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記者会見

谷垣禎一総裁 定例記者会見

平成24年1月19日(木)16:00~16:27
於:党本部平河クラブ会見場

冒頭発言

谷垣禎一総裁

【谷垣禎一総裁発言】

今年最初の定例記者会見になります。もう年が明けて、だいぶ時間が経ちましたが、今年もよろしくお願い致します。
今日申し上げる最初の問題は、民主党の政治改革推進本部で、衆議院の定数・小選挙区0増5減等々を含む案を決定されたということです。ご承知のように、最高裁判所から1票の格差について違憲であると指摘されているわけですので、それを早く解消しなければならないのは、国会として当然の責務だと思います。その意味で、わが党が提案している細田案0増5減というのは、一つの方向ですし、さらに全体この問題を解決する時に、定数増ということではなくて、定数削減を図りながらやっていくのは、我々も当然の方向だろうと思います。しかし、この手順、段取りを申し上げますと、これまで与野党間で8回の協議を行ってきたわけです。ところが、民主党は消極的な姿勢に終始して、具体的な案を提示する姿勢は見られなかったわけです。そういう意味で、今回の民主党の決定は、大変唐突な決定でありまして、言ってみれば、増税のための選挙制度改革という色彩が嫌でも目につくということではないかと思います。あまりにも安直で、取ってつけた感じがします。それで、先程申し上げたように、0増5減で選挙区の格差是正を図っていくのは当然のことだと思いますが、比例代表80削減は、先程申し上げたように、削減する方向は私どもも全くその方向で考えていますが、ご承知のように、これは小選挙区にさらに比重を移していくものです。80減というのは、相当大きく、小選挙区と比例代表のバランスを移す考え方です。小選挙区は、結局、一票でも勝った方がそこでの100%、負けた者は0%ということですから、比例と組み合わせで調整を図っているのが、今の制度です。比例だけ80削減する案になりますと、中小の政党のダメージは、極めて大きいと思います。要するに、適切に代表させる観点からは、非常に考えの足らない案ではないかと思います。中小の政党が果たして理解できるのか、私はそのあたりをもっときちっと整理する必要がある。その点は、衆議院で300議席を超える国会議員を持っている政党がそのあたりの問題点をよく認識して、対応されないと、成るものも成らないということではないかと思っています。
2点目は、わが党の大会の件です。第79回自由民主党大会になりますが、来る22日(日)10時から開催されます。党大会前日に「政策セミナー」を開きます。この政策セミナーと、党大会の模様をニコニコ動画にて生中継する予定ですので、大勢の方に是非ご覧いただければありがたいと思っています。

質疑応答

Q
本日、幹事長会談が開催され、民主党からは社会保障と税の一体改革について、与野党協議の呼びかけがありましたが、今後の自民党の対応をお聞かせください。
A

事前協議の呼びかけはまったくなかったと聞いています。むしろ、事前協議は求めないという趣旨だったという報告を聞いています。今までのご議論は何だったのかと思います。その他の案件については、すでに今までも協議していますので、それはそれで協議をしていただいたらいいと思います。やはり、どのように国会を運営していくかという、全体の設計が非常に不十分ではないでしょうか。

Q
自民党としては、閣議決定してから国会で議論していくという方針ですか。
A

何が問題かと言うと、社会保障と税の一体改革について、私どもに求めるかのごとき発言がありました。これは、あらためて申し上げますが、何で閣議決定というものがいろいろな意思決定の際に行われているかというと、閣僚が連帯して国会に責任を持つために、閣議決定というものがあるわけです。それからわが党の場合には、党議決定というものもありまして、要するに両輪で進めて行こうということでやってきました。ところが民主党政権には党議決定の仕組みがあるのか、ないのかはっきりしません。
そういう中で、閣僚が連帯して国会に責任を負うという閣議決定もまだされていない。その段階で、私どもに、事前協議を求めてくるというのは、一体どういうことなのか。整理しなければならないことがいくつかあると思いますが、ひとつはなぜ党議決定という仕組みはない。これは他党のことなので、私があまり申し上げることではありませんが、閣議決定が行われていないとなると、要するに政府与党でしっかりと決めることができないのではないか。民主党の実情を見ているとそういう感じがします。
要するに、家庭内でしっかりとお話し合いをして、そして発表されるべきことが、家庭で話してもなかなか話ができないから、よその家に一緒にやろうぜと、というようなことを例えてみれば、そういうことを言っています。まずは、あなたの家ではどうされるのかということをしっかりと決めていただきたい。
それから、もうひとつは、民主党は今までマニフェストについて繰り返し申し上げていますが、マニフェストは、明らかに消費税はしないという前提。野田さんも、安住さんもそういうことを言われて選挙をした。鳩山さんもそういうことを言われて選挙をした。私はYouTubeを拝見していたら、野田さんが2年前の選挙で街頭演説をしていまして、「マニフェストで書いていることはやる。書いていないことはやらない」。そういうことを全部、墨守せよと必ずしも言っているわけではなくて、それは一体、どのように国民に説明するのかということをやらないといけません。
さらに申し上げれば、民主党のなかでなかなか決められないということであれば、やはり決められないのであれば、反対している勢力と直にぶつかることをしたのでしょうか。それで政治生命を本当にかけるというのであれば、賛成してくれと行動することがあってしかるべき。もし反対ならば、この党を出て行ってくれという詰めた議論があってしかるべき。そういうひとつひとつの積み重ねがありません。
そういうことがあったのですが、そういうことを今まで言いたかったのですが、その主張は撤回、事前協議の主張は撤回ということになれば、大山鳴動して何とやら、今までのことは何だったのかという思いにかられています。

Q
自民党としては、消費税増税法案の国会における攻防を通じて、衆議院解散を求めていくということですか。道筋を含めて、総裁のご所見をお聞かせください。
A

ここから全部の道筋を読み切れているわけではありません。しかし、この法案をお出しになるとすれば、この法案が今国会の最重要テーマの全部かは分かりませんが、ひとつであることは間違いありません。その扱いをめぐって、当然、我々は野党の立場というのは、国民の持っている不安、問題意識というものを踏まえて、そして、それが厳しいものであれば、我々も厳しく対峙しなければならないということだと思います。そこから何が出てくるかということは、まだ全部読めるわけではありませんが、我々は全力で与党と対峙していくということです。

Q
民主党の衆院定数「0増5減」「比例定数80減」について、自民党としては、「0増5減」は賛成だが、「比例定数80減」には、反対ということでよろしいですか。
A

0増5減は、我々も言ってきたことですが、我々としてはそういう方向がひとつの有力な解決だと思ったから出しました。ただ、我々の案も比例代表の削減ということもセットになっていますが、少数政党に対する配慮を含んだものでした。それがないようなものを我々が直ちに賛成だというのは、なかなか難しいです。要するに、手順の踏み方として、少数政党への配慮、少数政党とどういうふうに話し合いの努力、汗をかくことがもっと必要ではないのでしょうか。それは一番、議席をたくさん持っている民主党がやらなければならないことだと思っています。

Q
消費税増税議論の関連で、本日、民主党の行政改革調査会というところで、方向性としては、特別会計を17から11にするだとか、独立行政法人を4割削減するということだそうですが、谷垣総裁の受け止めをお聞かせください。
A

まだ中身が分かりませんので、例えば特別会計を減らすでも、とってつけたような案には賛成するわけにはいかないし、なるほど合理的なものと思えば賛成するというだけのことだと思いますが、ちょっと中身を見なければ何とも申し上げようがありません。

Q
関連で、中身は見ないとわからないということですが、民主党がムダ削減についてまとめるということについては、いかがですか。
A

ムダの削減、行革をやっていくというのは、努力としてするのは当然だと思います。国民に負担を求めるときに、それをするのは当然のことだと思います。かつて、自民党で初めて消費税を導入したときも、何回かの失敗がありましたが、竹下内閣で消費税を通すことができました。その前提には、中曽根内閣時代に行った国鉄の民営化、電電公社の民営化、そういった問題が言わず、語らずのうちに、かなりそういう面では、大きな改革をして、使い勝手も国民にとって良いものになってきたことがあった。これは間違いないことだと思います。
他方、考えなければならないことは、何かこういうものを大分、今まである意味ではやってきたわけです。実は、小泉政権、小泉さんは、自分の政権中は、消費税には手を付けないという方針でしたが、あのときやったいろいろな構造改革、特別会計を減らすとか、行革的なことをいろいろなことをやっていたのは、消費税の前裁きという意味合いもあったわけです。
今の時期に駆け込みみたいにやるのは、どうなのかと。今までその努力、議論が外に、なるほどこういうことをやっているのか。見えてやっているのがあるべき姿ではないでしょうか。いきなり決めたから、あれも、これもやるというのは、本当に中身に真摯な議論がされているのか。今まで少し、こういうことをやるんだということが、外にわかってくるような形が必要ではないでしょうか。

Q
国民の理解を得るために、何かやっているという感じも受けますが。
A

駆け込み的な印象は受けますが、あまり印象論だけ言ってもいけないとは思います。

Q
消費税増税では、景気への悪化が心配されていますが、自民党としてはどのような配慮をしていますか。
A

結局、今度の予算の評価となってくるわけですが、今、財政状況が厳しいですから、いろいろ手を打てと言っても、相当制約があるのも事実です。ただ国民負担を求めていくわけですから、苦しい時に、我慢をしていただく選択をすることです。今は苦しいけれども、将来こういう希望があるんだと言うことも、何かないと。つまり、こういう成長に向けて、こういう投資を今度はするんです。今年は苦しいけれど、数年後花が開きますよとか、そういうような準備があるのかないのかという点は、非常に大事な点だと思います。今、その政府を挙げて、今の点で努力しているかと言えば、必ずしもそのように感じません。そういう努力が不足ではないか。それから、例えば、東北の震災で、数十兆円の経費をかけて、復興を図っていくわけです。そうすると、やはり今の日本の財政状況で、これだけの投資をしていくことは、そう何度もできるものではありません。これを今、我々は需給ギャップ、デフレに苦しんでいるわけですが、うまく使えば、今までにない需要が起きて、需給ギャップを克服する。デフレ克服のきっかけに成しうる可能性もはらんだ財政出動です。そういう観点をどのように工夫していくか、私はそういうことが必要なんだと思います。そういう点は、必ずしもまだ我々も予算をよく精査して、予算委員会で真剣に準備していきますが、必ずしもこのような問題に手厚い配慮がなされているとは思えない。我々だったら、そういう点、工夫をするかなというところです。

Q
国会議員の歳費について、身を切るという部分からの話で、岡田副総理も国会議員歳費削減を消費税の引き上げの前提とする考えをしており、茂木政調会長も15%削減の考えを示していますが、現時点での総裁のご所見をお聞かせください。
A

私は先程申し上げたように、1票の格差を是正する中で、政治にかかるコストをできるだけ削減していく方向で、考えていくべきだと思います。それは選択肢としては、いくつかあるのでしょうけど、定数の削減ということもありますし、歳費ということもあると思います。問題はそれをどう組み合わせていくかという設計をきちっとしなければいけません。その根底に、そういう経費の削減を何のために使うのか。今の議論の中で、いくつかの議論があり、言ってみれば混在しており、公務員経費の削減も当然だとすれば、国会議員の歳費の削減もという考え方があります。しかし、公務員経費の削減は、震災復興経費を少しでも作ろうということでやるわけです。今、言われている議論は一体何のためにやるのか。震災復興経費を捻出するのか、それとも財政再建に充てていくのか。そこのあたりをもう少し整理する必要があるのだと思います。加えて、一体その定数是正とは、どのような関係に立つのか。そこもよく精査をする必要があると思います。
こういうことを申し上げるのは、元々歳費というのは、無産政党の要求から出てきた施策です。つまり、名望家が田地田畑をたくさん持っていて、自分の山林なんかを切り売りしながら、政治活動経費を出せる人は選挙に出られるけれども、一介のサラリーマンが選挙に出ようとしても、なかなか出られないではないかという声に応えるためにあったわけです。したがって、削れば良いというわけには、今の若いサラリーマンの方が選挙に出ようと思ったら、なかなか大変なわけです。そういった側面も考えながら、定数是正と歳費削減とのバランスをよく入念に考える必要があると考えます。まず、やはりこれは、衆議院で300議席を持っている与党がその点を整理して、しっかりした考えた方を出していただく必要があるともいます。そこが、今、欠けているのではないでしょうか。

Q
郵政問題で修正協議が進まない現状について、どのようにお考えですか。また、民主党の政治家の社会的責任について、お話をお聞かせください。
A

最初の問題について、わが党は森山裕さんが実務者として出ているわけですが、森山さんの方針も私の指示も、実務者には積極的に応じるということを言っておりまして、なかなか合意点が煮詰まらない状況だと思います。ですから、これを足を引っ張るようなことではいかんぞということで、わが党は対応してまいります。
もう一つ、社会的責任とおっしゃいましたが、あまりにも茫洋としたご質問です。民主党の言いたいことはたくさんありますので、国会が開いたら、いろいろな局面で、いろいろな観点から、それを問いただしていきたいと思います。一つ申し上げるとすると、やはりけじめというものが足らないのではないかという感じを持っています。先程申し上げたマニフェストの是非というものが一番端的な例で、何でもマニフェストに書いた通りにやれというものではないでしょうね。この東北の津波の話は、マニフェストに書いているはずもないことですから、書いてないことでも臨機応変にやらなければならないことはたくさんある。しかし、マニフェストの精神と明らかに違うことがあれば、なぜ違えていくのか、なぜそれをやらないのか、なぜ違うことをやるのかということについて、やはりそれなりの説明と、けじめをつけながら進むことが足らないのではないか。こういうことを申し上げるのは、我々は独裁政権をつくっているわけではありませんので、選挙をやって国民との信頼関係の上に、政治のパワーをつけていくわけです。そういうことをおろそかにしますと、結局、物事を捌けなくなってしまうということだろうと思います。ちょっとお問い掛けの趣旨に合った答えかわかりませんが。

Q
昨日、原発再開のストレステストを巡って騒動がありましたが、自民党としては、安全停止している原発について、どのようなお考えがまとまっているのでしょうか。
A

昨日のストレステストの結果を見ますと、自治体の知事といった方々が必ずしも納得しておられないという感じがいたしました。もちろん、この原発再稼働ということは、3月に全部止まってしまう。そういう状況ですと、日本の産業的基盤なんかも難しい状況になってまいりますので、安全性を確認した上で、再稼働が必要だと思っています。そこで、まずやるべきことは、一つはなぜこういう事故が起こったのかということをきちっと点検していくことが必要です。それと同時に、今の原発の安全を確認していくことをやっていかなければならないと思います。そういうことをやりながら、地元の方々の不安をどうやったら除くか、対話もやらないと、多分なかなか納得していただけないと思います。そういうことの積み重ねが、昨日の様子を見ておりますと、まだ足らないのではないかという感じが致します。

Q
SPEEDIの原発事故直後の情報が、日本国民に伝わる前に、米国に渡され、米国大使館から80キロ圏外、国外への退去勧告を出しており、日本国民をないがしろにした形になったことについてのご所見をお聞かせください。
A

私も事実関係が何なのかはっきり確認しているわけではありませんが、かねがね私が国会で質問し、わが党が質問する時に、疑問、問題意識としてあるのは、本当に情報がきちんと出ているのかどうか。それから、なかんずく政府の対応について、きちんとした正直な情報が出ているのかどうか疑問があると思ってまいりました。国会内に、事故調査委員会を設けようという議論を、わが党の塩崎恭久さんを中心にやりましたのも、そういう疑問があったからで、それで疑問があると言って、疑問がなければ、それで結構なことだと思いますが、国会の事故調査委員会等で今のような問題は十分解明されなければならない問題だと思います。