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政策

溝手 党参議院議員会長代表質問

平成28年1月27日

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 自由民主党の溝手顕正です。私は自由民主党を代表して、安倍内閣総理大臣の施政方針演説をはじめとする政府四演説について、安倍総理に質問致します。

総理は施政方針で、「経済成長」、「地方創生」、「一億総活躍」、「より良い世界への挑戦」という4つの柱を述べられましたので、本日はその柱に沿って質問をさせて頂きたいと思います。

 はじめに、先日行われた大相撲初場所において、大関の琴奨菊関が、日本出身力士として10年振りの優勝を果たされたことに対し、心よりお祝いを申し上げます。横綱3人を倒しての見事な優勝は、国民に「やればできる」という勇気を与えてくれた快挙でありました。

また、同じ24日に行われた沖縄県の宜野湾市長選挙においても、自民党・公明党が推薦した佐喜真淳(さきまあつし)市長が再選されました。こちらも大きな勝利であり、心より祝意を表します。来月7日の京都市長選挙、4月の衆議院北海道5区補欠選挙、さらには7月の参議院選挙に向けて、大きな弾みとなる勝利であります。この勝利は、普天間の返還を必ず実現するという総理の信念が、沖縄の方々に支持された結果だと思います。総理には、普天間の返還が実現する日まで、引き続き信念を貫いて頂くことを、強くお願い申し上げます。

 では、質問に移ります。まず、経済成長のための政策から質問します。施政方針演説でも触れられていましたが、今年に入ってから世界経済の不透明感が増しています。原油価格がリーマンショック時を下回る水準まで下落し、それに伴い産油国のオイルマネーが世界のマーケットから引き揚げられ、株価が大幅に落ち込んでいます。また、中国をはじめとする新興国の経済に対する不安も根強くあります。

先日、イランへの制裁解除が発表されたことにより、原油安はさらに続くとの見方も出ています。デフレからの脱却を目指す我が国にとって難しい局面でありますが、原油輸入国である我が国にとっては、原油安にはもちろん大きなメリットもあります。メリットを生かしつつ、デメリットにうまく対応していくことが求められます。

このように、出だしから波乱含みの展開となっている今年の経済状況でありますが、日本経済および世界経済の現状と、我が国がとるべき道について、基本的なお考えを伺います。

世界の経済状況の中でも、中長期的に大きなインパクトを持っているのが中国経済です。GDPで我が国を抜き、世界第2位となった中国ですが、生産年齢人口の減少が始まり、「世界の工場」と呼ばれた製造業中心の成長からの転換が課題となっています。

昨年のGDP成長率が先日発表され、6.9%増と25年ぶりの低水準となりました。実態はさらに低いのではないかという見方もあります。少なくとも、これまでのような高度成長がいつまでも続くことはなく、このままソフトランディングできるのか懸念される状況です。

昨年は中国からの観光客の「爆買い」が大きなニュースになりましたが、中国経済が減速すると、観光に限らずあらゆる分野で中国経済とつながっている我が国も大きな影響を受けます。

中国の高度成長の終了と安定成長に対応した我が国の経済政策について、お考えを伺います。

次に、経済状況に関連して、消費税率引き上げについても伺います。総理は、来年4月の消費税率引き上げについて、「リーマンショックのような事態にならない限り実施する」と表明されています。

しかし、万が一の話ではありますが、中国経済が本格的に悪化した場合には、リーマンショック並の、あるいはそれを上回るようなインパクトをもたらす可能性もないとは言い切れません。こうした最悪の事態がもし起きた場合には、消費税引き上げを延期するという決断もあり得るのでしょうか。ご見解を伺います。

もちろんこれは最悪の想定ですので、そうならないに越したことはありません。こうした事態にならずに、予定通り消費税率引き上げが行われる場合には、食品と新聞に軽減税率が導入される方針となっています。これに関しては、約1兆円の財源が必要となりますが、政府は来年度末までに財源を確保するとしています。

当然ながら、軽減税率のために社会保障を削るというのでは本末転倒であり、総理もそれはしないとおっしゃっています。では、どのように1兆円の財源を見つけていくお考えでしょうか。軽減税率の導入と社会保障の財源確保について、お伺いします。

施政方針演説の2つ目の柱である、地方創生について質問致します。総理は演説の中で、TPPの誕生が日本の農業にとって大きなチャンスであるとおっしゃいました。昨年10月に妥結したTPPは、これから各国での締結作業に入ります。日米両国が締結しなければ発効しない仕組みになっていますが、米国議会での締結は簡単ではないと見られています。議会審議は11月の大統領選挙後になるとも言われますが、民主党・共和党の有力候補は、いずれもTPPには慎重姿勢であると伝えられています。

まさか、米国が手のひらを返すことはないと思いますが、土壇場で締結しないとか、締結の条件として新たな要求をしてくるなどということがあってはなりません。そうしたことはないと、総理に確認しておきたいと思いますが、いかがでしょうか。

TPPに関して、政府は昨年末、約14兆円の経済効果があり、農業への影響は軽微であるとの試算を出しています。これは、試算というよりも我々との約束であるととらえています。全国の農業者、中小零細企業をはじめ、全ての国民が安心できるよう、万全の対策を講じることをお約束いただきたいと思います。TPPに関する総合的な対策について、お考えを伺います。

地方創生に関して、地方の税収確保についても伺います。地方創生は本来、国からの補助金や交付金に頼るのではなく、それぞれの地方が自らの財源で行うことが理想です。そうでなければ、持続的な活動にはなりません。しかし、そのためには、地方自治体の安定財源の拡充が不可欠となります。

来年度税制改正大綱には、地方創生応援税制として、企業版ふるさと納税の創設が挙げられています。しかし、私が今回着目したのは、そこではありません。法人税の実効税率引下げと併せて行われる、法人事業税の外形標準課税の拡大です。これは、企業の収益に左右されない、地方税収の安定に大きな役割を果たすものであり、ひいては地方創生にも資するものであります。

今後とも、地方財源の安定化という目的を明確に意識しながら、骨太な税制改正を進めていくべきだと考えますが、今回の外形標準課税拡大の目的と効果について、お考えを伺います。

次に、施政方針演説の3本目の柱である、「一億総活躍」に向けた取り組みについて質問致します。総理は演説で、「介護離職ゼロ」、「希望出生率1.8」という二つの的を射抜くためにも、又その安定的な基盤の上に、「戦後最大のGDP600兆円」というもう一つの的を掲げ、新しい「三本の矢」を放つとおっしゃいました。

来年度予算案では、「希望出生率1.8」と「介護離職ゼロ」に向けた政策が重点課題になっています。これは、今まで継続的に取り組んできたGDP600兆円に向けた対策と比べると、他の2つはまだ十分ではないので、重点的に取り組むという趣旨だと受け止めております。

しかし、総理も施政方針で触れられたように、今年に入ってから世界経済の不透明感が増しています。特に、中国経済への不安などにより、今年に入ってから世界の株価が大幅に下落しております。

こうした状況の中、経済政策を着実に進めていかなければなりません。来年度予算案においても、GDP600兆円に向け正面から取り組むべきだと考えますが、いかがでしょうか。ご見解を伺います。

次に、「新・三本の矢」と「一億総活躍社会」という理念との関係について伺います。人口1億人を維持し、老若男女すべての国民が自己実現を図ることのできる社会が「一億総活躍社会」だと理解しておりますが、これと先程の「新・三本の矢」との関係はどのようになっているのでしょうか。

GDPが600兆円になり、希望出生率1.8が実現し、介護離職がゼロになった社会が「一億総活躍社会」なのかといえば、それだけではないはずであります。これらに加えて、「すべての人が活躍できる」という理念に照らせば、格差の解消や多様性の尊重といった観点も必要になると考えますが、この点にはどう取り組んでいくお考えでしょうか。ご見解をお聞かせ下さい。

次に、施政方針演説の最後の柱である、外交政策について伺います。まず昨年末、韓国との間で慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に」解決する合意がなされたことは、総理のご英断であったと高く評価致します。岸田外務大臣はじめ、関係者の皆様の粘り強いご努力の結果、こうした歴史的合意が実現したことは、我が国の外交史上、特筆すべき成果であります。

また、今回の施政方針演説で、韓国を「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」と表現したことは、今後の我が国の東アジア戦略を考える上での基本認識として重要であり、大いに賛同致します。今後は、今回の合意を双方で着実に実施しながら、さらなる関係強化を進めて頂きたいと思います。

こうした中で、北朝鮮が今月6日に実施した核実験は、世界の平和と安定のために大きな脅威であります。

二日後の8日、我々衆参両院も断固として、非難、抗議する旨の国会決議を行い、国内外に意思をしめしております。そして我が国は安保理非常任理事国として、米国などとともに国連安保理での制裁決議の採択に向けて働きかけを行っていますが、中国などが慎重姿勢を見せているとされています。

北朝鮮の核実験に関して、国連安保理での協議の見通しと、我が国の対応方針を伺います。

今月16日には、台湾で総統選挙が行われ、民進党の蔡英文氏が圧勝しました。初の女性総統が誕生するとともに、同時に行われた議会選挙でも、民進党が初の単独過半数を獲得しました。

中国への接近を強めていたこれまでの国民党政権に対して、民意がストップをかけた形となったわけです。蔡氏は、独立志向ではなく「現状維持」を掲げており、台湾と中国の関係を必要以上に緊張させる意図はないと考えられますが、中国側の対応など、先行きには不確定な部分もあります。台湾と中国との関係の変化は、尖閣諸島をめぐる情勢なども含め、我が国にも影響を与えます。

総理は、今回の台湾の政権交代が、我が国と台湾との関係にどのような影響を与えるとお考えでしょうか。また、この状況を踏まえて、今後どのように日中台の関係を築いていくべきとお考えでしょうか、伺います。

総理は先月インドを訪問され、インドの高速鉄道への我が国の新幹線システムの採用や、日印原子力協定の原則合意など、「日印新時代」を切り拓く大きな成果を挙げられました。

インドは、中国に次ぐ世界第2位、13億の人口を持ち、2014年は年率7.3%の経済成長をとげ、20歳未満の人口割合が40%と今後大きく発展が期待される国であります。また、民主主義という価値観を共有する大国であり、経済協力、安全保障、原子力などの分野で日印の関係強化を図っていくことは、我が国にとっても大きな意義を持つものと考えます。日印の今後の関係について、特に日本企業が進出の障害になっている道路等のインフラ整備について、どのような協力ができるか、お考えを伺います。

ここまでアジア外交について質問してきましたが、今年は、我が国が国連安保理の非常任理事国にもなり、またサミットの開催国にもなります。我が国にとって、これまで以上にグローバルな課題における責任とリーダーシップを求められる年となります。

その際、テロとの戦いや難民問題など、アジアに限られない世界的な問題についても、我が国の明確な姿勢を示していくことが求められます。総理の言葉でいう「世界の中心で輝く日本」として、こうしたグローバルな課題にどう取り組んでいくお考えか、ご見解を伺います。

最後に、憲法改正について申し上げます。今年7月の参議院議員選挙は、我が党の党是であり、総理の宿願でもある憲法改正に向けて、大きな意味を持つ選挙となります。冒頭に申し上げたように、我々自民党としては、今後の地方選挙、補欠選挙に引き続き、必ず勝利しなければなりません。

総理は、憲法改正の課題として、緊急事態条項の創設などを挙げられています。我々参議院自民党としては、憲法改正を行う際には、参議院のあり方をしっかりと議論し、二院制における参議院の役割を憲法上明確に位置付けるべきだと考えています。

具体的には、政権選択を行う院である衆議院に対し、多様な意見を反映する院である参議院は、様々な地方の意見や、様々な職種・業種の意見を国政に届ける役割を果たさなければなりません。したがって、選挙制度についても、都道府県から最低1人は議員を選出し、地域的な多様性を確保することを、憲法上に明記すべきだと考えます。

自由民主党としては、今後、参議院改革協議会を設置して、各会派を交えた議論を行い、参議院としての合意を形成してまいりたいと考えております。ご参集の皆様におかれても、党派を超えて、参議院のあり方について、そして将来についての議論に参加して頂きたい。このことを呼びかけまして、私の質問を終わります。