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政策

第196回国会における松村祥史自民党幹事長代理代表質問

平成30年1月26日

第196回国会における松村祥史自民党幹事長代理代表質問

自由民主党の松村祥史でございます。自由民主党・こころを代表して、安倍総理の施政方針演説について、総理並びに関係大臣に質問いたします。

わが国は、災害が多い国です。今週火曜日、23日には群馬県・草津白根山が突然、噴火しました。お亡くなりになられた方のご冥福を謹んでお祈りし、被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。

また、先週、1月17日で阪神淡路大震災が発生してから23年が経ち、その後も中越地震、東日本大震災など様々な震災が発生しました。そして一昨年4月には、九州熊本地方を震度7の地震が2度襲いました。これは観測史上初めてであり、正に想定外の被害の大きさでした。

熊本地震対応の初動において、安倍総理はすぐに陣頭指揮を執られ、また同時に被災地にも入られました。その際総理は「先手・先手で、できることは全てやる」と全力で支援に当たる決意を述べられ、甚大な被害を前に現場で奮闘する我々に安心感を与えていただきました。この時、トップリーダーの一言は、危機的状況下で大きな影響力があると肌で感じた瞬間であり、これほど言葉の重みを感じたことはありませんでした。
当時の安倍総理の言葉は被災者や震災対応にあたった皆様の心に今でも深く刻み込まれており、改めて総理に感謝申し上げたいと思います。

そしてその言葉通り、総理からの指示で、水・電気・ガスといった生活インフラの早期復旧をはじめ、自治体の財政負担軽減、病院や診療所、社会福祉施設へのグループ補助金の適用拡大、直轄代行制度による阿蘇大橋や道路の早期復旧等に速やかに着手していただきました。新たな財政支援枠組みによる第三セクター南阿蘇鉄道の全線復旧の決定も全国の先例となるものでもありました。

また、全国津々浦々から心温まる励ましをいただきました。今までの義援金は513億円に上り、今なお寄せられています。国民の皆様の温かい思いは熊本の支えです。厚く御礼申し上げたいと思います。おかげさまで、復興のシンボルである熊本城の天守閣の復旧など様々な事業が少しずつではありますが進んでおります。

しかし、復旧・復興において、課題は時々刻々と変化します。今も42,000人もの被災者の方々が応急仮設住宅等の生活を余儀なくされており、その方々の住宅再建も急務ですし、更には自治体の財政負担等の更なる支援の必要性など、様々な課題を現場では抱えています。
どれほどやっても、それでも課題は必ずあり、復興の難しさを痛感しています。熊本の真の創造的復興に向け、安倍総理には引き続きのご支援を賜りたいと思います。

被災地からの一日も早い復旧・復興を願う声に応えるには、災害が起きてから復旧・復興事業の迅速化のために工夫をするのではなく、事前に政府において改善すべき点や、更に工夫できることについて検証し、改善策を共通化、一般化することで、東日本大震災、熊本地震などの復旧・復興事業の加速化、ひいては将来の迅速かつ円滑な実施に活かすことができるのではないかと考えます。この点も含めて、迅速な災害復旧・復興に対する総理の決意をお聞かせください。

昨年9月、衆議院解散に当たって、総理は、「少子高齢化、緊迫する北朝鮮情勢、正に国難とも呼ぶべき事態に強いリーダーシップを発揮する。自らが先頭に立って国難に立ち向かっていく。」と国民の皆様に訴えました。まさに、今、わが国は、外交・安全保障環境の激変、そして人口減少、生産年齢人口減少という国難に直面しています。選挙から3か月、この難局に安倍内閣はどう立ち向かっているのか、これこそが国民の皆様が心底知りたいと思っていることではないでしょうか。本日は、この外交・安全保障、そして人口減少に関連する課題について総理、関係大臣にお尋ねしたいと思います。

昨年10月の中国共産党大会の中で、習近平国家主席は、今世紀中ごろまでに「社会主義現代化強国」の建設を目指すことを明らかにしました。2030年には中国が経済力で米国を上回るという予測があり、中国の国際的な影響力は極めて大きなものになると考えられます。さらに、米軍のより優れた防衛ミサイル、いわゆるTHAADの韓国配備に対する経済的圧力、尖閣諸島の接続水域への潜水艦の航行などを見れば、わが国を含む周辺各国との緊張が高まりかねないという懸念は否定できません。

しかし、わが国と中国は、歴史的に見て、長い友好往来の期間があります。また、北朝鮮問題などへの対応でも、中国との良好な関係の構築、発展が欠かせません。一帯一路構想についても、インフラの開放性や透明性の確保など地域と世界の平和への貢献やわが国の国益を図る観点から見た柔軟な対応が必要ではないかと思います。

同時に、安倍総理が提唱する「自由で開かれたインド太平洋戦略」、すなわち、インド太平洋地域における法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の維持・強化のために、どのように中国と連携していくのかという戦略も重要です。

この「自由で開かれたインド太平洋戦略」の考え方は、2007年の第一次安倍政権の頃から安倍総理が提唱されてきたものだと承知していますが、日本が国際社会をリードする形で大きな外交ビジョンを示し、それを実行していくということは、極めて画期的なことです。日本の外交戦略に米国が賛同し、これを共同で進めていくということは、過去の歴史でも類を見ないものです。これまでも、総理は、この外交戦略実現のために、各国に協力を呼びかけ、その結果、米国のトランプ大統領やインドのモディ首相などとの間でも、緊密に連携・協力していくことで一致しています。

本年は日中平和友好条約締結40周年でもあります。是非とも、この40周年という絶好の機会を活かして、日中関係の一層の発展のみならず、自由で開かれたインド太平洋地域の実現に向けて、中国に協力を呼びかけるという懐の深い外交を展開していくべきと考えております。

そこで、総理に、日中関係を今後、どのように一層発展させていくおつもりか、お伺いします。
加えて、中国との協力も含め、どのように、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を進めていくおつもりか、お尋ねします。

続いて、安全保障関係についてお伺いします。
安倍総理はこの度、日本の首相として初めてバルト三国を訪問し、北朝鮮の核ミサイル開発に対する圧力強化や、拉致問題の解決への協力を引き出しました。2014年のクリミア危機以降、国防費を大幅に増額し、NATO加盟諸国の対GDP2%目標を達成したエストニアを含むバルト三国は、安全保障上の緊張感に直面しています。グローバルな安全保障環境について、各国と価値観を共有すると共に、平和の維持に対して応分の負担と責任を分かち合うことは極めて重要と考えます。

第二次安倍政権発足以降、わが国の防衛費は着実に伸びていますが、対GDPでは未だ1%以下です。装備品の調達も、米国防省からの対外有償軍事援助が政権発足時に比べ約4倍にも増加し、防衛部門からの撤退を余儀なくされる国内企業も出るのではと懸念されています。

任務の多様化と活動の活発化に伴い、各部隊の疲労も限界に達しています。慢性的な人員不足に加え、少子化や景気の向上の影響もあり、隊員募集は厳しい状況にあります。隊員の抜本的な処遇の改善と退職後の再就職等のトータルライフケアを、国を挙げてサポートすることも重要です。

そのような中、安倍総理は施政方針で、次期防衛大綱について「従来の延長線上ではなく、国民を守るために真に必要な防衛力のあるべき姿を見定めていきたい」との強い意志を示されました。

そこで、政府として新たな防衛大綱と中期防衛力整備計画について、どのような方針で策定に臨まれるのか、総理の考えをお伺いいたします。

さて、ここからは、人口減少、特に生産年齢人口の減少がもたらす問題にどう対応していくのか、という観点から質問いたします。

現在、生産年齢人口は、大きく減少しており、これまで想像すらできなかった状況にあります。しかも、減少度合いは大都市より地方の方が激しくなっています。この事実だけを見れば、わが国、とりわけ、地方は、もう成長できないという悲観論があふれてしまうことになります。

しかし、アベノミクスにより、名目GDPは過去最高の56兆円の増加、若者の就職内定率も、企業収益も過去最高です。生産年齢人口減少下でも、正しい政策を展開すれば、経済は伸びるという希望が示されたと思います。

では、生産年齢人口減少時代の中で、経済の前向きな循環を加速し、地方創生を進めるに当たって、欠くことのできない視点は何でしょうか。私は中小企業・小規模事業者であると確信します。中小・小規模事業者は、わが国の企業の99.7%を占め、従業員数でも約3千4百万人と大企業の約2.3倍の雇用を担っています。特に、地方の雇用に、より大きな役割を果たしています。地方経済は業種、企業規模、地域によっては未だ厳しい状況にある中、経済の力強さを地方の隅々にまで浸透させ、経済再生の完遂と地方創生の実現には、中小・小規模事業者の持続的な成長が不可欠です。

ただ、大企業と中小・小規模事業者との生産性には格差が存在し、一人当たりの付加価値額で見れば、大企業の約半分しかありません。経常利益率も低く、資金的余裕が少ないため、新たな情報技術の導入に踏み切ることができないという声が上がっています。賃金ギャップなどが広がりつつあり、ますます人手不足に陥るという悩みも耳にします。これでは、生産性向上がより必要な中小・小規模事業者で、生産性革命が進まないということになりかねません。

こうした状況を打破するために、政府は、ものづくり補助金をはじめとする予算措置の拡充や攻めの設備投資に対する固定資産税の半減など、あらゆる支援措置を集中的に講じてきました。平成26年には小規模企業振興基本法を制定し、55万者の中規模企業と325万者の小規模事業者を企業規模で分け、ターゲットを絞りこんだ上で、それぞれの実態に合わせた施策を実行することとしました。これは、小規模事業者もアベノミクス加速のエンジンにしようとしたことであり、大いに評価できます。

総理は「税制、予算、規制改革、あらゆる政策を総動員する」とおっしゃっていますが、まさしくその通りであります。今国会では生産性向上の実現のために立法措置を検討されていると聞いていますが、「生産性革命」の確かな実現のために、中小企業・小規模事業者の生産性向上に向けて、どのように取り組んでいかれるのか、総理のお考えをお聞かせください。

また、固定資産税については、今回の税制改正大綱においても、市町村の条例で定める割合次第では、課税標準をゼロとすることも可能としています。固定資産税は自治体の基幹税ですが、事業者にとっては税負担が下がり、非常にメリットが大きく、画期的な取り組みです。「生産性革命」のうねりを全国津々浦々に広げていくためには、国と自治体が一体となって支援していくことが重要だと考えますが、このような状況で、いかに自治体へ協力を促していくのか、総理にお考えを伺います。

加えて、中小企業・小規模事業者は、経営者の高齢化や後継者不足の深刻化により、事業の将来性にかかわらず廃業せざるを得ないという事業承継の問題に直面しています。経済産業省が示したシナリオでは、日本の企業の3社に1社、127万者が2025年廃業危機を迎えるというものであり、このまま廃業問題を放置すれば、雇用650万人、GDP22兆円が消失してしまうというものであります。これについては、わが党は大いに議論し、今国会に提出される税制改正には、事業承継税制による相続税等の緩和が盛り込まれることとなり、思い切った予算上の措置も講じられることとなります。この施策により、円滑な事業承継が進むものと期待していますが、日本経済と地方創生を支える中小・小規模事業者が健全に次世代に引き継がれるよう、どのように支援策を力強く進めていくのか、世耕経済産業大臣のお考えをお聞かせください。

続いて、農林水産業について質問します。

我々は、農家の所得を向上させ、安心して農業に取り組めるようにするため、農政全般にわたる改革を進めてきました。この中で、本当に農家のためになるのか疑問の多い政策、例えば、土地改良事業を半分に減らすとか、戸別所得補償で主食用のコメにも交付金を支払うといった政策については、きっちりと見直しを進めてきました。

この結果、今年から米の直接支払交付金はなくなり不安を感じる農家の方もいらっしゃるでしょうが、いくら交付金をもらっても、その分、米価が下がってしまえば農家にとって意味がないのです。安倍内閣で米政策改革を進めてきた結果、ここ3年、米価は着実に回復しています。交付金を十分に上回る米価の回復が実現しているわけであります。また、農家の手取りを意味する生産農業所得も平成27年、28年と2年連続で増加し、平成11年以降で最も高い水準になっています。私は、農家の皆様の不安に寄り添いながらも、これまでの改革の成果も丁寧に説明していくことで、改革への理解も広がっていくものと考えています。

その際、十分に目を配るべきは、中山間地における農業の重要性です。中山間地農業は、生産額や農家数でわが国の農業の約4割を占めるだけでなく、国土保全や水資源涵養、豊かな自然景観の提供といった公益を担っています。しかし、中山間地は、傾斜地であったり、人口減少・高齢化・担い手不足に直面したりするなど、耕作放棄が起きやすくなっています。中山間地の衰退は日本の衰退につながります。中山間地農業が元気になるよう、しっかりと取り組んでいく必要があります。

もう一つ、農林水産業の方々に寄り添って考えるべきことは、TPP、日EUEPAの発効への不安です。経済連携協定により、わが国の優れた農産物の輸出など海外での市場開拓や経済・投資活動は容易にはなりますが、やはり、農林漁業に携わる方々は海外からの輸入増などにより影響を受けるのではないかと不安を抱いています。食は国の基本です。我々は、農林水産業に従事する方々の懸念を払しょくし、将来に夢と希望を持てるよう、体質強化のための予算を、協定発効を待つことなく、どんどんと実行すべきと訴え、実現してきました。

そこで、総理は、若者が将来に夢や希望の持てる「農林水産新時代」を切り拓いていくとおっしゃっていますが、この「農林水産新時代」を切り拓くため、TPP、日EUEPAへの対応も含めて、農林水産業全般にわたる改革をどのように進めるつもりなのか、総理のお考えをお聞かせください。

まもなく2月、いよいよ平昌冬季オリンピック・パラリンピックが開催されます。そして、この五輪が終われば、次は、2019年ラグビーワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラリンピックです。わが国への注目度が世界的にますます高まり、さらに多くの外国人観光客の皆様が訪れるのではないかと期待しています。

先の東京オリンピック、1964年はOECDに加盟し、先進国の仲間入りをした年でした。この東京五輪に合わせて、東海道新幹線が開業、首都高速道路が開通し、わが国の高度成長を支えました。五輪に参加し、観戦のために訪れた外国の皆様は日本の成長に目を見張ったと思います。五輪の成功はまさにわが国経済の新しい幕開けとシンクロし、国立競技場に鳴り響くファンファーレは日本の「第一創生期」の幕開けを告げるものだったと感じています。

2020年も、自動運転、人工知能の活用など、これからを実感できるテクノロジーがますます身近になり、日本の先進性や素晴らしさをアピールできる絶好の機会としなければなりません。伝統的、文化的から先端性、独自性、世界の人々を魅了するクールジャパンも同様です。この機会にさらに世界中に広くPRできれば、クールジャパン自体が一層大きな市場へと成長し、インバウンド観光にも大きく貢献することとなります。まさに日本の「第二創生期」の幕開けという年になることが期待できます。

そこで松山担当大臣にお伺いいたしますが、クールジャパンをどのように進め、わが国の経済成長や地方創生を成し遂げるために、どのように工夫するつもりか、お聞かせください。

最後に、参議院選挙区における合区について申し上げます。 憲政史上初めて導入された二県合区により、いわゆる「一票の較差」は縮小されましたが、同時に、様々な深刻な問題点も浮き彫りとなりました。

例えば、二県合区となった四つの県のうち三県では選挙区の投票率が過去最低、しかも無効票が前回より約6割も増加した県もありました。また、選挙中、「二県で一人前という扱いを受け、誇りを傷付けられた」という有権者の厳しい声も聞かれ、結局、党派を超えて候補全員が合区反対を主張した県もあったとの報道もありました。

二県合区の選挙では、政策よりも、どこの出身なのかという点が注目されがちで、そうなれば、人口の少ない方の県では候補者すら出すことができないとも言われています。

これでは、人口の少ない県、減少している県から地方の声を国政に反映させることができなくなってしまいます。これでは地方創生の実現もどんどん遠くなるだけです。

このように、二県合区という手法は、一部の県に不平等感を募らせるという問題点があるという声が、参議院における議論の中でも、少なからぬ会派から聞かれていると承知しています。

二県合区の対象県以外でも、全国知事会を始めとする地方6団体は、合区の早期解消を訴える要望を決議しています。すでに全国33県議会でも同様の意見書等を採択しています。地方議会での動きは更に広がりつつあります。

昨年9月に出された最高裁の判決では、平成28年参議院選挙の選挙区の一票の較差、3.08倍を合憲としました。その中で、「投票価値の較差」を考えるに当たっては、同判決の中で、参議院には、「国民各層の多様な意見を反映させて、独自の機能を発揮させること」、「半数改選など考慮すべき参議院に固有の要素があること」を示しています。

であれば、参議院においては、やはり、歴史的・文化的・社会的・経済的にも一体性を有し、わが国の政治や行政の多くの場面で、現実的に重要な役割を果たしている広域地方自治体としての都道府県という単位をしっかりと位置付け、各都道府県から、選挙ごとに、少なくとも1名の代表を選ぶ選挙制度であるべきだと考えております。

現在、参議院では、参議院の在り方について、本院が衆議院とは異なるところの独自の使命をいかに果たし得るかなど、活発かつ真摯な議論が行われています。こうした参議院の在り方も踏まえながら、顕在化した二県合区の不具合に対処して、全ての都道府県からの声をしっかりと国政に届けるためには、どのような仕組みがよいのか、速やかに議論を進めていくことが是非とも必要であると確信しております。このことを皆様に訴え、私の質問を終わります。