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政策

第189回国会における代表質問 溝手顕正 党参議院議員会長

溝手顕正 党参議院議員会長

 自由民主党の溝手顕正です。私は参議院自民党を代表して、安倍総理大臣の施政方針演説について、総理に質問致します。  総理は施政方針演説で「戦後以来の大改革」を掲げられました。経済再生と財政再建、社会保障改革の同時達成、農政改革やオープンな世界を見据えた改革、エネルギー市場改革、地方創生。政府・与党が取り組むこれらの改革は、少子高齢化やグローバル化など、先進国をはじめ多くの国が直面する課題への対応です。 ぜひ、東京オリンピック・パラリンピックの開催される2020年に向けて、震災からの復興と、戦後以来の大改革を成功させ、成熟国家としての歩みを進める我が国の姿を全世界に発信いたしましょう。このため、これらの諸改革に取り組む総理を、我々自民党としてもしっかりお支えしていく考えです。

1.総理の政治姿勢

(1)戦後70年という節目の年に当たっての想い
 さて、今年は戦後70年という節目の年です。先の大戦とその後の70年の経験を踏まえて、総理がどのような談話を出されるのか、各国が注目しています。

 最大の関心事は「謝罪の有無」であると報道等では伝えられますが、果たして本当にそうでしょうか。

 戦後70年間の歩みの中で、平和主義を貫いてきたことを、具体例を示しながら、国民に、世界中の人々に伝えることが重要です。我が国の戦争に対する姿勢は一貫しています。

 総理にはぜひ、先の大戦への反省を明確に示した上で、対米追従と揶揄されるような外交でもなく、アジアの中の日本として、戦争に向き合い、未来志向の談話を発表して頂きたいと思いますが、戦後70年を迎えるに当たっての総理の想いとはどのようなものか、伺います。

(2)衆議院選挙結果の総括
次に、衆議院総選挙後の最初の通常国会ですので、選挙の総括について伺いたいと思います。昨年12月14日の総選挙の結果、自民・公明の与党で326議席と、衆議院の3分の2を超える議席を頂きました。
これまで政府・与党が進めてきた、アベノミクスをはじめとする各分野の政策に対し、国民の皆様のご支持を頂いた結果だと考えます。野党の一部には、選挙に大義がないなどと民主主義を理解しない暴論もありましたが、国民の皆様は冷静な判断をされたのだと思います。
総理としては、この総選挙の結果についてどう総括されているか、伺います。

2.経済

(1)消費税引上げ延期の経済効果
 では、施政方針についての質問に移ります。まずは、世論調査でも常に最大の関心事項である、経済政策について伺います。
 昨日発表されたGDP速報では、消費税8%への引き上げ後、初のプラス成長となりました。昨年11月、消費税の10%への引き上げを延期するという総理の決断も、景気回復の追い風になることと思います。
しかし一方、今後の景気を左右する個人消費の伸びには、まだ力強さがみられません。10%への引上げ延期が、経済にどれほどのプラスの効果があるのか、また個人消費の今後の予測について、政府の分析をお聞かせ下さい。

(2)財政健全化
 アベノミクスを成功させるためにも、引き続きプライマリーバランスの黒字化目標達成に向けた歩みを着実に進めて頂きたいと考えます。その際には、単に目標実現に向けた財政指標の道筋を示すだけではなく、それを担保するための具体的な方策を提示することが極めて重要になります。
また、28年度予算編成に円滑につなげるためには、夏までのできるだけ早い段階でこうした計画を示しておくことも必要です。
総理は、新たな財政健全化計画についてどのようなものを策定しようとお考えでしょうか。また、その時期としてはいつ頃を想定されておられるでしょうか。財政健全化に向けた総理のご決意を伺います。

(3)農協改革
 次に農林水産業です。農林水産業は多くの地域において基幹産業となっています。まさに「農は国の本」という言葉のとおりです。地方経済の活性化のためには、農林水産業の強化が不可欠です。農地中間管理機構による農地集積、6次産業化、輸出促進策など、地域に合わせた施策を進める必要があります。
 農協改革については、先日、全中のあり方を見直す改革案がまとまりました。60年ぶりとなる大きな改革です。総理も施政方針で言われたように、強い農業を創り、農家の所得を増やすための改革ですから、その成果をしっかり出していくことが肝心です。
ぜひ総理自らのお言葉で、日本の農業をどのように改革していくのか、そして、その改革により農業・農村の未来をどのように切り開いていくのかについて、丁寧にご説明頂きたいと思います。

(4)TPP
 同じくTPPについても、関係者の納得が得られるよう、慎重に進めていく必要があります。我々は従来から重要5項目の関税を撤廃しないよう求めてきました。
現在、日米協議が進展していると報道されていますが、合意を急ぐあまり、わが国にとって不利な条件を安易に飲むことがあってはなりません。しっかりと国益を守って頂きたいと思います。総理のTPPに対する交渉姿勢を伺います。

(5)労働規制改革
 次に労働規制改革です。今国会には、昨年廃案となった労働者派遣法の改正案や、労働時間の規制改革などの法案が提出される予定です。労働規制の改革については、国民の間に誤解や不安も多くあるため、丁寧に説明して理解を求める必要があると考えます。特に、若い人の長時間労働や低賃金労働に対する防止策もセットで示し、理解を求めるべきだと考えますが、いかがでしょうか、伺います。

(6)世界の経済状況(欧州、中国、ロシアなど)
 さて、世界を見渡せば、経済の先行きは順風満帆とはいきません。特にヨーロッパでは、ギリシャで緊縮財政に反対する新政権が誕生したことが大きな波乱要因となっています。また、中国は、成長率の低下や不動産の値下がりなど、景気の減速傾向が見えています。ロシアは言うまでもなく、原油価格の低下で苦しい状況です。
このように、世界経済には懸念材料も多々ありますが、我が国としては、これらをいかに乗り越えて成長を続けていけるのか、これから正念場を迎えると言えましょう。先週トルコで開催されたG20では、日本経済はユーロ圏と並んで回復が「緩慢だ」と指摘されました。総理としては、世界の経済情勢と我が国の取るべき道をどうお考えか、伺います。

3.社会保障・医療

(1)消費税引上げ延期の影響
 次に、社会保障・医療について伺います。将来にわたって持続可能で、誰もが安心できる社会保障・医療の提供は、少子高齢社会を迎えた我が国にとって最大の政治課題といえます。
昨年の消費税引上げ延期は、先程も申し上げた通り、景気対策の観点から必要であったと考えます。しかし、引き上げ分は全て社会保障に使うという約束でしたので、延期によって社会保障改革に影響が出ることは避けられません。
社会保障改革への影響について、何が予定通り実施できて、何ができないのかを明確にし、国民の皆様の不安を取り除く必要があると考えます。政府の対応を伺います。

(2)安心できる年金制度の確立
 社会保障の中でも、特に年金制度に関しては、若い人を中心に将来への不安が払拭できていません。年金財政のさらなる健全化と透明化が必要と考えます。
政府は、今年4月から「マクロ経済スライド」を初めて適用します。反発もある中で、年金の将来を考えた勇気ある決断であり、高く評価したいと思います。今後、デフレの場合にマクロ経済スライドをどうするのか、高所得者への年金課税のあり方をどうするのかなど、さらなる課題もあります。
安心で持続可能な年金制度の確立に向けて、どのように取り組んでいくお考えか、伺います。

(3)医療問題
 医療費の増大は、先進国に共通の課題です。しかし、我が国は、医療費の中で薬剤費の割合が多いことが、他国と異なる特徴です。医療費に占める薬剤費の割合は、欧米では1割台ですが、我が国では25%前後だといいます。
中でも、大きな利益の出る新薬は、外資系の製薬企業が高いシェアを占めています。例えば、一定の条件を満たした新薬の薬価を加算する「新薬創出加算」の対象は、上位を外資系がほぼ独占しています。
国内企業の競争力が弱い原因は、規模が小さく数が多すぎるためだと指摘されます。国内製薬企業の統合をさらに進め、競争力強化・コスト削減を推進すべきであります。以前、菅官房長官もそのような趣旨の発言をされていますが、総理のご見解を伺います。

(4)再生医療
 また、iPS細胞に代表される再生医療も、国際競争の激しい分野です。将来、最先端の医療を受けるために、他国に特許料や使用料を払うといった事態にならないよう、国としてしっかり支援する必要があると考えます。具体策をお聞かせ下さい。

4.防災・国土強靭化

(1)インフラの老朽化対策
 次に、防災・国土強靭化について伺います。最近、管理者不明のインフラが各地で見つかっています。例えば、高速道路をまたぐ跨道橋のうち、台帳に載っていない橋が多数あるとのことです。全国の跨道橋の7%は、できてから一度も点検されていないという、恐ろしい事態も明らかになりました。
もし事故が起こっても、誰の責任かわからない。こんな事態があってはいけません。少なくとも、「誰も管理しないインフラ」がなくなるよう、全国的な調査を徹底して行い、保守管理に漏れがないようにすべきです。政府の対応方針について伺います。

(2)都市型災害への対応
 次に都市型災害への対応です。本来、都市というのは、比較的安全だから人が集まって住み始めた場所です。京都、大阪、名古屋など、昔の大都市は風水に基づいて場所を選び、街が作られました。東京はただの荒れ地だったそうですが、徳川幕府が長い時間をかけて立派な都市を作りました。
それが、いつの間にか都市ならではの災害を生むようになってしまったのですから、これは人災という他はありません。豪雨による地下街の水没、地震による埋立地の液状化、そして山際ギリギリまで宅地を開発した結果、土砂災害も頻発しています。昨年、私の地元広島県で起きた土砂災害は、皆様の記憶にも新しいことと思います。
こうした大災害でなくとも、雪が降ると交通が乱れ、雨が降ると冠水するのは日常茶飯事です。都市の災害対策について、住宅、土木、交通など個別の観点だけではなく、都市全体を俯瞰した総合な観点から取り組むべきだと考えます。政府の取組みをお聞かせ下さい。

5.環境・エネルギー

(1)温室効果ガス削減と原発再稼働
 今年12月に国連気候変動枠組条約の第21回締約国会議(COP21)がフランス・パリで開催されます。この会議では、2020年以降の世界の気候変動・温暖化対策の大枠が決まる予定です。
福島原発事故以降、我が国の温室効果ガス削減目標は、不透明なままです。世界が納得する削減目標を打ち出し、COP21に明確な態度で臨む必要があります。そのためにも、原発の再稼働は避けては通れません。電力のほとんどを火力発電に頼る現状では、温室効果ガスの削減には限界があります。
これまで、川内原発1・2号機と、高浜原発3・4号機が、安全審査に合格しています。実際の再稼働は来年度になると伺っていますが、これらの原発をはじめ、今後の再稼働に向けた政府の方針を伺います。

(2)水素エネルギーの普及
 昨年12月、トヨタが世界に先駆けて燃料電池車「ミライ」を発売し、大きな話題となりました。走る時にCO2を一切出さない、「究極のエコカー」と言われる燃料電池車ですが、普及に向けた課題も多いと聞きます。
特に、燃料を補給する「水素ステーション」が普及しなければ、日常生活に使える乗り物にはなりません。エネルギー基本計画では、2015年内に水素ステーションを100か所程度整備するという目標を立てていますが、まだ半分にも達していない状況です。
ここで政府が水素ステーションの普及を後押ししなければ、他の自動車メーカーも参入が難しくなり、燃料電池車は本当に未来の車のままで終わってしまいます。政府の目指す水素社会の実現も幻となりかねません。水素ステーションの普及目標を達成するための支援策を伺います。

(3)原油価格の我が国への影響
 最近の原油価格の下落は、エネルギーの輸入国である我が国にとって、原油安は良いニュースです。しかしながら、我が国はその恩恵を、実際どの程度受けられているのでしょうか。世界の原油相場は、昨年夏の100ドル超から、およそ半分になりました。原油安のメリットが、ガソリン価格や電気料金など、我々の生活に正しく反映されなければなりません。
一方で、世界経済を見ると、原油安によって利益を受ける国や企業もあれば、不利益を受ける国や企業もあります。原油があまりにも安いと、世界経済にとってリスク要因にもなります。
 こうしたことも踏まえ、昨今の急激な原油安のメリットを最大限活かすとともに、リスクを最小限に留めるために、政府が採るべき方策について伺います。

6.外交・安全保障

(1)周辺国との外交の基本方針
 次に、外交・安全保障について伺います。冒頭にも触れましたように、今年は戦後70年という節目ですので、良くも悪くも、我が国と周辺国との外交関係に注目が集まります。
領土・領海への野心を隠さない中国、まだ首脳会談を行っていない韓国、原油価格の下落で経済的に苦しいロシア、拉致問題の再調査を約束しながら進展がない北朝鮮など、様々な課題がある中、これら周辺国との外交をどう進めていくお考えでしょうか、総理の基本方針を伺います。

(2)テロ対策
 シリアで起きた湯川遥菜さん・後藤健二さんの拘束・殺害事件は、わが国の外交・安全保障や危機管理のあり方に、大きな課題を投げかけました。我が国には何ができて、何ができないのか。また今後、何ができるようにするべきなのか。事件の教訓と、今後我が国が取るべき方策について、総理のお考えを伺います。
また特に、海外で日本人が拘束された場合に自衛隊が救出できるのかという点は、国民的にも大きな関心事項だと思います。人質の救出は、憲法が禁じる、「国際紛争を解決するための武力行使」には当たらないはずです。自衛隊が単独で動く以外にも、現地政府と共同で、あるいは米軍と共同でなど、様々な状況が考えられます。政府としてはどのように検討するお考えか、伺います。

7.まとめ

 最後に申し上げます。総理は、来年夏の参議院選挙後に、憲法改正の発議と国民投票を行いたいという意向を表明されています。そのためには、参議院選挙までに、国民の皆様の理解を得ておく必要があります。
どの項目を、どう改正すべきか、我々も憲法審査会などで議論を深めていきたいと考えます。憲法を改正する最終的な権限は、政府でも、国会でもなく、国民にあります。国民的な議論を喚起することも、我々の役割だと考えます。
我が国の憲法がどうあるべきか、政治家や国民が大々的に議論するのは、大日本帝国憲法の制定時と、日本国憲法の制定時に続いて、史上3回目となります。まさに歴史的な議論になるわけですから、後世に恥ずかしくない、堂々とした議論をしたいものであります。
総理は、施政方針で「知と行は二つにして一つ」という吉田松陰の言葉を引かれましたが、彼はこうも言っています。
「国家とともにという志がないならば、人ではない」
これは国民全てに当てはまる言葉ですが、最も噛みしめなければならないのは、我々政治家でしょう。議場においでの皆様。国民の代表として、国家のために何ができるのか、国家のためにどんな憲法が必要か、真剣に考え、議論しようではありませんか。このことを皆様に呼びかけまして、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。