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政策

第189回国会における代表質問 谷垣禎一幹事長

谷垣禎一幹事長

私は、自由民主党を代表して、安倍内閣総理大臣の施政方針演説に対し質問いたします。

1.ISILによる邦人殺害テロ事件

先般、イスラム国を自称するテロ集団ISILにより殺害された湯川遥菜さん、後藤健二さんのお二人に、心から哀悼の意を表しますとともに、ご家族に心からお悔やみ申し上げます。本院も日本国民の総意としてテロ行為に対する非難決議をいたしました。ISILの残虐な卑劣極まりないテロ行為は、言語道断の許しがたい暴挙であり、断固非難するものであります。
お二人の速やかな解放に向けて、政府はあらゆる手段を講じて努力されたものと承知しております。また、ヨルダンを始めとする関係各国の協力に深く感謝の意を表明するものであります。
今後、海外の在留邦人の安全確保やわが国在外公館による情報収集・分析の強化、国内における出入国時の水際対策や交通機関の警備等のテロ対策を徹底し、国民の安全に万全を期すように努めていかなければなりません。併せて、決して日本がテロに屈することなく、国際社会と共に、中東を含む世界の平和と安定のために貢献し、憎しみの連鎖を断ち切る努力を止めてはなりません。改めて総理の決意を伺います。

2.総選挙結果の受け止めと決意

さて、昨年総理は、経済再生と財政健全化の両立を実現するため、まずは国民全体の所得を押し上げ、地方経済にも景気回復の効果を十分に波及させていくことで、消費税率引き上げに向けた環境を整えていくために、消費税10%の引き上げを1年半延期することを決断されました。同時に国民経済にとって重い決断をする以上、速やかに国民の信を問うべきであると判断され、解散総選挙を断行しました。
わが党は、「景気回復、この道しかない。」ことを掲げ、安倍政権2年間でのアベノミクスの実績と、経済の好循環の流れを止めることなく全国津々浦々へ広げ、国民生活を豊かにしていくことを選挙戦で訴えました。その結果、わが党は291議席を獲得、公明党と合わせて与党で3分の2を超える議席を確保し、前回の政権奪還選挙と遜色ない結果を残しました。特に、前回初当選議員の再選率が極めて高かったことにより、過去数回の選挙で続いた、大量当選、大量落選といういわゆる「振り子現象」に終止符を打つことができました。これはまさに安定した政治を望んだ国民の意思が示された結果であると考えます。我々政府与党は、この結果を真摯に受け止め、選挙で国民にお約束したことを着実に実行していかなければなりません。改めて、総理に総選挙結果を踏まえた今後の決意を伺います。

3.震災復興

1月17日に、阪神・淡路大震災から20年を迎えました。街のインフラも復旧しましたが、我々は阪神・淡路大震災の記憶を風化させることなく、大震災から得た教訓や経験を活かし、これからの災害対策、国土強靭化に取り組んでいかなければなりません。
また3月11日には、東日本大震災の発生から4年の歳月が過ぎることになります。総理は「被災地の心に寄り添う現場主義」の方針で、最重要課題として政府一丸となって復興を推し進めて来られました。しかしながら、この間、津波被災地域を中心に復興の道筋が見えつつある一方で、今なお約23万人もの方々が仮設住宅等で避難生活を送っています。また福島県の原子力事故災害被災地域については、ようやく本格復旧に入れる見通しが出てきたところです。 折しも27年度は、復興期間10年の前半5年、いわゆる「集中復興期間」の最後の年度に当たります。この大切な一年間を通じ、いかにして被災地の方々の暮らしに安心を取り戻し、生業・産業を再生させ、新たな希望に満ちた東北に繋げていかれるのか、総理のお考えと決意を伺います。

4.「アベノミクス」、27年度予算、消費税等

(経済再生)
15年も続いたデフレからの脱却を図るため、総理は就任以来、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」を3本の矢とする「アベノミクス」によって日本経済再生に取り組んでこられました。その結果、日本経済は自力で回復軌道に乗る環境が整い、株価は上昇し、企業は新たな投資資金を得て、個人消費も拡大しました。同時に進んだ円安により、輸出拡大と国内設備投資増への期待が高まり、有効求人倍率は22年ぶりの高水準、名目雇用者報酬が高い伸びとなるとともに、企業の経常利益は過去最高水準、倒産件数は24年ぶりの低水準等、経済は着実に上向いています。今日発表された、10-12月期のGDPは、名目は年率プラス4.5%、実質2.2%という高い伸びが示されています。総理自らが経済界に対して賃上げを要請する等、政府の本気の取り組みが経済を後押ししていることは疑いもありません。
こうしたアベノミクスの恩恵は大都市や大企業のみならず、中小・小規模事業者や地方にも届き始めており成果が徐々に表れていますが、更に経済の好循環をより確かなものとし、景気回復の実感を全国津々浦々に行き渡らせ、日本経済、地域経済を再生していかなければなりません。そのための経済対策が先般成立した補正予算や27年度予算にも措置されています。まずは補正予算を早期に執行し、効果を最大限発現させていかなければなりません。改めて、経済再生に向けた総理の決意を伺います。

(地方創生)
安倍内閣の課題として、総理は「地方創生」を掲げられています。わが国は、世界に先駆けて人口減少・超高齢社会を迎え、今後東京への一極集中がますます進んで行くのではないかとの予測が地方に更に大きな不安を与えています。「地方創生」とは、まさにこの問題に対する答えを見出すことであります。
昨年末、「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」が閣議決定され、日本の人口の現状と将来の姿、ならびに今後目指すべき将来の方向が示されました。これを実現するため、今後5か年の目標や施策の基本的な方向、具体的な施策を提示する「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定されております。
本年を「地方創生元年」と位置付け、国・地方が連携し、知恵を絞って「地方創生」実現に動き出さなければなりません。
どうやって地方に若者の雇用を創出するのか、地方へ新しいひとの流れを創るのか。若い世代の結婚・子育ての希望を実現し、出生率を向上させるために、何をするべきなのか。時代に合った地域をどうやって創るのか。国がこれらの課題にどのように向き合っていくのか、地方は総理に大きな期待を寄せております。
地域に埋もれた「資源」を最大限に活かし、地域の「知恵」を最大限に活用することが、今般の地方創生のカギとなります。国と地方が、国民とともに基本認識を共有しながら総力をあげて取り組むことが、「地方創生」には最も重要であると考えますが、総理に決意を伺います。

(財政健全化・社会保障制度改革)
総理は、経済再生と財政健全化の両立を実現することに強い決意を示されています。その決意は27年度予算でも顕著です。新規国債発行額は前年度から4.4兆円程度の大幅な減額となり、公債依存度は38.3%と21年度予算以来の30%台に低下しました。この結果、国・地方をあわせた基礎的財政収支、いわゆるプライマリーバランスの赤字を2010年度比で半減するという目標は達成できる見込みです。今後は、2020年までの黒字化達成と債務残高の対GDP比の安定的な引下げに向け、将来にわたる財政の信認を確保するためにも、歳出の徹底的な削減や抑制等に更に取り組まなければなりません。
社会保障制度も聖域ではありません。27年度予算においては、社会保障の充実に重点が置かれ、消費税率8%引き上げの増収額8.2兆円を基礎年金国庫負担割合2分の1の財源に充てることはもとより、待機児童の解消や女性が働く環境の整備、子ども・子育て支援、医療従事者確保、介護職員の処遇改善といった社会保障制度の充実、改善に充てています。
その一方で、介護報酬の引き下げにより介護給付費全体の増加を抑えることで、介護保険料の上昇を抑制することや生活保護の適正化を行う等、社会保障の「自然増」を見直しています。
27年度予算では、国債の利払いや債務償還費を除いた政策経費で歳出割合が最も大きいのは社会保障費の32.7%であり、この割合は増加傾向にある一方、それ以外の地方交付税交付金16.1%、公共事業6.2%、文教・科学振興5.6%、防衛5.2%等は、総じてみれば減少又は横ばい傾向にあり効率化されています。つまり、毎年増える社会保障費をどのように抑制していくのかが、財政健全化を図るためには重要であることは明らかであります。 毎年増える社会保障費を抑制しつつ、持続可能な社会保障制度を確立していくためには、サービスの質を確保・向上しながら、給付の重点化・効率化を進めることが何よりも重要です。都道府県を中心とする医療提供体制改革、医療費・薬剤費適正化の一層の推進、年齢に関わらず負担の公平化を図る見直し等、課題は多いと考えます。医療・介護分野を成長産業の柱に発展させていくとともに、現役世代、更には将来世代が過重な負担から解き放たれるために改革を不断に進めていくことが、財政健全化に資するとともに、明日のわが国の活力のために重要と考えます。
わが党も、稲田政務調査会長の下に、「財政再建に関する特命委員会」を設置し、6月にも考え方を取りまとめる予定です。政府は、今夏までに財政健全化計画を策定するとしていますが、計画の早期策定と社会保障制度改革に向けた総理の決意を伺います。
また、財政健全化と持続可能な社会保障制度の確立には、消費税率の引き上げが必要不可欠であります。アベノミクスの成功を確かなものとし、消費税率引き上げに向けた環境を整え、1年半後の平成29年4月に消費税率10%引上げを確実に実施するという総理の決意も伺います。

(女性が輝く社会)
「すべての女性が輝く社会の実現」は、安倍内閣の重要課題の一つであります。
女性の置かれている状況は様々であり、直面している課題は多岐にわたります。女性の希望に応え、多様な生き方が出来るような環境を整えていくことで、すべての女性が日々の暮らしに生きがいや充実感を持って家庭・地域・職場で輝くことができる社会が実現します。
しかしながらこのような社会づくりは、女性だけが変われば出来るのではなく、男性の意識変化がなければ実現不可能であります。男性が変わるからこそ女性が活躍できる社会が実現するのであり、「まず先に変わるべきは男性である」ということを男性は理解しなければなりません。男女ともに従来の価値観を脱却した新たなライフスタイルの構築が、女性活躍を推進していくためには必要と考えますが、総理のご見解を伺います。

5.改革への決意

総理は、今国会を「改革断行国会」と位置付け、規制改革の実現に大変強い意欲を示されています。規制改革はアベノミクス3本目の矢である、成長戦略を担う看板政策であります。規制改革によって民間の創意工夫を拒む壁を取り除くことで、新規事業参入を促進させ、イノベーションを喚起し、国民の潜在的需要を開花させていくことは、極めて重要な課題であります。
規制改革の中でも、医療、雇用、農業、エネルギー分野の改革は喫緊の課題です。しかしながら国民には、何のための改革なのか、十分に理解されていないのが現状であり、誤解も生まれています。「何が問題で、どこを改革すれば、どのような成果に変わるのか。」そのことを丁寧に説明しなければ、国民に理解を得ることは困難であり、改革も実現しません。与党としても説明責任を果たすつもりでおりますが、政府においても国民が納得できるような説明をお願いするものであります。
改革実現に向けた意義と総理の決意を伺うとともに、以下、具体的に規制改革についてお聞きしますので、その改革の中身と意義についてご説明願います。

(医療)
少子高齢化に直面するわが国が、「病気や介護を予防し、健康を維持して長生きしたい」との国民のニーズに応え、世界に先駆けて「健康長寿社会」を実現するためには、健康医療分野での規制改革を進め、ヘルスケア分野を成長産業へと育成していくことが極めて重要であります。
昨年11月の再生医療実用化の規制緩和により、再生医療薬が世界で最も早く実用化できるようになり、国内企業に加え海外のバイオベンチャーの日本への進出が相次いでいます。経済産業省の試算では、国内の再生医療市場の規模は、2020年には950億円、2030年には1兆円に拡大するとしています。
また、今国会で、患者からの申し出を起点として、国内未承認医薬品等を迅速に保険外併用療養として使用できるよう、「患者申出療養(仮称)」を創設し、患者の治療の選択肢を拡大する法案の提出を準備していますが、これが実現すればわが国の医療は世界最先端の水準に高まることも夢ではありません。
規制改革を通じて、総理はわが国の医療にどのような未来を描かれているのか、お伺いします。

(雇用)
成長戦略は、働き方改革の実現や、外部労働市場の活性化による失業なき労働移動の実現等、雇用制度改革を掲げています。
今回政府は、働き過ぎを防止し、多様なライフスタイルを可能とするワーク・ライフ・バランスを実現するため、一般の勤労者を対象とする使用者への年休取得の義務付けや、一定の年収条件や特定の高度な専門業務者を対象とした時間ではなく成果で評価される制度への改革、子育て中の勤労者が働きやすくなるようなフレックスタイム制の改善等、労働時間法制の改正準備を進めています。
これらの中で、特に成果で評価される制度改革については、各々の専門技能や技術、創意工夫によって成果を出せば時間に捉われることなく従来と同じ賃金がもらえるようにすることで、働く時間を自由に決めることができるという、柔軟で効率的な働き方を促すことが目的です。
政府のもう一つの制度改革として、労働者派遣法改正案があります。これは正社員を望む方にはその道が開かれるよう支援し、派遣という働き方を望まれる方には待遇の改善を図る等、労働者のニーズに応えて多様な働き方の実現を目指すものです。
国民に誤解をされることなく、安心して働いていただくためには、これらの改革の内容を丁寧に説明する必要がありますが、これらの雇用制度改革を通じて、どのような経済社会、国民生活を目指しているのか、総理のご見解を伺います。

(農業)
日本の農業は、農業従事者の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の拡大、農業総産出額の減少等多くの問題を抱えています。そのような問題を解決し、農業が成長産業となるために、これまで安倍内閣として、40年以上続いた米の生産調整を見直し、農業者がマーケットを見ながら自らの経営判断で作物が作れるような環境整備や、農地中間管理機構の整備で農地の集積・集約化を図り、農業経営の法人化や青年の就農を促進する等の改革に取り組んできました。その結果、異業種企業の農業関連ビジネスへの参入が増加し、農林水産物・食品の輸出額が過去最高になる等、農業の成長産業化の実現に向けた動きが始まっています。
今回政府は、全国農業協同組合中央会を農協法に基づく特別認可法人から一般社団法人に転換し、また地域農協には公認会計士による監査を義務付けること等を柱とした農協改革案を取りまとめました。
この改革はまさに、農業者と直接接する地域農協が、国内外での農産物販売等に全力を挙げ、農業者の所得向上を図るために、創意工夫をもって自由に経済活動を行える環境を整備することを目的としたものであります。
「誰のための改革なのか」、「単なる農協潰しだ」というご批判もありましたが、あくまで、農業者や地域農協が主役となり、農業を発展させていくための改革であり、そのことをご理解いただければ、誤解や批判も理解と支持に必ず変わるはずであります。さらに農業の発展は、中山間地域の維持・発展においても重要であり、地方創生にも資するものであります。農業改革の意義と実現に向けた総理の決意を伺います。

(エネルギー)
エネルギー分野においては、広域系統運用の拡大、小売り参入の全面自由化、送配電部門の法的分離と小売料金規制の撤廃という、3段階の電力システム改革のうち、今国会では第3弾の法案を提出すべく準備が進められています。電力システムの抜本改革により、自分で電力会社を選べ、どのような電気を使うかも決められるようになる等、生活や電力利用が一新されます。また、再生可能エネルギーや水素燃料等の次世代自動車、省エネ家電の普及が促されることで、これまで無かった新しい産業や雇用を生み出すことにも繋がります。
またガス事業においても、今国会でガスの全面自由化に向けたガスシステム改革関連法案の提出も検討されています。
規制改革を新たな成長に結びつけることは大切ですが、一方で、国民生活と経済・産業を守るためには、電力やガス等のエネルギーの安定供給が極めて重要であり、改革を進めるに当たっては、十分な検証を行いながら、安定的で社会負担の少ないエネルギー供給の制度設計を進めていくべきであります。
エネルギー改革に向けた総理のご決意を伺います。

6.教育再生

総理は、子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、子どもの貧困対策に重点を置いています。昨年8月には、「子供の貧困対策に関する大綱について」を閣議決定し、子供の貧困率だけではなくて、教育や就職の状況、子供を支援する施策の状況等、子供の貧困に関する25の指標を掲げ、その改善に向けた重点施策を取りまとめました。こうした子供の貧困対策に力を入れる総理の姿勢を高く評価します。こうした対策のためには、民主党政権時に実施された子ども手当のようなバラマキではなく、子どもたちの様々な生き方や学び方に対応した支援や教育に直結する政策を実施していくことが必要であります。
また、子どもが生きる上で、生命を大切にする心や他人への思いやり、善悪の判断等の規範意識をしっかり身につけられるような教育環境を、学校と家庭、地域社会を通じて整えていくことも重要であります。
総理は昨年、学校を不登校になった子供たちが通うフリースクールや、中学校の夜間教室を視察する等、これまで陽の当たることがなかった教育現場にも足を運び、昨今の教育問題に真正面から取り組まれています。改めて教育再生に向けた総理の決意を伺います。

7.外交・安全保障

(戦後70年)
本年は戦後70年の節目となる年であり、総理は談話を出されると表明しています。この新たな談話について、総理は記者会見等で、「村山総理談話をはじめ歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として今後も引き継ぐ」とともに、「先の大戦への反省、戦後の平和国家としての歩み、今後日本としてアジア太平洋地域や世界のために、どのような貢献を果たしていくのか、世界に発信できるようなものを、英知を結集して書き込んでいく」と述べられています。
この総理の考えに対し、過去の総理談話に使用されてきたキーワードの継承を焦点にした論争が展開されていますが、一番重要なのは、談話に込められる総理のメッセージのはずです。改めて戦後70年談話にあたっての総理の想いを伺います。

(安全保障法制)
政府は昨年7月1日、新たな安全保障法制整備のための基本方針を閣議決定しました。
わが国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、あらゆる事態に対して国民の命と幸せな暮らしを断固として守り抜くため、切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を速やかに整備することが必要不可欠です。言うまでもなく、いかなる紛争も力ではなく、第一義的には国際法に基づき外交的に解決すべきであり、戦後日本の一貫した平和国家としての歩みは、今後も何ら変わることはありません。一方で、平素から必要な安全保障法制の整備を行い、かつ米国をはじめとする同盟国・友好国との連携を強化することにより、わが国の抑止力を高め、紛争を未然に防ぐ環境を整えていかなければなりません。
先般の閣議決定の大きな柱は、三点あります。第一に、武力攻撃に至らない侵害、すなわち離島に武装集団が上陸したケース等、平時とも有事とも言えない、いわゆるグレーゾーンへの対処です。第二は、自衛隊による国際協力等であり、例えば、他国軍隊への支援活動、PKOでの任務遂行やいわゆる駆け付け警護に伴う武器使用、在外邦人救出をはじめ領域国の同意に基づく警察的活動の実施が挙げられます。そして、第三が、武力の行使に当たり得る活動であり、これには国際法上、集団的自衛権が根拠となる場合も含まれるとしています。
閣議決定から半年が経過しましたが、未だに報道では、集団的自衛権という言葉が大きく独り歩きしています。一部では、将来的には徴兵制が導入されるという、事実とかけ離れた論議すらなされていることもあり、国民の間に、誤解や漠然とした不安が根強く存在していることも否めません。自衛隊の全ての活動は、法律に規定する範囲の中で実施されることから、先般の閣議決定に基づき自衛隊が実際の活動を直ちに行い得ることはなく、政府において必要な法案の準備が整い次第、与党協議を経て、国会に提出されるものと承知しています。
従って、与党協議や国会における与野党の論戦等を通じて、改めて政府は丁寧な説明を行い、国民の誤解や不安を払拭することが不可欠です。
一方で、わが国をめぐる情勢は日々刻々と変化しており、国民の命と幸せな暮らしを断固として守り抜くためには、一刻も早く必要な法案を成立させることが求められます。
そこで、改めて総理に今般の安全保障法制の整備の意義、早期成立に向けた意気込みについて伺います。

(拉致問題)
昨年、日朝両政府は、拉致被害者や拉致の可能性がある特定失踪者、戦後に現在の北朝鮮に残された日本人ら、全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施することに合意しました。北朝鮮が特別調査委員会を立ち上げ、第1回目の調査報告が来ることになっていましたが、現在まで何ら報告が来ない状況が続いていることは、大変遺憾であります。
拉致が発生してから40年近くが経ち、拉致被害者のご家族も高齢となり時間も限られつつある中で、政府は一日も早い拉致問題の解決、被害者の帰国に向けて、引き続き全力で取り組まれると思いますが、総理の決意をお聞かせ下さい。

8.憲法改正

わが党は、本年結党60年を迎えます。結党以来、憲法改正を党是として、数次に亘り憲法草案の策定を重ね、平成24年には「日本国憲法改正草案」を発表しています。これまで衆参両院の憲法審査会の場においては、各党が憲法に対する考え方を明確に示しつつ論点を整理してまいりましたが、最初の憲法改正においては、衆参両院の憲法審査会での議論をさらに積み重ねることで、国民の間に憲法改正の機運を醸成し、理解を深めてもらい、確実に改正が実現できる環境を整備していくことが、何よりも重要と考えます。憲法改正に向けた総理の決意を伺います。

9.むすびに

先の総選挙でわが党は国民の皆さまから2回続けて安定多数をいただくことができました。2度の政権交代を経験し、多くの国民は「政治は安定しなければならない」と強く感じておられるのではないかと思います。そして多数を得た今、これまで実現し得なかった大きな仕事ができる環境が整っているのも事実です。
その上で大切なことは、この数に驕ることなく、多様な意見を吸収し、健全な民主主義を育てていくことです。議論をおろそかにせず、物事を丁寧に進めていかなければなりません。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」
わが党が政権を奪還して2年。多数を得た今こそこの言葉をかみしめる必要があると思います。自由民主党は、世界の中で輝く日本を作るため、国際競争力を上げ、日本全体のパイを増やし、国民一人一人を強く、豊かにしていく決意です。
安倍総理を先頭に、わが国の潜在能力を信じ、国民からいただいた負託に応えるよう、頑張ろうではありませんか。
総力を結集し、最大の力を発揮していくことをお約束し、私の質問とさせていただきます。