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政策

第196回国会における二階俊博幹事長代表質問

平成30年1月24日

第196回国会における二階俊博幹事長代表質問

自由民主党の二階俊博です。私は、自由民主党を代表して、安倍内閣総理大臣の施政方針演説に対し質問いたします。

昨日、草津白根山が噴火し、不幸にも訓練中の自衛隊員がお亡くなりになりました。心からご冥福をお祈り申し上げるとともに、けがをされた方々に改めてお見舞い申し上げます。

昨年、7月の九州北部豪雨及びその後の各地における一連の台風・豪雨等、多くの災害が発生しました。今なお行方不明の方がいる現実を、私たちは、重く受け止めなければなりません。
一昨年4月に発生した熊本地震の被災地では未だ4万人以上の方が仮住まいを余儀なくされています。東北の復興も道半ばであります。一日も早く元の生活を取り戻すために全身全霊を尽くすのは、私たち政治の使命であります。
「我々は一時も被災地の皆さんのことを忘れていない」
「そしてこれからも決して忘れない」ことをお誓いし、質問に入ります。

昨年の九州北部豪雨を契機に、私は2つの改革を政府に求めました。
一点目は、激甚災害指定の迅速化です。
被災地を訪れるたび、地元の皆さんから「直ちに激甚災害に指定してほしい」と言われます。被災者の皆さんに一刻も早く安心して頂き、被災自治体が、財政面で不安なく、全力で復旧・復興に取り組むためにも、激甚指定の迅速化が重要であります。
二点目は、「災害復旧改革」であります。
昨年の九州豪雨の特徴は、記録的な降雨による中小河川の氾濫や山腹崩壊、これに伴う土砂・流木被害であります。甚大な被害が生じた際には、従来の発想にとらわれず、再度の被害を防ぐための「改良復旧」を原則とすべきであります。
政府は、甚大な被害を受けた河川の治水機能を、集中的に強化する「改良復旧」を行うとともに、全国の中小河川でも緊急点検を実施し、治山・治水対策を進めていく方針と聞いております。
同じ被害を繰り返さないための「災害復旧改革」が、今般の予算にどのように反映されているのか、安倍総理に改革の中味とその真意を伺います。

年初から、証券市場は大きく値上がりしましたが、この動きは市場関係者のみならず、多くの国民の皆さんが「今年はひょっとしたら良い年になるのでは」という期待を持たれたのではないかと思います。
日本国中が挙げて、経済の再生に取り組み、やっとここまでたどり着きましたが、デフレ脱却という大目標を達成するためには、未来への投資を大胆に実行することが肝要です。
「人づくり革命」は人生の様々なステージに手厚い支援を行っていくものであり、「生産性革命」は日本経済の変革を促すエンジンであります。
これらの実現に向けて、安倍総理のご決意をお伺いします。

今国会の最大のテーマは「働き方改革」であります。
「同一労働、同一賃金」、「長時間労働の是正」。
取り組むべき課題はいくつもあります。
「働き方改革」は働く人の満足度と生産性を上げていくために行うものであり、働くモチベーションを上げることがその目的であります。
何かとイメージで語られやすいこれらについては、より具体的な事例に即して、丁寧に説明していくことが求められています。安倍総理には、働き方改革の実現に向けて、国民に分かりやすく語りかけて頂きたいと思います。

企業の内部留保は初めて400兆円を超え、過去最高となっています。
その一方で、特に昨年秋以降、データ改ざんなど、わが国を代表する企業の不祥事が相次ぎました。現場ではいったい何が起こっているのか、私たちは、世界的な大競争の中で戦い抜く企業の現状を、深く知る必要があります。
これまでの延長線上だけでは、衰退していきます。世界と戦うためには、イノベーションを起こし、高付加価値で勝負しなければなりません。
そのための高度化投資や人材育成に、政府はこれまで以上に企業を後押しし、挑戦する環境をつくっていくべきであります。総理のお考えをお聞きします。

北朝鮮は、昨年、度重なる弾道ミサイル発射と通算6回目の核実験を行い、残念ながら、その能力は急速に向上しています。このことは深刻かつ重大な事態であり、世界を恐怖に陥れる「暴挙」は、断じて、これを許すわけにはまいりません。
政府は国民に必要な情報提供を行い、直ちに国家安全保障会議を開催し、万全の体制で危機に対応しています。安倍総理が米国、中国、韓国、ロシアなどの指導者に積極的に働きかけ、国際社会を主導する姿は、多くの国民に安心感を与えてくれています。
また北朝鮮籍と見られる漁船が日本海側に大量に漂着している事実は、
沿岸の住民にとって大きな不安であり、この問題に、政府は総合的に対応していく必要があります。
今後北朝鮮にどう対峙していくのか、わが国の外交・安全保障政策の在り方と拉致問題の解決、あわせて日中韓サミットの開催の見通し等について、安倍総理にお伺いします。

尖閣諸島をはじめとする東シナ海や日本海などで領海警備や海上治安の維持にあたる海上保安庁の現場は常に危険と隣り合わせです。
厳しい現場で任務を果たす海上保安官の「一つ間違えば、国際問題となる任務。常に緊張感をもって、自分の判断に責任を持ちたい。」という話に、私たちは真剣に耳を傾けなければなりません。
私も運輸大臣の時代には、本土から約1000km離れた小笠原海上保安署の視察を行い、日夜、警戒監視や海難救助にあたっている海上保安官の、頼もしい姿に感銘を受けたことを今でも覚えています。
四方を海に囲まれた島国であるわが国にとって、海上保安庁の体制を大胆に強化し、国民の安全・安心を確保していくことは極めて重要だと考えますが、安倍総理の見解を伺います。

総理は昨年5月3日のビデオメッセージにおいて「自衛隊は憲法違反なの? お父さんは何か悪いことしてるの?」と問い詰められる自衛隊員の心情に思いをはせられました。
北海道の災害現場に人命救助に向かう途中で命を落とした自衛官の御霊とその家族にもきちっと憲法に自衛隊が明記されたことを報告したいとも、後に述べられています。
私はそれを多としたいと思います。まさに命を賭して任務を遂行する公務員の心に、尊厳と誇りと勇気を与えなければなりません。
総理の思いをあらためてお伺いします。

首脳間の人間的な信頼関係は外交の基本であります。地球儀を俯瞰する外交を積極的平和主義に基づき、引き続き展開して頂きたいと思います。
昨年は日中国交正常化45周年の節目の年でした。
私自身も、5月には、中国における一帯一路フォーラムに出席、
8月と12月には日本と中国で「日中与党交流協議会」を開催しました。
日中関係は極めて重要な二国間関係であり、世界中がこの関係の行く末を注目しています。過去には厳しい時代もありましたが、どんな時もお互いの交流の機会を絶やすことなく、間断なく会うことが大切なのであります。
昨年以来、両国関係改善の機運が高まってきております。「春暖」の時を迎えたとも言われ、お互いがこの道で進んで行こうと強く意識し始めたのではないか、私はそう感じています。
政府は一帯一路構想に、今後どのような考えで関わっていくつもりか、また首脳往来について、安倍総理にお伺いします。

農林水産業を成長産業化させていくためには、成長著しい海外マーケットを取り込んで輸出を拡大していく取組が不可欠であります。
そのための課題の1つに、福島県第一原子力発電所事故にともなう諸外国の輸入規制への対応があります。政府一体となった働きかけの結果、26ヶ国と地域で撤廃されていますが、中国では10都県の食品の輸入がいまだ規制されていることは事実であります。
私は昨年12月、日本産の食品に対する放射線にかかる規制等に関し、
中国の担当局長と意見を交わしましたが、これまでとは違い前向きな反応があったと認識しております。
安倍総理は、これらの規制の撤廃・緩和について、復興にとりくむ皆さんに勇気を与えることが出来るよう、前向きな御答弁をお願いします。

意識の変化はチャンスであります。平和友好条約締結40周年の本年は、この流れを更に加速させて、様々な分野で交流に取り組んでいく年にしていかなければなりません。
昨年12月、中国共産党の幹部候補生たちを育成する中央党校で講演する機会があり、私は中央党校の研修生を日本に招待することを提案しました。日本の若手政治家との交流は双方にとって大変有意義であり、私たち政治に身を置く者が自ら率先して行動しないと、何も始まりません。
私は、これからの日中関係は、長期的展望にたって、共に未来を創ることが求められているのではないかと考えています。共に創る、「共創」という新しい考え方のもと、日中両国は世界の恒久平和を目指して行かねばなりません。
「木を植え、種をまき、井戸を掘る」
私自身、この様な気持ちで、議員外交に取り組んで参りました。
世界の若者の活発な交流が、やがて大きなうねりとなり、それぞれの分野で成果を出す。そして「世界平和」の花を咲かせることを大いに期待し、
今後も党外交を展開していきたいと考えています。

昨年の訪日観光客は2800万人を超え、これまでの長年にわたる関係者の努力が実を結び、「観光立国」への道を着実に歩みつつあります。
ビザ緩和やクルーズ船対策等も効果が表れつつあります。
来年1月には「国際観光旅客税」も創設されることも決まり、税関、入国管理、検疫機能の拡充やテロ対策など、安心安全の面で体制強化も急務であります。
「観光」という言葉は「易経」の「国の光を観る」という言葉が語源とも言われます。今では観光を語らない自治体関係者はいなくなりましたが、
自国の文化や伝統を発信する一方で、他国の優れた部分を学ぶ姿勢も併せて重要であります。その観点から真の「観光立国」を目指すため、インバウンドだけではなく、「双方向」での「観光交流」が重要であると考えます。
観光分野での、わが国の方向性と具体策について、安倍総理の考えをお伺いします。

私たち日本人は、長い歴史の中で鯨と共に生きて参りました。
捕鯨と、鯨と生きる文化は、次の世代に伝承していかなければならない、わが国固有の文化であります。山口県下関市のクジラ料理専門店「くじら館」の女将は、「鯨を食べる文化を、若い人に伝えたい。訪日外国人にも体験して欲しい」と語っておられます。
その切実な思いを実現し、多様な食文化を相互に尊重するという観点からも、商業捕鯨の再開を実現しなければなりません。
今年9月のIWC総会に向け、四十七年ぶりの日本人議長の下、議論の正常化に向けた努力が行われていますが、今年のIWC総会は、わが国の悲願である商業捕鯨の再開に道筋をつけるものとしなければなりません。
今後の捕鯨政策の進め方について、総理の決意を伺います。

私は昨年の中国福建省へ出張の際、沖縄県の富川副知事に同行していただきました。副知事からは帰国後こんな手紙をいただきました。
「沖縄を一帯一路の日本への入り口と考えて下さり感謝に堪えません。
今後迅速な通関体制等、所要の措置を行えば、沖縄県と福建省との貿易が飛躍的に発展するものと思います。」
私はこれを読みながら、共に努力していく決意を新たにしたところです。
沖縄の問題は、決して沖縄だけの問題ではありません。日本全体の問題だと考えます。米軍ヘリの不時着は今月に入って3度目も起きています。
昨今相次いでいるこの問題は大変遺憾であり、政府として米国に強く抗議し、原因究明と再発防止に全力を尽くすことは当然のことであります。
私自身も、米国大使館の首席公使に会い、沖縄県のみならず、日本国中が怒りに満ちていることを、厳重に抗議したところであります。
私は、沖縄が万国津梁の地として、世界に冠たるその平和文化を高らかに発信できるよう、昨年、「世界津波の日」高校生サミットを沖縄で開催する等、力を注いできました。沖縄に対する思いについて、総理に伺います。

 誰一人みすてない 誰一人忘れない 
 誰もひとりぼっちには、させない
 無駄な人間などどこにもいない
 無駄な中山間地帯など どこにも存在しない

全ての人に「生き」「生き」と過ごしていただくことが、地方創生をめざす政治の真髄であると考えます。例えば、地方に活気をもたらす例として、本社機能の地方移転があります。
石川県小松市に研修施設を開設するなど、東京からの地方移転を進めてきたコマツの坂根相談役によれば、「石川は物価が東京よりもずっと安いし、子育てもしやすいので、社員の婚姻率も上がり、子どもの数も増えた」と、分析されております。
また、YKK AP株式会社は北陸新幹線の開業を機に、富山県黒部市に開発機能の一部を移転しました。
「家賃が安いので会社の近くに住むことができる」「通勤時間が短くなった」「自然が近いので、登山、スキーなど気軽に行ける」等、社員から喜びの声が寄せられ、社内が活気にあふれているとのことです。
地方経済にとって宝であるはずの中小企業を守り抜くため、使い勝手の良い「事業承継税制」の改正が行われたことは、誠に時宜を得たものと言えます。
こうした良い事例がある一方で、人口減少や少子高齢化が進む中で、地方は漠然と不安を抱いています。今こそ、将来に希望を見出せるような、長期ビジョンを示す時期に来ているのではないでしょうか。
地方創生の今後と、中小企業の支援について、安倍総理にお伺いします。

わが国は未来の生活をテーマに2025年の大阪での「万博誘致」に取り組んでいるところですが、国を挙げて誘致に取り組むときに政党や会派の違いなどありません。今こそ一致団結して、競合する各国と戦っていかなくてはなりません。改めて総理のご意見とご決意を伺います。

現行憲法は、施行から七十年が経過しました。この間、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義など憲法の基本原理は国民の中に定着し、国民の福祉、国家の発展に大きな役割を果たしてきました。
憲法は言うまでもなく、国民のものであり、国のかたちそのものであります。改正には、国会が発議し国民投票によって決まっていくことから、国民に問うにふさわしい論点を、私たちが提示することが必要です。そうした観点から、わが党は昨年、憲法改正に関する論点の取りまとめを行いました。
それは、(1)安全保障にかかわる自衛隊 (2)統治機構の在り方に関する緊急事態 (3)一票の格差と地域の民意反映が問われる合区解消 (4)国家百年の計たる教育の充実 の4項目であります。
私たち自由民主党は、国会で憲法論議を充実させていくため、この4項目を含め、各党各会派から具体的な意見や提案があれば真剣に検討していきたいと考えています。安倍総理のお考えをお聞かせください。

今の日本は、他人に関心のない社会になってしまったと揶揄する人もいます。およそ他人と関わりなく生きていける人など、実際、どこにもいません。
振り返れば、平成7年の阪神淡路大震災の後にボランティア活動が日本社会に芽吹き、「共助」の考え方が防災・減災の分野でも定着しつつあります。
先日の晴れ着の詐欺事件は決して許すことの出来ない事件ですが、各地で手づくりの成人式をボランティアでやろうという支援の輪が広がっていることには、本当に頭が下がります。
詐欺にあった被害者の皆さんの心を癒そうとする、そしてハレの日の瞬間を再現しようというこの日本社会に私は誇りを感じます。
いつからでも どこからでも 何回でもやり直せる人生を日本政府が先導していることに応えるため、思いやり、助け合い、お互い様のこころで絆を深めていく日本人の生き様は確実に深化しています。
国に「いのち」を吹きこむ政治が、今求められているのであり、安倍総理のお考えをお聞かせください。

いのちを守りぬくこと、
ふるさとを愛し守りぬくことが、私の政治活動の原点であります。

これからもふるさとに責任を持ち、ふるさとを守りぬくことをお互いに誓い合いたいと思います。以上を申し述べ私の代表質問を終わります。