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記者会見

安倍内閣総理大臣記者会見

2018年7月20日

冒頭発言

安倍内閣総理大臣記者会見

まず冒頭、今般の豪雨災害によりお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りし、御遺族の皆様にお悔やみを申し上げます。そして、被災された全ての皆様に衷心よりお見舞いを申し上げます。

そして、この2週間、行方不明者の捜索、被災者の支援に高い使命感を持って当たっている自衛隊、警察、消防を始め、全ての関係者に心から敬意を表します。被災者の皆さんのため、過酷な現場で黙々と任務を全うする彼らは日本国民の誇りです。全国各地からのボランティアの皆さんにも感謝申し上げます。

明日、私は広島の被災地を訪問いたします。被災地の皆さんの声を踏まえ、現場主義での復旧・復興を加速する考えです。仮設住宅への移転、生業(なりわい)の復興など、被災された皆さんが一日も早く安心して暮らせる生活を取り戻すことができるよう自治体と連携しながら、政府の総力を挙げて取り組んでまいります。

半年にわたった通常国会があさって閉会となります。まず、今国会の会期中、行政をめぐる様々な問題が明らかとなり、国民の皆さんの信頼を損なう結果となったことについて、行政のトップとして改めて、深くお詫び申し上げます。

行政文書は、国民と行政をつなぐ最も基礎となるインフラであります。その強い自覚を公務員一人一人が持たなければなりません。決裁文書の改ざんなど絶対にあってはならず、再発防止に向け、文書の監査機能を抜本的に強化いたします。

森友学園への国有地売却、獣医学部の新設をめぐっては、この国会でも厳しい御指摘を頂きました。行政プロセスが公平、適切に行われることは当然です。しかし、それでもなお総理大臣という立場が周囲に与え得る影響を常に意識し、慎重な上にも慎重に政権運営に当たらなければなりません。そのことを深く胸に刻み、国民の皆様の負託に全力で応えていく、その決意を新たにしております。

この国会を働き方改革国会とする。本年の始まりに当たって私はそう申し上げました。労働基準法の制定以来、実に70年ぶりの大改革がこの国会で実現いたしました。我が国に染みついた長時間労働の慣行を打ち破る。史上初めて、労働界、産業界の合意の下、時間外労働について罰則つきの上限規制を導入します。

この国から非正規という言葉を一掃する。雇用形態による不合理な待遇差を禁止する同一労働同一賃金を実現します。

育児や介護など、様々な事情を持つ皆さんが多様な働き方を選択できる一億総活躍の新しい時代に向かって大きな扉を開くことができたと考えています。

深刻な人手不足に直面する中小・小規模事業者の皆さんへの支援もしっかりと行ってまいります。生産性を向上させるための投資には、固定資産税をゼロにするかつてない制度がスタートしました。ものづくり補助金や持続化補助金により、中小・小規模事業者の皆さんによる経営基盤の強化を応援します。4月からは相続税の全額猶予により、次世代への事業承継を力強く後押ししています。一定の専門性、特定の技能を持った優秀な外国人材を受け入れるための新たな在留資格の創設に向けて準備を進めてまいります。

第二次安倍内閣の発足以来、5年間で名目GDPは56兆円増え、11.3%成長しました。正社員の有効求人倍率は、統計開始以来過去最高です。5年半前、正社員になりたい人100人に対し、たった50人分しか仕事がなかった。しかし今は2倍以上、110人分の正社員の仕事があります。この春、連合の調査によれば、中小企業の賃上げ率は過去20年で最高です。経団連の幹部企業への調査では、4分の3以上の企業で、年収ベースで3%以上の賃上げが実現しました。デフレ脱却に向け、日本経済は確実に前進を続けています。革新的なイノベーションに挑戦する企業には、法人税負担を20%まで大胆に引き下げ、チャレンジを力強く後押ししていきます。

この国会ではTPP11協定が承認されました。人口5億人、GDP1,000兆円を超える巨大な経済圏が誕生します。今週は日本と欧州のEPAも署名に至りました。世界的に保護主義への懸念が広がる中、我が国は自由貿易の旗手として、自由で公正な、ルールに基づく新たな時代の経済秩序を世界に打ち立ててまいります。これは我が国が誇る全国津々浦々の安全でおいしい農林水産物が世界に進出する大きなチャンスとなります。地方創生の起爆剤です。農林水産物の輸出は5年連続で過去最高を更新し、昨年は8,000億円を超えました。そうした中で、40代以下の若手、新規就農者は調査開始以来初めて3年連続で2万人を超えました。農業は国の基(もとい)であります。農家の平均年齢が66歳を超える中で、伝統あるふるさと、美しい田園風景を守り抜くためにこそ、今、改革を進めなければならない。若者が夢や希望を持って飛び込んでいけるような地方をつくり上げなければなりません。今国会では、戦後以来の林業改革を進める法律も成立しました。経営の大規模化によって、我が国の豊かな森林資源をいかしながら、地方が誇る美しい山々を守り抜いてまいります。

地方創生のもう一つの柱は観光です。今年の上半期、我が国を訪れた外国人観光客は1,600万人に迫り、いよいよ3,000万人時代に突入しました。新しい財源も活用して、全国津々浦々が誇る美しい自然、伝統、文化、食などの観光資源に更に磨きをかけ、4,000万人の高みを目指してまいります。

この国会中、本当に痛ましい事件が発生しました。わずか5歳の結愛(ゆあ)ちゃんが、死の間際、どんな思いでノートにあの言葉を綴ったのか、今も私の心に突き刺さっています。虐待によって多くの幼い命が奪われています。本日決定した緊急対策を直ちに実行に移し、児童虐待の根絶に向け、政府を挙げて取り組んでまいります。子供たちの命を守り、子供たちが持つ大きな可能性を開花させる。これは私たち大人の責任です。

この春から新たに2万人の子供たちが給付型奨学金を手にしました。生活保護世帯の子供たちの大学進学を支援する新しい制度が先月から動き出しています。児童扶養手当について、来月分から50万人を超えるひとり親家庭で支給額を増やします。家庭の経済事情に左右されることなく、全ての子供たちが希望する教育を受けることができる。頑張れば自らの力で未来をつかみ取ることができる。そうした社会をつくり上げるため、引き続き全力を尽くしてまいります。

来年10月から消費税率引き上げと合わせ、3歳から5歳まで幼児教育を一気に無償化します。再来年4月から真に必要な子供たちの高等教育の無償化も行います。来る人生100年時代をしっかり見据えながら、我が国の社会保障制度を全世代型へと大きく転換する。誰もが安心できる社会保障制度をつくり上げていく、その決意であります。

平成の時代が幕を開けた頃、日本の高齢化率は11.6%でした。それが今、27.7%。この30年弱の間に16%以上アップしました。子供の出生数も年間100万人を下回り、平成元年と比べ30万人減少している。少子高齢化が一気に進みました。しかし、私たちは今、あの失われた20年から脱却しつつある。長い景気の低迷、不安定な政治は過去のものとなり、もはや小手先の対応は不要です。未来を見据えた改革を進める準備は整いました。今こそ新しい時代を切り拓くときです。平成のその先の時代、次の世代のために、我が国の経済社会システムをもう一度つくり上げていかなければなりません。

働き方改革、TPP、地方創生、そして、全世代型の社会保障制度の構築。この通常国会は、我が国が次の時代に向かって大きな一歩を踏み出した、そういう国会になったと考えております。

私からは以上です。

安倍内閣総理大臣記者会見