わが自由民主党は、結党の際、自主憲法の制定を掲げました。いろいろいな議論がありましたが、自主憲法の制定という党の出発点に掲げた課題が、現在まで解決されていないことは、ご承知の通りです。
今年は、サンフランシスコ講和条約によって、国家としての主権と独立を回復してから60周年の節目を迎えます。この60周年という節目に、わが党としての憲法改正の考え方を国民に問うということで、保利耕輔憲法改正推進本部長にお願いして、今まで大変熱心な取組みをしていただいてきました。本日、その努力が実り、憲法改正草案を発表させていただく段階にきました。
憲法改正については、今までもわが党の中で大勢の先人がいろいろな形で努力をされてきました。特に平成17年には、森喜朗元総理が座長となり、新憲法草案というものを世に問いました。その新憲法草案を基礎に、それをさらに補強して、新たに日本に相応しい今回の日本国憲法改正草案を発表することになりました。
今回の憲法改正草案の中身ですが、前文については、今までの前文をすべて書き換え、日本の歴史や文化、あるいは和を尊ぶ家族や社会が互いに助け合って国家が成り立っていることを述べています。
主要な改正点については、第三条で国旗、国歌について規定をしました。それから自衛権を明記し、緊急事態条項を新設したことをはじめ、家族の尊重であるとか、環境保全の責務、財政の健全性の確認、憲法改正発議要件の緩和など、時代の要請、新たな課題に対応した憲法改正草案になっています。
また今回の議論では、4月6日と13日の2回にわたって党の総務会でいろいろなご意見を伺いましたが、その中で総裁一任となっていた部分について、ご報告したいと思います。
まず第一条ですが、天皇元首の規定、これは様々なご意見がありましたが、起草委員会の原案通り、天皇が日本国の元首であり、日本国及び日本国民の統合の象徴ということにいたしました。
国旗、国歌については、第三条で、国旗は日章旗とし、国歌は君が代とするといたしました。
第九条、戦争放棄の規定は、いろいろ議論がありましたが、不戦条約の規定に合わせて、原案通りの表現といたしました。自衛のための軍の名称は、多くの議員の議論があり、その意向を受けまして、国防軍とすることにいたしました。
第四十二条の国会については、多くの有力議員から一院制についての提案もありましたが、これは原案の通り二院制とすることにいたしました。ただし二院制のあり方については、引き続き、選挙制度など具体的な事項も含めて検討していこうということです。
この憲法改正草案が国民投票によって成立しますと、戦後初めての憲法改正になります。まさに日本国民の自らの手で作った、真の自主憲法ということになります。われわれ自民党が先頭に立ち、自主憲法の制定に向けた取り組みを加速させて、日本の進むべき進路と骨格を明確にしていきたいと考えています。
なお、この憲法改正草案の扱いについては、私どもはこの実現に向けて努力をするわけですが、今の憲法審査会の議論の状況を見ますと、その前に整理しなければならないことがたくさんあると思います。したがいまして、具体的にどういう形から入っていくかについては、今後、慎重に議論、検討していきたいと思います。
多くの先人が真剣に議論をしていただいて、ここまで漕ぎつけました。諸先輩方の貴重なご努力に心から敬意を表して、本日、こうして憲法改正草案を発表できることに感謝したいと思います。