主な活動:各界各層との交流
CafeSta文化・スポーツイズム! 第2回
2016.02.24
収録日時:平成28年1月27日
今回のゲストは京都懐石料亭「菊乃井」主人の村田吉弘さん。お隣の滋賀県が選挙区となる二之湯武史青年局文化・スポーツ部長と、和食文化の可能性や若者へのメッセージなどユーモア溢れる関西弁で語っていただきました。
- 村田
- 世界中で和食ブームが起こっている
- 二之湯
- 皆さん、こんにちは。今日の午前中に引き続きまして第2回の『スポーツ・文化イズム!』。今日は食文化ツアーということで、お昼のお客さんは日本料理アカデミーの理事長であり料亭菊乃井のご主人であります村田吉弘さんにお越しをいただいております。村田さん、どうぞ。
- 会場
- (拍手)
- 村田
- こんにちは。
- 二之湯
- こんにちは。村田さんとは、もう何年ぐらいになりますか。
- 村田
- 15年はたっとるでしょう。
- 二之湯
- そうですね。15年ぐらいかもしれませんね。どうですか。
- 村田
- 何がです(笑)。
- 二之湯
- 私も成長しましたか。
- 村田
- いやいや、それは自分で言うのはおかしいでしょう(笑)。
- 二之湯
- 僕がまだ24〜25ぐらいのときだったと思います。本当に15年ぐらいたつわけですけれども。
- 村田
- うん。相変わらず男前ですけど。
- 二之湯
- いえいえ、もうだいぶ衰えました。村田さんも本当に、もちろん当時から京都では超有名人でしたけど、この十数年間というのは一気に、もう食の重鎮という立場になられましたね。
- 村田
- まあ、年と目方が増えただけで。
- 二之湯
- (笑)、実際、重たいという意味で重鎮。
- 村田
- そうそう。
- 二之湯
- 僕がなぜ村田さんと関係ができたかというと、今、村田さんが日本料理アカデミーという、日本食文化を主に海外に普及していこうという動きをされておられて、僕も実は十数年前にそういうことを考えていて。そういうところでしたよね、最初は。
- 村田
- そうですね。
- 二之湯
- 例えば去年でも、世界でどんなイベントをされていますか?
- 村田
- もう毎月のように世界へ出て行ってますから。文化遺産登録もかないましてから、すごい和食のブームが世界中で起こっているじゃないですか。ということは、第1次産業のもんが世界へ出ていくチャンスを作っていると。
- 二之湯
- ミラノの万博も行かれましたよね。
- 村田
- 3回行きました。暑かったですね。
- 二之湯
- そして今、ロンドンの全農さんの和食をやっておられます。
- 村田
- JAさんの。「トキメイテ」いう名前なんですよ。
- 二之湯
- (笑)、それ、ちょっと受けますけど。ロンドンのJAがされる「トキメイテ」という和食料理屋も、プロデュースされているということですよね。
- 村田
- そうです。
- 二之湯
- 例えば総理が海外に行かれたときの晩さん会や、国際会議の晩さん会とか、そういうこともされておられますよね。
- 村田
- はい。お声が掛かれば行ってます。
- 二之湯
- コーヒーや炊飯器のCMでも、よく村田さんのお顔を拝見するわけですけれども、海外に行かれてどうですか。この前、晩餐会の裏話をされてましたけど、日本人がおいしいと思うものが、例えばサシの入った和牛とか、日本人でもA5でめちゃくちゃ高いうまい肉が全然受けなかったんですよね。
- 村田
- いやいや(笑)。あまりファッティーな肉はヨーロッパの人は好まないみたいなんで、赤身で、ある程度の脂があるというほうがええみたいですよ。
- 二之湯
- A5はいき過ぎなんですね。
- 村田
- A5はちょっといき過ぎやなと。やっぱり内ももぐらいの感じがええみたいですね。
それから、口に入れたらとろけるほどおいしい、というのは駄目みたいです。何かこう、噛んでちゃんと肉の味がするというやつがええみたいですね。
- 二之湯
- ちょっと出てましたけど、赤身が好きと。最近、日本でも熟成肉とか赤身肉志向がありますね。
- 村田
- そうです。もう肉を食べるのに慣れてきた若い人らは、だんだん赤身になってくるというんですね。
- 二之湯
- そうですよね。私、別に慣れてないですけど、最近本当にサシのお肉とか全然食べられなくなって、赤身志向ですけど。
- 村田
- 胃、弱ってまんのや。
- 会場
- (笑)
- 二之湯
- ほんまに、こう見えても結構気遣ってるんです。
- 村田
- なるほど。
- 二之湯
- それが20代のころにできればもうちょっと良かったんですけど。
- 村田
- そうですね。いやいや、まだこの体型を保ってる間だけでも、20代の頃と変わりませんもんね。
- 二之湯
- そう変わりませんね。村田さんのように一回り大きくなる、肉体も一回り大きくなる。
- 村田
- そうです。もう僕の場合、15年違うたら15キロ変わりますからね。
- 二之湯
- (笑)、でもその当時と比べると、この和食を取り巻く環境というのは、本当に隔世の感がありますよね。
- 村田
- そうですね。先生のおかげで。
- 二之湯
- 私も当選して2年半ですけど、当選して間もなく、村田さんの思いを形にするということで食文化の議員連盟を作りまして。実は今まで、和食を文化ということで法律にしっかり明記しようという勉強会をしてたんですけども、これも村田さんにとっては感無量ですよね。
- 村田
- そうですね。やっとここまで来たなという感じです。それからもう今まで、食みたいなのは文化と違うというような目に何回も遭いましたから、やっぱり食を文化にしたい。それから周りの調味料を作ってはる人とか、もうみんなその文化の一環を担ってんやという意識を持ってほしいし、プライドも持っていただきたいなということから、やっぱり食は命ですから、一番重要な部分が一番文化の中に入ってないというのは何かおかしな感じがしてました。
- 村田
- 京料理という"帯"が紐にならないよう、若手を教育し、出る杭を引っ張っている
- 二之湯
- 別に村田さんが前にいるからお世辞言うわけではないですけども、村田さんの力がかなり大きかったというふうに思うんです。でも京都というところは人のことをいろんなことを言う人がたくさんおられますんで、村田さんもいろんなことを言われてるんじゃないですか(笑)。
- 村田
- そうです。いやもう、僕ら極端なこと言いますから周り敵だらけ。一歩うちの外に出ると7人の敵がいるといいますけど、味方7人ぐらいであとみんな敵ですね。
- 会場
- (笑)
- 二之湯
- 日本の社会というのは、何かを変えようとか何かを成し遂げようとすると、本当にものすごい抵抗というかそういうのがあって。それを地でいっておられるんで、村田さんは料理人であると同時に政治家の才能も、私はすごくあるんじゃないかなと思ってます。
- 村田
- いえいえ、それはないですけど。
- 二之湯
- どうですか、出馬のほうは。うちのおやじを引退させて。
- 村田
- いやいや、それまずいんやないですか。
- 二之湯
- (笑)
- 村田
- 20年で死にますけど、その下に、その次の時代の人らがいるわけで、その人らのために礎を築いておくのが、やっぱり自分の役目やと思うてますから。
- 二之湯
- 村田さんが、すごいなと思うところは、自分のことはもちろん、ものすごく後輩を育てている。料理界でも、自分の店の跡継ぎとか自分の店の料理人とかやったら別ですけども、全然違う、むしろライバル店の料理人で自分より後輩を、もうずっといろんな経験を積ませて育てるというところが大したもんやなと思うんです。そこにどんな思いがあるんですか。
- 村田
- うち、女の子しかいまへんでしたん。
- 二之湯
- お子さんは。
- 村田
- 子供が。
- 二之湯
- 今度結婚される、結構なことでございます。
- 村田
- ありがとうございます。僕ら先輩方にいろんなこと教えてもろうてここまで来たという思いがあるんです。そやから彼らを育てとくことが、次のうちの孫とかを、きっと彼らが育ててくれるんです。輪廻転生ではないですけども、京都というのはそういうふうに密な関係があります。親戚よりも同業者のほうが近いですもん。
- 二之湯
- 逆に。
- 村田
- はい。そして京料理という帯があるんです。これを放っといたらあほな息子いっぱい出てきますから、どんどん帯がひもになって、それが線になっていくわけです。そやから、それを何とか帯で保たないかんと思ったら、そいつらを教育していくことと、出る杭を引っ張る。
- 二之湯
- ああ、それはいい話ですね。
- 村田
- そやないと、どないしょうもないやつは、もう落ちていくしかないんで。
- 二之湯
- 相変わらず表現は過激なんですけども、その中身はもうそのとおりです。自分の家にそういう後継者が生まれてくれば、当然一番いいわけですけど、もしくはその店におられたらいいわけですけれども、京料理もしくは日本の食文化ということを全体考えたときに、やっぱり後輩をしっかり目を掛けて育てていく。我々の世界もそうなんですけど、いろんな業界で、そういうのがだいぶ最近なくなってきたような気がします。
- 村田
- 結局、自分の子どもがいると、自分の子どもに何か残しとことか、ええ目さそとかいう思いがどうしても起こりますからなかなか難しいんですけど、自分に息子がいいひんと、こいつら育てといて、うちの養子助けてもらおうとかいう思いになりますから、それは良かったと思います。
- 二之湯
- そういう意味では、さっきちょっと話ししてましたけど、赤坂、東京と京都でお店されてるにもかかわらず山形のお米をPRされると。
- 村田
- ついに「何でよその米、宣伝してんねん」と言われました。
- 会場
- (笑)
- 二之湯
- 「つや姫」でしたっけ。
- 村田
- 山形の「つや姫」を、CMに出てるんですけど。それで京都の知事が「何でよその米、宣伝してんの」と。
- 二之湯
- (笑)、滋賀県にも「みずかがみ」という、新しい品種改良でできたお米なんですけど、今度それもぜひまた菊乃井さんのほうで使っていただければ、売り上げが上がると思うんですけども。
- 村田
- 知事にも言うてたんですけど、何でやいうたら「お金に目がくらみました」と言うときました。
- 会場
- (笑)
- 村田
- お金さえ積んでもろうたら何でもやりまっせと。
- 二之湯
- 分かりました。それをうちの知事にも言っておきます。ということで、盛り上がってるわけなんですけれども。今さっき村田さんがおっしゃってたように、和食という文化が世界に広がっていくと、同時に物も売れていくと。
- 村田
- そうです。
- 二之湯
- 日本の和食やお酒を文化として売り出すことにロマンを感じている
- 二之湯
- 日本の農政ってどうしても、物を売ろうとしようとするんですよね。米とかリンゴとかホタテとか。それはそれでうまくいっている部分もあるんだけれども、現状、金額がやっぱり一桁ぐらい小さい。イタリアとかフランスとかああいう食の輸出大国というのは、やっぱりその文化を徹底的にプロモーションして、そういう食生活に憧れると。結果、ワインを飲むようになる、パスタを食べるようになる。こういうことを私たちもやっていかなくてはいけないなということを、ずっと昔から村田さんは言ってはりましたよね。
- 村田
- はい。大体バッジつけてるおっちゃんやらが頭、古過ぎる。
- 会場
- (笑)
- 二之湯
- いいですね。
- 村田
- そやから、もうちょっと先生みたいに若い人らに気張ってもらって、何か総合的に売っていくということを考えへんだら、日本酒だけ売ろうというても無理なんです。それから、日本酒も米も和牛も野菜も売りたいんです。そうやって広げていくためには、日本料理、和食というものを世界の一つの料理にしてしまうということが肝心なんです。
- 二之湯
- そうですね。それを私も、もうずっと十何年前からいろいろ教えていただいていて、ようやく恩返しができるポジションにきたのかなと思っています。
- 村田
- はい。ありがとうございます。そやけどもうすぐ選挙ですから、どうなるか分かりまへんやん。
- 二之湯
- 僕、次ですから。
- 村田
- ああ、そうか(笑)。
- 二之湯
- はい。その、ようやくその文化を売ることによって商品を売っていこうと、おっしゃるように若い議員がそういう政策を担当していこうということで、まさに今回小泉さんが委員長で、私がその輸出の主査というか事務局長で。もう一つは日本酒のほうの輸出振興もプロジェクトチームを立ち上げて、それも私が事務局長をやるんです。十何年語ってきたことがようやく形になりつつあるということで、私はすごくロマンを、実は勝手に感じてるんですけど。村田さん、どうですか。
- 村田
- はい。やっとここら辺で花が開いてきたなと。政府も、日本の食材も文化も本気で輸出しようというふうに思ってくれてはるということは、非常にここにきてありがたいなと思います。もう元気でいられるのがどんだけか分かりませんけども、とりあえず第1次産業の門を広げて、日本の国のために、また京都のためにももうちょっとは頑張りたいなとは思いますけどね。
- 二之湯
- ここ2〜3年、急激に外国人の観光客が増えてて、実は去年は2,000万人弱までいったと。今、菊乃井のお客さんというのは、外国人多いですか。
- 村田
- もう放っといたら全室、外人になるんです。
- 二之湯
- そんな多いんですか。
- 村田
- そうですね。そやから、ある程度外人はここら辺までという制限を設けてます。それから難儀なんは、うちらみたいに英語をしゃべれる人らをおいといても、今度は中国の人らには英語通じひんので。
- 二之湯
- なるほど。いろんな外国語に対応しないと。
- 村田
- そうです。結構いろんなとこでトラブるんですよ。
- 二之湯
- それは接客という、もう仲居さんというレベルでですね。
- 村田
- そうですね。接客のレベルでもトラブるし、向こうが思うてはったお勘定とこっちが思うてる勘定が違うたとかいうのもあります。それからみんな苦労しているところがあると思うんです。まずは予約を聞くというとこから。ほんまに来てくれはるかどうか分からへんという。
- 二之湯
- 確かに。
- 村田
- そやから何かこんだけ増えてくるとやっぱり、こういうルールでこういうふうに予約を取りなさいというふうな指導があると、非常にありがたいんですけどね。
- 二之湯
- なるほど。どこか中間業者が入ってリスク持ってくれるとか。何かそういう、店対客で直でやると、いろんなトラブルとかそういうものが多分出てくるかもしれませんね。
- 村田
- そうなんです。それで、何か日本の飲食店の気持ちにすると、すぐにカードの番号を送ってくれと、カードの番号だけ着いた時点で予約が確立すると、来いひんでも全部引き落とすよというようなんは、まだ来てもない人に金もらうのは嫌やなというような。そやけどそれって日本だけで、世界の常識に合わさないかん。それで世界の常識を全然知らん飲食店の亭主とかは、どこか市とか府とか政府から言うてもらわんと、なかなかそうはならへん。
- 二之湯
- それは確かに非常に切実な問題ですよね。お客さん増えたはいいけども、外人から予約入って何とか聞いたけども来えへんかったとか。
- 村田
- そうなんですよ。特に寿司屋さんとか8席とか10席でしょ。
- 二之湯
- 経営に大きく響く問題ですね。
- 村田
- そうなんですよ。それでこのころ京都の料理屋でも、うどん屋さんなんかでも、ワンパーソン、ワンオーダーって言うてはりますわ。2人で来てうどん1つをシェアしてはったり。
- 二之湯
- 1つしか頼まないと。
- 村田
- そういうことがあると、売り上げに大きく響くわけですね。
- 二之湯
- なるほど。人は来ているけれども、いろんな商習慣の問題とかサービスのやり方で、まだまだ課題はあると。
- 村田
- こんだけぎょうさん急に増えると。
- 二之湯
- でも菊乃井に行くお客さんって、正直、超高級料亭ですし、かなり層は限られるじゃないですか。だからそういうことはあまりないのかなと思ったんですけど、そうでもないんですか。
- 村田
- 京都の場合は、泊まっているホテルのコンシェルジュを通して予約をくださいと言ってるので。
- 二之湯
- なるほど。だからほとんどリスクはないですよね。
- 村田
- 東京でそれ言うと「当ホテルはそういうサービスはやっておりません」とホテルのほうから電話が掛かってくるんです。
- 二之湯
- なるほど。東京って感じですね。
- 村田
- 東京って感じですね。
- 会場
- (笑)
- 村田
- そやから、ホテルのコンシェルジュが泊まってる人の予約をちゃんと取るようにというようなことを東京でもやったら、東京の寿司屋さんなんか。
- 二之湯
- 喜ぶでしょうね。
- 村田
- 喜ぶでしょうね。何か外国語でしゃべった途端に「あ、切っとこ」って切らはりますからね。
- 二之湯
- ああ、まだまだ。
- 村田
- それでは、これからオリンピックに向かってどんどん外国の方増えていくじゃないですか。それを整備せんとなかなか難しいなと。
- 二之湯
- せっかくのビジネスチャンスが潜在的にあるのに、それをうまく取り込めないという。
- 村田
- そうですね。
- 二之湯
- 特にご夫婦だけでやってる居酒屋とかお寿司屋さんとか、そういうようなところは確かに厳しいでしょうね。
- 村田
- そういうところも、もうちゃんとガイドブックに載ってるんですよ。
- 二之湯
- 既に載ってしまってるんですね。
- 村田
- 載ってしまってるんです。そやから、そういうとこにもいらっしゃるんです。それを「あ、切っとこ」では具合悪いですよね。
- 二之湯
- こういう話は確かに非常に盲点だし、政策的には何かできるようなことがあるかもしれませんね。
- 村田
- ほんで僕らは献立、「これ何が出てくるか分からへんやん」っていうの、日本料理では普通ですわね。
- 二之湯
- それを嫌がるわけですか。確かに。
- 村田
- メニュー、献立くださいと言われると、日本の方やったら「出てきたときのお楽しみにしてください」と言えるんです。向こうの人は、自分が食うもんも分からんと金だけ請求されるのが分かってるというのは駄目なんです。
- 二之湯
- 説明責任を果たせということですね。
- 村田
- そうそう、ちゃんとみんなメニュー見せてくれと言わはるんです。食べられへんもんがあったらかなわんからって。
- 二之湯
- 契約やから、金払うんやったら、その契約書を見せろと。要は何が出てきて。
- 村田
- そうそう。そやけどそのときに英語のメニューってありますね。
- 二之湯
- 全部、用意せなあきませんわね。
- 村田
- 中国の人は中国のメニューないのかって言わはりますし。
- 二之湯
- それは言いますよね。
- 村田
- 今、京都の市長に言うてんのは、日本語のメニューを送ったら向こうで翻訳されて、中国語でお願いしますって言うたら、費用を取ってもええから返してくれるようなシステムできませんかと。
- 二之湯
- なるほど。それも民間事業者のビジネスチャンスかもしれませんね。例えば通訳とか翻訳とかやってるようなところが。
- 村田
- そういうことをやってもらえるとありがたいですよね。そんな1つ1,000円とか2,000円とか、そんな高いの嫌ですけども。その日によってメニューが変わるわけじゃないですか。
- 二之湯
- それは大変ですよね。
- 村田
- 大変でしょ。
- 村田
- 料理人の経験や勘ではなく、数値に基づいた日本料理のルールブックをつくる
- 二之湯
- なるほど。今、「二之湯さん、大津から応援してます」というのが来まして、ありがとうございます。すんません、全然関係ない話ですけど(笑)。実は大津にも村田さんの関係というか、仲いいお店がありますよね。
- 村田
- そうですね。
- 二之湯
- もう全国至るところに、村田さんを師匠とか村田さんを崇め奉ってる方々がたくさんおられて。それで僕「実は村田さんとすごい仲いいんですよ」とか言うと、絶対信じてもらえないんですよね。
- 村田
- いやいや(笑)。
- 二之湯
- どこの村田さんですかって話で。今日、これで関係性が分かったかなと思うんですけども。今日さっき、何回も言いますけど、勉強会をして、食文化をしっかり法律上文化と根拠付けようと、それによって食文化の継承であったり海外への普及であったり、もっとしっかり予算を取れて。そういうものが1次産業の輸出につながったり、外国人観光客のさらなる誘致につながったりとなって、今ずっと話してたような現場の問題が解決できれば。
- 村田
- もう現場の問題がいろいろと解決できることが出てくるんやろなと。
- 二之湯
- できれば、またこれはさらに日本の経済にとってもいいことですよね。
- 村田
- はい、そう思いますね。
- 二之湯
- 実はユネスコの世界遺産も村田さんが非常に尽力されて、結果としては指定を受けられたと。自分の事業という意味でも、そういう社会的な活動という意味でも、かなり大きな仕事をされてきたと思うんですね。この次は何かこういうのやりたいみたいな、具体的な目標があるんですか。
- 村田
- 今、ルールブックを作るのを。和食の、日本料理のルールブックを作るのは日本やないと、また柔道みたいなことになるでしょ。フランスではエスコフィエという人が集大成した本を作らはって。
- 二之湯
- 料理大全ですね。
- 村田
- 料理大全ですね。中華料理は中華料理大全がありますから、日本料理は日本料理の大全が要ると。そやから今、イントロダクション、プロローグ版はできましたけれども。
- 二之湯
- 見せていただきました。非常に素晴らしい格調高い書物でした。
- 村田
- はい。それで今、うま味と発酵調味料の巻を作ってます。それから、切るとか焼くとかいうテクニックを、今までみたいに「一口大に切って薄塩をしてさっと湯がく」では、それを英語に直しても何の意味もないんです。外国の方には分からへんです。そやからもうちょっときちっとした方法できちっと書く。そやから文系の熊倉先生と理系の伏木先生と、料理人とが一緒に作ってるんです。
- 二之湯
- つまり、要は今までの料理人の経験とか勘とかというものを、ちゃんと。
- 村田
- 数値に直して。
- 二之湯
- 学者、京大の先生とちゃんと科学的な根拠も付けて形にしていこうと、こういうことですね。
- 村田
- そうです。100年先も持つような本にせんと。それによって世界で、こんなん日本料理ちゃうやんっていうのは、それから言うてくださいと。今はもう、こんなん日本料理違うと言わんといてと。それまでは、何でも日本料理言うてもらうだけでありがたいと思ってもらわんといかんと。
- 二之湯
- そうですね。裾野が広がるわけですからね。
- 村田
- そうです。
- 二之湯
- 常に裾野が広がれば、ピラミッドの頂点というのは高くなっていくわけですから。そういう方法論で、今はもう何ちゃって和食とか言われてますけどそういうものも許容して、最終的にそういう、日本料理とはこういうもんなんだというものを、ぜひ世界の人に知ってもらいながら、どんどん質が上がっていくということを。
- 村田
- それから、せっかく日本料理やと言うてくれてはる人らをつぶさんでも、その人らに勉強してもろうて、全部ちゃんとした日本料理を作れるようになってもらうほうが効率的ですよね。そうすると日本のもんを買うていただけると。
- 二之湯
- そうですね。もう本当にお話しするたびに、いろんなことを考えておられるんで、頭の中どんなんなってんのかなと思うんですけども、私が言うぐらいやからよっぽどやと思うんですけど。
- 村田
- いやいや。もう、土台があまり良くない。
- 二之湯
- (笑)、例えば海外への進出というのはどうなんですか。
- 村田
- そやから全農さんがいっぱい店作っていこうと思ってはりますから。店、作ってもらうより、ほんまは流通のシステムを作ってもらうほうが僕はええと思うんですけども、なかなかあれなんで、獅子身中の虫になろうと思って全農と一緒にやってるわけです(笑)。
- 二之湯
- 今のもかなり過激な発言ですけども。まあ本当に。
- 会場
- (笑)
- 村田
- それから、結局メイフェアで、ロンドンのど真ん中で、地下1階、地上4階のビル自体を借りていただいて、地下1階、1階、2階と「トキメイテ」をやってるわけです。
- 二之湯
- そこだけがちょっと。何でそこまでで、「トキメイテ」なんだという。
- 会場
- (笑)
- 村田
- それ全農さんが決めたんですから。
- 二之湯
- ちなみにビバリーヒルズのステーキハウスは何て名前でしたっけ。
- 村田
- 「四季」。
- 二之湯
- 「四季」か。
- 村田
- 「四季」よりええでしょう。
- 二之湯
- 「四季」はフォーシーズンの四季でしょ。
- 村田
- そうです。
- 二之湯
- それでこっちは「トキメイテ」ですか。
- 村田
- はい。
- 二之湯
- 意味は分かってないわけでしょ。
- 村田
- いやいや(笑)。3階、4階に事務所があるんですけど。でもそういうふうに基地を各地に作っていって。
- 二之湯
- 世界の主要都市に。
- 村田
- その輸出するシステムを作ってもらって、日本の第1次産業を世界に広げる活動をしてもらうとありがたいなと。
- 二之湯
- そうなると、さっきちょっとお話にありましたけど、菊乃井のにゅうめんも世界に流通していく可能性あると。
- 村田
- 出ていく可能性が。なかなかEUの中に出そうと思うと、EUは非常に難しいんですよね。
- 二之湯
- そうなんですね。EUは本当に検疫が非常に厳しいですから。さっき出てましたけど、発がん性物質があるということで、かつお節も実はまだ持っていけない。
- 村田
- はい。
- 二之湯
- われわれ日本人は、毎日かつお節を何らかの形で摂取して、ほとんど別にがんになるという因果関係はないんですけどね。
- 村田
- そやね。
- 二之湯
- そういうものを世界では改めて証明しなければいけないという、この検疫というものは難しい。
- 村田
- いぶしたらタールがあれやからって、スモークサーモン食べてるやろってみたいな話ですけどね。
- 二之湯
- いぶしまくってるという。
- 村田
- そうそう。
- 二之湯
- サーモンだけじゃなくて何でもいぶしますからね。
- 会場
- (笑)
- 二之湯
- そういう、科学的に考えれば全く合理的じゃないんだけれども、国際社会でのまず法ありき、ルールありきだから。彼らは、実態はそうでも法的にクリアできていなければ駄目という。日本人が今までお人好しだったところが、非常に大きい課題として残ってるわけです。
- 村田
- 輸入してるもんと輸出してるもんのバランスを考えると、もうほんまに不条理な感じしますよ。
- 二之湯
- そうですね。日本酒なんかももっと本当は。
- 村田
- そうですね。
- 二之湯
- 大体去年で金額ベースで130億ぐらい。一方でフランスワインの輸出額は大体1兆円なので、今100分の1の水準です。村田さんは、実はあまり日本酒を飲まないですけども。
- 村田
- はい。ワイン飲んでますけどね。
- 二之湯
- (笑)、これ言ったら駄目なのかもしれませんけど。
- 村田
- それを引っ繰り返せるほどの何かこう、彼らは物を売っていくのが上手ですよね。
- 二之湯
- それでその、物売りに実は引っ掛かってるわけですよね(笑)。
- 村田
- そうです。
- 二之湯
- ぜひ日本酒も飲んでください。
- 村田
- ありがとうございます。
- 二之湯
- 京都にも、滋賀県にもいい日本酒たくさんありますんで。
- 村田
- ええお酒や思います。
- 二之湯
- ええ。私もワイン好きでしたけども、最近本当に掛け値なしに日本酒がすごく。ワインも好きですけど、やっぱり日本酒は素晴らしいお酒やなと思います。
- 村田
- うん。60を回って初めて日本酒をやっぱりうまいなと思うようになってきましたね。
- 二之湯
- ほんまですか。
- 村田
- ほんまに。
- 二之湯
- (笑)、ちょっと怪しいところありますけど。これからは、というかこれからも。最後に村田さんに聞きたかったのは、これ青年局という45歳以下の方々の議員のメディアなんで、フランスに若いときに行かれてますよね。
- 村田
- そうですね。
- 二之湯
- 何年行ってたんですか。
- 村田
- 何年も。もう日本料理やめようと思って。
- 二之湯
- フレンチに転向しようと。
- 村田
- そうそう。日本料理、将来ないなと思って、今度フレンチなろうと思って。
- 二之湯
- それ、20代ですか。
- 村田
- 21です。
- 二之湯
- 21。そういうのがあって。
- 村田
- フランス行って。結局世界の三大料理、中華料理、フランス料理、日本料理って日本では聞いてたんです。そんなんフランス行ったら、この3番目には、タイのやつはタイ料理言うとるし、韓国やったら韓国料理言うとるし。この3番目はそこに国のやつの料理が入るんやと。日本がどこにあるかも知らんような人らが、もう今から40年以上前ですから。
- 二之湯
- なるほど。そこに日本料理を入れたいと。
- 村田
- そこに日本料理を入れたい、これ日本料理、こんなん。
- 二之湯
- 世界の人が、みんな日本料理って言うふうにしなあかんという志を立てられたんですね。
- 村田
- はい。それで一生を、それをライフワークにしようと思ってフランスから帰ってきたんですよ。
- 二之湯
- じゃあ行って良かったんですね。
- 村田
- 行って良かった。
- 二之湯
- 行って帰って、日本の素晴らしさというかそういうものに気付いて、それをライフワークにしようと。もう絵に描いたような素晴らしいお話でしたね。
- 村田
- そうですね。


- 二之湯
- 好きな日本酒の銘柄は??
- 二之湯
- ちょっと今、質問があったんですけど。好きな日本酒の銘柄は何ですかという。
- 村田
- ああ。
- 二之湯
- 私は、「九平次」というお酒が名古屋にあって。
- 村田
- ああ、「九平次」。「九平次」はなかなか手に入りませんよ。
- 二之湯
- 入らないです。もう一つは「松の司」。これは滋賀県のお酒なんです。
- 村田
- 無理やり言うて。
- 二之湯
- 言うてないです。これはおいしいんです。
- 村田
- ああ、そうですか。
- 二之湯
- 菊乃井では何を入れてはるんですか。
- 村田
- 僕は、「桃の滴」。
- 二之湯
- これは京都ですからね。
- 村田
- 「玉乃光」。
- 二之湯
- これも京都ですね。
- 村田
- で......。
- 二之湯
- ああ、あまり知りませんよ、やっぱりこの人(笑)。
- 村田
- いやいや。德兵衞とこの......。
- 二之湯
- それも京都です。はい。やっぱり京都の方は。
- 村田
- いや、このころ、「獺祭」を。
- 二之湯
- ああ、はい。ベタですね。
- 村田
- ベタですよ。
- 会場
- (笑)
- 二之湯
- ベタと京都ということで。もうちょっと日本酒を勉強してきてください(笑)。
- 村田
- それから一番好きなの何かと言われると、「鄙願」ですね。
- 二之湯
- 広島の。違いました?
- 村田
- 違います。
- 二之湯
- え?
- 村田
- 知りませんね。
- 会場
- (笑)
- 二之湯
- いや、「鄙願」は広島やと思います。
- 村田
- 「鄙願」は広島違います。
- 二之湯
- 違いました? どこでした?
- 村田
- 新潟。
- 二之湯
- 新潟か。はい、「鄙願」は知ってますよ。僕もよく飲みますんで。それだけ知ってる。
- 村田
- 「鄙願」は。
- 二之湯
- (笑)、分かりました。
- 村田
- 「菊姫」も「鄙願」もおいしいですけどね。


- 村田
- 若い人は気張らずええ加減にやるのが一番
- 二之湯
- 話は尽きないわけでございますけれども。最後に村田さん、最近のというとやっぱり、年いけばいくほど最近の若いもんはということが増えますよね。
- 村田
- そうですね。
- 二之湯
- まあ毎年、多分10代の若い人がどんどん菊乃井さんに入って就業してという。そういう若い人たちに向けて、自分の今までの若いときの経験も踏まえて、何かちょっとこう、しこたまのメッセージをお願いします。
- 村田
- いや、もう若い人らに言いたいのは、あんまり気張らんことですわ。
- 二之湯
- 気張らない。
- 村田
- はい。気張らず怠らず。
- 二之湯
- ええころ加減ということですね。
- 村田
- ええ加減にやっとけばいいんです。
- 二之湯
- それも多分もう60過ぎな無理なんちゃうかなと思いますけど。まあええ加減に、適当に。
- 村田
- 適当に。最初、頑張ろう思うて、頑張って頑張ってと思うのが、だんだん負担になってきてドロップアウトしていかんならんと。
- 二之湯
- 勉強にならないぞって書いてある。
- 村田
- (笑)
- 二之湯
- もうちょっと勉強になる、ええころ加減という以外に何かないですか。
- 村田
- それからやっぱり、何をしたいかというのをはっきりと、こんなことは絶対できひんやろというふうに思わへんと、それをずっと思い続けることです。大体僕はしつこいんです。
- 二之湯
- ああ、しつこそうですね。
- 会場
- (笑)
- 村田
- はい。
- 二之湯
- 村田さんは、えとでいうと?
- 村田
- うさぎです。
- 二之湯
- うさぎやのにしつこいんだ。
- 村田
- しつこいんです。そやから20歳のときに思ったことをまだ64歳になってもやってるわけです。ずっと思い続けてずっとその方向を向いてやり続けてると、いろいろ助けてくれる人が、先生みたいに助けてくれる人が出てくるんです。
- 二之湯
- いえいえ。なるほど、思ったことを思い続けろと。諦めるな、やり続けろと、こういうことですね。
- 村田
- はい。
- 二之湯
- 私もまだ十何年間ですがそういう思いでやってきて、さっきのようにようやくそういうことができるような立場になって。それはやっぱり諦めなかったから。一つ成功の原因は何やというと、別に優秀でもなければ何でもないと、諦めなかったことだけだと、こういうことですね。
- 村田
- 僕の場合は実にそうです。先生は優秀やけどね。
- 二之湯
- いえいえ、そんなことはないです。
- 村田
- 僕の場合は、もう諦めんと、くさらんと、ずっとやり続けてきたというだけのことです。
- 二之湯
- 素晴らしいお話を最後にお伺いさせていただきました。村田さん、これからも日本の食のために、ぜひご尽力をしていただきたいと思います。
- 村田
- ありがとうございます。
- 二之湯
- 今日は、菊乃井の村田吉弘さんに来ていただきました。どうもありがとうございました。
- 村田
- どうもありがとうございました。
- 会場
- (拍手)