政策国会国会演説代表質問

第205回臨時国会における片山さつき総務会長代理代表質問 

自由民主党の片山さつきです。
冒頭、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々に心からお悔やみを申し上げます。また、闘病中の方、後遺症に悩む皆様にお見舞いを申し上げます。
私は、自由民主党・国民の声を代表して、岸田総理大臣の所信表明演説についてコロナ禍という国難をのりこえ、対外的には国益をきぜんと主張・確保し、内にあっては豊かで暮らしやすく一体感のある「富国・共生」社会を創る、との国家観に立って、質問をさせて頂きます。

まずは第百代総理へのご就任心より、お祝い申し上げます。今から32年前、広島JCの気鋭のリーダーでいらした岸田総理と西日本初の女性税務署長として広島におりました私がお会いする機会を得させて頂いたのがつい昨日の様です。それから時は流れて、2017年には、岸田政調会長に経済産業分野担当の政調会長代理としてお仕えさせて頂きましたが、広島の代表的な地場産業である自動車等製造業と下請け、安芸の宮島等世界遺産の観光産業、中国地方随一の飲食街等、中堅中小企業事業主の息づかいを常に"自分の事"として聞き続け政策に生かされている事に改めて感銘をうけました。

しかし総理、日本全国の景気は、まだら模様ではありますが、かなり厳しい状況です。ホテル・旅館もタクシーもバスもコロナ前のマイナス5割から9割減、もみじ饅頭の売り上げも7割減です。これらのコロナ直撃業種に加えて、全国各地で商工会議所、中小企業団体中央会、持続化補助金や給付金を手伝って下さっている税理士会や行政書士会、地銀、信金、信組の方々とまさにひざを交えてこの数カ月、状況把握に奔走して参りましたが、雇用調整助成金の特例と無利子無担保融資で何とか今日まで持ちこたえてきている大量の企業・事業主の命綱が、今手を打たないと年内にも切れてしまうかもしれません。

私が委員長をつとめます金融調査会・地域金融小委員会では、1年近くかけて継続的に料理飲食、鮨、麺類、食品や酒の卸、冠婚葬祭団体、観光・リムジンバス、タクシー、全国ホテル協会、日本旅館、直接窮状を何度もお伺いしてきました。まず大前提として、コロナ禍による売上減少は経営責任ではありません。「コロナ前に黒字だった借り手はその状態で信用査定してほしい、6000万円ないし3億円の限度額まで借りられる様にしてほしい」あるいは「コロナ禍進行中の事業年度について借り手から求められたら返済要求を一切行わないでほしい」などをこの1月から要請し、緊急事態やまん延防止等の再発令の度に念押し、この8月にも申し入れを行っています。日本公庫の無利子無担保融資と、私たちが政府に提言して作っていただいたいわゆる民間金融機関のゼロゼロ融資の累計は53.1兆円に達しており、昨年のGWには休日返上で窓口を開けて対応していただいたことに心から感謝申し上げます。

しかしこのうち大半の43兆円は昨年貸されたもので、特に夏頃から運転資金が底をつき、追加融資を借りようとしても断られたりカットされる例が多いと言われてきております。残念ながら金融庁の調べでは「資金ニーズがそれほどない」とされています。3月に一旦打ち切りましたゼロゼロ融資の4月からの後継であります伴走支援型融資は「信用保証付与が100%でないので、今年の決算の赤字があまりに大きすぎて支店の融資担当者が萎縮してしまっていて貸せない」「コロナで正確な数字が出せないのに事業計画の提出が必要なのはきつい」「信用保証協会にカットされた」と、特に観光地域の金融機関のトップからは、事実上のゼロゼロ融資の部分的な再開、あるいは雇用調整助成金の特例をコロナから抜け出す見通しがつくまでの延長、事業再構築補助金の倍増等を求められております。
さらに全国あらゆる食のジャンル9万件のお店の要望をとりまとめている「日本飲食団体連合会」からは、収入の数倍から十倍を超えるような過剰債務化してしまう場合に債務の負担軽減・事業再生スキームも切望されております。

コロナは限りなく空気感染に近いエアロゾル感染とのご指摘が強まる中、更なる換気・空気清浄、空間除菌等追加的な設備投資も営業の本格再開に伴って当然必要になり、もともと売り上げがダウンしてきつい状態の事業主ばかりですからここにも助成をしないと恐らく無理でしょう。今申し上げたように直接、国民各位からうけたまわったお声を形にする実行力こそ、自民党の強さであります。今は財政指標の一時的な悪化にこだわるのではなく、「コロナで傷んだ人・企業を回復させる財政出動を行うべきときだ。」これは私が昨年OECDのグリヤ事務総長に質問をして、直接答えて頂いたOECDのトップの言葉です。これこそまさに総理が所信表明で仰った「経済あっての財政」であってぜひ信念を貫いて大型経済対策を作って頂きたいと思います。

岸田総理がご指示された、経済対策の中で、感染症拡大によって明るい展望を持てない様々な業界、そしてコロナ禍の影響を受けやすい女性や非正規労働者の方々など、困難に直面している国民の皆様への大胆な対策や需要喚起策をどのように講じていくつもりでしょうか。全国知事会など地方六団体から要望の強い2兆円規模をこえる地方創生臨時交付金の追加も含めて総理のお考えを具体的にお聞かせください。

日本で唯一、外務大臣と防衛大臣をご兼務されたご経験を持つ総理に、わが国を狙うミサイル攻撃の阻止についてお伺いします。
北朝鮮は、核施設での再稼働の兆候、弾道ミサイルや巡航ミサイル、さらには9月28日に発射したと主張している極超音速ミサイルなど、挑発的行為を止める気配が全くありません。
昨年末、政府は、レーダーの覆域や対空火器の射程の外から進行部隊に対処するために、1000キロ射程の陸海空用のスタンドオフミサイルの開発について閣議決定しております。
しかし、北朝鮮が、巡航ミサイル、極超音速ミサイルで迎撃システムに打撃を与えた後に軌道を変動できるよう弾道ミサイル攻撃を加えることができるような準備までも進めているかもしれない中、迎撃システムだけで国民を守り抜けるのでしょうか。2003年の暮れに弾道ミサイル防衛システム導入を閣議決定した時に、私は財務省主計局で担当しておりましたが、飛行高度地上わずか数十キロのミサイルなど当時は全く想定外でした。まさにゲームチェンジャーが現れており、大変な脅威です。岸田総理は、総裁選中、敵基地攻撃能力は有力な選択肢であり、国民の命や暮らしを守るため、議論したい旨発言され、所信表明でも「国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防」の改定方針を打ち出されました。

そこで具体的により長い射程を持つスタンドオフミサイルや無人機、移動式発射台を検知できるレーダー、さらには電磁波などの敵基地攻撃能力の保有についてどのようにお考えでしょうか。また、北朝鮮の挑発的行為を止めさせるためには、国際社会が一致して国連の安保理から強いメッセージを打ち出すことができるようにすべきですが、このことも含め、総理はどのように外交努力を展開するお考えなのか、総理のお考えをお聞かせください。

拉致問題、そして弾道ミサイル発射等の挑発的行為に対処する上で、韓国との関係は極めて重要です。しかし、日韓関係は旧朝鮮半島出身労働者や元慰安婦を巡る問題で冷え込んでいます。東京オリパラでも、選手村の食事について、福島県産品を食べないよう指導するというあってはならない理不尽極まりない行動も見られたということです。

関係改善のためには、韓国側が旧朝鮮半島出身労働者や元慰安婦を巡る問題を解決するための行動を取る必要があります。しかし、韓国の地裁で日本企業の資産売却命令が下されるなど、1965年の日韓請求権協定で「解決済み」にもかかわらず、国際法を無視する対応が続いております。
総理は外相時代、タフな交渉の末、慰安婦問題日韓合意で「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」というところまで至らせました。総理となられた今、わが国の原理原則を曲げることなく、毅然とした態度をとり、日本企業の利益を守ることを大前提に、日韓関係を再び未来志向のレールにどのように戻していくつもりでしょうか。お伺いします。

私は、昨年の予算委員会で、中国の国家安全維持法の施行を受けて、香港の国際金融都市としての地位が必ず揺らぐであろうから、日本が香港の高度人材をきちっと受けいれて、もう一度、国際金融センターを目指してはどうかと、質問し、骨太の方針等にも世界・アジアの国際金融ハブとしての国際金融センターの実現を目指すと明記して頂いております。
自民党の外国人労働者等特別委員会においても、一体何がボトルネックなのかを集中的に詰めまして、高度な金融知識を持つ外国人材を呼び込む方策も提言にまとめました。すでに全部英語で対応できるワンストップの受入れセンターがすでに設置され、東京はこれを機会にグリーンファイナンス市場やシティオブロンドンとの協力を模索し、大阪は神戸とも連携しつつ推進委員会を設立、福岡では香港の資産運用会社を含む海外企業2社をすでに誘致しております。この国際金融都市への岸田総理の推進方針をお伺いします。

香港で国際金融機能維持への懸念が大きくなった要因は、自由・民主主義・人権の尊重・法の支配という人類共通の理念、普遍的価値が貫徹されない、しっかりと守られないことへの不安と恐怖です。そして、世界を見回せば、新疆ウイグル自治区、チベット、内モンゴル自治区、ミャンマーなどでは、信教の自由への侵害、閣僚や中銀トップまでの強制収監、獄中死も報じられるなど、深刻な人権侵害が発生しています。今こそ毅然とした態度を示していかなければなりません。これらについては参議院でも是非何らかの決議を行う事が出来ればと望む次第です。
ウイグルやチベット、香港、ミャンマーなどでの人権侵害・弾圧への我が国の対応について、総理に伺います。

中国による尖閣諸島沖の接続水域への進入が続いています。「尖閣諸島を守る会」の顧問を長年つとめておりますので、同志の方々からは緊迫した映像が都度都度入ってきております。
日本の主権を侵害し、国際法に違反しているこの行為に、海上保安庁は領海外への退去を求め続けていますが、海上保安庁の1000トン以上の大型巡視船は69隻。これに対し今や人民解放軍傘下となった、中国海警局は昨年末で131隻と2倍であり、しかもここ10年近くで3倍以上に増強しています。武器使用権限を明記した海警法も今年2月に施行されている中で尖閣諸島周辺海域や南シナ海における一方的な現状変更が着々と試みられているのです。中国の海洋進出に危機感を持つ国との連携強化等を通じた外交努力の強化はもちろんですが、ヘリコプター搭載が可能な大型巡視船の増強や初めての無人航空機の導入など、海上保安庁の装備の強化に一層取り組むべきと考えますが、総理のご所見を伺います。

経済安全保障上、データーやサーバーをどこに置くのかは非常に重要な問題となっています。
このデータ・サーバーローカライゼーションの問題については、私も国会で確認質問させていただき、TPP、WTO、日米デジタル貿易協定いずれにおいても、ガバメント、つまり国・地方の政府・準行政による発注や安全保障上にかかわる発注には例外規定が設けられ、国産や国内設置を条件とすることも理論上では可能です。DFFT・データ・フリー・フロー・ウィズ・トラストの大原則を掲げつつも、のちほど触れされていただく5Gネットワークや高速wi-fi網を張り巡らして自動運転・配送・ギガスクール・遠隔医療を総合的に進めるスーパーシティ構想では、サイバー攻撃の危険性を意識した経済安全保障に配慮して、もともと高い技術を有している日本の情報通信系企業の活用と競争力の一層の強化、所信表明でもふれられたデータセンターの国内整備等を図ることが不可欠ではないでしょうか? この点についての総理のお考えを伺います。

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、インターネットを介したコミュニケーションやサービスが増加し、これに伴いコンピュータや通信機器市場が活況化、半導体需要も急速に拡大し、世界的に供給力不足が露呈しました。また、感染症拡大による工場操業の停止や、米国や日本での工場の火災や停電事故も、一時的に不足に拍車をかけています。半導体は「産業のコメ」と呼ばれて来ましたが、5Gやデジタル、人工知能の時代においては、死活的に重要な戦略基盤技術として「産業の心臓」であるとの発想に転換すべき時ではないでしょうか。

台湾や韓国、中国などは人材育成や企業の回帰誘致、産業育成策の導入を、米国や欧州はアジアへの依存を軽減するため、自国の生産能力強化に加えて、企業に対する生産拠点誘致を実施しています。このような状況を受けて、具体的にどのような手段を用いて、国内に半導体のサプライチェーン、生産拠点を取り戻していかれるおつもりでしょうか。総理の考えを伺います。

2050年までに脱炭素社会を実現し、温室効果ガスの排出を実質ゼロにするとの日本の目標は総論としては内外では非常に高く評価されています。しかし現場のレベルではこの先10年の事業転換や雇用維持に、不安の声も聞かれるのが現実です。そうしたお声を踏まえて先月、自民党に「自動車立地議員の会」を立ち上げました。 関連産業を含めて自動車産業の就業人口は約540万人、輸出総額の2割、研究開発投資3兆円とわが国の経済と雇用を支える屋台骨であることを考えれば、EV電気自動車のみの一本足打法ではなく、動力源と水素等のエネルギーを最適に組み合わせて、多様な道筋を示すことで、関わっている方々や地域の不安を和らげ、明るい展望が持てるカーボンニュートラル化を示すことが不可欠ではないでしょうか?

2050年カーボンニュートラルは、全ての国民が共感を持って取り組まないととても達成できない国民的社会運動でもあり、エンジン周りの部品産業が円滑に事業転換でき、そこで働く人々が失業なく労働移動できる道筋を政治が責任を持って示さなければ、腰砕けになってしまうおそれすらあります。
そこで、地域の自動車サプライチェーンに携わる皆様が前向きにカーボンニュートラルに取組んでいけるような、総合的な戦略について、総理にお尋ねいたします。

二酸化炭素と水素を合成して製造するe-fuelは、大気中の二酸化炭素を直接分離回収する技術などにより二酸化炭素を資源として利用するカーボンニュートラルなエネルギーであるとともに、わが国の優れた内燃機関エンジンや現有のガソリンスタンドネットワークを活用できるという圧倒的な利点があります。岸田内閣では、このe-fuelの技術開発支援、併せてガソリンスタンドを含めた既存のエネルギーインフラの維持・発展をどのように進めていくのでしょうか。総理のお考えをお聞かせください。

将来に明るい展望を持つことができなければ、自動車産業を支える技術者や技能者のなり手がいなくなる懸念があります。特に今般、車検などを行う国家資格・自動車整備士の担い手不足このことによる問題が顕在化し、深刻となっています。
また総理が所信表明でおっしゃられたエッセンシャルワーカーの中でも介護・保育等には構造的な低賃金状況が存在し、他にも社会や生産活動を支えている、あらゆる業種において、将来の展望を示すと同時に早急に給与や勤務体制等の改善など処遇改善を進めるべきと考えます。所信表明でおっしゃった「公的価格評価検討委員会」の具体的な内容を含めてどのように取り組まれるお考えでしょうか。介護、保育、タクシー・バス・トラックのドライバーあるいはリサイクル清掃や様々なエッセンシャルワーカーの皆さまのご努力に向けた岸田総理の力強いメッセージと具体的な政策をお願いします。

将来にわたって日本社会全体を活力あふれる国にしていくためには、地方創生を何としても成し遂げなければなりません。私が地方創生と規制改革などを兼ねた閣僚を務めていたときに、「地方創生には最先端技術を用いた都市を地方に作り、地方創生と規制改革の住民へのメリットを見える化しよう」と考えるに至りました。都市のデジタル化や先端技術の導入を行うためには各省庁タテ割りの個別の未来技術の実証特区といった「個別最適」ではなくて、市民目線でまちをまるごと人生100年安心なありたき未来の都市にする「全体最適なまちづくり」こそが適していると考えて、スーパーシティ構想に至ったわけです。その後、国家戦略特区法改正として成立致しました。2021骨太の方針・成長戦略では、スーパーシティを起点に、スマートシティ重点整備地域を選定、2025年度までに全国になんと100か所と更に拡大路線が描かれるようになっていますが、都市DXデジタルトランスフォーメーションを全自治体に広げることができれば、まさに岸田総理の目指されるデジタル田園都市国家を創り上げることができるはずです。

同時に地方でのDX人材の育成を進めることができれば、東京にしかなかったはずの良い職場、高等教育の場が地方でも十分に可能ということになり、過度な東京一極集中のベクトルが変わるはずです。
地方移住がなかなか進まない背景には、お子さんの教育環境、医療・介護への不安がありますが、これも遠隔教育やオンライン診療・遠隔診療でハイレベルなサービスを受けることができるとなれば、解消ができるはずです。まさに岸田総理がご提唱なさるデジタル田園都市国家構想の実現こそ、スーパー・スマートシティ構想の着実な推進の延長でやり遂げることができるはずです。北海道から沖縄まで31もの自治体が非常に熱心に応募してきており、第二次締め切りは明後日10月15日です。提案自治体と国との連携の下、早期に区域指定すべきと考えますが、岸田総理はデジタル田園都市国家構想の実現に向けてスーパーシティ・スマートシティ構想をどう活用していかれるおつもりでしょうか。お伺いします。

日本で成長戦略の核となるべきデジタル化がなかなか進まない要因は、その担い手となるデジタル人材の絶対量が不足し、かつその7割がITベンダー内に偏在していることにあります。デジタル競争力ランキング・人材のデジタル・技術スキルが世界主要63か国中62位、という惨状に、強烈な危機感を感じて、デジタル社会推進本部のもと、デジタル人員・人材育成・確保小委員会をやらせていただき、まとめられたものが、骨太の方針にも盛り込まれております。内容は2025年度までに官民で175万人の養成のためスキルの標準設定、オンライン教育サイト、コンテンツ、標準カリキュラム、OJTプログラム等を提供し、産官学金で人材を交流させる社会全体のデジタル人材育成の基盤となるようなデジタル人材プラットフォームを構築し、地域ごとに特色のある産業構造や大学に配慮し、「地域包括DX推進拠点」を設けること等ですでに日本中あちこちで手が上がり始めています。

そこで、新政権においてデジタル田園都市国家構想を進めるに当たり、極めて重要なデジタル人材の育成を具体的にどのように進めるお考えでしょうか。その際、地方大学・地域産業創生交付金や地方創生推進交付金の拡充や教育訓練給付、公共職業訓練、求職者支援訓練、人材開発支援助成金、生産性向上支援訓練等について、デジタル分野への重点化を行ってデジタル人材の育成を強力に後押しすべきと考えますが、いかがお考えでしょうか。

総理所信表明の第4の柱は人生100年時代の不安解消です。健康寿命の延伸を受けて、元気で働くご意思のある方々には定年以降も、現役時代の技術、技能、経験、そしてお知恵を生かして貢献していただくことが大変重要です。
百歳以上の高齢者の方々は今や、86,510人、人生百年は現実となりました。中小企業では、すでに65歳を超えて70歳以降も元気なうちは働いてほしいという流れになってきています。
今や自分で定年を選ぶ時代で、機械的に年齢で定年を迎えるというかたちは今日、だんだん時代に合わなくなってきているのではないでしょうか?さらに高齢者の方々の仕事内容も変わってきています。従来、全国70万人を抱えるシルバー人材センターでは、高齢者の仕事と言えば、植木選定や清掃、駐輪場管理といった軽作業が中心でしたが、ホワイトカラー層が現役時代に培ったパソコンスキル等をアップデートできれば、地域のデジタル化の推進力となります。

また、地域社会を支えてきた全国約30万の自治会・町会・町内会は、まさに総理が所信表明で仰った「この国のかたち」の原点の一つであります。しかしながら役員の高齢化、若年層の未加入、新型コロナの影響などにより運営や存続が困難な状況にあるとの悲痛な声が、今年の2月、全国市議会議長会から寄せられました。
この要望・提言に大きな勇気を頂き、背中を押されまして自民党議員連盟「自治会・町会・町内会を応援する会」を、この6月に立ち上げましたが、今般、岸田総理にもご加入いただき、今日現在、会員議員は優に100名を超えています。
日本のデジタル人材が集中していると言われているITゼネコンからは、累積おそらく10万人規模のOBが、退職後、地域に戻っておられ、もしもこの方々を自治会・町会・町内会に巻き込むことができれば、村井純教授がかねてからご提言の"DXお助け隊"として地域のデジタル化を支える大きな力となり総理がおっしゃる"誰も取り残さないSDGsなデジタル化"の成功のカギとなって参ります。
このように、地域のデジタル化も老・壮・青と地域コミュニティの絆の力を呼びおこすことで進めていくしかないとの認識の下、地域のデジタルリテラシーの向上、デジタルを活用した助け合いを進めるために、岸田政権において、シルバー人材センターや自治会・町会・町内会という既存の組織にどのような新しい役割を期待していくのか、御見解をお聞かせください。

「台風そして長期の前線停滞による千ミリ級雨量は残念ながら常態化している。」多くの首長・議員の方々とお会いするたび、こういう話になります。かねてから進めてきた河川水系の強靭化は一定奏功してはおりますが、堤防等の整備があとわずかというところで間に合わなかったり、あるいは、想定を上回る水害の激甚化・頻発化により、堤防が壊れたり、水が堤防を越えたりすることがなくても、内水氾濫が多発しております。
このため、防災減災・国土強靱化計画の拡充は急務でございまして、地域の絆やデジタルを生かした避難行動、災害レッドゾーンとイエローゾーンの棲み分けの強化、福祉との連携等組織横断的な災害対応などにも合わせて取り組むべきと考えますが、岸田内閣での防災・減災・国土強靱化について、財政や税制の面も含めての方針を伺います。

「女性活躍」の担当大臣をも拝命していた1年間、女性が生きづらさを抱えている組織、地域、社会、そして国のままでは、そもそも持続可能性はないとつくづく痛感致しました。
そこで「多様な困難に直面する女性に対する支援等に関する関係府省連絡会議」を立ち上げさせて頂き、政府内のヨコ串を強化させて頂きました。
すべての女性が、自らの希望に応じて、個性と能力を十分に発揮できる社会の実現を目指して、「地方創生」、「女性活躍」双方のシナジー効果を意識しながら、指導的地位に占める女性の割合の向上、理工系女性人材、いわゆるリケジョの育成、そして継続就業のための両立支援体制の整備、男性の意識や暮らし方の変革、女性に対するあらゆる暴力の根絶に取り組ませていただきました。

ただし、いずれも全く道半ばであり、さらに強力に施策を展開していかなければなりません。今回の新型コロナウイルス感染症の拡大により、非正規の女性雇用者は男性の二倍以上減少し、また自殺者数も女性の方が深刻化しているように、女性に大きな精神的、経済的負担を及ぼす問題も露呈しています。他方、女性のデジタル人材へのニーズは潜在的にはとても高く、国際的に比較してもデジタル職はオンライン、テレワーク等時間の融通がききやすいので、本来女性向きでもあると考えられているのですが、下請の低賃金が本当に大きなネックとなっています。先日、静岡で中堅IT企業経営者に「大手ITゼネコンが200万円で受け負ったプログラミングはここには85万円でおりてきます。」と言われて生々しくショックを受けました。これではそもそも情報工学系への道をあきらめる若者が男女ともに出てきても当然で、下請け取引の是正はこの分野において全く急務であります。

いずれにしても総合的にみて、女性が直面する困難な課題を政府としてタテ割りを排して全力で解決していくという決意を感じられるような政策やそれに伴う予算への反映が岸田政権においては絶対に不可欠と考えます。総理の固いご決意とご所見をお伺いして、私の質問を終わります。

ご清聴ありがとうございました。