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国会

第196回国会における河野外務大臣の外交演説

平成30年1月22日

第196回国会における河野外務大臣の外交演説

 第196回国会に当たり、所信を申し述べます。この外交演説では、本年、私が外務大臣として日本外交を進めていくに当たっての基本的な考え方について御説明申し上げます。

 私は、外務大臣に就任以来の約半年間で、外国訪問を13回行い、延べ30か国を訪問しました。初めに、これらの訪問を通じた現在の世界についての私の所感から申し上げます。

 様々な新興国の存在が増す中で、これまで自由貿易の恩恵を受けていたはずの国々の中でも保護主義が台頭しつつあります。欧州でも内向き志向が顕著になっています。また、テロや暴力的過激主義が国境を越えて跳梁跋扈し始めたことにより、日本を含む世界の安定と繁栄を支えてきた自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値に基づく国際秩序が挑戦を受けています。日本を取り巻く安全保障環境は、極めて厳しい状況にあります。
 それ故に、日本を始めとする様々な国々が、既存の国際秩序の維持のため、また、自由貿易や安全保障、地球環境の維持といった視点からも、従来以上に大きな責任と役割を果たさなければならない時代になりました。
 人類が近代に創り出してきた自由、民主主義、人権、法の支配といった価値観は、それを生み出し維持していくために、政府に、国民に様々な努力を要求します。国際社会の中にそうした価値観を定着させるために、我々は、必要な支援の手を差し伸べていかなければなりません。
 だからこそ、日本は、厳しい財政の制約の中でも、必要とされる支援をできる限りでも続けていく必要があります。日本としては、選挙、議会、法律、司法、治安、徴税、入国管理などの様々な側面における各国の制度構築の取組に対し、積極的に手を差し伸べていきます。
 多極化する時代の中で、日本は、応分の責任と役割を果たしながら、世界と共に発展し、豊かになることを目指します。

 以上を申し上げた上で、本日、まず取り上げなければならない喫緊の課題は、北朝鮮問題です。北朝鮮の核・ミサイル開発は断じて容認できません。北朝鮮は、昨年までの二年間、3回の核実験に加え、米国東海岸も射程に収める長距離大陸間弾道弾(ICBM)級を含む、40発もの弾道ミサイル発射を強行しました。北朝鮮の現状は、今や日本のみならず、国際社会全体に対するこれまでにない重大かつ差し迫った脅威です。
 こうした中、北朝鮮は核・ミサイル開発を継続しており、引き続き、北朝鮮に対する圧力を強化し続けていくことが不可欠です。私が議長を務めた昨年12月の北朝鮮問題に関する国連安保理閣僚級会合では、国際社会は核武装した北朝鮮を決して受け入れず、全ての国連加盟国による安保理決議の完全な履行が不可欠であるとの一致したメッセージを発出しました。これに引き続き、安保理は、更に強化された制裁を含む新たな決議を全会一致で採択しました。このことは、国際社会の強い意思を示すものです。
 北朝鮮と一刻も早く対話すべきだという意見があります。しかし、圧力のない中での対話は、核武装を完了したと公言する北朝鮮を非核化に向けて動かすことはできません。我々は、一時的な緊張緩和を得るために、北朝鮮の核保有を容認するような対話を決して行うことはありません。
 北朝鮮を非核化に向けて動かすためには、核・ミサイル開発をこのまま続けても、北朝鮮の現体制に明るい未来はあり得ないということを知らしめる必要があります。だからこそ我々は、経済制裁を通じて圧力をかけ続けるために国際社会が一致して努力できるよう、米韓と緊密に協力し、中国やロシアとも連携を強めてまいりました。
 日本は、これからも国際社会の団結を維持する努力を最大限に続けてまいります。
 また、拉致問題は安倍内閣の最重要課題です。北朝鮮に対してストックホルム合意の履行を求め、北朝鮮に対する国際社会の圧力を梃子としつつ、北朝鮮に拉致問題の早期解決に向けた決断を迫ることが不可欠です。

 北朝鮮の問題を始め、国際秩序を揺るがす様々な外交課題に直面する中、日本としては、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の旗の下、特に以下の六つの重点分野を中心に取組を強化してまいります。

 一つ目として、北朝鮮問題を含め、日本の平和と安全を確保していく上で、日米同盟の強化及び同盟国・友好国のネットワーク化の推進が最も重要な課題であることは、言うまでもありません。
 私は、就任間もなく米国を訪問し、日米「2+2」で日米同盟の抑止力と対処力を一層強化することで一致しました。昨年11月のトランプ大統領の訪日では、地域と国際社会の平和と繁栄を主導する日米同盟の揺るぎない絆を世界に示すことができました。外相間でも緊密に連携し、日米同盟の更なる強化を図っていきます。また、普天間飛行場の一日も早い辺野古移設を含め、地元の負担軽減に全力で取り組むとともに、英語で教える小学校の開設など、米軍施設の資源も活用した沖縄の一層の成長につながる国際化支援を一層進めます。
 経済面では、日米経済対話を通じて日米経済関係を深化させるとともに、日米で、アジア太平洋地域に広がる貿易・投資の高い基準作りを主導し、公正で、実効性ある経済秩序を創り上げる努力を重ね、地域ひいては世界の経済成長を力強く主導します。
 また、日米韓、日米豪、日米印、日豪印、日米豪印といった戦略的利益を共有する各国との枠組み、ASEANを含めたアジア太平洋の地域協力の枠組み、英・仏等欧州主要国との戦略対話等、同盟国・友好国のネットワーク化を推進します。

 二つ目として、近隣諸国との協力関係の強化もしっかり進めてまいります。
 まず、中国との安定的な関係構築は極めて重要です。日中関係は日中双方にとり、最も重要な二国間関係の一つです。同時に、世界第二、第三の経済大国である日中は、北朝鮮問題を始めとする地域及び国際社会の諸課題に、肩を並べて共に取り組んでいく責務を共有しています。日中平和友好条約締結40周年に当たる本年は、日中両国が共に国民レベルの交流を深め、信頼関係を強化する好機です。日本は「戦略的互恵関係」の考えの下、大局的観点から、二国間の様々な問題について議論しつつも、首脳往来の実現、国民交流の促進、経済関係の強化を進める考えです。中国側にも関係改善に向けた着実かつ建設的な努力を促してまいります。
 こうした観点から、東シナ海における一方的な現状変更の試みは、断じて認められません。引き続き、冷静かつ毅然に対応するとともに、東シナ海を「平和・協力・友好の海」とするべく日中間で議論を進めてまいります。

 北朝鮮の脅威がかつてなく強まる中、日韓両国が緊密に連携・協力して対処する必要がますます高まっています。日韓パートナーシップ宣言20周年の本年、両国が困難な問題に適切に当たるとともに、長年にわたって両国の関係者が築いてきた信頼・友好関係を強化し、未来志向の日韓関係を築いていくことが重要です。
 日韓合意は、慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的」な解決を確認した両国間の約束です。これを守ることは国際的かつ普遍的な原則です。日本側は日韓合意で約束したことは全て誠実に実行しており、韓国側も責任を持って合意を着実に実施するよう、引き続き強く求めてまいります。また、日本固有の領土である竹島については、日本の主張をしっかり伝え、粘り強く対応します。

 ロシアとは、最大の懸案である北方領土問題を解決するため、首脳レベルに加え、外相レベルでも緊密に対話を積み重ねることが重要です。首脳間の合意を踏まえつつ、北方四島における共同経済活動の実現に向けた取組を進めるとともに、元島民の方々のための人道的措置等も実施します。引き続き、北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、ロシアとの交渉に粘り強く取り組みます。

 ASEANとは、本年、日本で開催される日メコン首脳会議の機会等を活用しつつ、その連結性強化に一層取り組みます。また、太平洋島嶼国とは、本年5月に福島で開催する第8回太平洋・島サミットなどの対話の場を活用してパートナーシップを強化します。

 三つ目として、日本は、自由貿易の旗振り役として、より一層積極的な役割を果たしていきます。
 戦後、日本は、自由貿易体制の最大の受益国として現在の繁栄を実現してきました。しかし、近年、新興国の存在が増す一方、グローバル化による「負」の側面である格差の問題や難民問題などに直面する中で、これまで自由貿易を主導してきた国々において、保護主義や内向きの傾向が顕著となっています。しかし、自由で開かれた国際経済体制こそ、日本を始めとする国際社会の繁栄を約束するものであるとの日本の確信はいささかも揺らぎません。グローバル化に伴い生じている諸問題に連携して対処しつつ、日本は、自由貿易の旗手として、引き続き指導力を発揮し、経済外交を推進してまいります。
 先般のTPPに関する大筋合意及び日EU・EPA交渉の妥結は、その大きな成果です。引き続き、これらの協定の早期の署名・発効のため最大限の努力を傾注します。これに加え、質の高い東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を始めとする様々な経済連携協定等の交渉を推進するとともに、WTOを中心とした多角的貿易体制の維持・強化にも取り組んでまいります。
 また、官民が連携して日本企業の海外展開を支援しながら、日本経済の成長を後押ししていきます。英国のEU離脱については、欧州でビジネスを展開する日本企業への影響を最小限にすべく、引き続き、透明性及び予見可能性の確保を英国及びEUに求めます。さらに、エネルギー・資源外交、戦略的なビザの緩和を含むインバウンド観光の促進に尽力します。
 2019年、日本はG20サミットを主催します。本年12月からG20議長国として世界経済におけるリーダーシップを発揮すべく、政府一丸となって準備を進めてまいります。

 四つ目として、地球規模課題の解決への一層積極的な貢献をしていきます。
 国連創設から70年以上が経過し、加盟国は創設時の51か国から193か国に増加しました。世界を取り巻く政治・経済状況も大きく変化する中で、安保理は、もはや21世紀の現実を反映しているとは言えません。安保理を改革していくことは日本だけでなく、国際社会の喫緊の課題です。
 昨年まで二年間、日本は安保理理事国として、北朝鮮問題を始め、国際的な議論を主導してきました。国際社会がますます増大する諸課題に対処できるよう、引き続き、日本の常任理事国入りを含む安保理改革の実現に取り組みます。
 国際社会における日本のプレゼンスを向上させるためには、そこで働く日本人を増やしていくことも重要です。国際機関における日本人職員の増員・昇進にも積極的に取り組みます。

 唯一の戦争被爆国である日本にとって、核軍縮は重要な問題です。さらに、北朝鮮という差し迫った核の脅威にさらされている日本にとり、国際社会の平和と日本の安全をいかに守っていくかという観点からも、この問題は極めて重要です。「核兵器のない世界」の実現に向け、賢人会議の開催や核兵器不拡散条約(NPT)の維持・強化を通じ、核兵器国と非核兵器国といった立場の異なる国々の橋渡しを行い、核軍縮・不拡散の現実的かつ実践的な取組を主導します。

 世界の平和と安定のためには、開発問題にも取り組まなければなりません。日本としては、開発協力大綱の下、国際社会の平和と安定及び繁栄と、それを通じた日本の国益確保に官民一体で取り組むべく、積極的かつ戦略的にODAを活用します。持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、国内外での取組を一層推進します。

 地球規模課題の中で、気候変動問題は最も重要な課題の一つです。私は昨年12月、気候変動サミットに出席し、この問題に更に積極的に取り組んでいく姿勢を示しました。パリ協定のルール作りへの貢献や協定の着実な実施を始め、気候変動の影響にしっかり立ち向かい、かけがえのない、地球の未来を確保すべく努力していきます。

 テロの問題も忘れてはなりません。イラク、シリアにおけるISILの支配地域が大幅に縮小したものの、外国人テロ戦闘員が出身国や第三国へ帰還・移転したことにより、テロ及び暴力的過激主義の脅威もアジアも含めて世界中に拡散しています。外務大臣の下に設置された国際テロ情報収集ユニットを通じた情報収集の更なる強化に努め、関係各国とテロ対策に関する協力を強化し、穏健化の促進等に取り組みます。これと並行して、国際協力事業関係者の安全対策を強化するとともに、日本企業や日本人旅行者を含め、在外邦人の安全確保に万全を期してまいります。

 日本としては、こうした様々な地球規模課題の解決に積極的に貢献すべく、リーダーシップを発揮してまいります。

 五つ目として、私は、対中東政策を抜本的に強化していく考えです。
 歴史的経緯に起因するアラブ地域における様々な対立、イスラエルとパレスチナの和平問題、そして原油や天然ガスといったエネルギー資源がもたらす問題が複雑に絡み合い、そこに暴力的過激主義が加わったことにより、中東諸国はそれぞれ大きな問題を抱えることになりました。
 中東の平和と安定は、日本を含む世界の平和や経済の繁栄に直接関わってきます。それ故、私は、日本として、中東諸国との経済関係を強化するにとどまらず、この地域への政治的関与も強化していく考えです。日本は、宗教・宗派や民族的な観点から中立であり、中東地域になんら負の歴史的足跡を残したことはありません。また、中東に影響力のある米国と強固な同盟関係にあります。こうした強みを持つ日本だからこそ果たせる役割があります。
 私は、昨年9月の日アラブ政治対話において、日本の中東への関わり方を示す「河野四箇条」を発表しました。すなわち、「知的・人的貢献」、「人への投資」、「息の長い取組」、「政治的取組の強化」の「四箇条」です。私は、この方針の下、経済面のみならず、中東への政治的関与を強化し、その平和と安定に向け一層の役割を果たしていきます。

 そして、六つ目の重点分野として、「自由で開かれたインド太平洋戦略」をしっかり推進してまいります。
 法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序は、国際社会の安定と繁栄の礎です。特に、アジア太平洋からインド洋を経て中東・アフリカに至るインド太平洋地域は、世界人口の半数以上を擁する世界の活力の中核です。インド太平洋地域の自由で開かれた海洋秩序を「国際公共財」として維持・強化することは、この地域のいずれの国にも分け隔てなく安定と繁栄をもたらすはずです。
 私自身も、多くの機会に、関係国の外相に直接この戦略を説明し、賛同を得ました。この戦略を具体的に推進するため、第一に、航行の自由、法の支配等の普及・定着、第二に、国際スタンダードにのっとった質の高いインフラ整備などによる連結性の向上等を通じた経済的繁栄の追求、第三に、海上法執行能力の構築支援等による平和と安定の確保、この三つを柱として進めていきます。

 以上の六つの重点分野において、着実な成果を上げていくためには、外交活動を支える足腰を強固なものとし、持続力と瞬発力のある外務省を作っていかなければなりません。このような観点から、総合的な外交力の強化に取り組みます。
 そのような体制強化の下、日本の政策や取組、多様な魅力を戦略的に対外発信するとともに、親日派・知日派の育成を強力に推進していきたいと考えます。

 世界の中で日本の影響力を増進していくためには、国際機関で活躍する日本人や海外に展開する日本企業、あるいは多様な魅力を持つ日本文化等、日本の全ての力を集結していくことがますます重要になっています。さらに、世界各地の日系人社会との連携も重要です。こうした認識の下、私は、日本の国益や平和をしっかり守りながら、世界の平和と安定に貢献していく考えです。

 議員各位そして国民の皆様の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。

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