
少子高齢化が進む中で、公的年金制度のメリットをより多くの方が享受し、将来的にも安心な年金制度を構築するため、年金制度改革に取り組むこととしました。具体的には、以下の2つの法律が平成28年12月に成立しました。
→公的年金制度のメリット享受に関わる措置
→制度の安心に関わる措置
「年金改革法」
将来の年金を増やすため、これまで501人以上の大企業で働く短時間労働者のみに認められていた厚生年金への加入について、500人以下の中小企業で働く短時間労働者の方も加入可能に
国民年金に入っている女性について、産前産後の期間(4か月)は保険免除
世代間の公平の観点から、年金の支え手である現役世代の年金水準を確保するため、年金額の改定方法を見直し
(①マクロ経済スライド調整の見直し、②賃金変動に合わせた年金額改定(賃金スライド)の徹底)
年金の積立金を運用する機関(GPIF)のガバナンス体制を強化
「受給資格期間短縮法」
無年金対策として、受給資格期間を25年から10年に短縮する措置を平成29年度中に実施
(平成29年8月実施、年金の支給は同年10月から)
(注1)
- ①「マクロ経済スライド調整」
マクロ経済スライドによる調整について、現在の受給者に配慮して、前年度より年金額を下げる調整は行わないが、物価・賃金が上昇したときには、過去の未調整分を繰り越して調整する仕組み(キャリーオーバー)とする(平成30年4月~)。 - ②「賃金スライド」
仮に将来、賃金が名目でも実質でも下がるような望ましくない経済状態が起きた場合でも、現役世代が将来受給する年金水準が低下しないよう、賃金(名目)の変動に合わせて年金額を改定する。
ただし、経済が正常な状態で、賃金と物価が上がっている状況では、年金額が下がることはない。
また、このルールは、低年金・低所得の方への配慮として、福祉的な給付(最大年6万円平成31年10月~)が始まった後、施行される(平成33年4月~)。
年金額改定ルールの見直し
(賃金スライド)に関するQ&A
今回の法律は、若い世代の年金水準を確保するものだときいたのですが、本当ですか。
はい、そのとおりです。今回の法律は、世代間の分かち合いである年金制度において、若い世代の将来の年金を守るための仕組みを整える法律です。
ただ、そもそも経済の状態が良く、賃金と物価が上がっている状況では、今回のルールが影響することはなく、そのためにも、安倍政権はデフレ脱却や賃金の上昇に全力で取り組みます。一部の野党は、この法律によって「年金額がすぐに下がる」といっていますが、そのようなことはありません。
また、低年金・低所得の方への配慮として、福祉的な給付(最大年6万円、平成31年10月~)を始めたあと、この見直しは平成33年度から実施するものです。
なお、この「福祉的な給付」を満額(年6万円)受給する場合、基礎年金(年78万円)の約8%に相当します。
年金のルールはどう変わるのですか。なぜ今、改正するのですか。
この法律は「将来の年金水準確保法」です。
年金は現役世代に支えられている、「仕送り」の仕組みであり、世代間の分かち合いです。
過去に賃金が下がった際に、それに見合った年金額にしなかったため、現役世代は、賃金も下がり、将来受け取る年金も低くなるという"二重の苦しみ"がありました。そのため、世代間の公平を確保し、将来世代の基礎年金の水準を確保する観点から、賃金が名目でも実質でも低下する場合は、賃金の変化に合わせて年金額を改定(賃金スライド)するよう、見直しを行います。
安倍政権では賃金上昇を含む経済再生に全力で取り組みます。
賃金と物価が上がっている状況では、年金額が下がることはありません。
年金は、50年、100年と非常に長く続く制度ですので、大きな経済の動きが万が一あったとしても、それに対応できる仕組みをあらかじめ整えます。これによって、年金制度の持続可能性も高まります。
(参考)民主党政権時でも、見直しの必要性が認識されていました!
- 民主党の年金制度案(注2)においても、年金額改定ルールは賃金への連動を基本としており、物価と関係なく、賃金が下がった際には、年金額も下がります。
- 平成24年5月30日・社保特命委における岡田副総理(当時)の答弁。
「マクロ経済スライドをどうするか。確かに、この調整をやらないで先送りすれば調整幅が大きくなるのは御指摘のとおりで、それは、世代間で言えば、先の世代ほど負担が重くなるわけですから、やはり物価が下落しているときでも同様の考え方を可能なようにするというのが私は正しい方向だというふうに思っております。(略)しかし、考え方としては、それは物価が上がった下がったに関係なくやっていけるような仕組みをやはり議論すべきではないか、そういうふうに思っております。」
(注2)平成24年2月10日に民主党「社会保障と税の一体改革調査会総会」に提出された新制度案
年金改革法に関するQ&A
- Q1. 年金改革法の趣旨は何ですか?
- Q2. 今回の改正で何が変わるのですか?(中小企業の短時間労働者への被用者保険の適用拡大)
- Q3. 今回の改正で何が変わるのですか?(国民年金の産前産後期間の保険料免除)
- Q4. 今回の法律は、若い世代の年金水準を確保するものだと聞いたのですが、本当ですか?
- Q5. 今回の法律に対して「年金カット」という批判がありますが、本当ですか?
- Q6. 年金額の改定ルールはどう変わるのですか?
- Q7. なぜルールの見直しを行うのですか?
- Q8. デフレからの脱却を目指すのであれば、ルールの見直しは不要ではないですか?
- Q9. 低所得者にはどのような配慮がなされているのですか?
- Q10. 今回の改定ルール見直しは突然出てきた話ですか?
- Q11. マクロ経済スライドとは何ですか?どのような見直しですか?
- Q12. なぜGPIFの組織の見直しを行うのですか?
- Q13. 年金積立金の運用成績がマイナスになったそうですが、私たちの年金額に影響しないのでしょうか?
1.年金改革法の趣旨
年金改革法の趣旨は何ですか?
- 公的年金制度のメリットをより多くの方が享受できるようにします。
- 制度の持続可能性を高め、将来世代の年金水準の確保を図ることによって、将来的にも安心な年金制度を構築します。
2.中小企業の短時間労働者への
被用者保険の適用拡大
今回の改正で何が変わるのですか?
今回の法律は、中小企業等で働く約50万人の短時間労働者に被用者保険(厚生年金・健康保険)への加入の途を開きます。
3.国民年金の産前産後期間の
保険料免除
今回の改正で何が変わるのですか?
- 国民年金第1号被保険者(自営業者等)は、産前6週間、産後8週間に相当する4ヶ月間、国民年金保険料が免除され、満額の基礎年金が保障されます(対象者は約20万人の見込み)。
- この財源は、国民年金の保険料を月額100円程度引き上げ、広く国民年金全体で対応します。
4-1.年金額改定ルールの見直し
(賃金スライド)
今回の法律は、若い世代の年金水準を確保するものだと聞いたのですが、本当ですか?
- はい、そのとおりです。この法律は「将来年金確保法」です。
- この法律は、支え手である現役世代の賃金が低下した場合に、これに合わせて年金額を改定することにより、世代間の公平を確保し、若い世代の将来の年金水準を確保します。(「年金の分かち合いを強化」)
今回の法律に対して「年金カット」という批判がありますが、本当ですか?
- いいえ、ちがいます。
- 安倍政権はデフレ脱却や賃金上昇を含む経済再生に全力で取り組んでいますが、万一、不測の経済状況が起きた場合の備えとして、将来世代の年金水準を確保するための仕組みを整えます。
- 賃金と物価が上がっている通常の経済状況では、今回のルールが発動されることはなく、年金額は下がりません。
- 今回の年金額の改定ルールの見直しは平成33年度からですが、その前の平成31年10月から、低年金・低所得の方への配慮として、新たに「福祉的な給付」(最大年6万円)をスタートします。
年金額の改定ルールはどう変わるのですか?
- 年金の支え手である現役世代の賃金が低下しているときは、これに合わせて年金額を改定するよう、ルールの見直しを行います。
- 具体的には、物価に比べ賃金が名目でも実質でも低下する場合には、賃金の変化に合わせて年金額を改定(賃金スライド)するよう、年金額の改定ルールを見直します。
- 安倍政権はデフレ脱却・賃金の上昇に全力で取り組んでいますが、年金は長期の制度ですので、万一の経済状況に備えた仕組みを整えます。
なぜルールの見直しを行うのですか?
(これまでのルールの問題点)
- 現役世代:過去10年間のデフレ下で、賃金が下がったため、将来受け取る基礎年金が1割程度低下の見込みです(所得代替率:28.4%→26.0%)。
- 年金受給者:年金額が賃金に連動しなかったため、基礎年金は本来の水準よりも1割程度上昇しました(所得代替率:33.7%→36.8%)。
(解決策)
- 万一、賃金が下がる経済状態の場合でも、将来世代の年金の水準を守るため、現役世代の賃金の変化に合わせて年金額を改定するよう、ルールを見直します。
デフレからの脱却を目指すのであれば、ルールの見直しは不要ではないですか?
- 年金は、非常に長く続く制度ですので、想定外のことが起こっても対応できるように備えておくことが年金制度の安心につながります。
低所得者にはどのような配慮がなされているのですか?
- 年金額の改定ルールの見直しを行う前の平成31年10月から、低年金・低所得の方への配慮として、新たに「福祉的な給付」(最大年6万円)をスタートします。(年金額の改定ルールの見直しは平成33年度から実施)
- 「福祉的な給付」を満額(年6万円)受給する場合、基礎年金(年78万円)の約8%に相当します。
今回の改定ルール見直しは突然出てきた話ですか?
- いいえ、突然出てきた話ではありません。
- 民主党政権下で閣議決定された「社会保障と税の一体改革大綱」(平成24年2月17日)に「デフレ経済下におけるマクロ経済スライドの在り方について見直しを検討」と盛り込まれていました。
- 今回の見直しは、民主党政権時からの課題に対して、具体的な解決策を講ずるものです。
4-2.年金額改定ルールの見直し
(マクロ経済スライド調整の見直し)
マクロ経済スライドとは何ですか?どのような見直しですか?
(マクロ経済スライドとは)
- マクロ経済スライドとは、少子高齢化が進行しても保険料の上限を固定した財源の範囲で給付費を賄えるように、平均余命の伸びや現役世代(被保険者)の減少を指数として、物価や賃金の伸びから差し引くことによって、数十年という長い年月をかけて年金水準を調整する仕組みです。
- 年金受給者に配慮して、前年度より年金額を下げる調整までは行わない措置(名目下限措置)をとっています。
(今回の見直し)
- 名目下限措置を維持しつつ、景気回復期に、過去から繰り越した未調整分を調整する仕組み(キャリーオーバー)を導入します。(平成30年4月~)
5.GPIF (年金積立金管理運用独立行政法人)のガバナンス体制の強化
なぜGPIFの組織の見直しを行うのですか?
年金積立金を運用するGPIFに対する国民の信頼を高めるため、外部の有識者による監督をより強化するものです。
年金積立金の運用成績がマイナスになったそうですが、私たちの年金額に影響しないのでしょうか?
- 年金積立金は、長期で運用しているので、短期的な運用結果が今受給されている年金額に影響することはありません。
- 運用成績は、最近の評価損を入れても、政権交代後、30.1兆円のプラスであり、年金財政にプラスの影響を与えています。