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政策

渡辺猛之参議院議員 代表質問

平成28年1月28日

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 自由民主党の渡辺猛之でございます。私は自由民主党を代表いたしまして、安倍総理の施政方針演説をはじめ政府四演説について、質問いたします。
 3年前、現在の安倍政権が誕生した当時、長引く円高・デフレ不況に苦しんでいた我が国の、あの時の経済状況と現在の経済状況を比較すれば、おそらく多くの国民の皆様方が「あのときよりは景気は良くなっている」と言っていただけるのではないでしょうか。
一方で、地方や中小・小規模企業などにはまだまだアベノミクスの恩恵が届いてないという声があるのも事実であります。
 総理は本施政方針演説でも「挑戦」というキーワードを、私が数えたうちで20回、「チャレンジ」という言葉もいれれば22回使って、本年の安倍政権が目指す姿勢について、力強く決意を述べられました。高度経済成長期、右肩上がりの経済であれば、大企業が良くなればいつかは中小企業も、都市部が良くなればいつかは地方もと、ひたすら待ちの姿勢であっても、いつかは景気好循環の波が届いていました。しかしながら、リーマンショック以前の経済状況を振り返っても、経済のグローバル化や多様な消費者ニーズなど成熟した経済状況の下では、ずっと待ちの姿勢でいては、地方や中小・小規模企業にはいつまでたっても景気回復の波が届かないといったことも懸念されます。地方でも中小・小規模企業でも果敢に挑戦できるチャンスを作り出す。これこそ新アベノミクスの効果を全国津々浦々まで行き届け、一億総活躍を実現する道だと考えます。

かつて日本経済は「アメリカがくしゃみをすると日本が風邪をひく」と言われた時代がありました。しかし現在では、アメリカのみならず中国やEU、中東の国々など世界の至る所でくしゃみが出ても日本が風邪をひく可能性があるくらいグローバル化が進展しています。
 国外からの要因によって日本経済が重症化することが無いように、しっかり予防策を講じておかなければなりません。日本経済に影響を与えると予想される国外要因について、中国経済やテロ対策については髙階議員から質問いただきましたので、私からは中東情勢について質問いたします。
 原油輸入国である我が国は原油安を歓迎する一方で、中長期的に見れば、世界経済全体への影響や将来的なリスクを考えると、中東情勢の安定は我が国経済にとっても必要不可欠なことだと思います。
 そこで、中東情勢の安定化に向けて、我が国としてどのように取り組んでいかれるおつもりか、総理のご所見をお伺いします。

 一昨年、我々は、経済産業省としては実に51年ぶり二本目となる基本法、小規模企業振興基本法を成立させることができました。
 私も法案策定の当初から携わらせていただきましたが、この小規模基本法に関わった私たちが法律の中に込めた思いは「中小・小規模企業が将来的に大きく飛躍していってもらうのが最終目標ではあるが、地域に根付く小規模企業は、まずはその場所で会社を継続してくれるだけで、消防団や水防団、PTAの役員やお祭りの担い手など、地域を支える人材を輩出してくれている。小規模企業は地域そのものを守っている側面があるのだから、売り上げ減や後継者不足で廃業の道を辿るのではなく、その地域で企業が存続していける体力をつけてもらいたい」との願いです。
 持続化補助金は、そんな思いを形にした、国としては異例の50万円という小規模企業に特化した補助金です。私は、この持続化補助金について嬉しい話を耳にしました。補助金というものに初めて挑戦した小規模企業の後継者である商工会青年部員の言葉です。「1回目の申請では持続化補助金をもらえなかったけど、とても勉強になりました。今まで自分の会社の経営の中身を詳しく見たことはなかったけど、補助金申請に必要な経営計画を作っているうちに、自社の強みと弱みがはっきりとわかりました。今まで補助金なんて大企業や一部の限られた人のものだと思っていたけど、挑戦して本当に良かったです」。ちなみに、彼は2回目の挑戦で、しっかりと50万円を手にしました。
 新アベノミクスの第一の矢は希望を生み出す強い経済、その目標はGDP600兆円です。私はこのGDP600兆円を達成するためには、中小・小規模企業の活躍が不可欠だと思っています。我が国企業の99.7%を占める中小企業、中でも小規模事業者は334万社、86.5%です。その小規模事業者の手取り収入を見てみると、個人事業者で300万円未満が61.1%、法人で32.8%という数字です。手取り収入400万円未満まで拡大すると、個人事業者の実に76.8%、法人の50.8%が該当するのです。
 先ほどの青年後継者の言葉を借りれば、自社の決算書を詳しく分析したり経営計画を作ったりすることも無く、いわゆるどんぶり勘定で今日まで何十年も企業を継続させてきた、そんな小規模事業者は相当数あるのではないかと推測されます。これを否定的に捉えるのではなく、そんな小規模事業者が、簡素な経営計画を作る。ホームページを開設する。今まで暗かった看板に電気をつける。ただそれだけで、売り上げが増加しているのです。すなわち今まで特に新しい試みをしなかった小規模事業者は、少しの工夫や挑戦をするだけで売り上げ増加が期待できる、いわゆる伸びしろがとても大きいと言えるのではないでしょうか。
 GDP600兆円を達成するために、我が国の中小企業とりわけ小規模事業者への更なる積極的支援をどのようにお考えか、総理にお尋ねします。

 関連して、TPPについてお尋ねします。人口8億、世界のGDPの4割を占める巨大な自由市場は、我が国にとって必ずプラスになると思います。いや必ずプラスにしなければならないし、我が国はそれができるといった方が正しい表現かもしれません。
 TPPによる日本の国益を最大化する鍵も、私は中小・小規模事業者が握っていると思います。今まで海外展開など考えたこともなかった中小・小規模事業者にとっては、巨大なマーケットが広がったといっても、「果たしてそのマーケットで何が求められているのか」を把握する手段も、いざ海外に進出する手順も、全く持ち合わせていないのが現実です。TPPによって出来上がる巨大なマーケットに中小・小規模企業が挑戦できるように、政府としてどのような後押しをお考えか、総理のご見解をお聞かせください。
 また、海外市場への挑戦ということでは、農業分野においても同じことが言えるのではないでしょうか。たとえば今は作った農産物を近くの道の駅で販売しているといった個人の農業者にとって海外進出は、雲をつかむような話です。<
 総理は農林水産物の海外輸出額1兆円を2020年より前倒しで達成する決意を述べられましたが、農産物の海外展開のためには何が必要で、国としてどのような支援をお考えなのか、あわせてお伺いいたします。

 次に地方創生について、お尋ねします。安倍内閣が地方創生を掲げたとき、多くの地方は「ようやく私たち地方にも光が当たる」という希望を抱きました。
 その裏には、懸命の努力を続けてきたにもかかわらず人口流出や高齢化に歯止めが利かない地方の厳しい現実が存在します。地方創生は、待ちの姿勢ではいけません。
 本年3月までにほぼすべての自治体で、地方創生に向けた総合戦略が策定される見通しです。地方創生施策の一年の評価と今後の展望について、総理にお尋ねします。

 地方の果敢な挑戦。それが地方創生の果実を手にする手段です。その上で、我が国全体が考慮しておかなければならない課題が人口減少です。
 先日ある町の町長さんからこんな悩みを打ち明けられました。上水道管の更新の話です。「ある集落で水道管の更新時期を迎えているが、集落の一番奥の一軒家まで水道管を埋め直すと約8000万かかる。その一軒の人が集落の中心部まで移転してくれたら、移転費用は多く見積もっても3000万。行政コストを考えたら明らかに移転してもらった方が得だが、果たして行政が個人に対して新築の家を提供することがいいのかどうか。そもそも住民の方に住み慣れた今の住処を離れてくれとも言いにくいしなぁ・・・」。
 はたして、この問いに対する正解は、どちらなのでしょう。人口減少局面においては、社会インフラ整備にも、人口増加段階とは違った視点が求められます。その一方で、地方創生にかける地域にとっては、道路や上下水道などの社会インフラは他地域と対等の競争を展開する上において、必要最低限の条件です。
 新アベノミクス第二の矢では、希望出生率1.8を目指して様々な取り組みが期待されるところですが、その果実を受け取れるのは数十年先です。しばらくの期間、乗り越えていかなければならない人口減少局面における社会インフラの整備・更新についてどのようにお考えか、総理のご所見をお聞かせください。

 最後に、一億総活躍についてお尋ねします。人口減少とともに我が国が真正面から向き合わなければならないもう一つの課題が急速に進む高齢化です。労働人口が減少し「稼ぐ力」が失われる中で多くの高齢者を国としてどう支えていくべきか。その答えが一億総活躍の中にあると私は認識しています。
 一億総活躍の大きな柱の一つは、女性の活躍です。そして、もう一つの大きな柱が高齢者の活躍だと思います。総理の施政方針演説の中でも「高齢者の7割近くが、65歳を超えても働きたいと願っておられる。大変勇気づけられる数字です」と述べられました。
 その言葉を後押しする二人の製造業の社長さんの言葉を紹介したいと思います。一つ目の会社では、最年長正社員の方は72歳だそうです。私は、失礼ながら「正直なところ、高齢ということで不都合はありませんか」とお尋ねしたところ、社長さんはきっぱりと「その人に関しては、一切問題ない。人によって多少の差はあるけど、うちの会社の仕事は、だいたい70歳くらいまでは現役で大丈夫。65歳なんて、働き盛りと言ってもいいくらいだ」と笑顔で話してくださいました。もう一つは、精密ねじを作っておられる会社の経営者の方の言葉です。「一定レベルの品質はもちろんすべての製品でクリアしているが、どれだけ高価な最新鋭の機械を導入しても、結局最後は人です。気温や湿度によって、機械スイッチのオンとオフをコンマ何秒の差で切り替えることによって、ごくごく微妙な製品の差ができる。これができるようになるには、長年の経験と勘しかないが、うちにはそれができるベテラン社員がいてくれます」と胸を張って話していただきました。二つとも地域を支える中小企業の話です。
 多くの海外の国で「労働は自分や家族の生活を充実させるための収入を得る手段」と割り切った考えをする中で、日本では「働くとは、はたを楽にすること。すなわち自分の仕事によって誰かを幸せにしたり、自分のつくる商品や提供するサービスがお客様を笑顔にできる」というとても美しい考え方があります。
 高齢者の方が元気で働いていただけることは、それだけはたを楽に、周りを幸せにしていただけることです。そして、それは高齢者の方々の生きがいにつながるのではないでしょうか。労働人口の減少が想定される中で、一億総活躍の大きな柱を担う高齢者の活躍について、総理の思いと具体的方策についてお尋ねいたします。

 冒頭申し上げたように、3年前安倍政権が誕生したとき我が国経済は、円高・デフレに相当苦しんでおりました。しかし、安倍内閣そして我々与党は、円高もデフレも克服できたのです。我々はこの国や地方が直面する様々な課題に対して、真摯な議論を通して、これからもしっかりと結果につなげていくことをお約束いたしまして、私の質問を終わります。

 ご静聴ありがとうございました。