開催日:平成23年11月10日
講 師:平将明衆議院議員
テーマ:「日本経済の成長と中小企業政策」
対象者:一般社団法人日本学生会議所
11月10日(木)、第22回まなびとプロジェクト異業種勉強会との交流が開催されました。今回は日本学生会議所の大学生の皆さんが参加され、平将明衆議院を講師に「日本経済の成長と中小企業政策」というテーマで講演を聞いた後、商店街や中小企業の対策について積極的なディスカッションが行われました。平将明議員の講演の要旨と主な質疑応答は以下の通りです。
○大勢の人と関わりを持って、頭でっかちな人間になるな
日頃、接触しないひとと会うことは大事なことで、同じ大学の人としか付き合わないと幅や視野が狭くなってしまいます。この事は大変、大事なことで意識してやった方がいいと思います。皆さんは商店街を歩き回ったり、東日本大震災の被災地を回ったりしている人もおられますが、是非、色々な機会を通じて現場を歩き回って、そして頭でっかちにならないようにしてもらいたい。私が学生の頃は、一流大学を出て官僚になれば一生安泰。或いは銀行等の金融機関に就職すれば、社宅もあるし一生安泰だという風潮でした。しかし最近は銀行も潰れるような時代ですし、日本航空にしても憧れの就職先でしたが、今は会社再建の状況です。絶対に潰れないと言われた企業でさえ潰れる時代です。もう今や、いい大学を出ていい企業に就職をするというのは通用しない時代です。その半面、企業の方は本当に欲しい人材というのは、頭でっかちは基本的にいらない。社会に出ると理不尽な事ばかりです。学生時代は正義を訴えていればそれで済む面もあるわけですが、世の中がそうなっていません。理不尽なことだらけです。理不尽だと主張するのですが、そうした理不尽な事を受け止めて、仲間を巻き込んで前向きに変えていくことができる人材に尽きると思います。それは「人間力」だと思います。どうか学生時代から、その人間力を養うためにも頭でっかちな人間や、理屈だけを主張するいわゆる「エリート馬鹿」にはならないで下さい。そのためには、日頃から色々な人に会って生の声を出来るだけ多く聞くことも大事ですし、理不尽な命令や要求に対して仲間を巻き込んで解決していく力を養って頂きたい。
○日本経済はなぜ成長しないのか
日本の経済は成長しないのか?なぜ失われた20年から脱却できないのか?一言でいうと、モノを買わない。消費しないからです。それは何故かと言うと「構造的な問題」を孕んでいる。経済を伸ばす3つの要因と言われているものがあります。1つは「人口」。しかし日本は人口が増えない。これは経済にとって極めて致命的です。人口は減りしかも高齢化していく。2つ目は「資本」。これは「設備とカネ」です。設備があって労働者がいれば、生産は増えていきます。また資本をどんどん投下すれば経済はよくなります。値段も上がる。投資を呼び込むとか設備投資を行う等が大事になってきます。しかし、人口が減って消費が衰えるから、設備投資が行われない。もう1つの問題は、グローバルな競争があるので、投資が国内に向かない現実があります。海外から見ると、隣に8%成長する中国がある一方、日本はほとんど成長しないとなれば、当然、成長力の高い中国に投資をしていく。人も伸びず、資本(設備とカネ)も伸びない、国内投資も進まない現状があります。そして3つ目の要因は「生産性」。生産性が上がると経済も活性化します。要は「人・資本・生産性」の3要素です。以前、生産性を上げるために着目したのがITでした。そしてもう一つ、生産性を上げるために行ったことが「規制緩和」。つまり規制に守られている分野は生産性が低い。規制が無くグローバルな競争を行っている分野は生産性も高い。日本の産業で見ると、自動車業界や電機業界は大変、生産性が高い。では低い分野はどこか?それは守られている業界で、例えば、昔の金融業界。銀行・証券・保険・・・。医療も。農業も。補助金漬けで規制に守られている業界は生産性が低い。それを規制緩和して競争をさせることによって、厳しいけれども生産性を上げようと行ったのが、小泉元総理の構造改革でした。今の日本は、経済の3要素が全部駄目なのです。だから経済が成長しない。
もう少し細かく言いますと、少子高齢化・人口減少で、これは消費も減少し労働者も減る。高齢化なので働く人の税金で医療や介護、年金等を受ける人が増えてくる。つまり、「財政悪化」という構造的な問題を抱えていく。
2つ目の問題は、「国際競争が激化」していること。東西冷戦構造が終わり、東側陣営も加わり、アジア諸国が経済成長してくると、韓国と戦い、台湾と戦い、中国と戦い、ベトナムと戦っているわけです。今はアメリカ市場において、韓国製品は日本製品と評価は一緒だと思います。こうしたグローバルな激しい競争をせざる負えない時代になった。
景気が悪くなると、公共事業を行って景気を支えることが一番手っ取り早いのですが、財政赤字が増えてくると思う様な公共事業が行えなくなります。小泉総理の時代は、これ以上、公共事業で支えることは無理だということで、構造的な問題なので構造的な改革をしなければならないということで、公共事業に頼らずに規制緩和や規制改革で乗り切ろうとしました。
そして財政赤字は更に何が問題化と言いますと、国家の財政破綻をする危険性が出てきます。財政破綻をするとどうなるかと言いますと、円が暴落します。そして失業者が街にあふれます。物価が途方もなく上がります。国家の財政が破綻をしているわけですから、医者にかかる場合など基本的に100%自己負担でなければ患者を診ないという世の中が到来することが財政破綻です。そして財政破綻しそうだとか、年金は持続性が無いとなると国民は何をするかと言いますと、貯金に走ります。貯金に回すので消費を控えるとなります。そして経済の足を引っ張る。1番目は人口減少・消費高齢化、2番目は国際競争の激化、3番目は巨大な財政赤字。こうしたことは、ギリシアやイタリアを見れば分かりますが、今後、大きなテーマとなってくると思います。そして4番目の問題は、デフレです。日本はなぜずっとデフレなのか。これは需要が足りていないから。なぜ需要が足りないかと言うと、人口が増えないから。国際競争が激化しているので需要の少ない日本には投資が来ない。このことが更に需要を落している。ではデフレを脱却するにはどうしたらいいか?2つの考え方があります。1つ目は、モノと通貨の関係で見れば、通貨を大量に増やす。そして通貨の価値が弱くなるのでモノの値段は上がります。通貨をどんどん刷っていけばデフレの対策にはなります。相対的にモノの値段が上がる。これは「金融政策」。日本銀行が行う対策で、金融緩和等がこれに当たります。一方でモノ(物)の方で考えると、供給が多くて需要が少ないので、モノの値段は下がる。ここの大きな原因は、人口減少と国際競争の激化。このギャップを埋めればデフレは無くなります。更に需要の方が大きくなれば、モノの値段は上がっていく。このギャップを埋める方法には2つあり、1つは公共事業。来年、日本の経済は3%程度成長します。震災復興で東北地方で公共事業を行うから。乗数効果も高い。しかしこれは財政悪化にも直結してきますので、限界があります。復興のための公共事業は臆することなく行えばいいのですが、しかし景気対策のための公共事業はなかなかできない。公共事業に頼らずにモノの方の調整で需給ギャップを埋めようとするならば、経済を成長させるしか方法はない。成長戦略しかない。
○成長戦略で経済を成長させるためには...
成長戦略にはどのような方法があるかと言うと、「通商対策」。TPPを含めた自由貿易圏をどんどんと広げて日本が色々なビジネスにチャレンジをし易くする。ここには過当競争が待っているけれども、国内に留まっているだけでは日本の未来はありません。人口減少なので外のマーケットに出ていくか、日本に来る人を多くするしかない。出ていくリスクもありますが、我々が外のマーケットを取りに行く可能性も出てきます。2つ目は規制改革。生産性を伸ばすことが経済成長に繋がるのだから、最も生産性の低い分野を規制改革して、補助金や税制優遇を止めて、そこの生産性を高めて逆転の発想で牽引させていく。例えば農業。日本の農産物の付加価値は安全性。この安全性と高い付加価値を持ってアジアのマーケットに食い込んで行くことが大事なのであって、そのための規制改革は大事です。農業の高付加価値で輸出産業化していくことは、当然、通商政策としてマーケットを開かなければならないので、TPPにとらわれる必要もありませんが、各国とのFTAやアジア経済圏等でもいいと思いますが、こうした戦略をしっかりと打ち出していく必要があります。成長戦略の3つ目は、海外からの投資を増やさなければなりません。そのためには成長戦略をしっかりと行い、日本は経済成長すると思わせると同時に、海外からの投資のインセンティブを構築する必要があります。代表的なものが「特区」。日本に進出した企業は10年間の税制優遇を与えると等。香港や中国の深圳、韓国の仁川郊外などで行われていますが、こうした特区を自民党は全国に11か所設けようという提案をしております。
他の戦略としては、需給ギャップを埋める公共事業を行うのなら、将来の日本の経済成長に寄与する様なもの、例えば「羽田~成田間のリニア化」。リニアで繋ぐと、羽田と成田が15分で移動できます。そうするとハブ空港化することが出来ます。このリニアの建設費は、約2兆円程度と言われていて、これは民主党の子ども手当の半年分の金額で出来てしまう。
インターネットの世界が当たり前の世の中で、日本語を除く他の言語は、自動翻訳が出来ると言われている。スマートフォンなどで自動翻訳化できるように、今から手当てしておかなければなりません。そしてロボット開発。18mのガンダムを歩かせる。これは動かない等身大でしたが、観光の目玉になりました。経済効果も大きかった。日本のソフト・パワーやアニメの分野に日本の産業テクノロジーを融合させて世界を驚かせる。実用化しなくても、観光資源にはなり得るはずです。18mのガンダムが2~3歩、歩くだけで大騒ぎになります。そして今、ロボット業界は分散化しているので、それを「搭乗型二足歩行ロボット」に特化して統合させるインパクトを与える。それと「不整地二足歩行ロボット」の開発も行うなど、これらの分野を整理統合して成長分野に持っていくことを考えるべきです。
○デフレ脱却のためには・・・
1つ目は根本のモノとカネの部分で金融緩和を行う。金融緩和をすれば、カネが増えて価値が下がりますので相対的にモノの値段が上がるので、デフレ脱却に繋がります。2つ目は、モノの需要と供給で見た場合のギャップを埋める。手っ取り早いのが公共事業。東北の震災復興は思い切って行うべきです。そして公共投資を行う際には、将来の成長に繋がり日本のバリューを上げる投資に集約させるべきです。そしてその需給ギャップを埋めるためには成長戦略が必要。そのためには、通商戦略であり規制改革であり、世界の投資を呼び込むための特区制度の創設であると思います。
○失われた20年、日本の現状を直視すべき・・・
よく日本経済が駄目だと言われますが、日本経済が構造的な問題なので、構造的に解決しなければ駄目なわけです。今日の皆さんは、失われた20年の始まりの頃に生まれて人生のほぼ100%が失われた20年です。そうした世代の中にあって、一番の問題は、成長しないとか、頑張っても報われない、頑張っても今日より明日は良くならないと、何となく思っている人が大勢いることだと思います。先日、「TVタックル」に出演しました。そこで討論していたら「サイレント・テロ」というものが存在しているといいます。このサイレント・テロとは、金持ちに反感を持つ。そして消費をしないことで日本経済にダメージを与えて、勝ち組の人の足を引っ張ろうとしているとのこと。今の若者は、頑張っていいポストに就こうとか、頑張って金持ちになろうとかいう気持ちが希薄だということ。肉食系から草食系になり、今や植物系になってしまっている。こうなると国は滅びます。これは大きな問題ですが、我々政治家として何が出来るかといいますと、構造的な問題に関しては構造的な解決をして活躍するフィールドを広げる。そしてそこで戦う人には、相手とのハンディキャップを無くすようにしていくことだけです。例えば日本企業と韓国企業が戦う場合には、韓国はEUとFTAを結んでいるから関税がかからない。日本はFTAを結んでいないので関税がかかる。同じ製品だとその関税分の差が致命的な差になってしまいます。こうしたイマジネーションを政治家が感じることが出来るかどうか、非常に大切な事で、湧かない政治家が非常に多い。でもグローバルな戦いは大変厳し世界であって、日本はまだ大丈夫だとか、まだ強いのだという人がいますが、それは大間違いです。
2050年の世界はどうなっているかというと、GDPの第1位は中国、第2位はアメリカ、第3位はインド、第4位はEU、第5位はインドネシア、第6位が日本と予測されています。日本がGDP第2位だった時は16%~18%を占めていましたが、今は8%位を占めていますが、第6位になった際には2%程度になってしまう。先日の産経新聞にクリントン国務長官のコメントが掲載されていましたが、太平洋地域は「3人の巨人の国家」がしっかりと連携を取って行くべきだとありました。その3人の巨人は、アメリカ、中国、インドであって、日本は入っていません。アジアのベスト50社に1社も日本企業は入っていません。従って、世界常識からして日本が強いという思いは幻想であって、もはやありえないことです。
○中小企業の政策について
中小企業はどうするのかについてですが、日本全体が良くならなければ中小企業は良くなりません。そして中小企業は、アジアとの関係で生産性に低いものは生き残れません。やり方としては今後、中小企業といえども、アジアの需要を取り込んでいく政策を取り入れざるを得ません。例えば「アリババ・ドット・コム」というサイトがありますが、「B to B(Business to Business)」の活用です。楽天などは基本的には「B to C」であって、商店から消費者に伝えていくものです。私の地元の大田区には、傑出した技術を持つ会社が多くありますが、日本国内だけをみると、人口も少なく需要も減っていきますので、売上は右肩下がり。しかもデフレなので単価も右肩下がり。しかしその「B to B」サイトに載せたところ、世界にその技術が知れ渡り、売上が5倍になった事例もあります。つまりインターネットでのマッチングを活用して、政府は中小企業に対しては、言葉の問題や流通、代金の回収方法などのリスクのある部分を国が支援していく。私は「B to B」は一つの突破口になると思います。それでアジアのマーケットを取りに行く。
○商店街対策について
商店街はどうかというと、インターネットとは競合関係にあります。従って、商店街はモノを売るだけでは成り立たない。そこでサービスが重要です。子供の教育やお年寄りの医療や介護などのサービスを展開していく。自民党政権下で甘利先生を中心に、「コンンパクト・シティ」という構想を打ち出しました。これは分散型のベクトルが外に向いた国土開発は大転換して、ベクトルを内に向けて市街地に集約化していこうというものです。昔はアメリカのように大きなRV車で郊外へ買い物に行く様なライフスタイルを目指していましたが、これからは、お年寄りが歩いて買い物に行ける部分に店を出す。そして商店街の根本的な問題はガバナンスだと思います。商店街は個々の商店主の集まりですので、常にベストミックスに状態でいるとは限りません。私は家業の経験から言って、生鮮3品と惣菜を強くしなければ、商店街は生き残れません。全体としてのベストミックスをどうしていくかという努力をしない限り、商店街は活性化しません。その他、賑わいや付加価値だと思います。そして商店街は、地域コミュニティーと連携をして情報を発信して行くところは上手くいっています。あとは付加価値です。ゲゲゲの鬼太郎のキャラクターのオブジェを配置した商店街や、早稲田の商店街のように現地通貨を流通させているものもありますが、それが付加価値です。また商店街は、商業地域なので容積率が大きい。従って高い建物が建築できます。そこで再開発をしてマンション化し、1階、2階は店舗にして、上は顧客を住まわせる。その上で小中学生の職業体験や防犯、防火、治安対策やイベントの開催なども地域と一体となって商店街が中心に行っていけばいいのではないでしょうか。
Q1:商店街や中小企業が衰退せずに地域の活性化を図るにはどうすべきか?
A1:平将明議員
これは日本の経済を良くすることに尽きます。まずデフレをどう脱却していくか。構造的な要因を解決していくことが大切です。政治が遅々として進まない現状もありますが、商売そして商店街はまず生鮮3品を充実させる。そして中小企業の活路は、アジアのマーケットだと思います。言葉の問題や輸出入の問題等ありますが、そこは「B to B」サイトの活用などで補っていく。それと全く逆のことをやってみるのも一つの方法です。オンリーワンの商品を開発して、インターネットで口コミとして広がる世の中です。しかもその情報はface bookで知りました。それを広めることは容易ですので、そうしたビジネス・チャンスはあると思います。こうしたノウハウで地域活性化も図れると思います。それと地方はもう、東京の真似をしないことが大切。とにかくその地域の特性は何かということに特化していくこと。そしてその地域のオンリーワンの商品を作ることが難しいのかもしれませんが、作った後は日本中、世界中に発信して行くことが大切です。これからは拡大して行くことはできないので、どうやってスマートに縮小して行くかがポイントです。人口減少で今のインフラは不要です。スマート・シュリンクがこれからの大きな政治課題になると思います。大型スーパーも郊外への出店は止めて都心へ小型に出店していかざるを得ない。
Q2:経済成長しないで豊かさは享受できるのでしょうか?
A2:平将明議員
経済が成長しないと、思いのほか生活で受けるダメージが大きいと思います。それを国民全体で許容できるのか疑問です。日本はまだ豊かだと思いますが、それは将来世代につけを回して、借金で今の豊かさを享受しているにすぎません。既に経済大国でもなく、競争力のある国でもない。経済が悪化してこの20年間に470兆円の赤字を作りました。これは自民党が公共事業ばかりを行っているからだと叩かれました。実はそうではなくて、そのうち210兆円は景気後退による税収不足と減税。社会保障費の拡大。医療費は増えるし年金は膨らむ。それを保険料と税金で賄っているが、拡大した分を値上げや増税していないので150兆円を調達しました。それで景気対策のための公共事業は60兆円だけ。しかもバブル崩壊があったので、下支えしなければならなかったし、やらなかったらGDPが3割4割減ったかもしれないので、止むを得ないと思います。
では自民党は何が問題だったかというと、成長戦略が駄目だった事と、本来必要な税金を回収できていないことです。国民への行政サービスとして行っていることに見合うだけの税金を国民から徴収できていないわけです。この借金はすぐには返せない。破綻しない様にはしなければなりません。そのためには増税。消費税を25%にすれば大丈夫だと。いきなり25%にはできませんから、ではこの10年間でGDP比に対する債務残高を増やさないようにするか。プライマリーバランスを黒字化すれば、利息分は増えるけれども、GDPもその分成長するから、コントロールされた状態にあるわけです。これを10年間やっていく。消費税を25%にすると更に税収が不足する可能性もあります。ではどうするか?1つは歳出削減を徹底していく。もう1つはデフレを脱却して経済を成長させて税収を増やす。3つ目が増税です。この3つしか方法はありません。この3つのバランスで、どうやって消費税15%で維持させていくかが責任のある議論です。借金して今の生活を維持しているのだから、そこで熾烈な国際競争から脱却してしまうと、もっと日本は競争力を失い、外貨を稼ぐことができない。国内赤字なところに更に貿易収支も大赤字。国債暴落、円大暴落。そうなれば、エネルギー資源の90%以上、食料の60%以上を海外に頼っているのに、海外から買えなくなります。 また日本人はなぜ、生きる目標を失ったのか。物質的な豊かさはインセンティブにはならないのです。そうした国は他にもありますが、宗教的なアイデンティテイーによって生きる目標があります。また他国には愛国心がありますが、いずれも日本にはあまり無い。日本では、経済的な指標が生きる目標にはならないとなると、宗教的な価値観もあまりない、国のためにという愛国心も希薄となると、生きる目標が無くなるわけです。これは宮台真司さんが「暗闇の中で歩き続けることがどれほど辛いことか」と言いますが、今の若い人達にとっては、誰も生きる目標を示してくれない状況にある。終わりなき日常をまったりと生きることは大変に辛いことです。本来は国家としてそして大人として、今はこれほど辛いけれども、心のスイッチを切り替える様なことを示さなければならないわけです。それと、自分のために生きることは辛いことです。人のためや社会のため、国のためや世界のために生きるとなれば、案外、耐えられます。自分のために頭を下げることは辛いです。仲間や他者のために頭を下げることはそれほど辛くはない。つまり大きな目標を持って生きる方が大きな成果も得られるし自分自身も楽ですね。
Q3:商店街について協同組合に加入しない店舗が増えていると言いますが、条例や法律で出店規制をかけることができますか。
A3:平将明議員
私は規制を懸けるべきだと思います。商店街でイベントを行うと、店を放って置いて交通規制などに協力している。そこで買物は、組合にも加入せず、会費も払わない、人も出さないチェーン店に行ったりする。その店は現実として儲かっているわけです。こうしたことは、基本的には条例で行うべきだと思います。規制改革や自由競争も大事ですが、その前提としてフェアであることが必要です。従って、共同体としての商店街が、皆で儲けた果実を、加入していない者にも分配する構造は間違っていると思います。もしそれで大手のチェーン店が反発するならば、商店街に出店しなければいい。
Q4:最近は銀行が中小企業に融資をしないと聞きますが実態はどうか?
A4:銀行が貸し出す際の原資は、国民の預金です。それを傷つけられないから貸せないという理屈。一方で銀行は、その預金を企業に貸し出すために国から免許を貰っているわけですから、そこも行わなければならない。今は、貸さない代わりに国債を買っている。ここでもスイッチを入れさせるインセンティブを働かせればいいと思う。例えば、「預貸率」というものがあります。預金をどれだけ貸し出しているか。おそらく現状は50%前後とかなり低い。従って、預貸率を金融機関ごとに公表させれば、銀行も真剣に考え直すと思います。
○参加者からの感想
Y.H.さん
・日本の問題をどの様に解決するのか。その手段が本勉強会にあったと感じている。一個人としてはとてつもなく大きな課題であり、解決はとても無理だとおもうが、集団として解決に当たるのであれば、その可能性もある。常々感じていることは、自身のもそうなのであるが、政治的問題を自身の問題と捉えない国民が多いということである。今日本は平和的側面を強く持っているが、もっと危機意識を持たなければならない、ということを認識した。いずれ日本もギリシャのようになる。危機意識を持って、頭を回し続ける必要がある。勉強会冒頭、社会には理不尽で埋め尽くされているというお話をいただいた。就活がまさにそうであったと感じる。ただ、その理不尽に付き合わなければならない。それは自分のためであり、親のためでもあり、社会のためでもある。理不尽は理不尽として、向き合わなければ問題を直視し、平先生がおっしゃる様に高い志を持ち、そうでなくとも周囲の人のために考え、行動しなければならない。私は今後一社会人として、消費を促し、消費をし、意見を発信していき、自身にできる最大限の貢献をしていきたい。
Y.S.さん
・平将明先生には「今後の日本経済、商店街に目を向けて」という視点でお話して頂きました。日本の人口現象を引き金にして国際間の競争の激化、財政赤字、デフレなど日本が抱える問題の大きさに愕然とさせられました。個人的には日本人には欲しい物が無く、新興宗教が無く、愛国心も無い国がどうやって暗闇から脱出するかという情熱に関することは私も日頃考えていたことでしたので平先生ご自身の考えも聞けて有意義な会となりました。ありがとうございました。