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政策

第186回国会における代表質問 吉田博美 参議院幹事長代行

平成26年1月30日

吉田博美 参議院幹事長代行

 自由民主党の吉田博美です。私は自由民主党を代表して、安倍総理の施政方針演説について質問致します。

最近ずいぶんと、自民党が右傾化しているという批判を耳に致します。地元でも、本当に大丈夫かという声を多くの方から聞きます。しかし私は、ご心配には及ばないと申し上げます。自民党には右寄りの人もいますが、私のように中道もおります。色々な考え方の人がいる、この多様性が自民党の特徴であり、長所であります。

仮に、時の総理と違う意見だとしても、また仮に、党内の多数派と違う意見だとしても、堂々と発言ができ、党内で自由闊達な議論ができる。こうした懐の深さが、自民党が長年政権を担当できた理由だと思っておりますし、それは今でも全く変わっていないと確信しています。自民党が右傾化しているという批判について、安倍総理のご見解はいかがでしょうか。

 

私は、ある尊敬する先輩のご紹介が縁で、安倍総理に何回かお会いしてきましたが、総理はいつお会いしても、おごることなく、決して上から目線ではなく、誰とでもフラットに、柔軟にお話をされる、本当に幅の広い方です。だからこそ、本当にこの国を導くのにふさわしい方だと思っております。その安倍総理がなぜ、右傾化している、極右だなどと批判されるのか、私には理解できません。右傾化などという批判は当たらない、私はそう信じておりますが、総理のお気持ちはいかがでしょうか。

 

昨日、我が党の溝手議員会長が、経済や教育政策を中心に質問をされましたので、本日私からは、外交、震災復興、国土強靭化などを中心に質問したいと思います。

総理は昨年12月に、「国家安全保障戦略」を策定されました。外交と防衛を貫く、初めての国家戦略です。その中心理念となっているのは「積極的平和主義」ですが、これにも、軍事力で平和を維持することではないか、といった誤解があります。

先週、スイスで開かれたダボス会議で、安倍総理が基調演説をされました。その演説で総理は、「助け合いの精神で、世界の平和に対してこれまで以上に積極的貢献をなす国になる」とおっしゃいました。これがまさに、積極的平和主義の理念でありましょう。

積極的平和主義は、決して戦争をしようとか、武力に頼って平和を維持しようというものではないはずです。総理自らがリーダーシップを取って、積極的に国際協調・平和外交をやっていこうというのが、積極的平和主義だと考えますが、そういう認識でよろしいでしょうか、伺います。

 

ダボスの演説では、総理は、「日本は、不戦の誓いを立てた国であり、世界の恒久平和を願い続ける国だ」ともおっしゃいました。我々日本人にとっては当然のことですが、世界の注目が集まる場で総理の口から発信しことは、大きな意味があったと思います。

私は、戦争だけは絶対にいけないと思います。鹿児島の知覧に行って、特攻隊員の方々の手紙を読み、遺品を見た時に、その思いを強くしました。やはり皆、悩んで、苦しんで、そして死を覚悟して、死んでいったんです。これからの若者に、そんな思いを決してさせてはいけません。

総理の施政方針演説では、不戦の誓いという表現はありませんでしたが、国会の場でも、総理から改めて不戦の誓いを述べて頂きたいと思います。

 

総理は就任以来、休みなく海外に行かれています。ほぼ毎月ではないでしょうか。そして、この1月は、中東・アフリカ、ダボス、インドと、本当に休む暇もないスケジュールです。どうか、健康に留意して下さい。

私の記憶にある限り、ここまで熱心に海外を訪問された総理はいないと思います。その成果として、インドやトルコなど、日本にとって大事な国々との関係が大変によくなっています。

アジアはもちろんですが、中東やアフリカの国々との外交でも、日本は世界の中で独自の役割を果たすことができます。中東和平問題で日本が仲介役を果たしてきたことも、その一例です。こうした独自外交の強化は、まさに積極的平和主義を具体化するものとなるはずです。

先の中東・アフリカ・インド歴訪の成果と、今後の中東・アフリカ・インド外交の意義について、総理のお考えを伺います。

 

外交に関してもう一つ、伺わなければならないのは、中国・韓国との関係です。中国と韓国は、大切な隣国でありながら、現在は日本に対して残念ながら不信感を持っている状況があります。この状態がいつまでも続くことはお互いにとって不利益です。日本はここから引っ越せないのですから、永遠に隣国であることには変わりません。

いくら関係を改善したくても、相手の態度が変わらなければどうしようもない、という意見もあります。しかし、もし日本が外交に強い国を目指すのであれば、どうやって相手の態度を変えるのか、という発想で臨まなければならないと思います。

昔から、戦わずして勝つのが上策だと言います。これは現代にも通用するでしょう。戦って国益を守るのではなく、戦わないで国益を守る方が、はるかに上策です。そのためには、相手の考えを変えて、日本とのトラブルが生まれないようにする、そういう方向で知恵を絞るべきです。

そうした観点から、中国・韓国との関係を再構築する必要があると考えます。積極的平和主義には、周辺国との平和的な関係を、我が国が積極的に主導するという意味も含まれると思いますが、総理はどうお考えでしょうか、伺います。

 

またその一例として、昨年11月に中国が防空識別圏を設定した問題について伺います。そこを飛ぶだけで飛行計画を提出させるというのは、公海上の飛行の自由を侵害する、国際法違反です。この点で、我が国と、米国をはじめとする世界各国は、同じ立場であるはずです。

防空識別圏の撤回を求めるのが我が国の原則的な立場ですが、まずは各国と共同して、中国に運用を改めさせるべきだと考えます。また、偶発的な衝突を避けるため、日中のホットラインの設置も急ぐべきだと考えます。これらについて、総理のお考えをお聞かせ下さい。

 

次に、総理の靖国神社参拝に対する各国の反応について伺います。今回の参拝に関しては、中国・韓国はもちろんですが、米国の認識にも誤解があると考えます。総理も「誤解を解きたい」とおっしゃっていますが、今後どのように誤解を解いていくお考えでしょうか、お教え下さい。

 

また、今回の件で、日米関係がギクシャクしていると思われてしまっては、それこそ大きな誤解です。国内外に誤ったメッセージを送らないよう、「日米同盟は全く揺るがないこと」、「日米が緊密に協力して世界の平和と安定により積極的に貢献していくこと」を日米両国がハイレベルで表明すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

日米関係と関連して、TPP交渉についても伺います。もともとは昨年中に大筋合意という目標で交渉が行われていましたが、それは達成できませんでした。交渉が難航しているとか、もう大詰めだとか、様々な報道がありますが、関税など肝心な部分がどのように決着するのか、大いに関心を持っています。

我々自民党は政権公約で、農林水産分野の重要五品目等の聖域を確保するなど、TPPに関して六項目を国民の皆様にお約束しています。私は総理がこの六項目を守って頂けると信じて疑いませんが、総理としてはどのような方針で今後の交渉に臨むお考えでしょうか、お聞かせ下さい。

 

次に、震災復興について質問させて頂きます。今月初めの福島県の地元紙に、福島県内の市町村長さんへのアンケート結果というのが載っていました。「復興『加速せず』44%」という見出しです。中身を読むと、安倍内閣になってから、復興が「加速した」「一部加速した」があわせて51%、「加速していない」が44%という結果でした。

何故わざわざ少ない方を見出しにするのかなという気がいたしますが、それは置いておいて、県内市町村の過半数が、安倍内閣になってから復興が加速したと感じていることは、政権交代の成果が着実に出ているのだと思います。

一方で、まだ復興が加速していないと感じている市町村長さんも半数近くいらっしゃるというのも事実です。一部では復興が進んでいても、それが全ての場所には行き渡っていないということだと思います。総理として、復興のさらなる加速のためにどのような具体策をお考えか、お聞かせ下さい。

 

被災地の自治体からは、復興事業の用地確保が難航しているという声が強く上がっています。用地取得に関して、昨年10月に復興庁が「用地取得加速化プログラム」を策定しているのですが、現行制度の運用改善に留まっていて、十分ではないと言うのです。

被災自治体からは、人を増やす方向での支援も必要だが、手続を減らし、必要なマンパワーを減らす方向での支援の方が、効果が大きいという話を聞いています。用地取得を簡素化するためには、私権制限も含めた抜本的な特例措置が必要です。総理が覚悟を持って取り組むべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

 

次に、国土強靭化・インフラ整備について伺います。私は長野県が地元ですので、よく中央道を使います。一昨年12月に大事故があった笹子トンネルもよく通ります。事故の数日前にも通りました。同じように老朽化している施設は全国に多くありますし、これからもっと増えるでしょう。高度成長期に大量に造られたインフラが、どんどん寿命を迎えるからです。政府は昨年11月に、インフラ老朽化対策の基本計画を作っています。それに従って、全国の自治体でも計画を作るそうです。

対象となる施設を全て把握して、点検して、改修するのは膨大な作業ですが、政府自らの対策、そして各自治体への支援を、どのように行っていくお考えか、お聞かせ下さい。

 

老朽化対策以外にも、さらなる国土強靭化のために新たなインフラ整備が必要になると考えます。我が国は、山、川、海と、変化の激しい地形が、山紫水明の美を生んでいます。しかし、それぞれに合わせた災害対策を考えると、大変な苦労があります。大陸の平らな国と比べてインフラ整備にお金がかかるのは、我が国の宿命と言ってもいいでしょう。

その一例として、南海トラフ地震や首都直下地震など、いつ来るかわからない、しかし、もし来れば大きな被害が予想される地震対策について、政府の取組をお聞かせ下さい。

 

一時期、公共事業が悪者のように言われました。しかし今後も、我が国から災害がなくなることはありません。国土強靭化のために必要な事業は、継続的に行っていくことが必要です。備えあれば憂いなし。これを、言葉だけでなく実行に移すのが政府の責任です。国民が安心して暮らせるような国土強靭化の推進について、政府の基本姿勢をお伺いします。

 

最近、インフラ整備の需要が増えたことに伴って、問題も発生しています。建設業界で深刻になっている、人手不足、価格高騰、入札不調といった問題です。これからオリンピックに向けた準備が本格化すると、問題がさらに悪化する可能性もあり、心配です。政府として対応が必要だと考えますが、具体策をお聞かせ下さい。

 

東京オリンピック・パラリンピックは、先日、森元総理を会長とする組織委員会が発足し、いよいよ具体的な準備が動き出します。政府も、27年度にスポーツ庁を設置する方向で検討していると伺っています。

 

オリンピックの準備には、スポーツだけでなく、インフラ整備や観光など、政府全体としての取組が求められます。過去の東京、札幌、長野のオリンピックの際には特別法を制定していますが、今回も、スポーツ庁の設置だけでなく、特別法や予算の特別枠を作るなど、政府が一丸となって取り組むべきではないかと考えます。政府として、そうしたお考えがあるか、伺います。

 

オリンピックの効果が東京だけに留まってしまうのではないか、という心配も、地方にはあります。間違っても、インフラ整備が東京に集中して、かえって地方経済にはマイナスになってしまった、などということがあってはなりません。オリンピックの開催を、日本全体の活性化につなげるためのインフラ整備について、政府の方針を伺います。

 

オリンピックのメインスタジアムとなる、新国立競技場に対しては、コストがかかりすぎる、設計に難がある、景観にそぐわないなど、様々な批判もありますが、政府としての整備方針をお教え下さい。

 

最後に、観光振興について伺います。昨年、日本を訪問した外国人が初めて1000万人を突破しました。政府は、オリンピックが開催される2020年に2000万人、2030年には3000万人の外国人観光客を呼び込むという目標を掲げています。これを実現するためには、空港や鉄道などのインフラ整備から、インターネット環境、観光客のサポート体制まで、ハード・ソフト両面にわたって、海外観光客の視点に立った環境整備が必要です。

我が国の技術や、文化や、おもてなしの心を総動員すれば、世界の人々にとって、さらに魅力ある国がつくれるはずです。世界中からより多くの人々をお迎えし、日本での滞在を満喫して頂き、日本のファンを増やすことができれば、我が国が目指す積極的平和主義にも大いに貢献するはずです。そのための方策を総理にお伺いして、私の質問を終わります。