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国会

第201回国会における茂木外務大臣の外交演説

2020年1月20日

茂木外務大臣

第201回国会に当たり、外交政策の所信を申し述べます。

日本を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しています。国際社会におけるパワーバランスの変化が加速化・複雑化する中で、国境を越える脅威も増大し、もはやどの国も、一国のみで自国の平和と安全を守ることはできません。こうした中、日本は、「積極的平和主義」の立場から、「法の支配」に基づく国際秩序の強化を図り、地域と国際社会の平和と安定にこれまで以上に寄与していく必要があります。

同時に、安全保障分野の裾野が急速に拡がっています。宇宙・サイバー空間、AI、デュアルユース技術。新たな脅威への対応や重要技術の流出への対処も含め、安全保障を考える上で外すことのできない、待ったなしの課題の拡大です。また、世界経済を見渡せば、グローバル化の反動として保護主義が台頭し、貿易摩擦などの対立が深まると同時に、国境を越えたデジタル経済が拡大して、世界経済はますます「データ駆動型」へと移行しています。

安全保障面でも経済面でも、急速に変化する国際環境を踏まえて、新たなルール作りや取組を先導し、国際秩序をより安定し持続可能なものへと再構築していくこと。これこそが日本外交の目指すべき方向だと考えます。

以上を申し上げた上で、特に6つの分野に焦点を当て、これまで安倍総理が展開してきた「地球儀を俯瞰する外交」を更に前に進めるため、「包容力と力強さを兼ね備えた外交」を展開してまいります。

第一に、日米同盟。我が国の外交・安全保障の基軸であり、地域の平和と安定に貢献する大きな役割を担っている日米同盟を、更に強化してまいります。トランプ大統領の「令和」初の国賓訪日は、日米の揺るぎない絆を世界に示しました。私自身も先週、訪米して緊迫化する中東情勢や北朝鮮問題について、ポンペオ国務長官と膝をつき合わせたばかりです。

米国とは、国際社会の諸課題への対応につき緊密に連携しており、日米同盟はかつてないほど盤石です。とりわけ、元旦の日米貿易協定及び日米デジタル貿易協定の発効から始まった本年は、日米安全保障条約の署名及び発効から60周年に当たる、節目の年でもあります。安全保障面では、これを契機に、日米同盟の対処力・抑止力を一層強化してまいります。また、在日米軍の安定的な駐留のためには、地元の御理解が不可欠であり、普天間飛行場の一日も早い辺野古移設を始め、引き続き、地元の負担の軽減に全力を尽くしてまいります。

ここで、「自由で開かれたインド太平洋」構想について、申し上げます。このビジョンは今や、米国から、豪州、インド、更にはASEAN、ヨーロッパまで広がりつつあります。「法の支配」に基づく「自由で開かれた海洋秩序」を、全ての国、人々に分け隔てなく平和と繁栄をもたらす「公共財」として守っていく。その使命を実現するために、志を同じくする国々と力を合わせて取り組み、地域の様々な枠組みの強化にも貢献していきます。

第二に、北朝鮮をめぐる諸懸案への対応です。北朝鮮による度重なる弾道ミサイルの発射といった挑発行為は、全く受け入れられるものではありません。先週も日米韓外相会談を行いました。日米、日米韓の結束の下、国際社会と連携しながら、安保理決議の完全な履行を確保し、北朝鮮の完全な非核化を目指します。また、政権の最重要課題である拉致問題の早期解決に向けた主体的努力を続けます。引き続き、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、北朝鮮との国交正常化を目指します。

第三に、近隣諸国との外交に、積極的に取り組みます。

日中両国は、今や、アジアそして世界の平和と繁栄に欠かせない大きな責任を共有しています。両国が共に、その責任をしっかり果たしていくことが、国際社会の期待に応えることになるのです。今春予定される習近平国家主席の国賓訪日を見据え、ハイレベルの往来を積み重ね、懸案を適切に処理しながら、あらゆる分野で交流・協力を一層発展させます。他方、東シナ海における一方的な現状変更の試みは、断じて認められません。冷静に、かつ、毅然と対応してまいります。南シナ海をめぐる問題についても、国際法に基づく紛争の平和的解決の重要性を強調していきます。日本産食品に対する輸入規制問題や邦人拘束事案についても引き続き中国側に前向きな対応を強く求めていきます。

韓国については、先月久々に日韓首脳会談が行われ、両首脳で北朝鮮問題に関する日韓、日米韓の連携を確認しました。また、日韓間の現下、最大の課題である旧朝鮮半島出身労働者問題については、安倍総理から文在寅大統領に対して明確に求めたとおり、韓国側の責任で解決策を示すよう引き続き強く要請するとともに、問題解決に向けた外交当局間の協議を継続していきます。さらに、竹島は、歴史的事実に照らしても、国際法上も日本固有の領土であり、この基本的な立場に基づき、冷静に、かつ、毅然と対応していきます。

ロシアとは、最大の懸案である北方領土問題の解決のために、首脳間、外相間で緊密に対話を重ねることが必要です。私は昨年12月に訪露し、ラヴロフ外相と時間をかけて議論を行い、本格的な平和条約交渉の協議に入ることになりました。北方四島における共同経済活動の更なる具体化に向けた取組や元島民の方々のための人道的措置も着実に進展させていきます。引き続き、8項目の「協力プラン」を含め、幅広い分野で日露協力を進めていく中で、1956年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるとの両首脳間の合意を踏まえ、領土問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、交渉責任者として粘り強く交渉に取り組んでまいります。

第四に、緊迫化している中東情勢への取組です。中東地域の平和と安定は、我が国を含む国際社会の平和と繁栄に不可欠です。また、日本は原油輸入の約9割をこの地域に依存しており、世界の主要なエネルギーの供給源である中東地域の海域において、航行の安全を確保することは極めて重要です。先般決定された政府方針の三つの柱として、情報収集態勢の強化のために自衛隊の艦艇及び航空機を活用するとともに、関係業界との密接な情報共有を始めとする航行安全対策の徹底、そして、中東の緊張緩和と情勢の安定化に向けた更なる外交努力を行うこととしました。我が国は米国とは日米同盟の関係にあり、イラン始め中東諸国とも伝統的な友好関係があります。外務省としては、今回決定された政府方針の三つの柱の一つである、更なる外交努力を継続し、中東地域の平和と安定に向け取り組んでまいります。

第五に、新たな共通ルール作りを日本が主導する経済外交に一層邁進します。

世界で保護主義的な動きが広がる今こそ、日本が自由貿易の推進のため、自由で公正な経済圏を広げていくことが重要です。TPP11、日EU・EPAを始めとする経済連携協定や、日米貿易協定を力強く推進してきました。RCEPについても、本年中の署名を目指します。また、EUを離脱する英国とも、速やかに通商交渉の開始を目指します。同時に、多角的貿易体制の礎たるWTOが、世界経済の新たな課題に十分に対応できるよう、本年6月のWTO閣僚会議に向け、WTO改革に係る取組を主導します。さらに、日米デジタル貿易協定も基礎としつつ、昨年のG20サミットで議長国として立ち上げた「大阪トラック」の下で、データ流通やデジタル経済に関する国際的なルール作りを関係国やOECD等とも連携して推進します。

G20大阪サミットに際して打ち出したイニシアティブを、着実に実施・普及していくことも重要な課題です。「質の高いインフラ投資に関するG20原則」、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」、「G20・AI原則」。まさに時代を先取りするこれらのビジョン・原則の定着・具体化に向けて、国際的な指導力を発揮してまいります。

さらに、日本産食品に対する輸入規制措置について、最近、多くの国・地域で緩和・撤廃の動きがみられます。更なる働きかけをオールジャパンで進めます。また、知的財産保護を含め、日本企業の海外展開支援や対日直接投資の促進にも引き続き取り組む考えです。

第六に、地球規模課題への対応です。

本年は、SDGs、持続可能な開発目標の達成に向けた「行動の10年」、スタートの年です。教育、保健、人権、難民・避難民、女性、防災、気候変動、海洋プラスチックごみなど、求められる取組は多岐にわたります。昨年末に改定したSDGs実施指針の下、人間の安全保障の理念に基づき、具体的な取組を加速させます。また、資金ギャップを埋める方策を探求し、ODAの積極的かつ戦略的活用にも努めます。

成長、開発を語る際に、アフリカの潜在性に触れないわけにはいきません。昨年のTICAD7の成果も踏まえ、アフリカ自身が主導する発展を力強く後押しし、成長著しいアフリカの活力を取り込むべく、我が国民間企業のアフリカ進出と投資を促進します。

問題解決のための多国間枠組みの中心は、国連です。その国連が創設75周年を迎える本年、21世紀の国際社会の現実を反映すべく、日本の常任理事国入りを含む安保理改革を前進させる決意です。日本は、国際社会の平和と安全に一層貢献すべく、2023年から任期の安保理非常任理事国に立候補しています。また、より多くの有能な日本人が国連など国際機関で活躍できるための取組も引き続き進めます。国連PKOやテロ対策といった分野も重要であり、とりわけ、4月に開催される第14回国連犯罪防止刑事司法会議、通称「京都コングレス」の成功に向け、力を尽くします。

さらに、本年は5年に一度の核兵器不拡散条約運用検討会議が開催される年でもあります。この会議で有意義な成果を挙げられるよう、国際的な議論に積極的に貢献していきます。

ここまで6分野についての政策方針を申し上げてきましたが、外務大臣としての私の最も重要な責務に、在外邦人及び日本人旅行者の安全確保及び支援と、世界各地の日系人社会との連携強化が含まれることは申し上げるまでもありません。

そして、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会。この世界的イベント、平和の祭典に、多くの海外要人や外国人観光客の訪日が見込まれます。日本の豊かな文化や食、美しい自然、先進的技術、そして日本人のホスピタリティといった様々な魅力を世界に発信していく絶好の機会です。「ホストタウン・イニシアティブ」の下、参加国・地域と日本の自治体、地域住民との交流を推進し、被災地の見違える復興ぶりも国際社会に発信していきます。

「包容力と力強さを兼ね備えた外交」を展開し、それぞれの政策課題について着実な成果をあげるために、外交実施体制の更なる強化は不可欠です。このような観点から、人材、情報収集・分析能力始め総合的な外交力の強化に取り組みます。同時に、国際社会から日本の政策・取組に対する理解と支持を得るためのパブリック・ディプロマシーを、一層力強く展開していく考えです。

外務大臣として各国のカウンターパートと話をする度、複雑化し、不確実性の高まる国際情勢の中で、安倍総理の下で一貫し、安定した外交を展開する日本への期待、日本の存在感が高まっていることを強く実感します。この日本の存在感を、国際舞台における調整力へと転換して、責任感と使命感を持って問題解決を主導していく決意です。

議員各位、そして国民の皆様の御理解と御協力を心よりお願い申し上げます。

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