国会トピックス
第180回通常国会における代表質問
谷垣禎一 衆議院議員
平成24年1月26日(木)
自由民主党
衆議院議員 谷垣禎一

一、はじめに
私は自由民主党・無所属の会を代表して、一昨日の野田総理の施政方針演説について質問致します。
まずは、昨年の東日本大震災によってご家族・ご親族・ご友人を亡くされ、癒えない悲しみを抱えたまま年を越された方々、福島第1原子力発電所の事故で避難を余儀なくされ、遠く故郷を想いながら新年を迎えられた方々に心よりお見舞い申し上げます。私ども自民党は、被災された全ての方々の心の中に希望の火が再び灯るその日まで、力の限り寄り添うことをお誓い申し上げます。
さて、野田総理の最近の言動には、社会保障・税一体改革に逸るばかりに、就任当初に国民から期待された丁寧さ、誠実さを失いつつあると感じられてなりません。外交・安全保障、沖縄との関係において重責を担う防衛大臣の2代にわたっての資質への疑義など、内閣としての緊張感の欠如も多々見受けられます。
総理は最近、「君子豹変す」という言葉を好んで使われます。周易でいうこの言葉は、急に態度を変えることではなく、徳を積んだ真の指導者は過ちを潔く認め、豹の毛皮が秋に色を変えるが如く、正しい道に戻るということです。即ち、国民に嘘をついたことを詫び、負担を正直に訴え、その意見を聞くことなのです。上から目線の決意だけでは、国民の理解は決して得られません。泥臭く国民のために汗をかくどじょうの政治をとことんやりたいと言って総理になったあなたの姿が、国民との約束もないままに、「一体改革に協力しないのは、歴史に対する反逆行為だ」などと決めつけて、一人空回りしていた菅前総理の姿と次第に重なっていくことには、残念でなりません。
一体改革は確かに重要ですが、名実ともに国民とも一体の改革でなければなりません。あなたが消費税率引上げを決めたことはマニフェスト違反でないといかに強弁しても、その弁明を真に受ける有権者など皆無です。マニフェストを掲げて政権交代を果たしながら、次々と政策を翻していった民主党政権に対する国民の視線は厳しいものがあります。まずはできないことはできないと正直に伝え、過ちは素直に認め、詫びるべきは国民に詫びる謙虚さが野田総理に求められています。一体改革のために捨て石になるとまで言われたあなたに、本当に身を捨てる覚悟があるのか、そのことが今問われているのです。
総理、私の目に映るのは、政権維持のために一体改革を盾として、国民と真正面から向き合う覚悟に欠けるあなたの姿です。本日は、わが党の社会保障・税一体改革に対するスタンスを改めて明確に申し上げるとともに、質疑を通じて、総理に本当の意味での覚悟を迫ってまいります。
二、信を問うべし
野田総理は、先の衆議院総選挙において「4年間の任期中に消費税の税率引き上げを決めることに賛成か反対か」という新聞社の候補者アンケートに対し、「反対」と答えていますね。これはいまだにホームページにも掲載されており、こうした回答にもかかわらず、今は総理として自らの手で消費税率引上げを決めようとされていますが、あなたの言を信じて1票を投じた千葉4区の有権者にどう答えられるのですか。これは岡田副総理・安住財務大臣も同様の回答であり、当時の民主党代表にいたっては20年間は消費税を上げないとまでテレビで国民に明言していましたが、総理はそのことに一政治家として何の良心の呵責もないのでしょうか。誰が政権をとっても避けて通れぬ課題と開き直るばかりでは、民主主義の原点であり、国民から主権を預かる選挙、衆議院総選挙はどのような意味を持つのでしょうか。お答えください。
今般の消費税率引上げと先の総選挙との関係について、民主党内ではマニフェストに書かれていない以上、マニフェスト違反にはならないとの奇妙な言い訳作りが行われていると伺います。総理も、新年互例会で私を前に「マニフェストに書いてあることをやるのもけしからん、書いてないことをやるのもけしからんと言われたら何もできない」とおっしゃりました。
しかし、総理は当時、自ら繰り返し次のように街頭で演説されています。「マニフェスト、イギリスで始まりました。ルールがあるんです。書いてあることは命懸けで実行する。書いてないことはやらないんです。それがルールです」と。さらに、当時与党であったわが党を批判して「書いてないことは平気でやる。それはマニフェストを語る資格がない」とも述べておられます。
こうした総理自身の言葉に照らせば、マニフェストに書いていないからマニフェスト違反ではないなどというのが詭弁に過ぎず、特に憲法上の財産権の保障という国民の権利に直結する税の問題だけに、なおさら一体改革のマニフェスト違反は明らかです。総理はこれをどのように弁明されるのでしょうか。当時の演説を撤回されるのか、マニフェスト違反を正直に認めるのか、どちらか明確にお答えください。
過去の発言を論うこと自体が私の本意ではありません。私が申し上げたいのは、総理更には民主党がこのまま消費税増税に突き進むことは、主権者は国民であるとの議会制民主主義の根本を否定する行為であり、断じて容認できないということです。
私たちは議会制民主主義の歴史が租税とともに歩んできたことを忘れてはなりません。
すなわち、今日の議会制民主主義の繁栄の淵源は、1215年でイギリスにおいて大憲章「マグナ=カルタ」に盛り込まれた「議会の同意なく税金、戦争協力金などの名目で課税してはならない」という条項にあります。
爾来、国家の課税に対する国民の意思こそが、人々の政治への参画、ひいては議会制民主主義の発展の原動力となったのであり、このことはその後の「権利請願」及び「権利章典」を始めとするイギリス議会の歴史、「代表なくして課税なし」をスローガンとしたアメリカ独立戦争の歴史、主権在民を前提として納税の義務を明記したフランス人権宣言が示しています。
私たちの議席はこうした長い歴史の積重ねと先人たちの文字通りの血と汗の上に築き上げられたものであり、その証が今日の憲法が定める租税法律主義の規定です。民主主義の下では租税の分担ルールである税制が国民の合意の下によって決定されることが、国民の納税の義務を支える礎であり、であればこそ、税制は主権者である国民に正直に訴え、その訴えが受け入れられるとその意思を反映して、国民の代表で組織される国会で法律により議決されるのです。
このことからして、主権者を欺いて当選した民主党議員の投票で選ばれた民主党政権は、民主党マニフェストという偽りに満ちた国民との契約によって簒奪された多数の議席を利用して、マニフェスト違反の消費税率引上げを行う権限を主権者から与えられてはいないのです。それは議会制民主主義の歴史への冒涜であり、国権の最高機関の成り立ちを否定するものです。
税を扱うにあたっては、国民の合意・協力を得ることが求められます。現在の財政赤字に責任を感じるがゆえにわが党は、累次の税制改正大綱はもとより、選挙公約においても消費税を含む税制抜本改革を断行することを堂々と掲げ、国民と直接向き合ってまいりました。一方、一貫して消費増税を否定し、時の総理の呼びかけにも応じなかった民主党は、有権者へ顔向けできないせいか、その努力から逃げ回るばかりでした。国民の合意を得ることをなおざりにし、選挙を蔑ろにしてしまえば、議会制民主主義を破綻の淵に追いやることとなります。21年度税制改正法附則第104条を策定したわが党として、この規定に基づく政府の3月までの法案提出を妨げるつもりはありませんが、野田総理、本来、民主党政権に提出の権限は国民から与えられていないのです。野田政権の採るべき道は、有権者に謝罪をした上で、解散総選挙を行い、国民に信を問い直すしかありません。
わが党は、議会制民主主義の大義を掲げて、野田政権に堂々と解散を求めてまいります。
三、社会保障・税一体改革の問題点について
政府・民主党がマニフェストに違反する形で消費税率引上げに突き進んでいることによって生じる民主党内の「コップの中の嵐」の弊害が、意思決定の遅れや内容面の歪みとなって国民に多大な迷惑をかけていることも指摘しなければなりません。
まず、一昨年の参院選前に菅前総理が消費税率の10%への引上げを軽々しく口走ってから、今月の「社会保障・税一体改革素案」のとりまとめまで実に1年半近い歳月を要しています。「素案」で盛り込まれた消費税率の引上げ幅と引上げ時期は、昨年6月の「成案」の段階で民主党内の議論の紛糾で決め損なったものをようやく決めただけに過ぎません。
そして、消費税率の引上げ幅と引上げ時期の決定にエネルギーを費やすあまり、「素案」には検討課題がただ羅列されるのみで、およそ税制の抜本的改革とは程遠い寂しい内容となりました。また、消費税率引上げには欠かせない逆進性対策や各種個別間接税との負担調整の検討すら不十分です。さらには、わが党は消費税収を国民に還元することを会計上も明確に区分すべきと主張してきましたが、政府・与党はどのように区分経理をするかの具体案も示していません。
そこで総理に伺います。単一税率を内容とする消費税率引上げ法案を提出する以上、政府は、軽減税率に代わる低所得者対策である給付措置の具体案を当然示すべきです。この給付措置については、一昨年夏に当時の菅総理が、対象となる低所得者の年収上限について200万円、300万円、400万円などと日替わりで様々な水準を述べて混乱が生じましたが、あれから1年半も経っています。この点も含め、消費税率引上げ法案の提出までにその具体的設計、費用及びその財源を政府・与党の案として示すことは、法案提出者の義務だと考えますが如何ですか。
また、負担増を求められる国民の気持ちを考えれば、消費税収の区分経理などの具体的手法も同様に示すべきです。あわせてお答えください。
より深刻な問題は、財政健全化との関係です。
野田総理は、「素案」の取りまとめの最終段階で、消費税率の段階的引上げの時期を2014年4月、2015年10月とそれぞれ半年後ろ倒しにされました。その理由として総理は、第1段階目の引上げについて、増税実施の決定を次の政権に委ねるとし、任期中には消費税率を上げないとしてきたこれまでの民主党の説明との整合性が図られないからとされました。
そして、一昨日示された内閣府の試算では、国・地方を合わせた基礎的財政収支赤字の対GDP比を半減させる、更には国単独の基礎的財政収支の赤字の対GDP比も半減させるという政府の財政健全化目標が2015年度にはともに達成されないことが明らかにされています。このことは、マニフェスト違反を取り繕う辻褄合わせのためだけに、総理が自らわが国財政への信認を貶めたことを意味し、まさに民主党政権に消費税率引上げを委ねることの弊害がここに極まった感があります。
一体改革をめぐる党内のゴタゴタをおさめるために妥協に妥協を重ねて、財政健全化目標の達成という譲るべきでないものまで譲った野田総理の政治的責任は厳しく問われて然るべきと考えますが、経緯もご説明いただいた上で総理の見解を伺います。
この点につき、野田総理は歳出改革により必ず財政健全化目標を達成すると述べられています。しかし、政府は2014年度までの「中期財政フレーム」は示していますが、肝心の2015年度にどのような財政運営を講じるのか全く示しておりません。仮に更なる歳出削減によって目標が達成可能であると主張するのであれば、2015年度を含めたその歳出削減の内容を具体的に示し、その実行を国民に約束すべきです。それなくして、ただ達成できると強弁することは、マニフェストの歳出削減の空論に騙された国民には到底理解されないでしょう。よもや慎重な経済見通しではなく、より高い経済成長を前提に目標達成は可能だと論ずるのではないでしょうね。
そこで総理にお尋ねします。総理が必ず2015年度に目標をクリアするとおっしゃる明確な根拠、すなわち、更なる歳出削減計画を分野別に具体的計数でお示しください。かつてわが党が提出していた「財政健全化責任法案」においては、財政健全化中期計画として5年間の計画の策定を求めていました。今回の消費税率引上げが行われる2015年度の歳出削減計画を示すことは最低限の要請です。具体的な回答をお願いします。
いずれにしても、欧州債務問題が予断を許さない状況の中で、今般の改革の目的として財政健全化の同時達成を声高に掲げておきながら、この局面に至って、その達成を危うくする総理のちゃぶ台返し的手法には呆れて物が言えません。鶴の一声であっさり財政運営の根幹を揺るがせるような国に市場の信認が得られる訳はありません。このような事態を避けるためにこそ、わが党がかつて提案した「財政健全化責任法案」があったはずです。あの法案どおり財政健全化目標を目標年次とともに法定化しておけば、財政健全化の中期計画を描くことなく、それを蔑ろにするような今回の野田総理の振舞いは、直ちに法律違反として指弾され、あなたは本来この時点で即退陣なのです。
それにしても理解に苦しむのは、嘘と粉飾にまみれた24年度予算編成です。とりわけ基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げの財源として交付国債を発行するとの奇策に頼ってまで、新規国債発行額の抑制という目標を守っておきながら、国際公約とも言うべき2015年度までの財政健全化目標の達成の方は後ろ倒しでは、まさに「頭隠して尻隠さず」を地で行く財政運営です。これでは年金交付国債の発行の真意は専ら年金財政を消費税率引上げのための人質にとるものであったと受け止められても仕方がありません。しかも、第1段階の消費税率引上げ時期を後ろ倒しすることによって、年金交付国債の発行額ひいては償還額が膨らみ、その償還のため2015年度における財政健全化目標の達成が更に困難になるという悪循環をもたらしています。あまりに一貫性が乏しく、不見識な財政運営と考えます。しかも、円高・デフレ対策も含めた経済成長への配意も不十分です。総理のご見解を伺います。
私は、昨年11月末の党首討論で、野田総理が、わが党が提出した「財政健全化責任法案」を引き合いにして、素案を政府でまとめるから自民党も協議に応じるべきと私に迫ったことを忘れてはおりません。総理は今回、法案が求める財政健全化計画の中期計画を策定することもないまま、法案の命とも言うべき財政健全化目標を蔑ろにするという、法案無視の愚かしい選択に及びました。今となっては、あのときの野田総理の物言いは、あの法案を葬り去った民主党の代表が「素案」という法案との言葉の一致だけをよりどころにわが党に協議を迫り、わが党が責任野党として法案に込めた思いを言葉遊びで踏みにじったものとしか受け止めようがなく、怒りに堪えません。まずは党首討論における発言の謝罪及び撤回を求めます。更には、政府はこれまで、今回の「社会保障・税一体改革素案」の表題は「財政健全化責任法案」の文言を引用したものとの説明をしていますが、そうであれば即刻その表題を撤回すべきです。わが党にあまりに失礼です。総理いかがでしょうか。
あわせて、野田総理、あなたにはもはやこの法案を盾に我々に与野党協議を迫る資格はないことをここに明言しておきます。いわんや欧州危機を口実にわが党に協力を要請する資格もありません。
四、年金制度改革について
表題から曰くつきと申し上げざるを得ない「素案」ですが、なお問題点の枚挙には暇がありません。
「素案」では、民主党マニフェストに沿って、「所得比例年金」と「最低保障年金」の組み合わせからなる新たな年金制度を創設すること、更にはそのための法案を来年提出することが明記されています。
この新年金制度については、我々はかねて、仮に65歳以上の方全員に月7万円の最低保障年金を配ればさらに14兆円、すなわち消費税率にして約6%の増税が必要になると指摘してまいりました。増税規模を圧縮するとすれば、所得制限の水準を低くせざるを得ず、給付が減り、負担が増えるのみの国民の数が増えることとなります。
この点に関し、昨春の民主党の調査会では、最低保障年金を導入すれば、最大で7%分の消費税の更なる増税が必要になるとの試算結果が示されたものの、資料は回収され、お蔵入りになったと報道されています。その試算では殆どのケースで、中堅所得者の給付が減るうえに税負担も増えるダブルパンチになるとも報道されています。これは、保険料を納めなかった人も含む全ての人に月7万円をばらまくことが如何に大きな財政負担を伴うか、財政負担を抑えようとすれば中堅所得者までも負担増となるのみで、いかに保険料を納めた正直者がバカをみることになるかを示す試算だと言えます。
総理にお尋ねします。報道されたような非公表の試算は実在するのですか。するのであれば隠蔽せず、公表すべきではないでしょうか。そしてなぜ「素案」に追加財源が必要なことを書かなかったのですか。お答えください。あわせて、そうした試算結果を妥当なものと考えるか、お答えください。
民主党の輿石幹事長は、与野党協議の土俵作りのため、年金制度改革の案を早くまとめる意向を繰り返し示しています。しかし、先ほどの試算の隠蔽疑惑があるほか、最近では昨年6月の「成案」を取りまとめた民主党内閣の与謝野元大臣が民主党の年金制度改革は「嘘」であり「使いものにならない」、「成案では、一応看板だけ残しているが、あれは墓碑銘」とまで言い切っています。このように「死せる年金制度改革」疑惑まである中にあっては、今度示されるものは、抽象的な考え方ではなく、よほど具体的なものでなければ意味がありません。これを欠いては、民主党の言う年金制度改革は、幽霊のような実体のないものであって、不都合な真実を隠して、できもしないものをできると言い募る、民主党マニフェストの典型的な手法の繰り返しとなります。
増税だけ決めて、その使途たる社会保障制度の根幹について将来の姿が曖昧かついい加減では国民の理解は得られません。そこで総理には、考え方や選択肢といったものではなく、輿石幹事長の発言も踏まえ、新年金制度の所得制限の水準などの詳細設計、更にはその費用と財源についての政府・与党案を、消費税率引上げ法案を国会に提出するのであればその提出より前に明らかにしていただくことを求めます。その際には、報道された試算との関係や、我々が主張してきた更に必要となる消費税率の引上げ幅との関係、中堅所得者の給付と負担に及ぼす影響についても具体的に説明していただく必要があります。負担を先々の話として誤魔化すことは許されません。総理、このことを確約いただけますでしょうか。その期限も明確に示してください。
なお、この浮かんでは消える年金制度改革を早くから提唱してきたのが、今回入閣した岡田副総理に他なりません。かつての参議院選挙で「まっすぐにひたむきに」年金制度改革を訴えた当時の代表であった岡田副総理は、年金目的消費税3%というかつての主張と今回の一体改革の整合性を含め、国民に分かりやすく説明するべきであり、そのことこそが一体改革担当大臣としてまず果たすべき職責ではないでしょうか。マニフェスト等では消費税収は年金に充てるがその分の増税は不要とされていたものを、再び説明を変えるのであればそのけじめも必要です。総理の見解を伺うとともに、岡田副総理には、「逃げないできちっと結論を出す」という総理からの人物評価に相応しい対応を期待しますが、その決意も伺います。
五、公務員人件費削減について
次いで、公務員人件費の削減等についてお尋ねします。
まず、「素案」では、「身を切る」改革として、国家公務員給与の8%削減を内容とする給与臨時特例法案の早期成立を掲げていますが、この法案は、主として復興財源の確保を目的としており、削減期間は2014年3月末までとされています。すなわち、第1段階の消費税率引上げが行われる2014年4月には、消費税率が8%に上がると同時に公務員給与は復元して8%上がる、こんなことでは国民感情を逆撫ですることは必至です。この点についての総理の認識をお答えください。
「素案」では続けて国家公務員制度改革関連法案の早期成立に触れていますが、論外です。消費税率引上げと同時のタイミングで、身を切るどころか、身を切られないための交渉権を公務員に与えることは、国民の期待とは逆さまです。連合が熱心に早期成立を訴えている事情はあるでしょうが、国民への負担増をお願いする傍らで支持者向けのリップサービスを潜り込ませる民主党の無神経さ、図太さには驚き呆れます。しかも、政府は、地方公務員にもこの交渉権を与える法案を提出準備中とも聞きます。国民に負担を求めるに際して、先程述べた年金制度改革の具体的法案よりも、このようなものが優先されるとすれば狂気の沙汰です。いかに弁舌を弄しようとも、野田政権の底が見えた感がします。
総理、公務員制度改革関連法案の早期成立は「身を切る」こととどのように関係するのでしょうか。無関係のこの部分は一体改革の「素案」から削除・撤回のうえ、法案を棚上げすべきと考えますが、総理のお考えをお聞かせください。
なお、施政方針演説では、総理から、給与臨時特例法案について合意が得られるよう協力をお願いされましたが、わが党は既に公明党と共同で対案を昨年末に提出しています。昨日までに実務者間では形式的な削減幅は一致しておりますが、対案を踏まえて「身を切る」改革として、よりふさわしい内容にしてください。
そのためにも、対案に盛り込んだ2点が重要です。
1点目は、既得権益化している現給保障の廃止など、人事院勧告が指摘した給与構造の歪みの是正を直ちに行った上で引下げを実現させるべきという点です。
2点目として、わが党は、国家公務員給与の引下げに準じた対応を地方団体にも要請し、地方公務員にも波及させるべきと主張しております。政府・民主党は地域主権改革を盾に反対していますが、政府の「財政運営戦略」で地方団体の財政健全化に対して政府が要請することを認めている一方で、地方公務員給与引下げに限っては要請すらしないことは、理解不能であり、地方公務員給与を聖域化するものとしか受け止められません。総理には、毅然とした対応をお願いします。この点お答えください。
政府が増税について国民の納得を得るため聖域なき行政「刷新」を掲げるからには、かつてわが党が行政改革推進法で取り組んだように、国家公務員に限らず、地方公務員、国・地方の独立行政法人を含めた公的部門全体について定数削減等も視野に入れた総人件費改革が不可欠ではないでしょうか。総理に加え、行政「改革」を担当する岡田副総理にも、前向きな決意をご披露いただきたいと存じます。
わが党が申し上げていることは、いずれもシンプルかつ当然のことに過ぎません。これにすっきりご賛成いただければ、「身を切る」改革について直ちに具体的成果を挙げられます。ボールは御党、最終的には野田総理にお預けします。是非我々の主張にご賛同ください。
なお、鳥獣被害防止特措法など、わが党が提案している議員立法についても、地域の窮状等を踏まえ、速やかな成立を求めますが、総理の国民目線での前向きな回答を願います。
六、おわりに
既に明らかにしたように、社会保障・税一体改革に向けては、与野党が国会において議論することこそが議会制民主主義の本義に適うことであり、租税法律主義にも則した対応であると考えております。わが党としては、総理であり与党代表であるあなたが、政府・与党における確固たる意見を取りまとめたうえでの法案提出を待ち、法案提出の正統性も含め、議論はリングの上で正々堂々国民の前で行おうと申し上げているところです。
一方、今般政府・与党が取りまとめた「素案」は、タイトル自体がわが党へのいわれなき挑発である上、検討課題やスケジュールの羅列ばかりの冗長な官僚的作文であり、このような一方的かつ空疎な前口上に野党が付き合わなければならない道理はありません。野党が先送りや絵空事の共犯を押しつけられる筋合いはなく、まして与野党協議を対立する党内をまとめる道具にしようというのは言語道断です。絵空事は含まれないというなら、政府・与党は、せめて過不足ない年金制度改革の具体案を示して身の証を立てるべきと考えます。
なお、「素案」には、逆進性対策や、消費税収の区分経理のあり方に係る具体案など幾つか重要な要素も欠落しています。これら国民の負担と直結する事柄については、税制改正の法案に準じて、法案提出より前に具体的設計を明らかにしてもらうことが法案提出者の責務です。消費税率を上げても財政健全化目標の達成が危ういというのであれば、達成に向けた具体策も示していただく必要があります。
こと公務員人件費の削減については、総理は朝令暮改のように態度を変えています。政府・与党が、社会保障・税一体改革と一体の「身を切る」改革と位置づけながらも、しがらみに囚われて切込み不足であり、計量オーバーでリングにすら上がれないのではないかと懸念します。我々の提案を丸呑みしていただき、地方の行政改革も含めて真摯に取り組む姿勢を見せてください。抵抗勢力を炙り出し、一人一人説得するなど、党内の面従腹背を許さないための強力な総理のリーダーシップが不可欠です。
もっとも、観衆を騙したあなた方はリングに上がる資格があるのかも怪しいものです。国民からの厳粛な信託に裏打ちされた議会の権威を守るためには、民主党のマニフェスト違反は看過し得ません。あなた方にリング上で勝利者としてのタイトルが与えられることはなく、観衆から祝福が与えられることもないでしょう。社会保障・税一体改革に懸けるあなたの決意以上に、私は民主主義の原点である主権者の尊重、その結果としての議会制民主主義を守るための揺るぎない決意を持って国会論議に臨みます。
野田総理、あなたがなすべきは、この壇上から与野党協議を呼びかけることではなく、一候補者に戻って、先の衆議院総選挙で嘘をついたことを主権者に心の底から詫び、信を問い直すことです。まさに国民一人一人と真摯に向き合い、徹底的に協議することこそが求められているのではないでしょうか。
そうした覚悟こそがあなたが真に捨て石になるということであり、その先になお改革を成し遂げようというのであれば、我々も新しく正しく表現された民意を前提とする一体改革に民主主義の魂を吹き込むべく、共に力を合わせ努力したいと考えます。
改革を前に進めるため、総理の大きな決断を促し、質問を終わります。





















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