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政策

第193回国会における二階俊博幹事長代表質問

平成29年1月23日

第193回国会における二階俊博幹事長代表質問

私は、自由民主党・無所属の会を代表し、安倍内閣総理大臣の施政方針演説に対し質問いたします。

昨年12月22日に新潟県糸魚川市で発生した大火災は、最大瞬間風速27.2mの暴風にあおられ、市の中心市街地から北側にかけて、約4万平方メートルを焼きつくしました。被災された糸魚川市の方々に改めてお見舞いを申し上げます。一日も早い生活再建に、政府与党はできることの全てを行ってまいる決意です。

安倍総理は、早速26日に糸魚川市長と面会され、現地の要望をつぶさにお聞きになるとともに、28日に派遣した政府調査団の報告を受けられ、通常の火災ではなく、これを「風害」として検討するよう指示されました。

その結果、今回の事案を被災者生活再建支援法の適用要件である自然災害と位置付け、新潟県が同法を適用できるようになりました。また、総理は1月11日、海外出張の前日に現地にお入りになり、「復興まちづくり推進協議会」を設置し、現地の要望に応えて副市長と復興担当の参事を政府から派遣することをお決めになりました。再建に向けた確かな足掛かりとして、多くの感謝の声が現地から寄せられていることは、ご承知の通りであります。

私たち自由民主党も年末年始を返上し、大火発生から2週間で、3回の対策会議と現地視察を行いました。未曾有の大火災に見舞われ、生活のすべてを失われた住民の皆さんの苦しみは、察するにあまりあります。応急住宅への入居はメドが付き、当座の生活資金、中小企業再建などのご相談は、それぞれのご事情に合わせて、国、県、市が懸命に対応しています。がれき処理は個人負担がゼロとなりましたが、なおお困りのことがあれば、即座に検討し、実行していきたいと考えています。

日本の災害対策の歴史を振り返りますと、関東大震災では「火災」、阪神淡路大震災では「地震」、東日本大震災では「津波」の対策が、それぞれ強化されてきました。しかし、今回の大火災で現実を目の当たりにし、再び同様な火災が起きても延焼を二度と起こさせないため「災害に強い街づくり」に取り組まなければならないと痛感いたしました。

今は、どこで何が起きるかわからない時代です。私たちは、既存の制度をフル活用して対策を行い、なお現行制度で足らざるところは、制度改正等でしっかりと対応すべきであります。

国民の安心安全を守り、強くしなやかな国づくりに力を入れていくことは、安倍政権の最重要課題だと認識しています。

例えば、南海トラフの巨大地震が起きた場合、高知県黒潮町では「34m」の津波が町を飲みこみ、和歌山県太地町では、何も対策を取らなかった場合、住民の74%が津波で死亡するという厳しい想定が発表されています。政府は、こうした想定を伝えるだけではいかにも配慮不足と言わざるを得ません。防災先進国として何か具体的な対策や、手を差し伸べることが必要であります。こうした自然災害に対抗する国土強靭化の取り組みと、総理ご自身のご決意をお伺いします。あわせて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの際、万が一のことが起きた場合、オリンピアン・パラリンピアンを始め、観戦に来られる多くの日本人や外国人観光客の誰一人にも被害を出させないことが開催国日本の責任です。この点についても総理のお考えを、お伺いします。

今年は東日本大震災から7年目、復興創生期間2年目を迎えます。復興計画に則って、住まいやまちの復興、産業の再生が徐々に進んでいます。2016年度末には、高台移転は69%、災害公営住宅は83%の事業が完了する見込みです。しかしいまだ避難されている方々は13万人余りいることも事実です。今後福島の帰還困難区域以外については徐々に避難指示が解除され、にぎわいを取り戻すための取り組みが進んでまいります。帰還困難区域についても、復興・再生に向けた法案が今国会に提出されることになっています。

私は、復興に立ち向かうための「政治の決意」が人々を元気づけ、明日への挑戦、さあやるぞというやる気を引きおこすと信じています。東北の復興に対する総理のご決意をお伺いします。

先月22日、20年越しの課題であった沖縄県北部の4000ヘクタールの米軍訓練場が返還されました。安倍総理がこの難題に果敢にチャレンジし解決されたことは、基地負担軽減に向けた大きな進展であり、日米両国の長年の悲願をかなえたすばらしい出来事であります。

一方で、給油訓練中の不具合でオスプレイが不時着した事故もありましたが、沖縄県民の気持ちを逆なでするような事態は到底認められません。私は本件に関し、特に米国公使に二度とこのようなことがないよう直接申し入れを行ったところでありますが、政府においても、再発防止を米国に強く求め続けなければなりません。沖縄の負担軽減と抑止力維持に向けた総理のご決意を伺います。

昨年11月、高知県黒潮町で地震津波の脅威と防災の知見を過去から学び、将来の防災リーダーを育成する「世界津波の日高校生サミット」が開催されました。世界初の取り組みであり、安倍総理からはビデオメッセージも頂きましたが、日本を含む世界30か国360名の高校生が、津波防災に関する分科会、避難訓練などを主体的に行い、「黒潮宣言」という形で取りまとめられました。

私は先日、太平洋・島サミットの閣僚会合で来日されたナウルの大統領はじめ、パプアニューギニアやマーシャルの外相など8カ国の首脳にお会いしましたが、気候変動と津波防災に、引き続き、日本との連携を深めていきたいとの申し入れがあったほか、高校生サミットに参加したそれぞれの国の高校生たちが、現在、すでに「若き津波大使」として、津波防災に熱心に取り組んでいるとの話も伺いました。

今年はこの「世界津波の日高校生サミット」を、多くの離島を抱える沖縄県で開催したいと考えております。総理は一昨年、3月以降のすべてのバイ会談で、世界津波の日の創設を働きかけて頂き、国連総会において、「稲むらの火」である11月5日を、「世界津波の日」とする決議案が全会一致で採択されたわけであります。安倍総理のご理解に大変感謝申し上げるとともに、本年沖縄で開催することは、県にとっても大変良い機会になると考えておりますが、安倍総理のお考えをお聞かせ願います。

日本の国土は狭く山がちであり、国土の約7割を中山間地が占めています。中山間地は、水源涵養機能のほか、洪水や土壌の浸食・崩壊を未然に防止するなどの多面的機能があり、下流域の安心安全を守っています。

農政新時代をめざす安倍政権の方向性は大賛成であります。海外競争力を高め、農産品の輸出で外貨を稼ぎ、日本ブランドを向上させることは、これからの農政の柱の一つとして、どんどんやっていただきたいと思いますが、みんながみんな、そうした流れに乗れるかどうかはわかりません。

中山間地で農業に携わる方々は、総農家数の約4割とも言われます。私の地元和歌山県も中山間地が多く、農業者の将来への不安は尽きません。担い手の減少で、耕作放棄地が拡がれば、中山間地の多面的機能も低下し、下流域の安心安全も守れません。中山間地における農業の振興・発展は日本全体の課題であり、平地に比べて厳しい環境に、どう対応するのか、総理のお考えを伺います。

経済的に困難な状況にあっても、それが理由で意欲のある学生の進学や修学の機会が奪われてはいけません。学生のやる気を後押しし、能力を最大限引きだし社会に生かすには、本人の努力を支援する仕組みが必要です。

党内でも議論を重ね、本年4月から給付型奨学金制度の一部、これは私立大学の自宅以外から通う学生と社会的擁護を必要とする学生が対象ですが、先行して始まることになりました。来年度からは、一定の成績を基準とし、国公私立の自宅生も含めて支給され、無利子奨学金の貸与人員も増員することになります。

児童養護施設の施設長や福島で被災した子供たちが通う高校の教師からも、これまで大学進学をあきらめたり、躊躇していた生徒たちにとって、進学の後押しになり大変有難いとの声が寄せられています。

資源の無いわが国において、教育への投資は何よりも重要であり、国の将来を見据えた長期戦略と言えます。給付型奨学金制度の意義と、国家戦略としての教育投資の在り方について、安倍総理にお伺いします。

第2次安倍政権は発足以来4年が経過し、税収も所得も格段に増え、経済環境に明るさを取り戻していることは、客観的な統計からみても明らかであります。今後とも腰を据えて経済最優先で取り組んでいくことは言うまでもありません。安倍総理に、経済最優先に当たられる決意をお伺いします。

経済成長の鍵はイノベーションにあります。昨年11月にパリ協定が発効しましたが、「脱炭素化」は世界的な潮流であり、優れた環境・エネルギー技術を持つわが国は、この分野で世界をリードできる存在です。将来の市場規模や潜在力が巨大と予測される中、成長戦略として、地球温暖化対策に積極的に取り組むことについて、総理のお考えをお伺いします。

経済のパイを拡大すると同時に、持続可能な社会保障制度の構築も着実に進めていかねばなりません。社会保障制度は世代を超えた助けあいの精神が基本であります。従って世代間対立にならない改革が必要です。この精神は、日本人の気質と言いますか、勤勉でまじめな国民性とも合致した、いわば日本人の生き様とも言えます。

例えば、「介護離職ゼロ」の取組みは、介護サービスの充実によって、高齢者だけでなく、若い世代の生活の向上にもつながります。

わが国の社会保障制度は世界でも類を見ないほど恵まれており、「世界に冠たる社会保障制度」を次世代に引き継ぐため、国民の社会保障制度に対するご理解を十分いただくことが、安倍政権の重要な役割だと考えます。この点について、総理のお考えを伺います。また、年金、医療、介護の改革・充実を、国民の納得感をもってどのように進めていくのか、塩崎厚生労働大臣にお伺いします。

地方創生は本格的な事業展開の段階に入り、オンリーワンの色をどれだけ出せるかが問われており、ボールは市町村の側にあります。

私の地元、和歌山県田辺市上秋津地区では、地域の小学校移転を契機として、地域住民が立ち上がり、その旧校舎を活用して、都市と農村の交流を楽しむための体験型グリーンツーリズム施設「秋津野ガルテン」が、8年前に設立されました。地域の野菜や果物をふんだんに使った農家レストランをはじめ、宿泊・農作業体験、地元の果物を使ったお菓子作り、ミカンの樹のオーナー制度等、上秋津の魅力が多く詰め込まれています。

「自分たちでできることは行政ではなく、自分たちでやる」という活動が各地で始まっています。私たちはこうした動きを大切にし、後押ししたいと思います。

誰一人見捨てない、誰一人忘れない。 「ノーワン・レフト・ビハインド」という声が地方からも聞こえています。多世代に渡る「ぬくもりのある支援」が必要です。地域における「声なき声」に耳を傾けつつ、必要な法制度については検討を進めてまいりたいと考えています。

私はほんの小さな取組みですが、自民党本部前で各地の物産を集めた販売会を時々行っています。東京のど真ん中で、ふるさとをアピールする機会を作ることで独自のアイディアやノウハウが蓄積されます。地方創生の一助になることを信じ、今後とも続けてまいりたいと思います。

昨年10月から今日までの間、沖縄県、秋田県、滋賀県、徳島県、群馬県川場村、和歌山県、岩手県の7県が自ら手を挙げ、アイディアを凝らし、大変なにぎわいを見せてくれました。2月16日には総理のお地元山口県の物産展も予定されていますが、この際、地方創生に懸ける安倍総理の意気込みをお伺いします。

天皇陛下のご退位等の問題は、国家の基本にかかわる重要な課題であり、決して政局にしてはなりません。与野党は、静かな環境の中で節度ある真摯な議論を行い、両院正副議長のもとでしかるべく、国民の総意としての立法府の考えを取りまとめていくことが求められています。

天皇の地位は、日本国民の総意に基づくものであり、国民の代表である我々国会議員が、陛下のお気持ちに沿いながら、多くの国民のご理解を得て、進めていかなければなりません。政府におかれては、議長のもとで取りまとめられた立法府の考えを、最大限尊重することは当然のことでありますが、安倍総理の基本的認識をお伺いします。

現行憲法制定から70年が経過し、時代に合わせて憲法を変えていくことが求められています。衆参の憲法審査会で議論を深めていくことは、各党の共通認識であります。

憲法の三大原則「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」を堅持し、21世紀における新たな国家像を示すものとして、どの部分を変えるのかという具体的な項目の論議を行い、広く国民の皆様に知っていただくことが、私たちの責務です。次の70年を見据えた憲法の在り方、また、国会での憲法論議について、安倍総理のお考えをお伺います。

一億総活躍社会を目指す安倍政権にとって、すべての人に働きやすい職場づくりを進めていくことが、一層求められています。だらだらと働いていては生産性は上がりません。長時間労働を是正し、ワーク・ライフ・バランスをはかり、メリハリを利かせていくことが大切です。

一億総活躍社会は国土強靭化の観点からも、大いに推進してまいりたいと考えています。レジリエンスとは、もともと精神医学の言葉で、何事にもめげない、耐え抜き、回復するという意味であり、国土強靭化を国民運動として、自民党は、5年前からそのような政治思想を持って進めてまいりました。

日本が主導した第3回国際女性会議ワウが、先月東京で開催されましたが、強くしなやかな国づくりには、女性も男性も、お年寄りも若い人も、障害のある方も、すべての国民の皆さんが、ハード面においてもソフト面においても、一緒になって参加して頂くことが大切です。政府はこの点を忘れずに、国民全員参加で進めて頂きたいと思います。一億総活躍社会と働き方改革、また社会全体のマインド醸成について、加藤担当大臣にお伺いします。

安倍政権は日本外交の「格」と「評価」をあげています。G7やG20においても日本のプレゼンスが高まっており、礎となっているわが国の政治の安定性が、各国からこれほどまでに頼りにされている時代はありません。

総理は先週、フィリピン、オーストラリア、インドネシア、ベトナムの4カ国を訪問され、各国との連携を強化してまいりました。世界を俯瞰する外交は5年目に入り、成功例として、世界の注目を集め続けています。今回の外国訪問の成果を総理に伺います。

世界の首脳に先駆け、大統領選直後のトランプ氏に、ニューヨークでお会いになったことは、お二人の信頼関係を構築するうえで、大きな一歩になったことは間違いありません。わが党も、今後多くの議員を派遣し、様々なレベルでのチャンネルを広げ、日米関係の深化に力を尽くしてまいります。総理は近いうちに、トランプ大統領と首脳会談に望まれますが、日米関係を希望の同盟として、これまで以上に発展させるご決意を伺います。

外交は両国がウィンウィンの関係でないとうまくいきません。その点で、韓国は大変難しい国だというのが率直な感想です。プサン総領事館前の市民団体による慰安婦像の設置は、ウィーン条約に照らして問題があり、看過した韓国政府の国際的な評価を低下させています。一昨年の日韓合意はしっかりと守ってもらいたいと強く申し上げておきたいと思います。

しかしこうした時期だからこそ、私たちの方から交流を絶やすことはしてはならないのであります。政府間の交渉は当然のこと、党は人的交流を通じ、相互理解に努めてまいります。

日中関係は、今年、国交正常化45周年、来年は平和友好条約締結40周年の節目の年であります。様々な分野で相互理解を進める良いチャンスだと考えており、党としても、防災、環境、観光、青少年交流など、より一層後押ししてまいりたいと思います。

日露関係は、先般のプーチン大統領との首脳会談を踏まえ、今後とも粘り強く交渉していくことが必要です。日露関係について、総理のご決意を改めて承りたいと思います。

外交は相手側と波長を合わせることが何よりも重要です。私は、「木を植え、種をまき、井戸を掘ること」を旨とする外交に、いささか努力を続けてまいりました。幹と根のしっかりした大木に育つには長い時間が必要です。安倍総理の外交はまさにそうした観点から行われているものであり、今後とも、短期的な視野に陥ることなく、長い目で見て両国に良い影響が及ぶよう、努めて頂きたいと思います。

私たち自由民主党は、今や国会において多数を占め、国民の皆様からの期待も多く頂戴しておりますが、いまこそ初心を忘れることなく、仕事にまい進していかねばなりません。先の国会で成立した「部落差別解消推進法」は長年の悲願であり、ここに改めてご賛同いただいた議員の皆様方に深く感謝申し上げます。部落差別解消推進に懸ける総理の意気込みをお伺いいたします。

目の前に起きる社会の動向に敏感に反応し、世の中の動きをつぶさに把握し、スピード感を持って対処する。常に明日を見つめる洞察力を持ち、未来に向かって行動することは当然のことであります。

丁寧に幅広く意見を聞き、建設的な議論を行い、国民に分かりやすい「未来を拓く国会」にしていきたいと思います。

社会的に弱い立場の人を大切にするのが政治の使命であります。国際環境が混とんとする中、日本が政治を安定して前に進め、落ち着いた環境の中で仕事を進めていくことが求められています。

政治の使命を果たすため、ここにおられる議員各位のご協力を頂くことを切にお願いし、私の代表質問とさせていただきます。