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政策

第196回国会における茂木内閣府特命担当大臣(経済財政政策)の経済演説

平成30年1月22日

第196回国会における茂木内閣府特命担当大臣(経済財政政策)の経済演説

一.はじめに

経済財政政策担当大臣として、我が国経済の課題と政策運営の基本的考え方について所信を申し述べます。

二.経済財政運営の基本的考え方

日本経済は、五年に亘るアベノミクスの推進により、名目GDPは過去最大の五百四十九兆円に拡大し、実質成長率は7四半期連続のプラス成長、企業収益も過去最高の七十五兆円を記録しています。
また、国民生活に最も密接に関わる雇用・所得についても、直近の有効求人倍率は一・五六倍と一九七〇年代前半以来四十年ぶりの高水準となり、賃金についても、中小企業を含め、二パーセント程度の高い賃上げが四年連続で実現するなど、雇用・所得環境は改善し、経済の好循環が実現しつつあります。
本日閣議決定した政府経済見通しでは、来年度の日本経済について、雇用・所得環境の改善が続く中で、民需を中心とした景気回復が見込まれ、経済成長率は実質で一・八パーセント程度、名目で二・五パーセント程度になると見込んでいます。
こうした中、需給ギャップは縮小し、足もとではプラスになっています。今、日本経済の最大の課題は、少子高齢化という壁を乗り越え、サプライサイドの改革を通じて潜在成長率を引き上げることです。
このため、一人ひとりの人材の質を高める「人づくり革命」と、成長戦略の核となる「生産性革命」に最優先で取り組みます。このため、昨年十二月に閣議決定した新しい経済政策パッケージを着実に実施してまいります。

三.人づくり革命

まず、「人生百年時代」を見据え、「人づくり革命」を断行してまいります。
「人づくり革命」では、第一に、幼児教育無償化を一気に加速します。三歳から五歳までの全ての子供たちの幼稚園、保育所、認定こども園の費用を無償化します。〇歳から二歳児については、待機児童解消の取組と併せて、住民税非課税世帯を対象として無償化を進めます。
第二に、最優先の課題である待機児童問題の解消に向けて、「子育て安心プラン」を前倒しし、二○二○年度末までに三十二万人分の受け皿整備を進めるとともに、保育士の更なる処遇改善に取り組みます。
第三に、真に支援が必要な、所得が低い家庭の子供たちには、大学や専修学校などの高等教育無償化を実現します。住民税非課税世帯の子供たちに対しては、国立大学の場合はその授業料を免除し、私立大学の場合は私立大学の平均授業料の水準を勘案した一定額を加算した額までの対応を図ります。給付型奨学金を抜本的に拡充し、学生生活を送るのに必要な生活費を賄えるような措置も講じます。住民税非課税世帯に準ずる世帯の子供たちについても、支援の崖が生じないよう、これに準じた支援を段階的に行います。
第四に、政府全体として安定的な財源を確保しつつ、家庭の経済状況にかかわらず、幅広く教育を受けられるようにする観点から、年収五百九十万円未満の世帯を対象とした私立高校の授業料の実質無償化を実現します。
第五に、介護分野で大きな課題となっている人材確保に向け、介護職員の更なる処遇改善を進めます。
こうした二兆円規模の政策を推進し、子育て世代に大胆に政策資源を投入することで、我が国の社会保障制度を全世代型へと大きく転換してまいります。

四.生産性革命

もう一つ、今後三年間を「生産性革命・集中投資期間」と位置付け、「生産性革命」を進めてまいります。二○二○年に向けて、過去最高の企業収益を、更なる賃上げや設備投資につなげていきます。
このため、三パーセント以上の賃上げや投資に積極的な企業には、法人税負担を二十五パーセントまで引き下げます。さらに、革新的な技術により生産性向上に挑戦する企業には、思い切って、二十パーセントまで引き下げます。他方、賃上げ・投資に消極的な企業には、投資家に対する説明責任を課すことと併せ、果断な経営判断を促す税制措置も講じます。
また、厳しい経営環境の下でも、積極的に投資にチャレンジする、中小企業・小規模事業者には、「ものづくり・商業・サービス補助金」などの支援策と併せ、自治体の自主性に配慮しつつ、固定資産税が三年間ゼロとなる画期的制度を創設します。
加えて、AI、ロボット、IoTなど「第四次産業革命」の社会実装による「Society 5.0」の実現、技術革新を踏まえた電波帯域の有効利用などを進めるとともに、革新的なアイデアをビジネスにつなげる規制の「サンドボックス」の仕組みについて今国会に法案を提出します。

五.経済連携の推進

昨年十一月に、TPP11が大筋合意に至りました。世界的に保護主義が台頭する中で、自由で公正な二十一世紀型の新しいルールを、どこよりも早く作る意味合いは極めて大きく、今回の大筋合意は、今後の日本の成長戦略にとっても大きな意味があるものと考えております。引き続き、関係国と協力し、速やかに署名し、早期発効を実現できるように尽力してまいります。
また、昨年十二月に、日EU・EPAについても交渉妥結いたしました。TPP、日EU・EPA交渉の進展も踏まえ、昨年十一月に、「総合的なTPP等関連政策大綱」を決定しています。この政策大綱には、地方の中堅・中小企業の海外展開支援、国内産業の競争力強化、そして農林水産業の強化等、TPP及び日EU・EPAを真に我が国の経済成長に直結させるために必要な政策を盛り込みました。今後、この政策大綱に基づき、農林水産業の強化策など、万全の対策を講じてまいります。

六.財政健全化の推進

経済再生なくして財政健全化なし。この基本方針の下、プライマリーバランスの黒字化を目指すという目標は、しっかりと堅持し、同時に債務残高対GDP比の安定的な引下げを目指します。この目標の達成に向け、これまでの経済・財政一体改革の取組を経済財政諮問会議において十分精査した上で、本年の「経済財政運営と改革の基本方針」、いわゆる「骨太方針」において、プライマリーバランスの黒字化の達成時期及びその裏付けとなる具体的な計画を改めてお示しします。
「経済・財政再生計画」における集中改革期間の最終年度である二○一八年度においても、歳出改革を着実に推進してまいります。経済・財政や暮らしに係る情報や地域比較データの「見える化」を徹底するとともに、優良事例の全国展開に取り組みます。社会保障制度の持続可能性の確保と財政健全化を同時に達成する観点から、引き続き、社会保障と税の一体改革に取り組みます。

七.むすび

最後に、日本経済再生に向けた「三つの変化」への対応について申し上げます。
一つは、テクノロジーの発展。第四次産業革命や「Society 5.0」の時代に、日本として、世界に先駆けた成長戦略を大胆に実行していくこと。
二つ目は、少子高齢化の進展、これからの人生百年時代。個々人が人生を「再設計」でき、誰でもいくつになっても活躍できる新しい国の仕組みを作っていくこと。
三つ目は、経済・社会のグローバル化。これに対応して、TPPや日EU・EPAなど、二十一世紀型の新しいルール作りを日本が主導すること。
こうした取組が、日本経済再生のカギを握ると確信しています。国民の皆様、議員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。