機関紙「自由民主」特別企画
令和3年 菅義偉総裁に聞く
新年の決意
今年も「国民のために働く」
コロナを乗り越え、凛としたニッポン
昨年9月の就任以来、「自助・共助・公助、そして絆」をキャッチフレーズに、国民に身近な政策を次々と掲げて、実行する菅義偉総裁。新型コロナウイルス感染症という未曽有の事態を乗り越え、「凛としたニッポン」の実現へ――令和3年の幕開けに当たり、菅総裁の政治姿勢や信念などについて、丸川珠代広報本部長が聞いた。
菅総裁(左)と聞き手の丸川珠代広報本部長(右)
新型コロナウイルス感染抑止への決意を語る菅義偉総裁
新型コロナウイルスの感染拡大を抑え、経済を回復させる
新型コロナウイルス感染抑止への決意を語る菅義偉総裁
丸川珠代広報本部長令和3年の幕が開けました。まずは、新年に当たってどのような政策に力を入れますか。
菅義偉総裁まずは、新型コロナウイルスの感染拡大を抑え、経済を回復させます。そのために、昨年12月に財政支出約40兆円、総事業規模約74兆円の経済対策を決定いたしました。
雇用を守るための雇用調整助成金の特例措置、中小企業の方々への公庫などによる資金繰り支援を延長するための予算措置を講じます。
また、わが国の次の経済成長の原動力となる、グリーン社会の実現のために2兆円の基金、デジタル化のために1兆円以上の予算を確保しました。
防災・減災、国土強靱化のために5年間で15兆円規模の事業を確保します。
長年の課題であった少子化対策については、不妊治療の保険適用を令和4年度から実現し、それまでの間の助成制度も拡充します。
まずは、この経済対策を実現させるための補正予算を通常国会で、自民党・公明党との協力のもと、早期に成立させ、いま申し上げた措置を早急に実現したいと考えています。
その上で、コロナを機に地方への関心が一層高まる中、デジタル化を進め、新たな働き方の定着を促しながら、地方への人の流れを生み出します。観光や農業の改革を進め、地方の経済を活性化させることで、日本経済を再浮上させてまいります。
世界に目を転じれば、国際情勢の不透明さが増す中で、わが国の確固たる外交方針は揺らぎません。日米同盟を基軸とし、自由で開かれたインド太平洋を実現するための取り組みを戦略的に進め、近隣諸国との安定的な関係を築いてまいります。
今年も「国民のために働く内閣」として、スピード感を持って国民目線での改革を実現してまいります。
2050年カーボンニュートラル「環境と成長の好循環」を実現する
丸川昨年総裁が打ち出した政策で、2050年カーボンニュートラルの実現。これは私自身、大変驚きました。デジタル改革に加えて、あえてこの政策に挑戦しようと考えた理由は。成功に向けて、大切なポイントは何だと考えますか。
菅私が昨年の臨時国会の所信表明演説で申し上げた「2050年カーボンニュートラル」は、わが国が世界の流れに追い付き、一歩先んじるために、どうしても実現しなければならない目標です。
環境対応はもはや経済成長の制約ではありません。むしろ、わが国の企業に将来に向けた投資を促し、生産性を向上させるとともに、経済社会全体の変革を後押しし、大きな成長を生み出すものです。
こうした「環境と成長の好循環」に向けて発想の転換を行い、今回の経済対策では、まずは政府が環境投資で一歩大きく踏み込みます。過去に例のない2兆円の基金を創設し、野心的なイノベーションに挑戦する企業を今後10年間継続して支援していきます。
政府が率先して支援することで民間投資を後押しし、240兆円の現預金の活用を促し、ひいては3000兆円とも言われる世界中の環境関連の投資資金をわが国に呼び込み、雇用と成長を生み出したいと考えています。
丸川パリ協定が締結された2015年の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)の時、私は環境大臣として参加しました。全ての国と地域が参加する地球温暖化に対する協定ということで、当時、大変な感動を覚えて帰ってきました。一方、国内でカーボンニュートラルの社会が実現できるという感触はほとんどありませんでした。この5年で世界も社会も急速に変わっていく中で、総裁が「2050年カーボンニュートラルの実現」という世界的に見ても野心的な目標を掲げたことに、胸が震えました。
まさに総裁のリーダーシップで、さまざまな分野での意識変革が進んでいます。この政治のダイナミズムの中で、われわれ自民党も大きな目標に向かって前進していく年としたいと思います。
東京オリンピック・パラリンピック感染症に打ち勝った証とする
丸川さて、今年は東京五輪・パラリンピックが開催されます。前回の東京大会の時、総裁は高校1年生だったそうですが、当時の思い出はありますか。
菅1964年当時、聖火リレーで伴走したことや、柔道、レスリング、体操などさまざまな競技で金銀銅合わせて29個のメダルを取るなど日本人選手の活躍ぶりに大いに感動したことは忘れられない思い出です。
丸川今年の東京大会も多くの日本人が勇気付けられ、一生の記憶に残る大会としたいです。コロナ禍の五輪・パラリンピックになることが予想され、全世界が注目すると思われますが、成功に向けたご決意は。
菅今年の東京大会は、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、また、東日本大震災の被災地が見事に復興しつつある姿を世界へ向けて発信する場にする「復興五輪・パラリンピック」として、関係者が一丸となって、7月からの開催を実現する決意です。
政治の世界に入ってからアクセルを踏みっぱなし
菅総裁の思いに迫る丸川珠代広報本部長
丸川さて、ここからは総裁の政治姿勢や信念などについて伺っていきたいと思います。まず、「自助・共助・公助、そして絆」。総裁のスローガンです。自助を前面に押し出したわけですが、このお考えに至った原体験は。
菅雪深い秋田の農家に生まれ、高校卒業後、家出同然で上京しました。いろいろ紆余(うよ)曲折があって、2年遅れで大学に入り、就職しました。人生は一生に一回ですから「悔いのない人生を送りたい」と思った時に、もしかしたら政治が世の中を動かしているのではないかと思いました。しかし、田舎者ですから政治の世界は誰も知りません。そこで出身大学の学生部に「法政大学出身の政治家を紹介してください」と駆け込みました。その窓口の担当者だった方がとても親切な方で、OB会の事務局がたまたますぐそばにあったので、そこの事務局長さんから法政大の関係者をご紹介いただき、小此木彦三郎先生の事務所に秘書としてたどり着きました。
政治の世界に入ってからは、アクセルを踏みっぱなしで努力を重ねてきました。地縁も血縁もないゼロからのスタートでしたが、市会議員、国会議員、閣僚を務めさせていただき、昨年には、総理大臣に就任させていただきました。
菅総裁の思いに迫る丸川珠代広報本部長
「自助、共助、公助、そして絆」最後は公が守る国づくりを
丸川まず自分でやってみる、というのが原体験なのですね。
菅そうです。自分自身のこのような実体験は、「まずは自分でやってみる」という考えにつながっていると思います。そこで行動しなければ恐らく違う道に行っていたと思います。一生に一度、人生は一度きりですから、色々と考えてみてはどうでしょうか。そうすると、色々な世界が見えてくると思います。
同時に、私が安心して頑張ってこられたのは、多くの方々や地域コミュニティによるお支え、また、自治体や政府が用意した環境や制度があったからだとも思っています。このような考えも踏まえ、私の目指す社会像として、「自助・共助・公助、そして絆」を掲げています。
全ての国民の皆さまが、それぞれの強みや魅力をお持ちです。一人一人の個性を大切にし、それぞれが望む選択をでき、能力を存分に発揮できるような環境や制度を用意していくことで、私たちの社会はより豊かになり、活力を増していくと思います。
当然、失敗する時もあれば、病気などにより望む選択ができないこともあります。その備えとして、セーフティネットを用意し、国民の皆さまが安心して頑張れる環境をつくっていくのが、政治の役割、そして、菅内閣の使命だと思っています。
丸川戦後70年以上が経過した今、「自助」の大切さを伝えるという認識は、どういったお考えからですか。
菅いつの時代も「まずは自分で行動してみる」という意識・姿勢は重要と考えるからです。しかし、最終的には、国、公がしっかりと守ってくれるという国づくりを責任を持って行っていきたいと考えています。
自らの原体験を語る菅総裁
もし一日自由な時間があったら
丸川総裁の粘り強さは政治を志した時から、決して途中で諦めず、その願いを叶えた原体験からきているのではないかと思います。総裁は途中で投げない、諦めない、熱意が衰えることはないのではないかとすら感じられます。情熱が衰えないことが粘り強さの証、総裁の強さなのかなとその歩みを伺って改めて感じました。
ところで、官房長官時代、総裁はいち早く官邸の会見場に現れ、危機管理の要である国民とのコミュニケーションに臨まれました。世間には、総裁が緊急事態に備えて背広を着たまま寝ている、と噂する声もありました。これは本当のことなのでしょうか。
菅さすがに、それは本当ではありません。就寝時にはちゃんと着替えています。
ただし、緊急事態発生時には、直ちに官邸に登庁し、情報の集約を指示し、臨時記者会見を行うのが私の役割でしたから、常に、枕元には携帯電話を置き、背広などの着替えも準備して即時に対応できるようにしていました。
丸川もし一日自由な時間があったら、何をしたいですか。
菅約8年前に官房長官に就任して以降は、「完全に自由な1日」をほとんど経験したことがないので、すぐには具体的なアイデアが浮かびませんが、趣味なのに長い間できていない渓流釣りに行く時間や、のんびり温泉に漬かることや、孫たちと遊ぶ時間があったらいいなとは思います。
当たり前の実現は、現場の声を幅広く聞くことから
笑顔を見せて質問に答える菅義偉総裁
丸川総裁に就任以来、一日も休んでおられません。激務を毎日、こなすための「秘訣」はあるのでしょうか。
菅規則正しい生活と体調管理を心掛けており、毎日朝晩100回ずつの腹筋は欠かしません。総理となってからは、時間の都合でできないこともありますが、毎朝、40分ほどの散歩も続けています。日中は多忙でなかなかリラックスできませんので、朝の散歩は、精神面のリフレッシュと頭の整理をする貴重な時間でもあります。
丸川「当たり前を実現する」。総裁のよく使われる言葉ですが、「当たり前」を見抜く感性はどのように磨かれてきたのでしょうか。
菅国民から見て「これって当たり前だよね」ということ、そして「当たり前」なのにできていないことがたくさんあります。それを改革していきます。
ただ、何が国民から見て「当たり前」なのか見極める目を持つことが大事です。そのために、アンテナを高くして、さまざまな現場の人から話を聞くようにしてきました。
さまざまな視点、知見を持つ人々から幅広く話を聞くことの重要性は、私が国会議員に初当選した頃に、故・梶山静六先生から教えられました。
笑顔を見せて質問に答える菅義偉総裁
選挙に王道なし
丸川さて、今年は衆院総選挙の年です。大変厳しい選挙を勝ち抜いてきた総裁から、若い議員や地方議員の方々に対して、伝えたい体験やアドバイスは。
菅今は、コロナにより、本当に多くの皆さんが、今日、明日の生活にも苦労し、悩んでおられます。将来への不安をお持ちです。できるだけ多くの声をお伺いし、寄り添いながら、問題の解決に奔走してほしいと思います。
コロナを機に、直接、皆さんとお会いできる機会は減ったかもしれませんが、見方を変えれば、デジタル化を進めることによって、これまで移動に充てていた時間で、今まで以上に有権者の皆さんとオンラインで対話することができます。
選挙は、日々の積み重ねが結果として現れるにすぎません。選挙に王道なし。寸暇を惜しんで、とにかく有権者の皆さんのお声を伺うことに、全力を注いでほしいと思います。
国民が実感できる政策を進める
丸川なるほど。まさに日々培ってきた経験から出てきたお言葉だと思います。最後に、令和3年の菅自民党、ここに注目してほしいという点は。
菅国民の皆さまに、実感を持ってもらえる形で、さまざまな政策を進めていきます。
今年は、デジタル庁が始動し、国民の皆さまのマイナンバーカードが保険証として使えるようになり、行政の押印は99%以上を廃止します。
不妊治療は、助成制度の所得制限を撤廃した上で、助成額の上限を2回目以降も、今までの倍の一律30万円で6回まで、2人目以降の子供でも同様とします。すぐに実施できるよう、補正予算に盛り込んでいます。不育症の検査やがん治療に伴う不妊についても、新たに支援を行います。
携帯電話の料金についても、大手のうちの1社で、大容量のプランについて、2年前に比べて7割程度安い、20ギガで2980円のプランの提供が始まります。
今年も、国民の皆さまにとって何が「当たり前のこと」なのかをしっかりと見極め、国民のために働く内閣として、政策をスピード感を持って実行に移し、結果を出していきたいと思います。
丸川分かりました。菅総裁のスピード感に応えて、われわれ広報本部も、国民の皆さまに成果を実感していただけるような広報に努めてまいりたいと思います。
菅そこもしっかりお願いします。本日はありがとうございました。
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