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政策

第197回国会における石井準一副幹事長代表質問

2018年10月30日

第197回国会における石井準一副幹事長代表質問

自由民主党の石井準一です。私は自由民主党・国民の声を代表して、安倍内閣総理大臣の所信表明演説について質問致します。

総理は、所信表明演説で、南部藩出身でわが国初の本格的な政党内閣を樹立した原敬の言葉で「国民一致の力でなければ、到底国家の進運を図ることはできぬ」とおっしゃいました。政党内での丁々発止の政策議論、これがなければ形だけの政党であると思います。併せて議論が尽くされ、政党としての政策方針が決まれば、政党としてその実現を目指す、これが政党政治であると思います。先の総裁選、私たち自民党では、政権与党として、どのような国を創っていくのかという活発な政策議論が正々堂々と交わされました。国民の皆様にも、わが党の政策を知っていただくよい機会であったと思います。そして、総裁選が終わればノーサイドです。お互いの健闘を称え、私たち、参議院自民党は全員野球の精神で総理とともに新しい国づくりのために邁進していきます。各閣僚にも全員野球の精神で全力を尽くして頂きたいと思います。本日は、そのような思いを持って質問いたします。

冒頭、昨日、韓国大法院が新日鐵住金株式会社に対し、損害賠償の支払等を命じる判決を確定させたことに一言申し上げます。この判決は、日韓請求権協定第2条に明らかに反し、日本企業に対し不当な不利益を負わせるものであるばかりか、1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すものであって、極めて遺憾であり、断じて受け入れることはできません。政府には、大韓民国に対し、日本の立場を改めて伝達するとともに、大韓民国が直ちに国際法違反の状態を是正することを含め、適切な措置を講ずることを強く求めます。

本年7月の豪雨、大阪北部地震、平成30年台風第21号や24号そして北海道胆振東部地震により亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々、そのご家族に心よりお見舞い申し上げます。政府与党一体となって、被災された皆様方が一日も早く元の生活を取り戻すことができるよう、引き続き、全力を尽くしてまいります。
最近、地球温暖化の影響なのか、台風もより強大となるとともに、勢力を維持しながら多くの都道府県をなめるようなコースでわが国に襲来することが多くなっています。北海道胆振東部地震による北海道全域にわたるブラックアウトなど予想もしなかった事態も生じています。首都直下地震や南海トラフ地震が懸念されていることも踏まえれば、これまでの常識だけではなく、本年7月の豪雨や大阪北部地震も含めて、近年発生した自然災害による被害等を分析し、将来の自然災害に備える視点で、国土の強靭化を進めるべきです。
政府は、今国会、7月豪雨への対応として生活再建や生業再建、災害応急復旧のための経費、台風21号、大阪北部地震や北海道胆振東部地震等への対応として災害復旧経費等を含む補正予算を提出しています。一日も早く成立させ、被災地に届けることが求められています。その上で、自然災害による被害を復旧するだけではなく、国家百年の計に立って、近年の自然災害の傾向を分析しつつ、そもそも被害を受けないように強靭な国土をつくっていくことが重要です。まずは、本年、わが国を襲った自然災害による被害を踏まえつつ、国家百年の計に立って国民の生命と財産を守る国土づくりに取り組んでいく覚悟を、総理にお伺いします。

今回の大阪北部地震において、ブロック塀の崩壊により、通学途中の幼い命が失われるという大変痛ましいことが起きてしまいました。通学路という最も安全であるべきところで、このようなことが生じてしまったことは誠に残念です。今回の補正予算では、学校の緊急重点安全確保対策として、倒壊の危険性のあるブロック塀対応が盛り込まれましたが、子どもたちを守るためにも、早急に対策が講じられる必要があります。
学校は近隣の避難所として指定されていることが多く、地域住民の避難路の安全確保のためにも、学校までの通学路は高い安全性が確保されてしかるべきです。同様に、学校そのものが避難所としての機能を備えているのかという視点を持つべきと考えます。
北海道胆振東部地震は、北海道が本格的な寒さを迎える前に発生しましたが、同程度以上の地震が厳寒期に発生した場合を想定すれば、インフルエンザや肺炎などの発生を抑える意味でも、避難所となる学校の教室や体育館には暖房器具が備え付けられている必要があります。同様に夏に猛暑となる地域では、避難が長期に及ぶ可能性を考えれば、体育館などにもエアコンの設置が望まれるところです。
今回の補正予算だけではなく、国土強靭化の観点で、避難所としての機能を持つ学校には、暖房器具やエアコン、停電に備えた非常用電源など防災拠点として必要な整備を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。山本国土強靭化担当大臣に伺います。

漆黒の闇の中、灯光器で照らされた土砂崩れ現場で救命活動に当たる自衛隊員、何日間も温かい食べ物を口にできなかった被災者の前で調理や給仕を行う自衛隊員、厳しい状況下にある被災者の皆様にとって頼もしい存在です。しかし、最近では、採用が厳しい状況にあります。要因の一つは少子化です。さらに景気が好調ということもあり、民間企業は求人を増やし、待遇改善を図ってきました。人材獲得競争はますます厳しくなっています。また、労働環境も厳しい印象があり若者に敬遠されているという声もあります。安全保障環境が厳しさを増す中、自衛隊の活躍の場が広がっているにもかかわらず、人材が確保できなければ、国防上はもちろん、災害時にも十分な活躍ができなくなります。
災害復旧、復興の際に、大きな役割を果たしているのは、現場で汗をかいている地方の建設業も同様です。しかし、やはり人材の確保や事務所の存続に苦労しているのが実態です。技能労働者の高齢化の問題もありますが、地方の公共事業が縮小していく状況下で、経営体力が衰退してしまったという側面もあります。
自然災害が多発する中、前線で防災や復旧、復興に携わる自衛隊や地方の建設業が疲弊してしまわないように、どのように対処していくおつもりか、総理にお尋ねします。

東日本大震災からの復興政策を担う復興庁は、震災から10年となる2021年3月末に設置期限を迎えることとなっています。残すところ、3年を切りました。国や県は「福島国際研究産業都市構想」いわゆる「福島イノベーション・コースト構想」を進めており、ロボットの一大研究拠点となる「福島ロボットテストフィールド」の建設なども着々と進んでいます。しかし、今なお、東京電力福島第一原子力発電所の事故で、住民が避難生活を余儀なくされている状況を見れば、地域の再生には中長期的な対応が必要であると思われます。わが党と公明党も、国が継続して支援するための体制について検討を始めるべきと総理に要望を提出しています。
復興庁の設置期限までに、まずは「やれることをすべてやる」ということはもちろんですが、再生状況をつぶさに調べて、復興のためのコントロールタワーが必要であるなら、躊躇なく復興庁の後継組織を設置すべきです。「創造と可能性の地」としての東北を創り上げるため、福島再生に向けた総理のお考えを、復興庁の後継組織の検討も含めて伺います。

アベノミクスの成果は確実に現れています。その一つは、初めて有効求人倍率が全ての都道府県で1倍を超えたことでも明らかです。しかし、地方を回ると、暖かな経済の風の実感はないと言う声が聞こえてくるのも確かです。その要因の一つとして、地方の将来が見えてこない状況があると考えています。大都市部への人口集中が進む半面、地方では人口減少が止みません。地方在住の意欲的な若者や女性たちによるユニークな活動で盛り上がりを見せるところもありますが、全国津々浦々まで広がると言うところまでには至っていません。
地方には美しい自然、魅力的な文化、おいしい食材といった様々な人を引き付ける資源があります。SNSで拡散された画像を下に、今まで知られていなかったところに大勢の外国人観光客が訪れた例もあります。しかし、その前提として、そこに人を運ぶ交通機関が必要です。
JR北海道の状況などが示すように、今、地方の公共交通機関は大変、厳しい環境下に置かれています。整備新幹線については人件費や資材価格の上昇などやむを得ない要因によって事業費が膨らむ傾向にありますが、これが地域の求める事業の進捗に影響を及ぼさないような措置を求めます。せっかくの資源がありながら、そこまでの交通網が途切れていれば、意欲とアイデアで「ピンチ」を「チャンス」に変える地方創生もままなりません。
そこで、地方創生を加速化させるためには、整備新幹線の更なる延伸など、地方の皆様が希望の持てる交通網整備を進めていくべきではないでしょうか。総理にお伺いします。

次に経済関係でいくつか伺います。
「世界で保護主義が広がっている。」 こう切り出して、総理は、今月19日、アジア欧州会合で、リードスピーカーとして、世界で広がる保護主義の動きを念頭に自由で公正なルールに基づく貿易体制を推進していく考えを表明しました。この発言を受け、保護主義との戦いを明記した議長声明が採択されました。自由貿易体制の旗手として、自由で公正なルールに基づく経済秩序を強化していくというわが国の立場をしっかりと位置付けることができたと高く評価されるべきと考えます。
日本と欧州は、日EU・EPAに合意しています。これが発効すれば、保護主義の動きを見せる国々を「自由で公正なルールに基づく貿易体制」へと再び取り込むことも可能となります。その意味でも、今回の総理の欧州訪問は、保護主義の復活、拡大を抑え込もうとする一連の流れの中でしっかりと練られたものであり、これまで積み上げられた安倍総理の外交成果の上に初めて成り立つものです。
保護主義の拡大の流れは徐々に強まりつつあるように見えますが、自由貿易はわが国の発展の土台であります。自由で公正なルールに基づく貿易体制の拡大の中で、わが国がさらに成長していけるように、どのように保護主義拡大の流れに対応していくおつもりでしょうか、総理の方針をお聞かせください。

これまでも、わが国の高速鉄道や都市開発に代表されるインフラ輸出は、安全・安心を支える技術力、環境へのやさしさ、維持管理費用を含むコストパフォーマンスの高さなど、その質の高さを世界中から評価されてきました。総理や関係閣僚が、直接、相手国を訪問し、直接、わが国インフラの素晴らしさを訴えてきたこともあり、導入成功例も広がりつつあります。
しかし、今月、大変残念なことに、わが国が誇ってきた免震、制震技術の一つで、新たな検査記録データの改ざんが判明しました。3年前にも免震ゴム、防振ゴムで性能データの偽造問題が判明しています。地震国であるわが国においては、命や財産に直接かかわりかねない問題です。そして、わが国の質の高いインフラの一例でもある免震、防振技術は、その信頼性を損ねることとなってしまいました。関係者は猛省とともに一刻も早く、当初に想定されていた安全性を確保するのに必要な対応を講ずべきです。
そこで、「質の高いインフラ」の売り込みを図る意味でも、このようなデータ偽造や改ざんなどが起きてしまった背景をしっかりと分析しなければなりません。その上で、二度と起きないようにどのような対策を講じた上で、わが国の技術への信頼性を高め、「質の高いインフラ」の展開を推進すべきとお考えでしょうか。総理にお伺いします。

本年9月、日米首脳会談が開催され、総理は、中国に対して追加関税を発動させ続けているトランプ大統領と交渉し、その結果、最も警戒していた自動車の追加関税は回避されました。また、日米物品貿易協定、TAGを新設し、交渉することになりましたが、同時に、農林水産品をめぐり、日本は、過去の経済連携協定を超えるレベルの市場開放は行わないことをしっかりと合意に盛り込みました。TAGはその文言通り、物品貿易に関する協定であり、サービスや投資の分野を含む包括的なFTAとは異なる点も明らかです。
しかし、TAG交渉はこれからです。駆け引きの中では、米がわが方にTPP以上を求めてくることも否定はできません。農林水産業に携わる皆様の中には、米側から様々な要望が出され、揺さぶられるのではないかと不安を隠しきれない方もおられます。
TAGについては相当厳しい交渉が予想されることから、政府としては、気を引き締めて、両国間の貿易を一層促進することでウィンウィンの経済関係を築くことができるように、そして、過去の経済連携協定を超えるレベルの市場開放は行わないという合意がしっかりと最後まで貫かれるように交渉に当たってほしいと思いますが、いかがでしょうか。総理の決意をお聞かせください。

中小企業においては、人手不足や原材料費高騰による収益圧迫などによる先行き不透明感が広がっていると言われています。人口減少社会の中、このままでは人手不足については、厳しい状況が続くと予想されており、IoTの積極的な活用などを通じて業務の効率化で対応していくことが不可欠です。同時に、一定の専門性・技能を有する外国人材により不足する人材の確保を図ることも考えていかなければなりません。政府においては、出入国管理法等を改正し、このような新たな外国人材受入れのための在留資格を創設すると伺っています。真に外国人材を受け入れる必要があると認められる人手不足の分野に限り、専門性・技能を有する外国人材を受け入れることは、人手不足で悩む中小企業の状況に鑑みれば、求められている政策であると考えます。また、きちんとした制度を構築することにより、雇用契約をしっかりと結んで日本人と同等以上の報酬額を確保すること、日常生活、職業生活、社会生活についての支援も受けられるようにすることなど外国人材のことを大切に考える政策でもあります。
しかし、定められた分野に従事する場合などに限り在留資格が認められるにもかかわらず、提出しようとする改正案の一面だけを殊更強調した誤解を耳にすることもあります。そこで、政府においては、わが国が人口減少社会を乗り越えていくためのビジョンの中で、今回の改正案はどのような位置付けにあるのか、同時に、不法滞在等に対処するための入国管理政策との関係でどのような位置付けになるのかという点について、改めて丁寧に説明すべきだと考えますが、いかがでしょうか。総理にお伺いします。

国難とも言うべき人口減少、少子高齢化社会の中、わが国の活力と生活の安心・安定の確保に向けて、全世代型の社会保障制度を進めていきますが、そのための財源措置が不可欠です。そのために、今回、消費税率引上げを行いますが、これについては、今月、臨時閣議で、総理が、万全の対策を講じるよう指示しており、年内にも、耐久消費財の税負担の軽減や中小小売店などでの税率引上げ相当分の還元、そして政府による関連費用の支援など思い切った施策がまとめられることを期待しています。是非とも、中小企業の現場の声に耳を傾けて、温かみのある対策を講じていただきたいと思います。同時に、今回の引上げでは、生活への負担軽減のために、酒類・外食を除く飲食料品にはこれまで同様の消費税率8%がかかることとなっています。これについては、初めて10%と8%という二本立ての消費税率となることから中小・零細事業者の中には準備が間に合うのかといった不安にも対応する必要があります。複数税率対応レジ導入やシステム変更などに必要な経費も負担です。従業員への研修にも時間を取られることも懸念されます。何が軽減税率に該当するのかを政府においてはよく周知し、消費者や業者が混乱することがないようにすべきです。
そこで、円滑な消費税率引上げが実現できるように、どのような考え方の下、中小・零細事業者の負担等を軽減していくつもりなのか伺います。

平均寿命や健康寿命が延び、様々な働き方が広がる中で、65歳に年金を受け取るというのは、いささか硬直的かもしれません。現在は年金の受給開始時期を70歳以上にはできません。しかし、70歳を超えて働く高齢者が増えれば、70歳を超えてからでも年金の受給開始時期を選べるようにし、選択肢を広げる方が、それぞれの高齢者のライフスタイルに応じた柔軟性が高い制度であるという意見があります。年金の受給開始時期を遅らせれば遅らせた分だけ、月の年金給付額は増えるようにすれば、働く意欲がある高齢者は、できるだけ働こうというインセンティブも働くこととなります。
この点についても、将来世代の給付水準を維持しやすくするために、支給開始年齢をさらに引き上げるのではないか、と誤解されている面があります。全世代型社会保障と働き方改革がセットで議論されているのは、単に財政的な側面だけで、柔軟な年金受給開始年齢が議論されているわけではないという証明であると考えています。
高齢者が健康を維持し、意欲があれば長く働くことができ、年金を受け取る時期をできるだけ遅くして、受け取る時には遅らせた分だけ増えているという高齢者、現役世代、双方にメリットがあるというのが、今、検討されている全体像ではないかと思いますが、いかがでしょうか。また、どのような方向性で年金受給開始年齢の柔軟化に取り組んでいくのでしょうか。総理のお考えをお聞かせください。さらに、働く意欲のある高齢者が働き続けることができるような社会を構築することが、柔軟な年金受給開始年齢の実現には不可欠であると考えます。これについても総理に伺います。

最後に、次の世代に誇れる日本をどのように引き継いでいくのかという点についてお伺いしたいと思います。
冒頭にも申し上げた通り、今年、幾度となく大きな自然災害が各地を襲いました。被災された地域の皆様は本当に大変なご苦労をされたことと思います。その厳しい状況にもかかわらず、地域の皆様は、秩序と冷静さを保ちながら、まず相手のことを思いやり、助け合っておられました。一昨年、大地震により大きな被害を受けた熊本からもボランティアの皆様が、今度は自分たちが助ける番だと言って被災地に入られました。このような日本人の助け合う姿を見て、いつも世界中から称賛が送られます。そのたびに、互いを思いやる心を育て、それを大切に引き継いできた先人たちに感謝したいといつも思っております。美しい国土、素晴らしい文化、これらはもちろんのこと、日本人の心である共助の精神も大切に次の世代に引き継いでいかなければなりません。
わが国では、経済活動においても、単に利益だけを追い求めるだけではなく、社会全体を豊かにすることで結果的に企業自身も豊かになるといった発想があります。歴史を見ても、もともとわが国の企業家は利潤追求だけではなく、どのように社会に利潤を還元していくかという視点を持っていました。過度な競争原理、市場原理一辺倒ではなく、共助の精神がもう少しだけあれば、内部留保も生きたお金となって回るのではないでしょうか。
そこでお伺いしますが、総理は、長い間、日本で受け継がれてきた共助の心をどのように評価されているのでしょうか、そして、この共助の精神を大切に次の世代に引き継ぐためには何をすべきとお考えでしょうか。この点をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。