臣のところで、協議をやっておりまして、おそらく、その結論が出ないとこの手の話はできないと思いますが、そうなると今国会で処理するのは難しいのではないかと思いますが、どのように考えますか。
A
それは、処理する気があるかどうかの問題です。私どもも与党の時にそのようなことを言ってきました。「まだ、議論は煮詰まっていない」とか何とか言いましたが、今の財政の状況をどのように考えるのか、この危機的な状況というものを考えた時に「成立を遅らせてもよい、なぜならば」ということが言えるのかということです。そして、政府において、そのような作業、もちろん十分ではありませんが、中期の財政計画というものを作っているわけで、なおそれが不十分だと我々は言っているのであり、議論を更地から始めるというわけではないと思っております。かなり、下地というものができておりますし、民主党の中にもコンセンサスがあります。私が藤井元財務大臣と対談をさせていただいた時に、財政健全化責任法の趣旨は大賛成だというお話しもいただきました。そうすると、藤井先生ほどの見識のある実績のある方でありますから、党内をまとめられるということは、私は非常に期待しているところであります。たたき売りではありませんので、どこまでならいいかということを今申し上げることではございません。ただ、財政を健全化させていくためにまずプライマリーバランスの黒字化を図るということです。つまり、皆、口では調子のよいことを言うわけですが、やはり、法律というもので、きちんと政府に対して義務を課さないとその場しのぎの調子のよいことで終わってしまうというのが、今までの例であったと思います。私達の反省も込めて申し上げればですが。しかし、ここは与野党を超えて、自民・民主を超えて、財政を健全化させなければ、国は破綻するよという認識。そこにおいて、一致をし、なおかつこれを常会において、本予算を提出する前に出すのだ。成立させるのだということについて、やはり一致をみるということは、私どもとして、現在、譲れないところだと思っております。
Q
23年が24年になってしまったら大変だということですか。
A
そこは分かりません。ですから、彼らがどれだけ決然たる意志をもっているかということであります。なぜなら、この内閣は「先送り一掃内閣」ということでございます。総理がそう言ったはずです。先送りを一掃すると言ったわけですので、財政健全化責任法を先送りにしてどうするのですか。言っていることとやっていることが違うのではないですか。先送り一掃というのならば、まずここからやるべきではないのかと思います。「それをやらなくてもいい、なぜならば」ということであれば、それを国民の前できちんと示すのが、政府・与党の責任であり、最初から常会に送るなどというそういう発言をされるのは、正直言って見識を疑います。
Q
今の説明として、附則104の箇所、石井公明党政調会長、附則104に盛り込まれた2010年度までに景気回復を行うという部分を、強調されたと聞いております。中期プログラムを作る時の、当時の議論で、消費税を上げるという話と、景気をどうするのかという話と、妥協の産物で、今のお話であれば、菅内閣は不景気を一掃するのだということで、協力というか、賛成を強く求めるということなのですが、今の石破政調会長の主張と公明党との間に関しては、逆に溝が深まっているのではないかと思うのですが、どのようにお考えでしょうか。
A
私は附則104の時の当事者ではなかったので、だから、という訳ではありません。附則104ができた時に、私は当事者ではありませんが、今の財政というものが、景気回復というものを遅らせているのではないか、という認識を持っておりました。色々と当時は政治的な状況もあって、あのように書かれたということをよく承知をしております。従って、今回は「104条趣旨をいかし」というふうに書きました。104をストレートにもってきたわけではございません。「いい加減なことを言うな」と仰りたいのはよく分かるのですが、趣旨を活かしというのは、そういう含意だというふうにご理解いただきたいと思っております。ご理解いただけないと言われたらどうにもならないのでありますが、そこは根源的な議論が必要なのだと思っております。そこはデフォルメして単純な議論をするつもりはないのですが、今、金利が上がれば、利払いが増えて、逆に財政が悪化をするというところまできているのではないか、残高が、GDPに比べて、低い時はそんな議論をしなくて良かったのですが、これが量的差異が質的差異に変化したのではないか、私はそんな感じを抱いております。それから、景気が良くなる、金利が上がる、金利負担が増える、景気が良くなるスピードが、金利を下回る、ということになると、ますます財政が悪くなる訳であります。私はやはりかなりこれは病的な状況ではあるまいか、と思います。併せて、同じことを申し上げますが、年金・医療・介護、それに対する不安感、というものが比較的金融資産をお持ちの方々の、支出というものを押さえてしまっているのではあるまいか。というふうに思っておりまして、私は財政を健全化させる、そして将来への見通しを示す、ということが、日本の財政破たんの回避、日本国の国債に対する信用の信用、そして将来の経済成長に資するのではないかと私自身は思っております。ですから、この根源的な意味は溝が深まるとかという話では無くて、本当に今の経済の状況をどのように把握するか、ということでございますので、そういう溝が深まることの批判を恐れて、議論をしないということは私としてはするべきではないと思っております。公明党さんとも何が一番高齢者の方々の、幸せにプラスになるのか、そして何が若い世代の方々の色々な負担感というものを軽減するか、という議論は正面からしたいと思っております。
Q
今回は「道筋に従い」というふうに書いてあります。これは政調会長が仰る通りの趣旨だと思います。公明党ともそういったことについてもすり合わせていくということですか。
A
それが無ければ、国民に対して真摯な議論をしていることにはならないと、思いますし、石井政調会長という方は、そういうことをきちんと受け止められる誠実な方だと認識をしております。