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記者会見

安倍晋三総裁 記者会見

平成24年12月17日(月)14:00~14:30
於:党本部9F 901号室
安倍晋三総裁

今回のわが党の勝利については、自由民主党に信任が戻って来たということではなく、民主党政権による3年間の間違った政治主導による政治の混乱と停滞に終止符を打つべく、国民の判断だったのだろうと思います。まだまだ自由民主党に対しても厳しい視線は注がれ続けているという緊張感を持って今後、前に進まなければ、結果を残していかなければと思います。

現在の日本の状況は経済においても、そしてまた教育、外交・安全保障、東北の復興においても、危機的な状況になっていると思います。我々の使命はこの危機を突破していく、復興についてはスピードを挙げていく、経済においてはデフレを脱却して、円高を是正して経済を成長させていく。雇用を創出していく。そういう使命が課されています。また、外交安全保障については、失われた日米同盟の絆を回復していく。強い外交力を取り戻した上において、各国との関係を改善して、領土・領海を守って行くということが求められています。教育については、6年前に教育再生をスタートさせたわけでありますが、この3年間で事実上後戻りしてしまっている。いじめの発生件数も倍増しているという状況になっています。

それぞれ大変厳しい状況からの、谷底からのスタートになっていくんだろうと思います。今日、明日、すぐに結果が出るものではありませんが、我々はスピード感をもって取組んでいきたいと思います。おそらく26日に国会が召集されるということになってまいりますが、それを待っている暇はありませんから、事実上仕事をスタートさせていかなければならないと考えております。

質疑応答

Q
(幹事質問)党の人事と組閣人事について、石破幹事長は留任するのか。党役員人事の狙いについて、菅幹事長代行の官房長官起用や麻生元総理の副総理起用など、安倍新政権に向けた組閣のイメージをお聞かせいただきたい。
A

まず党について、石破幹事長は大きな貢献をしていただいたと思っております。今回の衆議院選挙、参議院選挙を勝って安定的に政策を遂行できる体制が整うわけであります。石破幹事長には留任をしていただきたいと思っております。それ以外の党の役職については、今後政府の内閣のメンバーを決めていくこととも併せて考えていきたいと思います。党においては、参議院選挙に勝つということが、我々に与えられた使命です。その使命を果たす上で、メンバーを考えていきたいと思います。そして、内閣については全く決めておりません。菅さん、麻生元総理についてもそうです。これから考えていこうと思っているわけであります。先程申し上げました。危機を突破していかなくてはならない。危機突破内閣になるんだろうと思います。その職責を担えるメンバーを厳選していきたいと思います。

Q

(幹事質問)外交について、尖閣諸島の問題をめぐって日中関係が緊張しているが、一方で経済面を見れば中国との関係は非常に重要である。総裁は靖国神社参拝について、「首相任期中に参拝できなかったことは痛恨の極みだ」と発言しており、あるいは尖閣諸島への公務員常駐に言及しているが、アジア外交にどのように取組んでいくのか。

A

日中関係を考える際、前から申し上げているのですが、日本はどうしても視野狭窄的にそこだけを見つめてしまうと。その結果、国益を損なうことがあったんだろうと。その典型的な例が民主党政権だったんだろうと思います。日米関係、日中関係だけを見つめて、これを良好な関係にもっていく、あるいはこれを改善していく。日中関係については、21世紀における外交安全保障上どう対応していくかということが最大の課題なんだろうと思います。その観点から、まさに世界地図を開きながら、その中で戦略を考えるというアプローチが必須であります。

まずは日米同盟関係を、民主党政権においては同盟関係、信頼関係を傷つけてしまった。信頼のない同盟はただの紙切れになってしまう。つまり紙切れに近付けたことで、外交力を失ったんだろうと思います。さらにインドを含めたアジアとの関係をより緊密に、しっかりとしたものにしていく上で、濃密な関係をわかりやすく築いていくことが重要だと思います。

その上において、中国との関係を考えていくというアプローチが必要なんだろうと思います。そういう戦略的なアプローチができるのが自由民主党なんだろうと思いますが、尖閣については日本の固有の領土である。これは国際的にも尖閣を実効支配しているということであり、交渉の余地はないということであります。その上において、中国がこの問題において中国国内において日系企業を刺激したり、日本人に危害を加えるということは、国際的なルールに反しているというふるまいをしてはならないということを、中国に、そして国際社会に訴えてまいりたいと思います。

日本も中国に投資をしている、あるいは輸出をしている。一方中国は日本の投資によって雇用を生み出している。そしてまた同時に、日本にしかできない製品を輸入して、それを加工して世界に輸出をして大きな利益を得るという関係なんですね。その認識こそ戦略的互恵関係だと思います。今の中国がやっていることは大きく傷つけている、つまり戦略的互恵関係に反しているということについて、中国側に強く訴えていく必要があると思います。

一方、靖国の問題について、これは日本のために命をかけた英霊に対し、尊崇の念を表する。これはどの国のリーダーも行っていることであります。その観点から、考えていきたいということを申し上げておきたいと思います。しかし、これが中国の中において様々な反応、外交的な問題、本来は外交的な問題に発展していくことではないのですが、これがそういうことになっているということにおいてはですね、今、私どもが申し上げるのはそこまでしか申し上げることができないだろうと思います。

Q
(幹事質問)経済政策について、目玉政策となる日本経済再生本部については年内に設置する考えなのか。また、経済財政諮問会議との役割分担について、どうお考えか。また軽減税率についてどう対応していくのか。
A

経済財政諮問会議を復活させます。諮問会議がマクロ経済政策においては司令塔になっていきます。諮問会議には必ず日銀総裁も出席します。諮問会議、頻繁に開かれていた時は週一回開かれていました。そこで、日本銀行との対話も開かれていますから、大切な役割があった。それを民主党は止めてしまったことが問題だったんだろうと思います。マクロ経済管理、今度は金融政策、財政政策、そして成長戦略を行って行きます。マクロ経済政策、マクロ経済管理の司令塔としての役割を果たすのは、この金融政策決定会合であります。同時に、日本経済再生本部はこのマクロ政策と併せてビジョン策定を進めていく。それぞれの地域、あるいは国民のそれぞれの皆さん誰もが、景気が良くなっていると実感できる具体的な政策をそこで展開する。基本的には各閣僚が入って、本部をつくり、その中において、具体的にどうするかを検討する。今は政調会長の下で検討中であります。メンバーについても人選のあり方、あるいは諮問会議との関係について考えています。軽減税率について、公明党ともよく議論をしながら、低所得者の方々にどう対応していくか、年金生活者の方々にどう対応していくか、よく議論をしながら考えていきたいと思います。

Q
(東京新聞・浮嶋記者)補正予算について、規模、日程、財源についてお聞かせいただきたい。財源については建設国債なのか、赤字国債なのか、民主党政権の本予算の一部凍結も視野に入れているのか。今回の衆院選が戦後最低の投票率だった。それについてどう受け止めているか、理由についてどう考えているのか。
A

補正予算については、我々デフレ脱却を選挙において主張してまいりました。その主張に対して一定の評価があったと理解しています。その意味においては、デフレ脱却に資する補正予算でなければなりません。それはどの程度の規模にしていくか、これはマクロ的にはデフレギャップを埋めていくことを念頭に置きながら、今の時期に総選挙になってしまって内閣が発足するのが26日以降ということになりますので、予算編成は大幅に遅れます。遅れた暫定の期間を十分カバーするようなものにしなければなりません。規模は、それは当然大規模なものになっていくと思います。

一方、ミクロ的な観点から言えば、中身においては選挙でも訴えてまいりましたが、国民の安全を守っていくこと、そして未来への投資になるものでなければならないと思います。その中身が建設国債になるのか赤字国債になるのかということがありますが、それはこれからどういうものをやっていくか、積み上げていく必要があると思います。無駄なことをやるつもりはありません。民主党のバラマキに対しては、はっきりと「ノー」という民意が示されたわけですから、その民意に沿って政策を変更していくことは、当り前のことだろうと思います。投票率については、大変残念でした。やはり多くの党が出る中においては議論が深まりませんね。テレビに出ても1人1分×3くらいしか発言ができませんから、投票先が決められないまま投票日を迎えた方も多かったのではないかなと思います。

Q
(NHK・内田記者)総裁は日米同盟関係を強化していくという考えで強い外交を強化していくとのことだが、アメリカを最初に訪問したいとのことだが、時期についてはいつか。例えば来年の通常国会の前を考えているのか。
A

大統領の就任式がありますね。大統領に就任し、国務長官以下のスタッフが決まって、体制が整いますね。中味について、首脳間で話しをしていくには、ある程度先方の体制が整ってから、外交方針が決まってからの方が良いかもしれないという考え方もあります。1月の下旬から2月かもしれないし、先方の日程もあることですから、日程調整を進めていきたいと思います。

Q
(北海道新聞・村田記者)訪米の関係でお尋ねします。その場で、TPPへの参加交渉に意見交換する方向で考えているのでしょうか。
A

我々野党という立場で、TPPについて、果たして事前の、予備的な交渉がどのようになっているのか、またTPPの中で、どのような議論がなされているか、十分に開かれていません。よく説明を受けながらTPPにどのように対応していくかということを議論していきたいと思います。同時に我々の公約にもあるように、国益を守るというのは、経済交渉というものは、交渉そのものが良いかということではなくて、得るものがあったかどうかということだと思います。十分に吟味していく必要があると思います。まだ、米国側の日本に対する要求要請がどういうものなのかということもよく見ていかなければならないと思います。

Q
(毎日新聞・鈴木記者)6年前に就任し、安倍政権としては2度目の登板となる。前回は健康不安で1年で総理の座を退いたわけだが、選挙期間中は1万キロ以上移動するなど精力的に動いていた。有権者の中には健康に対する不安を持っている方もいるが、現在の状況についてお話いただきたい。
A

私には潰瘍性大腸炎という難病指定の病気が、これは医学的には完治していませんが、新しい薬でコントロールできる状況になっています。私の担当の主治医も太鼓判を押されています。この選挙、私と一緒に同行していただいた記者の皆さんはよくお分かりだと思いますが、相当過酷な選挙運動でした。これは総裁選挙でもそうでした。ですから十分に耐え得ることができた。全く体調の変調はありませんでしたから、総理の職を果たしていけると思います。同時に、これは前回の反省でありますが、体調管理を優先していく必要があるんだろうと思います。体調管理ができないようでは国民に迷惑をかけることになりますし、事実そうなってしまったわけですから、休養できる時は休養するという原則を持って行きたいと思います。私と同じ病気を持つ方も沢山いらっしゃるし、難病の中において、一回仕事をあきらめなければいけなかった方々もおられると思います。そういう皆さんにもチャンスがあるんだと。私も一度谷底に落ちて厳しい批判をいただきました。しかしそこからもう一度人生をやり直すことができるということを私が身をもって示していきたいと思います。

Q
(朝日新聞・疋田記者)憲法と教育のスケジュール感について、総裁選直後から実行本部を作り、公約にも盛り込んだ教育関係のものがあり、通常国会で法律を通そうと思えば通せる状況になるが、関連する教育改革の法案を実現する考えはあるか。憲法改正について、スケジュール感をお示しいただきたい。
A

教育については教育三法を含め、いじめ防止基本法など、すでに教育再生実行本部で作り上げている法律があります。どこに責任の主体があるのか。地方の首長なのか、教育委員会なのか、県なのか、国なのか、そこで責任の所在が十分に明らかではなかった。あるいは常勤ではない教育委員会が大きな力を持っていることが十分に機能していない、機能している場合もありますが、機能していないところもあります。例のいじめによる自殺が起こったあの事件のように、隠蔽体質を発揮してしまったんです。どこが最終的に責任を持つか、国が最終的な責任を持たなくてはならない。国が最終的な責任を持つと、前の法改正において、強い指導等ができるようになったのですが、やっていないんです。そういうことも含めて、なぜそうなってしまったかという深刻な反省をしなくてはいけない。

その上において、責任をもっと明確化させていくという仕組み、これは宿題でもあったんですけれども、これは法改正をして縛れるんですね。実際、ああいう事件が起こっているんだから、取組んでいくのは当然です。子どもたちの命を守って行く、未来を守るのは政治の最大の責任です。しかし、こういう問題についてはなるべく衆参で法律を通したい。参院においては十分に努力をしていきたいと思います。また、教育については安倍政権時代に作っていた教育再生本部のようなものを進めていきたい。教育については文科省だけではなく、様々な役所が、社会総がかりであるべきものであったから、そういう意味においてはまた安倍内閣が作っていた教育再生本部のようなものを進めていきたい。

憲法改正については、今年の4月28日が主権を回復して60年の年であります。自由民主党の結党の目的は昔の自由党と民主党が非常にいがみ合っていたんです。それが一緒になった。これは大変なことだったんですよ。当時の選挙制度においては一番の敵はお互いだったんですから。つまり左翼勢力に対する同じ勢力を奪い合ってきたわけですから。その敵同士が一致をするという大変なことを、三木武吉と大野伴睦が話し合って一緒になったんですね。その時は2つ目的があったんですね。憲法改正や教育基本法など、ある意味においては占領時代に作られた仕組みを私どもの手で変えていくことが求められていたことが一点。そのためには、保守同士が争っていてはだめですね。そしてもう一点は、まだ当時は貧しかったですから、経済を成長させていこうと。安定的な経済政策を進めていく上においては、安定勢力を確保しなくてはならないという立場にあった。

二番目の目的は、これは喫緊の課題だった。これを優先し、実行し、成果をあげたんですね。しかし、前の目的については、後回しにされたわけです。私が総理になって、教育基本法を変えました。そして、それまで60年かかりましたけれども、国民投票法を作りました。ですからさらに次の目標として、国民投票法という憲法を変えていくための橋を作ったんですから、いよいよ国民皆でその橋を渡ることは96条の関係だろうと思います。改正条項の改正を行って行く。これは国民の6割や7割が変えたいと思っていても、たった3分の1を超える国会議員が反対をすれば国民の皆様は指一本触れる事もできず、議論することすらできない。これはあまりにもハードルが高すぎる。これを解消したいと思っています。今の段階では、衆議院では可能ですが、参議院では程遠いものであります。次の参議院選挙で我々が達成できるかわかりません。さらに3年後の参院選挙が必要かもしれません。しかしそれに向けて、努力を進めていきたいと思っています。その点については、維新の会の皆さん、みんなの党の皆さんとも基本的には一致できると思っています。

Q
(日本経済新聞・小嶋記者)金融政策について、選挙期間中も政府と日銀がアコードを結んで大胆な金融緩和を行っていくという話をしていたが、その実行について今どうお考えか。来年の春に任期が切れるが、日銀総裁の人事についてはどのようなイメージを持っているのか。
A

今月の19日・20日に日銀の政策決定会合が開催されます。その段階では我々は野党の立場なんですが、私は選挙を通して、2%の物価目標について日銀と政策アコードを結びたいという主張をしてまいりました。選挙において、金融政策を議論することは非常に珍しいと思います。この我々の主張に対して、多くの評価を得ることができました。その結果も十分に受け止めていただいて、適切な判断をしていただけると期待しております。将来に向けては、2%の物価上昇目標を持つと。日本銀行と政策協定を結んで果たしていくと。将来、政策アコードを結ぶということに向けて、内閣発足と同時に関係閣僚たちに指示をしたいと思います。

Q
(新華社通信・カク)6年前、総理に就任した際、最初に中国を訪問して戦略的互恵関係を結んだ。今回、日中関係の改善、関係発展に向けた意欲と自信を持っているか。具体策は。
A

日中関係は日本にとって最も重要な二国間関係の一つだろうと思います。先程説明をさせていただいたように、日本経済が発展していく、成長していくためには中国は外せない国であります。アジアの平和と安定のためにも、日本と中国が良好な関係を築いておくことが重要であります。ただ、国境を接している国はそうなんですが、様々な問題を抱えていますから、それをいかにお互いがコントロールしていくかが大切である。現実的な課題を、例えば経済問題に発展させない知恵が必要だと思います。そういうことも含めて、今すぐに首脳会談ができる状況ではありませんが、まずは粘り強く中国との対話は続けながら、日中関係を有効な関係に改善していきたいと思っています。それについては、当然解決させていくための努力をしていきたいと思います。