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「第25回公開憲法フォーラム」岸田総裁ビデオメッセージ(全文)
2023年5月3日

皆さんこんにちは。自由民主党総裁の岸田文雄です。第25回公開憲法フォーラムの開催をお慶び申し上げますとともに、憲法改正の実現に向け、それぞれのお立場で平素より熱心にご活動いただいている皆さまに心から敬意を表します。
さて、自民党は立党以来、憲法改正を党是としてまいりました。憲法の基本理念、すなわち国民主権、基本的人権の尊重、平和主義は今後も決して揺らぐことはありません。その一方で施行から76年が経つ。現行憲法には時代にそぐわない部分、不足している部分が生じているのではないでしょうか。憲法のありようを絶えず社会の大きな変化の中で見直していく、こうした姿勢が求められていると考えています。そのため自民党は憲法改正のたたき台素案として、「自衛隊の明記」「緊急事態対応」「合区解消」「教育充実」の4項目を挙げ、お示ししています。
自衛隊は大規模自然災害や新型コロナ等にも懸命に対応しており、国民の皆さまから感謝され、支持されています。今、力による一方的な現状変更の試みの深刻化や、北朝鮮による度重なる弾道ミサイルの発射など、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、自衛隊を憲法にしっかりと位置付けることは極めて重要なことだと考えます。
また、新型コロナへの対応、あるいはロシアによるウクライナ侵略を受け、緊急事態への備えに対する関心が高まっています。災害の時代とも言われる今、大地震等の緊急時において国民の代表である国会の機能をいかに維持していくのか。有事における迅速な対応を確保するため、憲法にどのような規定が必要か。国民の命と安全を守るため、真剣に議論を深めていかなければなりません。
さらには、参院選を巡る一票の格差の問題について、選挙区を人口だけで考えてよいのか。地方、地域の声をどのように国会に届けるのか。そして、誰もが質の高い教育を受ける機会を享受することができる社会の実現に向け、国の基本である教育の充実について、どのような理念を盛り込むのか。いずれの課題も極めて現代的な早期の実現が求められる課題です。
今国会では、昨年来の活発な議論を引き継ぎ、衆参両院で憲法審査会が開催されています。特に衆議院の憲法審査会では、緊急事態条項を明記する憲法改正を巡り、論点整理が行われるなど、議論を深めていただいています。憲法審査会において憲法改正に関する議論が重ねられていることを歓迎するとともに、今後も真摯に落ち着いた議論を重ねていただきたいと思います。
そして国会における議論と同時に、憲法改正に関する国民的議論を喚起し、国民の皆さまの理解を深めていかなければなりません。憲法改正は国会が発議するものでありますが、最終的には主権者たる国民の皆さまが国民投票で決めるものです。すなわち憲法改正の主役は国民の皆さまなのです。
自民党では、憲法改正実現本部やその下に設置した憲法改正・国民運動委員会タスクフォースが中心となり、全国各地できめ細やかに研修会や対話集会を開催してまいりました。私自身も2月の党大会前日の対話集会に参加し、これからの日本を支える若い皆さんによる取り組みを伺いました。今後も憲法改正の議論に国民の皆さまが主体的に参画する機会を積極的に設け、憲法改正に向けた機運をこれまで以上に高めていくことが重要であると考えています。
憲法改正への挑戦は決して容易なものではありません。これまでも多くの先達が挑みながら到達することができなかった道です。しかし社会が大きく変化する今だからこそ、われわれは挑戦し続けなければならないのです。
本日のフォーラムが多くの国民の皆さまが憲法改正について自らの問題として考え、大いに議論し理解を深めていただく。そうした機会となることを心から期待をしています。皆さん、共に頑張ってまいりましょう。