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政策

第186回国会における代表質問 溝手顕正 参議院議員会長

平成26年1月29日

溝手顕正 参議院議員会長

自由民主党の溝手顕正です。明日質問に立つ予定の吉田博美議員と二人で分担して、自由民主党を代表致しまして、安倍総理の施政方針演説について質問致します。

 

本年、平成26年は午年であります。安倍総理は年男で、今年還暦を迎えられるとのことであります。私も昭和17年生まれの午年です。総理とは一回り違うわけですが、同じ午年同士として、安倍総理にとって今年がよい年になりますよう、応援していきたいと思います。

昨年一年間、総理は文字通り休む間もなく駆け抜けてこられましたが、今年のお正月は、少しはお休みになられましたでしょうか。本日は参議院での今年最初の質問ですので、まずは総理の初夢についてお伺いしたいと思います。もし、お正月にゆっくり休まれて、よい初夢を見られたのであれば、ここでご披露頂けませんでしょうか。もちろん、ここで言えないような夢であったなら、無理にとは申しませんので、よろしくお願いします。

 

さて、昨年一年間、安倍内閣のもとで、「三本の矢」による経済再生が強力に進められた結果、我が国の経済は上向き、自信をなくしていた国民の気持ちも少しずつ前向きになってきました。

総理は先週、スイスで開かれたダボス会議に出席し、日本の総理として初めてとなる基調講演を行いました。それだけ、日本経済が世界からも注目されているという証だと思います。

バブル崩壊以降、日本経済に対する内外からの期待がこれほど高まったことはないでしょう。私はこれこそが、安倍政権一年間の最大の成果だと思います。政権交代の成果でもあります。総理ご自身は、就任以来の一年余りの政権運営をどう評価されているでしょうか。また、今年の一年間をどう展望されているでしょうか、お聞かせ願います。

 

次に、今年の日本経済について伺います。政府は、26年度の名目成長率が3.3%になるという見通しを立てています。実現すれば、名目GDPは500兆円、税収は50兆円という大台の達成が見込まれます。これは、平成19年度以来、七年ぶりの数字です。

日本経済は長期低迷が続いていましたが、3%成長が続けば、2年後の平成28年度には、GDPは過去最高の530兆円、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には、およそ600兆円になります。本来、日本経済にはこの位のパワーがあるはずです。

政府はぜひ、こうした具体的な成長目標を内外にアピールして、国民に、そして世界に、日本経済の復活を約束して頂きたいと思います。総理が施政方針演説でおっしゃったように、日本人が自信を取り戻し、2020年、そしてその先の未来に向けて進んでいけるようなビジョンを示すのが、政府の役割です。

一方で、経済成長に関して、民間では政府よりも厳しい予測も目立っております。消費税引き上げによる影響をどう考えるか、といった差だと思いますが、総理はどのようにお考えでしょうか。こういう理由で民間予測より高い成長率を達成できるというご説明を、総理からお願い致します。

 

私としては、消費税引き上げによる個人消費の落ち込みを抑えるためには、給与の引き上げがカギになると考えます。また、中小企業への影響を抑えるためには、転嫁対策を万全にすることも重要です。これらについて、具体策をどうするのか、お聞かせ下さい。

また、何よりも重要なのは、消費税の引き上げについて、国民的な理解を得るための努力です。増税分は全額、社会保障の充実・安定のために使われます。増税になった分がどこかに消えるわけではなく、社会保障として返ってくるわけです。

今後ますます高齢化が進む中で、社会保障に伴う負担を受け入れてもらうことは、大変に重い政治的課題であり、現在の政治家に課せられた最大の課題だと言ってもよいでしょう。安倍政権なら、自民党政権なら、安心して預けられると思って頂けるよう、政府としても丁寧に説明を行って頂きたいと思いますが、いかがでしょうか。

 

消費税引き上げに関連して、もう一つ伺っておきたいことがあります。今回政府は、住民税非課税世帯の2400万人に対し、一人1万円を給付するといいます。低所得者対策の必要性はもちろんのことですが、住民税非課税世帯が2400万人もいるということ自体が、我が国の深刻な所得格差を示しており、大きな問題ではないでしょうか。一方で、非課税世帯があまりにも多いことについて、課税の範囲が本当にこれでいいのかという気も致します。

このように、住民税非課税世帯が非常に多いことは、様々な観点から考えるべき問題を含んでいると思いますが、総理としてはどうお考えになるか、お聞かせ下さい。

 

さらに言えば、今回の「簡素な給付措置」では、年金生活者と給与生活者との間で、給与生活者の方が不利になってしまうという問題もあります。つまり、同じ収入でも、年金生活者は給付がもらえ、給与生活者は給付がもらえない場合があるのです。

この例に限らず、我が国の社会福祉政策では、頑張って働いている現役世代が不利な扱いを受ける場合が多いと指摘されています。若い世代が希望を持てる社会に、そして働く意欲を持てる社会にするために、改善すべき大きな問題だと思います。政府としてはどう対応していくお考えか、伺います。

 

将来に希望が持てる社会という点ではもう一つ、財政問題についても伺います。国の借金が1000兆円を超えたということは周知の事実でありますが、このまま借金が膨らみ、将来の世代が借金を返すためだけに働くというような国になってはなりません。

25年度補正予算案では国債を追加発行せず、26年度予算も国債発行を前年度より減らすなど、財政健全化に向けて着実に前進していることは評価できます。26年度までにプライマリーバランスの赤字を半減するという財政健全化目標も、達成できる見通しとなりました。しかし、32年度に黒字化するという目標の達成は、まだ厳しいと聞いております。

将来世代にできるだけ負担を残さないよう、我々の世代の責任として、財政再建をさらに進めていく必要があると考えますが、総理のご決意を伺います。

 

次に、成長戦略について伺います。政府は先週、成長戦略の実行計画を閣議決定しました。また、今国会には、成長戦略関連の法案が33本も提出されると聞いております。アベノミクスの三本目の矢である成長戦略が、いよいよ実行段階に入るわけです。

総理はダボス会議で、今後2年間で「岩盤規制」を打ち破ると宣言されました。総理自らがドリルになるという表現は、自ら先頭に立つという意気込みの表れだと思います。

私は、成長戦略に関して、三つのことを申し上げたいと思います。一つは、成長戦略は、大企業だけのものではない、ということです。規制改革を実行される中で、大企業はもちろんですが、中小企業やベンチャー企業がより活動しやすい環境を実現し、活力ある経済を実現してほしいと考えます。この点で現在検討している具体策があればお聞かせ下さい。

 

二つ目に、成長戦略は、日本企業だけのものでもありません。我々自民党は、政権公約で「世界で一番企業が活動しやすい国」を掲げました。「世界で一番」というからには、外国人にとってもビジネスがしやすい環境を作る必要があります。世界から企業が集まってこそ、本物の国際競争力が生まれます。この点で、我が国はまだまだ遅れていると言わざるを得ません。

外国人が日本でビジネスをする際の障壁は、我々日本人には気付きにくいものであります。例えば、会社を作る時の諸官庁への届出、事業を行う許可の申請など、我々日本人にとっても大変ですが、外国人にとっては、細かい部分でさらにハードルが高いはずです。

当事者である外国人の意見を聞くため、アドバイザー会議を作るなど、外からの視点を取り入れて改革を進めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 

三つ目に、成長戦略は、企業だけでなく、個人が潤わなければなりません。支持者の方々とお話していると、企業の減税ばかりではなく、個人の所得を増やしてほしいという意見をよく頂きます。それも国民の偽らざる声であり、特に消費税引き上げを機に、そうした声がさらに強くなるに違いありません。企業減税も規制改革も、最終的には国民のためになってこそ意味があります。そこが見えにくければ、国民の支持は得られません。安倍政権の成長戦略が、個人所得の向上にどうつながっていくのか、わかりやすい説明をお聞かせ下さい。

 

日本経済に関して、もう一つ大きな問題があります。それは、昨今の貿易赤字です。かつては黒字が当たり前であった我が国ですが、東日本大震災以来、大幅な貿易赤字が続いています。特にこの一年余りは、円安の影響で輸入価格が上がる一方、輸出が回復しておらず、赤字幅が増え続けています。昨年の貿易赤字は11兆円と過去最大でした。

この原因として、製造業の海外移転が進んだ結果、円安になっても輸出が増えなくなったと言われています。一方で、円安が続けば、製造業の国内回帰の動きが強まるという見方もあります。

政府は、この大幅な貿易赤字、そして経常赤字を、一時的なものだと考えているのか、あるいは今後も続く構造的な問題だと考えているのか、どちらでしょうか。また、構造的な問題だとお考えならば、どのように対応するお考えでしょうか、伺います。

 

燃料の輸入額が増えていることも、貿易赤字の一因です。燃料の輸入量を減らすこと、輸入価格を下げること、この両方を追求していく必要があります。

燃料の輸入を減らすためには、現実問題として、原発再稼働の問題に決着をつけるしかありません。今すぐ別のエネルギー源を見つけることは不可能です。原発がなくても電気は足りているではないかという声もありますが、その裏では、膨大な燃料費を海外に払い続けているのです。今の状態をいつまでも続けるわけにはいきません。政府の原発再稼働に関する方針はいかがでしょうか、伺います。

 

燃料の輸入価格に関しては、明るい兆しもあります。シェール革命によって、国際的なエネルギー事情は大きく変わろうとしています。燃料の価格低下、調達先の多様化、新たなエネルギー資源の開発、海運・造船をはじめとする関連産業の発展など、我が国にとって大きなチャンスでもあります。また、エネルギー革命は、経済や安全保障環境にも大きな変化をもたらす可能性もあります。こうした変化に対し、我が国としても適切に対応しなければなりません。省庁の縦割りを超えた、政府全体としての戦略が必要だと考えますが、政府にその戦略があるのか、伺います。なければもちろん作ってほしいと思いますが、いかがでしょう。

 

次に、地方財政について質問します。私は広島県の三原市で市長をしておりました。東京など都会のマンションと比べて、田舎の家は一軒当たりの行政コストが非常にかかります。これまで日本のインフラ整備は、人が住んでいる限りはどんな山奥でも、電気、水道、道路を引こうとしてきました。これはある意味で平等ではありますが、そのために効率的な行政運営を犠牲にしてきた面もあると思います。

今後、さらに過疎化が進めば、こうしたインフラを整備し、維持するコストが負担しきれなくなることは明らかです。したがって、生活のインフラを町の中心部に集約していくことは不可避であります。こうしたことを言うと、もちろん強い反対もありますが、これが我が国の現実であります。生活インフラの集約化・効率化について、国として明確な方向性を示すべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 

また、地方交付税についても伺います。地方交付税の財源は、所得税、法人税、消費税などの一定割合だと法律で決まっています。つまり、所得税や法人税の税収が変われば、地方交付税の総額も変わります。

しかしながら、成長戦略の文脈で法人税減税などを議論する際、それが交付税に与える影響はあまり考慮されていないような印象を受けます。もちろん実際には、十分理解されていることと思いますが、地方行政出身者としては気になるところであります。法人税を下げたら自動的に交付税が減る、ということでは地方が困りますが、そうした点は議論されているのか、伺います。

 

次に、第一次・第二次安倍内閣がともに重要課題と位置付ける、教育再生について伺います。

総理は、「世界トップレベルの学力と規範意識を身に付ける機会を保障する」ことが教育再生の大目標だと、国会でも教育再生実行会議でも繰り返しおっしゃっています。

これらの目標のうち、学力の面では、国際学力テストで日本の子供達の成績が向上するなど、既に「脱ゆとり教育」の成果が出始めています。次は、規範意識や道徳心の育成について、本格的に取り組むべき時期ではないでしょうか。内閣の重要課題として、これをどのように進めていくお考えか、伺います。

 

歴史や文化の教育も重要課題だと思います。先日、政府が高校日本史の必修化を検討しているという報道がありました。小中学校でも歴史は学びますが、高校生という、世の中のことがある程度わかる年齢になってから、改めて我が国の歴史を学ぶことは、非常に意味があると思います。ぜひ必修化を行ってほしいと考えますが、総理としてはどのようにお考えか、お聞かせ下さい。

 

また、歴史と併せて、年中行事、風習、食文化などの「日本文化」を学ぶことも必要だと考えます。そうした内容を教育課程に入れることを検討してはどうかと考えますが、いかがでしょうか。ご見解をお聞かせ下さい。

海外に旅行あるいは赴任してみて、自らの知識不足を感じ、恥ずかしい思いをしないようにしたいものです。

 

次に、教育委員会改革について伺います。昨年、教育再生実行会議が、教育委員会の責任体制を明確化し、首長の権限を強めるという教育委員会の改革案を打ち出しました。いじめや危機管理といった問題は、学校現場で日々起こっています。月に一度か二度、数時間集まるだけの、非常勤の教育委員会が最終責任を持つというのは、現実的ではありません。こうした現状を考えると、教育再生会議の改革案は正しい方向性だと思います。

責任体制の明確化に加えて、いじめ問題への対応などを見ると、学校や教育委員会の透明化も必要だと考えます。身内をかばい、不祥事を公にしない学校や教育委員会の体質は、関係者以外との接触が少ないという閉鎖性や、県内の同じ大学の出身者ばかりという同質性など、様々な原因があると思います。このような学校や教育委員会の体質をどうやって変えていくか、具体策を伺います。

 

次に憲法改正について伺います。先週の日曜日になりますが、我々自民党は、第81回となる党大会を開催しました。そこで採択した運動方針では、憲法について、「主権在民、平和主義、基本的人権の尊重の基本原理を継承しつつ、時代に即した現実的な改正を行う」、「党是である憲法改正の実現に向けて、党全体として積極的に取り組む」としています。

一方で、連立与党をはじめとする各党の皆様、そして何より国民の皆様のご理解とご協力がなければ、憲法改正は成し遂げることができません。憲法のどの部分をまず変えるべきかという議論も、まだまとまっているとは言えません。

総理は、施政方針演説で、憲法改正には一言触れられただけでした。しかし本来総理は、憲法改正について、「私のライフワークだ。何のために政治家になったのか。」と語るなど、強い意欲をお持ちのはずです。総理は今後、憲法改正に向けた動きを、具体的にどのように進めていくお考えか、伺います。

 

次に普天間問題について伺います。

昨年末、沖縄県の仲井真知事は、「普天間飛行場の五年以内の運用停止、早期返還」について、政府挙げて取り組んでほしいと要請し、普天間飛行場の移設先である辺野古沿岸部の埋め立てを承認しました。

これは、安倍総理をはじめ政府を挙げての取り組みの熱意が知事に伝わったものだと思います。一方で先週、名護市長選挙が行われ、移設に反対する現職候補が勝利しました。

地元自治体の協力を得ることが難しい状況となったわけです。しかしながら、基地負担の軽減には強い決意で取り組み、普天間基地の固定化は絶対にあってはなりません。総理は今後、どのようにこの移設問題を進めていくお考えか、伺います。

 

総理は施政方針演説で、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に何度も言及されました。私は前回の東京オリンピックの時に大学生でしたが、当時はまさか、東京でもう一度オリンピックが見られるとは、思ってもいませんでした。

前回の東京オリンピックが開催されたのは1964年。今からちょうど50年前です。当時の我が国は、人口9700万人、GDPは30兆円でした。国家予算は3兆円台です。

来年度予算は、社会保障関係費だけで30兆円を超えます。当時のGDPより多い金額です。50年間で、GDPは16倍、国家予算は30倍、社会保障関係費は実に70倍になりました。当時とは全く違う状況で、次のオリンピックが開催されます。我々は、超高齢社会の中で、新しい国の形を創っていかなければなりません。それには大きな困難も伴うでしょう。

いま東京都において、都知事選挙の最中であります。その中で、国の根本的な政策ともいえる原発問題が争点として取り上げられています。エネルギー問題は、原発即廃止で解決できるという単純なものではないと考えます。さらに十分な検討と時間が必要であります。

どんな状況でも歯を食いしばって努力し、あらゆる困難を乗り越えてきたのが日本人です。震災からも、戦争からも、不死鳥のように甦り、繁栄を築いてきました。先人の偉大な努力に学び、新たな困難を乗り越えていくことが、我々に課せられた使命だと考えます。

本当の意味で、戦後を脱却し、新しい日本の行方を示すことが、安倍総理に求められていることだと思います。

その使命を先頭に立って実現していく決意をお伺いいたしまして、私の代表質問を終わります。