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政策

平成30年度予算概算要求 主な項目と内容
-「働き方改革」「人づくり」、諸課題に全力-

2017年9月11日

平成30年度予算概算要求 主な項目と内容<br />-「働き方改革」「人づくり」、諸課題に全力-

熱心な議論が行われた東日本大震災復興加速化本部


【厚生労働】 「働き方改革」を着実に

 厚生労働省の一般会計の要求額は平成29年度の当初予算比で2.4%、7426億円増の31兆4298億円。このうち、年金や医療などの社会保障費は高齢化の進展に伴って6491億円を上積みし、29兆4972億円と大部分を占める。

 個別の施策では、政権の重要政策の「働き方改革」を着実に実行するため、同一労働同一賃金の周知や相談支援に16億円を計上。業界別の特性を踏まえた「導入マニュアル」による啓発、全都道府県に設置する「働き方改革推進支援センター(仮称)」での専門家による個別相談などを進める。長時間労働の是正では、時間外労働の上限設定や勤務間インターバルを導入する中小企業への助成金拡充などに今年度の倍額となる72億円を盛り込んだ。

 また、質が高く効率的な保健・医療を提供するため、データヘルス改革の推進には92億円を要望。今年度の10億円から大幅に増額し、ビックデータを連結した「保健医療データプラットフォーム」の構築へ、データ分析環境の整備やセキュリティの検証などを進める。

 保育所の待機児童解消に向けては、受け皿整備や保育人材の確保などに1397億円を求めた。来年度からの3年間で22万人分の保育の受け皿を増やす「子育て安心プラン」などにより総合的に子育てを支援する。

【経済産業】 生産性向上を目指す

 経済産業省の一般会計の要求額は平成29年度の当初予算比で593億円増の4013億円。世界の産業構造がデジタル化によって変化する中、データ利活用の基盤を整備し、生産性向上やビジネスモデルの変革を促す。

 一人の運転手が運転するトラックを複数の無人トラックが自動運転で追尾する隊列走行の実証などに73億円、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けたサイバーセキュリティ強化に48億円、「第4次産業革命スキル習得講座認定制度」の創設などによる人材育成に99億円を計上した。

 また、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)の大枠合意を踏まえ、中堅・中小企業や農産物の海外展開を支援する予算も今年度から30億円の増額となる88億円を要望。政府系機関の「新輸出大国コンソーシアム」による総合的支援、2025年国際博覧会の大阪・関西誘致への広報活動などを盛り込んだ。

 地域経済を支える中小企業対策費は1290億円と174億円を上積み。多くの中小企業にとって課題となっているITの活用に新規で4億円を投じ、モノ・資金の一体的管理を進める。

【外交】 「足腰予算」を強化

 外務省所管の予算要求額は7675億円で、前年度当初予算から749億円(10.4%)の増額となった。取り組みの柱は(1)不透明さを増す国際情勢に対応し、戦略的な外交を展開する(2)テロなどの脅威から在外邦人や国内を守る(3)日本経済を力強く外交面で後押しする(4)戦略的な対外発信を維持・強化する―の4つ。

 要求に際しては「足腰予算」を特に重視。出張旅費や人件費などについて、今年度当初予算から142億円増の2096億円を計上した。主要国に比べ少ない人員や在外公館などを拡充し、外交力の底上げを図る。

 政府開発援助(ODA)関連予算は554億円増の4897億円を要求。日米同盟のさらなる強化やテロ対策に力を入れるとともに、海外へのインフラ技術支援や日本企業展開を通してわが国の経済成長にもつなげる。

 また、新たな外交戦略として「自由で開かれたインド・太平洋戦略」を掲げた。法の支配の下、成長著しいアジアと潜在力溢れるアフリカとをつなぎ、地域全体の安定と繁栄に資する外交を展開する方針。

【復興】 引き続き万全の支援体制

 復興庁の要求額は1兆6237億円で、住宅再建事業がピークを越えたことなどから前年度当初予算比1880億円(10.4%)の減額となった。

 30年度予算では被災者の心身のケアを拡充。新たに相馬・双葉地域などにおける介護サービス提供体制の確保に向け11億円を盛り込んだ。

 また、風評の払拭にも力を入れる。観光復興に56億円、福島県の農林水産業再生に50億円を計上。加えて、放射線副読本の改訂・配布に2億円の予算を付けるなど、放射線に関するリスクコミュニケーションの強化も図る。

 「福島イノベーション・コースト構想」関連予算は160億円を要求。ロボット技術をはじめさまざまな分野の研究開発拠点として、浜通り地域などの産業基盤の再構築を目指す。

 特定復興再生拠点整備事業については、各自治体の整備計画を踏まえるため予算編成の際に金額を具体化する事項要求とした。

 復興が進む中で生じる課題に臨機応変に対応し、引き続き支援体制に万全を期す。

【農林水産】 強い農林水産業基盤づくりに大幅増額

 農林水産予算概算要求の総額は、同29年度当初予算額の2兆3071億円を大幅に上回る2兆6525億円を計上、対前年度比115%の伸びとなった。

 重点項目では、飼料用米、麦、大豆など戦略作物の本作化のため、「水田フル活用と経営所得安定対策」として、水田活用の直接支払交付金を3304億円に大幅増を掲げた。

 加えて「強い農林水産業のための基盤づくり」も、農業農村整備事業に3793億円と709億円の増額要求。

 さらに、「畜産・酪農の競争力強化」は経営安定対策に前年度同様の1763億円、「林業の成長産業化と森林資源の適切な管理」に向け、間伐・路網整備など森林整備事業に1444億円と増額を目指す。

 また、「農山漁村の活性化」についても、多面的機能支払交付金として495億円と12億円増を図る。

 一方、水産関係では浜の活力再生交付金として70億円、資源管理に取り組む漁業者に対する共済・積立を活用した収入安定対策や燃油・配合飼料の価格上昇に対するコスト対策といった「漁業経営安定対策」に247億円を要求している。

【法務】 再犯防止対策を拡充

 法務省は一般会計で7879億円を要求。前年度当初予算比360億円(4.8%)の増額となった。

 重点事項は(1)2020年東京大会に向けた安全・安心の基盤整備(2)再犯防止対策の推進(3)経済再生の加速化および震災復興の推進(4)「司法外交」の展開(5)法の支配を実現する諸施策の推進―の5つ。

 最も力を入れるのが再犯防止対策。対象者の特性に応じた矯正処遇の充実強化や、矯正施設の環境整備に475億円を充てる。

 安心・安全の基盤整備には240億円を計上。顔認証ゲートの導入による円滑かつ厳格な出入国審査の実現などを目指す。

 相続登記や登記所備付地図整備事業の推進には76億円の予算を付け、所有者不明土地問題の解消や土地取引の活性化を図る。

 なお、最高裁判所は、裁判所の耐震化や警備体制の強化などのため、今年度当初予算比84億円(2.6%)増額となる3261億円を要求する。

【内閣】 人材育成や働き方改革などを重視

 内閣府の一般会計予算の概算要求額は優先課題推進枠1215億円を含む3兆1196億円を要求し前年度比約2%増。

 主な項目は女性の活躍、少子化対策、暮らしと社会などに2兆4434億円、沖縄政策・北方対策に3210億円、地方創生、国家戦略特区、地方分権改革などに1245億円となった。

 警察庁関係では約3307億円を要求し、警察基盤の充実強化に479億円、客観証拠重視の捜査のための基盤整備に131億円。

 消費者庁は地方消費者行政推進交付金30億円を含む146億円を要求。

 内閣官房は優先課題推進枠の301億円を含む1162億円を要求、内閣衛星情報センターや東京五輪・パラリンピック競技大会推進本部事務局経費などに充てる。

【沖縄振興】 社会資本の整備へ

 内閣府の沖縄振興予算概算要求額は優先課題推進枠の302億円を含む3190億円となり前年度当初予算額より40億円の増加となった。

 公共事業費として、約1523億円を計上。沖縄の観光や日本とアジアを結ぶ物流拠点としての発展や県民のくらし向上に向けた社会資本の整備、学校施設の耐震化などが目的。世界最高水準の教育や研究を行い、イノベーションの国際拠点となる沖縄科学技術大学院大学(OIST)の規模拡充の支援にも約215億円が計上された。

 また、今回は新規の要求項目として語学講座の実施などを目的とした沖縄の人材育成事業が3億5000万円で盛り込まれた。

【国土交通】 防災対策や訪日客誘致を強化

 国土交通省の一般会計予算の要求額は対前年度比16%増の6兆6944億円となった。

 公共事業関係費は対前年度比16%増の6兆238億円を計上し、近年増加傾向にある豪雨被害などの防災対策に力を入れるほか、建設・運輸分野などの生産性向上を強化する。

 防災対策などでは、洪水被害対策として堤防のかさ上げなど水害対策費として4774億円を計上したほか、インフラ長寿命化に取り組む自治体に交付する防災・安全交付金として1兆2982億円を要求した。

 生産性向上の取り組みとして、「ダブル連結トラック」による省人化など効率的な物流ネットワークの強化に2784億円、人工知能や新技術の導入により建設現場での作業効率を上げる「i-Construction」の取り組み推進に33億円、PPPとPFIの推進に409億円を計上。

 観光庁は対前年度比17%増の247億円を計上し、訪日外国人誘致のための情報発信や世界最高水準の快適な旅行環境の整備などを強化する。

 海上保安庁は尖閣諸島周辺での中国船の領海侵入などに対応するため、要求ベースでは過去最高額となる2303億円を計上し、海上保安官など493人の増員も要求した。

【地方創生】 地方創生の深化を

 地方創生関連の要求額は平成29年度の当初予算比で234億6000万円増の1244億円。6月に閣議決定した「まち・ひと・しごと創生基本方針2017」を踏まえ、地方創生版「3本の矢」や大学改革・若者雇用の創出、空き店舗の活用による商業活性化などに重点的に取り組む。この中で大半を占めるのは、自治体の自主的で先導的な事業を支援する地方創生推進交付金。「優先課題推進枠」の活用などで1070億円を盛り込み、今年度から70億円の増額となる。

 また、新規の「地方創生に向けた自治体SDGs推進事業」には11億8000万円を要望。持続可能な開発目標(SDGs)を先行している自治体の中から、モデルとなる先進的な取り組みを資金面で支援し、成功事例を創出・普及展開することで、地方創生の深化につなげる。

【文部科学】 人づくりを強力に推進

 文部科学省の一般会計予算の要求額は対前年度比9.9%増の5兆8380億円となった。

 義務教育費国庫負担金は1兆5189億円。公立小中学校の教職員定数4300人の増員を求めた。定数増員の内訳は、小学校専科指導充実に必要な教員の充実2200人、学校総務・財務業務の軽減のための共同学校事務体制の強化400人など。

 スクールカウンセラーや部活動指導員など専門スタッフ・外部人材の拡充に147億円、公立学校施設の老朽化対策などに2006億円を計上。特別支援教育には30億円を計上し、障害のある児童の就学前から卒業後にわたる切れ目のない支援体制の整備を促進する。

 高校生などの奨学給付金には155億円、大学などの奨学金事業には1075億円を計上した。

 スポーツ分野では、競技力向上事業やナショナルトレーニングセンターの拡充整備など2020年東京五輪・パラリンピック大会と2019年ラグビーワールドカップ日本大会などに向けた準備に235億円を要求した。

 科学技術関連予算では、科学研究費助成事業(科研費)を対前年度比164億円増の2448億円を計上した。

【防衛】 弾道ミサイル攻撃への対応など重点

 防衛省の一般会計予算の概算要求額は5兆219億円を要求。前年度当初予算額から約2.5%増と6年連続の増加となった。

 防衛大綱に基づく26中期防の最終年度として、弾道ミサイル攻撃への対応などを重視しつつ、統合機動防衛力の構築に向けた予算要求となっている。弾道ミサイル攻撃への対応では1791億円を計上。能力向上型迎撃ミサイル(PAC―3MSE)の取得や、自動警戒管制システム(JADGE)の弾道ミサイル対処能力の向上(107億円)などが盛り込まれた。また、新規アセット(イージス・アショアなどを検討)の導入も「事項要求」として盛り込まれた。

 また、周辺海空域における安全確保として、従来、掃海艦艇が有していた役割も保有するなど、多様な任務への対応能力向上と船体のコンパクト化を両立した新型護衛艦の建造(2隻・964億円)などが盛り込まれた。

 長期契約による取り組みなどを通して、より一層の効率的、合理的な運用を目指していく。

【環境】 「新たな成長」の牽引力を推進

 環境省の概算要求額は一般会計で1364億円、エネルギー対策特別会計で2144億円の要求となり対前年度当初予算比約40%増となった。また東日本大震災復興特別会計として別途6280億円を要求。

 主な柱として(1)環境問題と社会経済問題の同時解決に向けた政策展開(2)国内外で進める気候変動対策(3)被災地の着実な環境再生の推進と国内外における資源循環の展開(4)魅力あるわが国の自然の保全・活用と生き物との共生(5)安全で豊かな環境基盤の整備―の5項目が掲げられた。

 今回は「新たな成長」の牽引力として環境・社会経済問題の解決と好循環が実現する社会の構築に向け、太陽光発電の自立化に向けた家庭用蓄電・蓄熱導入事業や、ITなどを活用した低炭素型資源循環モデル構築促進事業などが新たに盛り込まれた。

【総務】 地域経済の好循環を促進

 総務省の一般会計予算の概算要求額は対前年度比1063億円(0.9%)増の16兆2836億円となった。このうち国から地方に配る地方交付税の一般会計からの繰入額は地方特例交付金と合わせて15兆5995億円(同324億円増)、一般歳出は6841億円(同739億円増)。

 一般歳出のうち恩給費は2419億円で、これを除く政策的経費として3999億円、新しい日本のための優先課題推進枠に423億円を計上した。

 地域の雇用創出と消費拡大を推進する事業などに31億円を充て、本格的な人口減少に直面する地方の経済活性化を図る。ICTによる経済成長の実現に向けて、サイバーセキュリティ強化に28億円を要求した。

 また、マイナンバー制度の円滑な実施とマイナンバーカードの利活用の促進に303億円、大規模災害に備えた緊急消防援助隊の充実強化に64億円を計上した。


平成30年度予算概算要求 主な項目と内容<br />-「働き方改革」「人づくり」、諸課題に全力-

平成30年度予算概算要求について協議を行う総務部会関係合同会議


機関紙「自由民主」2757号(2017年9月12日)2-3面に掲載