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政策

第197回国会における稲田朋美筆頭副幹事長質問

2018年10月29日

第197回国会における稲田朋美筆頭副幹事長質問

自由民主党の稲田朋美です。私は自民党を代表して、安倍内閣総理大臣の所信表明演説に対し、質問いたします。

一.はじめに

わが党は、立党以来「国民政党」として、国民一人一人に真正面に向き合い、頑張った人が報われ、頑張ろうとして努力しても困難な人を皆が支える社会、人が人として尊重され、失敗してもいつからでも、どこからでも、何回でもやり直せる社会を目指してきました。これは前回の代表質問で二階幹事長が指摘された「国に生命を吹き込む政治」という言葉に象徴されており、私たち自民党が目指すべき政治の姿であります。

安倍総理は、再チャレンジ、そして一億総活躍社会の実現を掲げ、保守の理念を政策分野においても実行されてきました。

わが党が下野した際、党の再生をかけた真摯な議論を行い、常に進歩を目指す保守政党として新綱領を策定しました。立党以来護り続けてきた自由と民主の旗の下に、伝統の上に創造を、秩序のなかに進歩を求め、「日本らしい保守主義」を取り戻すべく、再出発することを国民の皆様にお誓いしたのです。

今年は明治維新150年、明治の精神ともいうべき五箇条の御誓文は、松平春嶽、横井小楠、由利公正などによる改革の集大成ですが、「広く会議を興し、万機公論に決すべし」さらに歴史をさかのぼれば、聖徳太子の「和をもって貴しとなす」という、多様な意見の尊重と徹底した議論による決定という民主主義の基本は、我が国古来の伝統であり、敗戦後に連合国から教えられたものではありません。

この臨時国会の場では、野党の皆様との議論はもちろんのこと、与党も質すべきは質し、決したことには責任を持って断固として行動するという精神を持って、国民の皆様の負託にこたえてまいります。

二.国土強靭化

今年に入ってから、37年ぶりの福井豪雪、大阪北部地震、平成30年7月豪雨、台風第21号、北海道胆振東部地震、台風第24号など、全国各地で数多くの激甚災害に見舞われ、300名を超える尊い生命を失い、莫大な経済的・社会的・文化的損失を被りました。

これらの災害により亡くなられた方々に、心からの哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた方々に、心からお見舞いを申し上げます。

東北や熊本もいまだ復興の途上にあり、それぞれの被災地の生活や経済が一日も早く再建されるよう、政治の使命として、復旧復興に全力を尽くすことをお誓いいたします。

地球温暖化の進展により、短時間にかつてない豪雨や異常気象が多発し、首都直下型地震や南海トラフ地震などが発生する可能性も高まっています。

このような大規模自然災害に対して、自民党は、ハード、ソフトの両面において、我が国を「強くしなやかに」するため、政府とともに、国土強靱化に取り組んで参りました。

例えば北陸新幹線は本年の豪雪において道路、鉄道が麻痺しているなかも運行し、リダンダンシーの有用性を証明しました。

内政の基本は、国民にとって安全、安心な社会をつくることであり、大災害から、国土を守り抜き、国民の生命と生活を守ることなしに、日本の未来はありません。

緊急の復旧対応等に万全を期すとともに、国土強靱化を加速するため、必要な予算確保を含めて、総理はどのように取組を進めるのか、伺います。

三.外交・安保

次に、外交・安全保障について、伺います。

去る10月23日、政府主催の明治150年記念式典が開催されました。明治以降の150年は「欧米から学び、欧米と戦い、欧米と協力して自由世界を築いてきた」150年であったと思います。

自民党は、今後150年の日本にも責任をもち、真の保守政党として、我が国及び世界の平和と繁栄に尽力する決意です。

世界はますます複雑な情勢に直面しており、法の支配、人権の尊重、民主主義等を基本的価値とする国際秩序に対する挑戦は増えています。

「力による現状変更」を排し、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」を広げていくことが必要であり、そのための戦略的な外交と安全保障政策の策定が求められています。

安倍内閣は着実に外交の成果をあげ、国際会議の場では安倍総理と話そうとする各国首脳が列を作る状況も見られ、この6年間で世界における日本のプレゼンスは格段に向上しました。総理の掲げる「秩序による平和と繁栄」の理念は確実に世界に広がっています。

【米国】

こうした中で、あえて懸念を指摘するとすれば、同盟国米国の動向です。トランプ大統領はこれまでの米国大統領とは異なるアメリカ・ファーストという世界観を有し、従前の米国外交の延長線上では予測困難な言動もみられます。
総理は、これまでのところ、世界の指導者のなかで、トランプ大統領との個人的信頼関係の構築に最も成功しておられますが、今後トランプ政権との間で、どのように同盟強化を図られるのか、米国が朝鮮半島を含む東アジアでのプレゼンスを弱める懸念はないのでしょうか。また日米物品貿易協定(TAG)をFTAとどのように差別化するのか総理のお考えを伺います。

【中国】

日中関係についてお尋ねします。
日本と中国とは、地域の平和と安定と繁栄に大きな責任を有する特別な二国間関係です。今年は日中平和友好条約40周年の節目の年。大局的な観点から友好関係を安定的に発展させる必要があります。

一方で、自らの軍事力・経済力を背景に、国際社会の秩序を変えようとするかのような中国の行動に対し、多くの国々が懸念しています。

そんななかで、自民党は、日中関係の改善に最善を尽くしてきました。

例えば昨年5月、「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムが開かれましたが、政府からは閣僚が一人も参加できないなか、わが党の二階幹事長が出席されました。その際、習近平主席は、外国首脳以外では極めて例外的に個別会見を行い、日本重視の姿勢を強く示しました。

さらに中国共産党との与党間交流は2006年2月に第一回会合を開催して以来、着実に回数を重ね、今月、北海道と東京で通算8回目を開催することができました。
政府と連携しながらも、党独自の外交が大きな契機となり、さらには政府と党を挙げての外交努力が、現在の日中関係の改善の流れに繋がっています。

今回の総理の訪中は約7年ぶりの公式訪問であり、北朝鮮問題についての緊密な連携の確認、インフラを含めた第三国協力、青少年交流イニシアティブの打ち上げなどの成果が上がったと聞いております。

訪中の具体的成果について、そして習近平国家主席の訪日を含め、今後の日中関係にどのような戦略で臨んでいくのか、総理のお考えを伺います。

【朝鮮半島】

朝鮮半島の問題は、北東アジア全体の安全保障の問題でもあります。史上初の米朝首脳会談が開催されましたが、北朝鮮の核廃棄の見通しは立たず、日本海をへだてたすぐそこに、我が国を射程に入れた数百発もの弾道ミサイルを、いつでもどこでも発射できる状況が存在することに何ら変わりはありません。
北朝鮮の核・ミサイル、そして我が国の主権侵害であり最重要課題である拉致問題の解決に向けて、日本としても主体的に対応していく必要があります。

韓国に目を転じると、先般の韓国海軍の国際観艦式で、海上自衛隊の護衛艦が自衛艦旗を掲げないように求められるという事態が起こりました。この自衛艦旗の掲揚は我が国の法令上の義務であること等から、遺憾ながら国際観艦式への参加を見送りました。しかし、結果として、軍艦旗を持つ他国の艦船は全て軍艦旗を掲げていました。しかもあろうことか、主催国の韓国海軍の艦船には、秀吉朝鮮出兵時の李舜臣(イ・スンシン)将軍を象徴する旗が掲げられていたのです。

さらに、明日、韓国の大法院は徴用工の問題で判決を下します。日韓両国の基本的関係を規定した条約に反する内容になることが強く懸念されますが、これは国際法の正義にもとるものです。
また、去る22日には、我が国固有の領土であり、韓国が不法占拠を続ける竹島に韓国国会議員13名が上陸しました。

これら韓国の対応は、先月、日韓首脳会談において、日韓パートナーシップ宣言20周年を契機に、改めて日韓関係を未来志向で発展させていくことを確認した姿勢と明確に矛盾するものであり、強く抗議しなければなりません。

こうした朝鮮半島の動きにどのように取り組んでいくのか、総理の見解を伺います。

【ロシア】

ロシアは日本にとって戦略的に重要な隣国です。安倍総理は、プーチン大統領との個人的な信頼関係に基づいて、日露関係を力強く牽引して来られました。

わが党の党外交としても、今年4月、ロシアを訪問し、党としてメドベージェフ首相らに対し両国の交流促進の必要性を訴えました。そして先日、自民党観光立国調査会の訪露が実現しました。日露関係のさらなる発展のためには議員交流を含む日露間の人的交流の促進が重要です。

一方で、ロシア側からは領土問題を先送りして、年内に平和条約を締結しようではないか、という声も聞こえてきています。

北方領土四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、これが日本の基本的立場であると考えますが、プーチン大統領との交渉に臨まれる総理の決意を伺います。

【安全保障】

次に安全保障についてお伺いいたします。

年末までに防衛計画の大綱を見直し、防衛力を抜本的に強化すると、安倍総理は明言されました。

まず認識すべきは、我が国を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増していることです。
世界の超大国である米国と、それを追う中国をはじめとする新興国のパワーバランスの変化が加速しています。それに拍車をかけているのが、サイバー、宇宙などの新たな領域の活用と人工知能などの最先端技術です。そしてこれらを使用することで、防衛の質も大きく変ってきています。

党の綱領では「日本の主権は自らの努力により護る」と明記されていますが、今こそ自分の国は自分で守る気概を持つべきです。

なぜ今、防衛力を抜本的に強化する必要があるのか、防衛計画の大綱見直しに向けての総理の決意を伺います。

次に、岩屋防衛大臣に、大綱の見直しにあたり重視すべき次の二点について伺います。

第一に、我が国の平和と安全を守るため、平素から、外交と防衛が一体となって、日本にとって望ましい安定した安全保障環境を作り出すことが重要になっているのではないか、という点についての見解を伺います。

第二に、防衛費拡充の前提は、防衛省内における自助努力として、組織・装備品の最適化、研究開発・防衛調達の合理化を最大限まで追求することと考えますが、大臣の見解を伺います。

【捕鯨】

さて、日本がIWC・国際捕鯨委員会の、「商業捕鯨モラトリアム」を受け入れ、商業捕鯨を停止してから、30年が経ちました。この間、政府は「商業捕鯨モラトリアム」解除に向け、交渉してきましたが、残念ながら本年9月のブラジルでの総会で、IWCは科学的根拠に基づいた日本の提案を、具体的根拠を示すことなく拒否しました。

商業捕鯨の再開に向けた取組についての総理の決意を聞かせて下さい。

【海洋プラスチック問題】

近年、海洋プラスチックごみによる生物や生態系、漁業や観光への影響が世界中で懸念されています。安倍総理は、来年6月大阪で行われるG20でこの問題を取り上げることを表明されました。

自民党は党の会議で使用する年間22000本のプラスチックストローを廃止しましたが、今後、他党や政府、企業等に、意識の転換を促し、循環型社会に向けた動きを加速させなければなりません。
海洋プラスチックごみに関する国際的な議論をどのようにリードするのか、総理のお考えを伺います。

四.地方創生等

次に、アベノミクスの重要課題であります地方創生について伺います。
地方創生に重点を置いて、アベノミクスを進めることで日本全体の経済を再生させなければなりません。

私は地方創生を成功させ、飛躍させるキーワードは、「組む」、すなわち「コラボレーション」であると考えます。
私の地元の例ですが、ある企業では、伝統的な繊維産業の高度な技術を、最先端の炭素繊維材料づくりに応用し、世界初の航空機エンジンの炭素繊維製部品の開発に成功しました。

また、曹洞宗大本山の永平寺は、福井県、永平寺町、企業と組み、昔の参道の修復や再開発、民間の知恵と発想を生かした「宿坊」をつくることなどで、インバウンド誘引の強力なコンテンツとなっています。

様々な主体が、新たな分野に臆せず挑戦することで化学変化が生じ、課題の解決に結びついたり、思いもよらないイノベーションが生まれたりするのです。中央によるバラマキのような上から目線ではなく、現場のニーズに根ざした意欲あるチャレンジを政府がしっかりと応援していくことが重要です。

真の地方創生に向けた総理のお考えを伺います。

【農業】

農業は国の基です。稲作は日本文化の原点であり、水田は日本の美の象徴であり、お米は日本人の主食です。農業を守ることが日本を守ることであります。

しかしながら、農業従事者の減少や高齢化をはじめ、今日の農業は多くの課題に直面しています。農業政策は、かつて基盤整備予算を大幅に削減し、戸別補償によるバラマキを行い、真の改革が停滞しました。

政権交代後、自民党は必要な基盤を着実に整備するとともに、様々な改革を進めてきました。その結果、若い新規就農者が増加するなど、改革の成果が実を結びつつあります。

諸外国で日本の食は高く評価されており、大きなチャンスが広がっています。人工知能やドローンをはじめ、他分野での革新的な技術を農業分野に応用する動きが広がっており、様々なイノベーションが起きる環境も整ってきています。
さらに、安倍総理の指揮の下、米政策の見直しに向けた取組が進められてきました。各地において主体的に作付けを判断し、取り組んだ結果、米価はこの4年で1俵あたり4千円近く評価を上げるなど、成果も現れています。今後とも、これまでの施策の定着を図り、改革を進めていく中で、農業者の所得の確保に努めていくことが重要です。

また、我が国の食料自給率は、先進国で最低ですが、世界的な異常気象の頻発や人口増加により、食糧確保がさらに難しくなる恐れがあります。食糧確保は安全保障でもあります。

食糧確保の観点もふまえつつ、農業を成長産業にするための政策、いかにして日本の農業を守り、発展させるのか、総理の見解を伺います。

【外国人労働】

政府は新たな外国人在留資格制度を設けるため、入管法の改正等を準備していますが、これは「なし崩し的な移民政策」に繋がるのではないか、との指摘もあります。

一定の専門性・技能を有する外国人の受け入れを拡充することは、地方創生の足かせになりかねない人手不足の解消に寄与すると期待する、地方及び業界団体の要望もある一方で、治安、雇用、社会保障等への影響など懸念もあります。

これらの不安・懸念をどのように払拭されるのか、総理のお考えを伺います。

五.社会保障改革(全世代型社会保障)

我が国の財政や社会保障の将来を考えたとき、社会保障において、これまで「支えられる側」だった高齢者の増加はもとより、「支え手」である現役世代の減少は大きな問題です。

高齢者の増加は、いずれ2050年ごろには頭打ちを迎えると言われていますが、「支え手」である現役世代の減少は、このままでは歯止めがかかりません。世界に冠たる我が国の社会保障制度を維持し、全世代型社会保障制度に発展させていくには、元気で活躍できる高齢者に「支え手」の側に回ってもらう、といった視点での改革が不可欠と考えます。

総理は、「全ての世代が安心できる社会保障制度に向けて、3年かけて大改革を行いたい」とおっしゃられています。その具体的な方向性についてのお考えを伺います。

六.憲法改正について

現行憲法は、占領下に制定されました。法治国家の基本法たる憲法が、主権が制限されていた時代に作られたことは厳然たる事実です。一方で現行憲法の下で戦後の平和で豊かな日本が築かれてきました。

わが党は「憲法の自主的改正」を党是とする改憲政党です。総理は自民党総裁として、憲法改正を「歴史的チャレンジ」と位置づけ、憲法9条改正の方向性も示されました。

憲法9条については2項を維持することによって、集団的自衛権はフルサイズでは認めないが、自衛隊を明記することによって自衛隊違憲論に終止符を打つ、ということだと理解しています。

私も防衛大臣時代に南スーダンを視察しましたが、気温50度を超える灼熱の地で黙々と道路や施設を補修する自衛隊員の姿は現地の人々や世界から賞賛されていました。

自衛隊の、現地の方々に寄り添った、誠実で丁寧で親切な活動はまさに「日本らしい」ものとして誇りに感じます。災害において自らの危険を顧みず救助、復興作業に当たっているのも自衛隊の皆さんです。

自衛隊を誰からも憲法違反などとは言わせない、そのためにも憲法改正は急務だと思いますが、総理のご所見を伺います。

おわりに

冒頭申し上げました自民党の新綱領では、「他への尊重と寛容」をうたっております。これは保守政党の基本であり、寛容で多様性のある社会を創らなければなりません。私たちは党内外で議論を徹底して行い、多様な意見の存在を尊重しつつ、国民のために最善の選択を行い、実行していく責務を有しています。

この選択と実行のため、果断な決定が必要です。民主主義の原理に立ち、徹底した議論を経て、最後は多数決で決める。しかし、多数決は、少数であったり、声を上げたくても上げられない人々の意見を十分にすくいあげることが難しいという側面もあります。であるからこそ、私たち政治家一人一人が様々な国民の皆様の声を聞き、政治に生かしていかなければなりません。

昨今、女性、障害者、LGBTなど、社会的に「マイノリティ」とされる方々に対する国民の関心が高まっており、社会の多様性の確保が重要な課題となっています。 

また、これらは何よりも人権にかかわる問題であり、世界から尊敬される道義大国を目指すため、そして希望にあふれた社会をつくるため、与野党の垣根なく、政治家として取り組むべき最も基本的な課題です。
安倍総理が今日の世界の首脳の中で、また、日本の憲政史上においてもトップクラスのリーダーシップを発揮されていることは、紛れもない事実です。他方、世界に目を転じれば、白か黒かという二分法的な考え方が目立ち、各国の社会に様々な分断を生じさせていることを私は大変憂慮しております。

我が国は寛容な保守の思想を国民が広く共有してきた歴史ある民主主義国家です。わが国における多様性の尊重はますます重要となってきています。

安倍総理におかれては、新時代にふさわしい新たな保守の国家像を世界に示すべく、国づくりの先頭に立っていただきたいと考えますが、最後に総理の決意のほどを伺い、私の質問を終わります。ありがとうございました。